「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

7/31 文化人類学「2002年度・フードファイターフリーハンデ・中間レイト(2)〜スプリント・早食いの部」
7/30 
教育実習事後指導(教職課程)「教育実習生の内部実態」(8)」
7/29
文化人類学「2002年度・フードファイターフリーハンデ・中間レイト(1)〜早飲みの部」
7/28 
社会経済学概論「セレクトセール2002開催(3・番外編1)」
7/27 
競馬学特別講義「目指せ回収率アップ! 馬券学基本講座(1)」
7/25 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(7月第4週分)
7/24 
教育実習事後指導(教職課程)「教育実習生の内部実態」(7)」
7/23 教科教育法(高校地歴)「実録! 平成15年度兵庫県教員採用試験レポート(3)」
7/22 教科教育法(高校地歴)「実録! 平成15年度兵庫県教員採用試験レポート(2)」
7/21 教科教育法(高校地歴)「実録! 平成15年度兵庫県教員採用試験レポート(1)」
7/19 歴史学(一般教養)「短期集中企画・駒木博士の歴史覚え書き(4・終)」
7/18 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(7月第3週分)
7/17 歴史学(一般教養)「短期集中企画・駒木博士の歴史覚え書き(3)」

 

7月31日(水) 文化人類学
「2002年度・フードファイターフリーハンデ・中間レイト(2)〜スプリント・早食いの部」

 今日は「2002年度フードファイター・フリーハンデ(以下、FFハンデと略)中間レイト」の2回目、「スプリント・早食いの部」をお送りするのですが、その前に一昨日お届けしました「早飲みの部」(レジュメはこちら)で訂正がありましたので、先にお伝えしておきます。

 まず、詳細な記録が不明であった事によりレイティングを控えておりました、青木建志選手の「ペットボトル早飲み」カテゴリのポイントですが、その記録が判明しましたので、レイティング58を追加しています。
 また、白田信幸選手の「ペットボトル早飲み」カテゴリのレイティング60も追加しています。これは、「フードバトルクラブ3rd」の準決勝第2ラウンドでのウーロン茶1.5L早飲み対決を失念していたものでした。
 いずれも既にレジュメでは加筆修正済みですが、再度お確かめ頂ければ幸いです。

 
 ──さて、では今日の「スプリント・早食いの部」に移らせて頂きます。
 この「FFフリーハンデ」では、“食べる”競技のカテゴリを5つに細分化して、それぞれのレイティングを行っています。その5つのカテゴリは、以下の通りになります。

◎スプリント=5分以内 
◎早食い=5分超15分以内 
◎早大食い=15分超30分以内 
◎大食い45分=30分超60分未満 
◎大食い60分=60分以上

 このカテゴリ分けは、いわゆる“早食い”と“大食い”との間に引くべき境界線を設定する…という意味合いがあります。
 “早食い”と“大食い”の解釈は識者の間でも分かれているのが現状で、未だ定義づけの決着を見ていません。しかしこの「FFフリーハンデ」では一応の解釈として、「(人が胃袋の限界まで食べる事が出来ないような)短い時間内で、どれだけたくさんの量を食べられるかを競う」ものを“早食い”系競技そして「一定の長時間をかけてたくさんの量を食べることで、食べるスピードだけでなく消化能力や胃袋の大きさを競う」ものを“大食い”系競技として扱います。
 そして、“早食い”系競技の中でも競技時間によって細分化を図ります。超短時間での瞬間的なスピードを競う5分以内の競技を「スプリント」、スピードの持続力が要求されるような競技時間のものを「早食い」としました。
 また、“大食い”系競技でも、競技時間によって「早大食い」、「大食い45分」、「大食い60分」と分けています。これは、競技時間が長くなるにつれて、求められる能力が食べるスピードから胃の容量や消化能力にシフトしていくという事を考慮したものです。

 ……と、いうわけで今日は“早食い”系競技を対象にした2つのカテゴリについて、各選手のレイティングとその解説をお届けします。解説文は選手名敬称略、及び文体を常体(だ、である調)に変更します。


「2002年度・FFフリーハンデ・中間レイト」
〜スプリントカテゴリ〜

順位 ハンデ 選手氏名
66.5 白田 信幸
66 小林 尊
65 山本 晃也
64 高橋 信也
63.5 射手矢 侑大
  63.5 小国 敬史
  63.5 立石 将弘
62 新井 和響
58.5 木村 登志男
10 56.5 ヒロ(安田大サーカス)
11 53.5 加藤 昌浩
12 49.5 山根 優子
  49.5 植田 一紀
  49.5 高橋 明子
15 49 渡辺 勝也
16 48.5 駿河 豊起
17 48 土門 健

 ※主な競技結果※

FBC3rd 1stステージ
寿司40カンの部

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
66.5 白田 信幸
66 小林 尊
64(65) 山本 晃也
63.5 射手矢 侑大
62.5(64) 高橋 信也

FBC3rd 1stステージ
カレー1kgの部

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
65 山本 晃也
64 高橋 信也
63.5 小国 敬史
63.5 射手矢 侑大
63.5 立石 将弘
FBC3rd 準決勝第1試合
第1、3ラウンド(餃子)
ハンデ
()は他競技での最高値
選手氏名
60(66.5) 白田 信幸
59(65) 山本 晃也
FBC3rd 準決勝第2試合
第1ラウンド(チーズケーキ)
ハンデ
()は他競技での最高値
選手氏名
58(66) 小林 尊
48 土門 健
FBC3rd 準決勝第3試合
第1ラウンド(チーズケーキ)
ハンデ
()は他競技での最高値
選手氏名
57(64) 高橋 信也
53.5 加藤 昌浩
FBC3rd 決勝
(スプリントカテゴリ競技総合評価)
ハンデ
()は他競技での最高値
選手氏名
66.5 白田 信幸
66 小林 尊
58.5(64) 高橋 信也

 

〜早食いカテゴリ〜

順位 ハンデ 選手氏名
67 小林 尊
60.5 エリック=ブッカー
60 オレッグ=ツォルニツキー
56.5 河津 勝
56 羽生 裕司
  56 原田 満紀子
  56 近藤 菜々
  56 夏目 由樹
  56 大石 裕子

 ※主な競技結果※

全国大食い選手権 日本縦断最強新人戦
第3ラウンド(早食いカテゴリのみ)

ハンデ
()は他競技での最高値

選手氏名
56.5 河津 勝

ネイサンズ 国際ホットドッグ早食い選手権

ハンデ(上位3名)
()は他競技での最高値

選手氏名
67 小林 尊
60.5 E・ブッカー
60 O・ツォルニツキー

 

 昨年から日本のフードファイト・シーンで急速に進めれられた競技の高速化・記録のインフレ化の流れは、昨年末の時点で記録のインフレ化が一応の限界を迎えた辺りから、今度は競技の高速化のみに絞られてレヴェルの向上が図られるようになった。即ち、競技の早食い化からスプリント化への転換である。
 その競技のスプリント化を大きく進展させたのは、昨年、それまで大食い系競技の従属物に過ぎなかった早食い系競技の地位をフードファイト界の中で確固たるものにした事で知られる、TBS主催の「フードバトルクラブ」であった。
 今年から「フードバトルクラブ」は、春に早食い系オンリー(実際は早飲み競技とスプリント競技だが)の競技会を開催し、フードファイトでのスピードの限界を追求する姿勢を露わにした。そして選手たちも、既に限界に近いと思われていた従来の記録を大幅に更新してその期待に応え、早食い系競技のさらなる地位向上に貢献した。各選手のレイティング値をご覧頂ければ分かると思うが、トップ選手の平均的レヴェルは、既に大食い系競技のそれを凌駕していると言って良い。
 だが、好事魔多しとはよく言ったものだ。「フードバトルクラブ3rd」放送から間もなくして、フードファイト番組(恐らく「フードバトルクラブ」の事だと思われる)を観て早食い競技の真似をした中学生が食べ物を喉に詰まらせて窒息死するという事故が報道され、状況は一変してしまったのである。
 この、恐らくは1人の通信社記者が好奇心にまかせて配信したたった1本のニュースにより、早食い系競技だけではなく、フードファイト全体にも「危険である」というレッテルが貼られてしまい、激烈なイメージダウンを被ってしまった。実はこの際、フードファイト業界内から一般層へ向けての対応が余りにも不味かった事が、そのイメージダウンに拍車をかけてしまったという側面もあるのだが、それは総括に譲ることにしよう。とりあえずここでは起こった出来事の流れだけを追っていくことにする。
 この一連の事故報道の直後から、まずは全国各地で開催が予定されていたフードファイト・イベントが次々と中止となった。この種のイベントは、一般層へフードファイトの何たるかを認知させるという効果を持つと共に、世間一般のフードファイトに対する好感度の現われでもある。そんなフードファイト・イベントが中止になったという事は、即ち、一般層へのイメージを何よりも重視するテレビ局──メジャー系フードファイト競技会の主催者でもある──の態度を硬化させてしまう最悪の事態に繋がってしまう。TBSとテレビ東京で予定されていたネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権に関する特番は放映中止となり、テレビ東京主催の予選会も中止。そればかりか、今秋以降のフードファイト競技会と番組放映の実施すら白紙に戻されてしまったのである。
 もっとも、秋以降のスケジュールに関しては、未だ「中止」と明言されていないだけに、どうやら比較的イメージの悪くない大食い系競技会から“復活”させていくのではないか…という楽観的な推測が多数意見を占めている。少なくともフードファイトそのものがTV業界から抹殺されるという最悪の事態は避けられそうではある。
 しかし、それでも今回の一連の騒動は、せっかく隆盛を極めるところまで成長した早食い系競技に致命傷を負わせる“痛恨の一撃”であった。ひょっとしたら、今回が“スプリント・早食いの部”としての最後の解説文となるかもしれない(ネイサンズ国際がある限り、カテゴリが消滅する事は無いだろうが)。この本文中では希望的観測も込めて、これからも早食い系競技が国内のメジャー競技会で実施されるという前提の下で筆を進めるが、これをご覧の方も一応の“覚悟”を持って読み進めて頂くようお願いする。
 
 
 昨年下半期から始まった小林尊の苦悩は、今年になってもまだ続いていた。
 日本初の早飲み・スプリント系競技会となった「フードバトルクラブ3rd」。そのレギュレーションの内容から「小林尊絶対有利」の下馬評が圧倒的多数を占めたこの大会で、彼は三度、白田信幸の前に屈した。しかも予選から本戦決勝に至るまで、全ての競技で白田の後塵を拝するという屈辱的な完全敗北であった。これまでは、勝ち上がり過程ではダントツのトップを取りながら、決勝だけ白田得意の大食い系競技で敗れて準優勝…という“惜敗”パターンだっただけに、早飲み・スプリント系競技で喫したこの完敗は、非常にダメージの深いものであったと言える。もう今では誰も彼を“最強のフードファイター”とは認識していないだろう。彼の第一期黄金時代は完全に終焉を迎えたと言える。
 だが、ここで簡単にフェードアウトしないのが小林の小林たるところ。彼は、国内で“アンチ・フードファイト”のムードが収まらない中でも黙々とリベンジのチャンスを窺っていた。そして7月、満を持して彼は、手元に唯一残されたメジャータイトル・「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」の防衛戦に臨むため渡米したのである。
 現地での彼は、当日までマスコミ取材等の殺人的スケジュールに引きずりまわされた上、大会会場が気温37℃の屋外という最悪のコンディションに晒されていたが、鍛錬に裏打ちされた実力と彼の精神力が、そんな悪条件を見事に克服した。昨年のこの選手権で記録した12分間で50本という大記録を僅かに更新する50本1/2をマークし、堂々の二連覇、そして1年ぶりのメジャー大会優勝を達成した。それはタイトル防衛であると共に、彼が小林尊である事の防衛でもあった。
 小林の最大の持ち味は、何と言ってもフードファイター随一の嚥下力とその持続力である。彼は、寿司やホットドッグといった固形物でも、ほとんど咀嚼せずに10分以上にわたって飲み込み続けることができる。この事は、例の痛ましい死亡事故を見るまでも無く、人間にとっては体に大きな負担を与えるものであって、常人に真似できるものではない。他の一線級フードファイターでも、4〜5分ならともかく、10分以上の無咀嚼嚥下は無理難題と言って良いものであると思う。それを可能にするまでに自らの体をそこまで鍛え上げた努力と、それを支える彼の才能には脱帽する思いである。恐らくこれからも、少なくとも早食いカテゴリでは、彼の優位は揺るがないものと思われる。
 だが、そんな彼にも弱点が無いわけではない。以前にも少し指摘した事があったが、彼の食べ方は良く言えばワイルド、悪く言えば荒っぽいのである。これは昨年末に「フードバトルクラブ」でファウル制度(食べこぼし、食べ残しが記録無効になるルール)が導入されてから、再三その“お世話”になっている事でもよく分かる。勿論他の選手もファウルを犯しているが、小林のファウル回数は全選手中トップクラスである事は確かだ。
 実は、今回のネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権でも、小林はファウル(=失格)ギリギリのプレイで、あわや失冠するところだったのである。
 その出来事は、小林が2位以下に24本余りの大差(!)をつけて圧勝のまま競技を終了しようという、その間際に起こった。12分もの間、極限状態で競技を続けていた疲れが出たのだろうか、小林が口に頬張ったホットドッグの嚥下に失敗し、むせ返ってしまったのである。
 ここで小林は、何とか競技時間内に内容物を口から吐き出す事は防いだものの、鼻からはいくらかの吐瀉物(?)を噴き出してしまった(そして、試合終了直後には口からも吐き出した)。これを見ていた2位のエリック=ブッカーは、小林がネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権のルール・「一度食べた物を吐き出したら即失格」に抵触するとして運営者サイドに抗議。あわや小林尊は失格か、という事態に陥ってしまったのだ。
 結局、運営者であるIFOCE(国際大食い競技連盟)サイドは審議の結果、
「小林は鼻から吐瀉物を噴いたが、テーブルを汚したわけではない」、
「吐き出した物は胃から吐いたものではなく、嚥下する直前の物がゲップをした弾みで吹き出たものである(だから規則違反ではない)」
「口から吐き出したのは試合終了後であり、小林は最後まで持ち堪えた」
 ……という、(少なくとも初めの2つはかなり苦しい)公式見解を出して、「小林、失格に至らず」と判定。ここでやっと小林のタイトル防衛が確定したのである。
 恐らくIFOCEサイドは、小林が記録上大差で勝利している事などを考慮して、このような判定を下したのであろうが、もしこれが判定に厳しい「フードバトルクラブ」ならば、かなりの確率で失格を覚悟しなければならないところであったはずだ。まさに危機一髪という状況だったのである。
 ……同じファウルでも、これが実力で劣る選手がイチかバチかの挑戦をした挙句のファウルならまだ良い。しかし小林のファウルは、今回の件も含めて、やらなくても良い場面で犯すファウル(またはその未遂)が多いのだ。恐らくこれは、常に限界に挑む事を旨とする彼のポリシーの現れなのであろうが、それで積み上げて来たものを失ってしまっては何にもならない。今はまだ深刻な結果に結びついてはいないが、このままの危うい競技スタイルを維持していこうとすると、近い内に破綻が訪れるだろう。それが果たして、プロ選手として相応しい事なのだろうか? せめて、少しは食べ方の改良くらいは挑んでみてもよいと思うのであるが──。

 総合レイティング値では小林尊に及ばなかったものの、国内メジャータイトル4連覇の偉業を成し遂げて、最強の王者の名を欲しいままにするに至ったのが白田信幸であった。
 彼の体のパーツのことごとくがフードファイトに適応したものであるという事は、これまでも再三述べてきたが、彼の“最大”の武器は、スプリント系競技でも絶大なる威力を発揮した。いや、これまで使いこなせていなかった力を使えるようになったと言うべきだろうか。
 「フードバトルクラブ3rd」の1stステージ・寿司40カン早食いにおいて、白田はそれまで同種の競技では無敗を誇った小林尊を僅差ながら粉砕。ついに早食い系、大食い系両方の競技で小林越えを果たしたのである。
 その時のタイムは36秒14。1皿(2カン)あたりの平均タイムは1秒81という、文字通り破格の好記録であった。そしてその記録を支えたのは、これまでの競技生活で鍛えられた一流の嚥下力もさることながら、一度に寿司8カンまで納められるという彼の大きな口であった。これは現行の「口に納めた時点で完食とする」というルールが存在する以上、決して揺るがないアドバンテージである。
 これを「不公平だ」と言う事は簡単だが、これをリーチが長いボクシング選手や、ジャンプ力の優れたバスケットボール選手と同じ事だと考えたらどうだろうか。そう、白田はフードファイトに冠する天賦の才能を持って産まれて来た男である、ただそれだけの事なのである。
 これで国内のメジャータイトルを独占した白田は、大食い系競技会の集中する秋シーズンで、空前絶後のメジャータイトル7連覇に挑む。現在、フードファイトに集中できる環境に居ないことだけが不安材料だが、それも卓越した技術と才能でフォローしてくれるだろう。

 さて、“2強”の前に圧倒される形になってしまったが、3番手以下の選手たちも着実にレヴェルアップを果たして奮闘している。
 早食い系スペシャリストの第一人者である山本晃也は、寿司やカレーライスといった早食い系競技定番の食材で次々に好記録を連発した。小林、白田の牙城を揺るがすまでに至らないのがもどかしいが、実力そのものは着実にスケールアップしている。
 高橋信也は、「フードバトルクラブ3rd」決勝での消極的な戦いで大いにミソをつけたものの、並み居る強豪を抑えて結果を残しているのだから、もっと自分を評価して良いはずだ。彼の課題は“脱・バイプレーヤー”。そのためには何よりもアグレッシブさが欲しいところである。
 引退を撤回して「フードバトルクラブ3rd」に出場した射手矢侑大の頑張りも評価できるものであった。苦手としていたスプリント系競技での善戦健闘は、さぞかし自信になっただろう。魔が差したようなファウルで勿体無い事をしたが、その悔しさを秋シーズンに繋げて欲しいと思う。大食い系競技では、唯一、白田と互角に争える実力があるだけに期待大だ。
 あと、成長度が目立った選手を挙げるならば、小国敬史立石将弘も該当するだろう。胃容量が“割れて”しまっている立石はともかく、小国には大食い系競技に対する未知の魅力もある。
 そんな中で、一抹の寂しさを覚えたのは新井和響の大不振であった。大食い系競技の集中する秋シーズンでの活躍は望めないため、リベンジの機会は最短でも年末の「フードバトルクラブ・キングオブマスターズ」での話となる。果たしてその時の彼はどのような姿を我々の前に見せてくれるのであろうか?

 一方、土門健らの登場で話題を呼んだ早飲み系競技とは対照的に、早食い系競技においてはルーキーが大不作であったと言わざるを得ない。
 「フードバトルクラブ3rd」では、ある程度の記録を残して56.5のレイトを獲得したヒロを除いては軒並み“素人大食い自慢”の域を越えなかったし、「大食い選手権」の新人戦でも、名古屋予選第1ラウンドで1.6kgの天むすを8分で完食した通過者5名が、それぞれ56ポイントを獲得したのみに終わった。これはネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権の予選会が開かれなかった影響や、前年の2001年デビュー組が大豊作だった反動が出ているのだと思われるが、それにしても寂しい限りであった。
 ただ、その代わりと言っては何だが、大食い系カテゴリの方ではスーパールーキーと呼んで良い逸材が登場した。これはまた、次回の解説文で紹介しよう。

 最後に外国勢。「フードバトルクラブ」の外国人招待枠が消滅したため、国内における外国人の活躍は見られなかった。だが、それでもネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権において、中嶋広文・新井和響全盛期の世界記録に相当する好記録をマークしたエリック=ブッカー(記録26本)とオレッグ=ツォルニツキー(記録25本1/2)が現れて、アメリカにおけるフードファイトのレヴェルアップが窺えたのは収穫だった。いずれ、彼らのような実力者の何人かが日本のメジャー大会に逆上陸して来る日も近いであろう。


 以上、「早食い・スプリントの部」をお送りしました。次回は大食い系競技のレイティング「早大食い・大食いの部」をお送りします。お楽しみに。(次回へ続く) 

 


 

7月30日(火) 教育実習事後指導(教職課程)
「教育実習生の内部実態」(8)」

 これまでのレジュメはこちらからです。↓
 第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回


 ……さて、今回は駒木の授業実習体験、そして担当教諭からのダメ出し体験のお話をしてみましょう。

 以前から色々な講義でお話しておりますように、駒木は教育実習の時点で、既にキャリア3年のアルバイト塾講師でありました
 自分で言うのもアレなのですが、キャリア3年ともなれば「桃栗3年」でありまして、とりあえずは塾の中でも講師として一人前扱いしてもらえるくらいの技量が身についています。教員免許はありませんが、「無免許運転、3年やってりゃ上手くなる」みたいなもんです。

 そんなわけで、他の実習生にとっては泣きを見るほどの試練である授業実習も、教壇に立って喋ったり板書する事だけに限って言えば、駒木にとってはそれほど大した苦労ではありませんでした
 確かに慣れないシチュエーションに少しは緊張もしますが、それでも新人講師の頃に先輩講師や上司10数人の前で模擬授業をやらされた時の恐怖と比べると雲泥の差。駒木はすっかりリラックスした態度で、淡々と授業をこなしたのでした。
 そうやって、なかなかの授業内容に我ながら満足していた駒木だったのですが、さすが担当教諭のT先生、駒木が授業の“イロハ”をマスターしているのを察知するや、すかさず“ニホヘ”を要求して来たのでした。

 「えー、細かい事ばかりで恐縮なんですが……」

 T先生は恐縮した口調でこのような前置きをすると、次から次へと上級編のダメ出しを連発なさいました
 そのダメ出しの内容は、駒木が授業中に喋った世界史の話全般について。少しでも誤りを含んだ部分や、誤解を招く恐れのある部分は片っ端から指摘を受けました。しかもこれがまぁ、出て来る出て来る。いかに駒木の知識が不足していて、それをハッタリで誤魔化して授業をしていたか、嫌でも気付かされる事になりました。

 こうなれば、駒木の目標は「めざせ! ダメ出しゼロ」であります。50分間の授業に耐えうるだけの大量かつ正確な知識を求めて、連日複数の本屋を彷徨い歩くことになりました
 しかし、ここでまた駒木の前に立ちはだかる高い壁。本がいちいち高すぎて買えないのです。いや、当時の経済状況を考えると、安くたって大変でした。何しろ当時の駒木は、まだギャンブルが「下手の横好き」だった頃で、なけなしのバイト代の大半を競馬と麻雀で失っている情けない状況だったのです。
 ですから、いくらT先生に「塩野七生さんの『ローマ人の物語』は参考になりますよ」と言われても、ハードカバーで1冊3000円だの4000円だのする本など買えるわけがありません。結局は全て立ち読みで済ませるという力技に走るしかありませんでした。「毎日足が棒になるまで頑張りました」と言っても、頑張るベクトルが明らかに別方向の日々全国のラーメン食べ歩きを、食い逃げだけで達成しようとするみたいなものです。

 それでも苦労の甲斐あってか、日を追うごとにT先生からのダメ出しは減っていきました
 ただそんな中でも、吉村作治教授のクレオパトラにまつわる本を読んで、そこから得た知識をそのまま授業に使ったところ、T先生から「それは違います」とダメ出しを受けてしまい、「この墓荒らしめ、ピラミッドの角で頭カチ割ったろか!」……などと殺意を抱いてしまった事もありました。
 駒木ハヤトは、吉村作治の教授昇進に最後まで抵抗した大槻教授を応援しています。

 

 ……結局、駒木がダメ出しゼロを達成したのは一番最後の授業の時でした。今から思えば、これはT先生が駒木にくれた“卒業証書”だったのかも知れません。

 さて最後に、世界史の授業に関しては一切の妥協を許さないT先生ならではのエピソードを1つ
 世界史の知識不足に喘ぐ駒木が、T先生に、
 「世界史の知識を身に付けるためにはどうすれば良いですか?」
 と、質問したところ、T先生からサラッと返って来た答えはこうでした。

 「とりあえず、通史のシリーズ(『世界の歴史』全24巻みたいなヤツ)を3種類読破して下さい。それで知識のバックボーンが出来ますから」

 駒木がこのアドバイスを実践するのに丸2年かかりました(何しろ、3シリーズ合わせて70冊ありますので)。そのおかげで採用試験1次通過も果たしたりしたので、アドバイスに従って良かったと思っているのですが、ただ、この話を他の世界史の先生に話すと、その度に引き攣った笑みを浮かべられるんですが、何故?

 ひょっとして自分は、ガチンコファイトクラブから世界チャンピオンを目指すような事してないか? ……などといった疑問を抱きつつ、次回に続きます。
 次回はいよいよ最終回。実習最終日の出来事についてお話したいと思います。(次回へ続く) 

 


 

7月29日(月) 文化人類学
「2002年度・フードファイターフリーハンデ・中間レイト(1)〜早飲みの部」

 今日から週1〜2回ペースの不定期で、「2002年度・フードファイター・フリーハンデ中間レイト」をお送りします。

 この企画は、今年の2月にお送りした「2001年度・フードファイター・フリーハンデ」の続編にあたるもので、本来、競走馬の客観的な絶対能力比較に使用される「フリーハンデ」を、フードファイター(早飲み、早食い、大食い選手)の能力比較に応用しようとする試みです。
 詳しい事は、「2001年度フードファイター・フリーハンデ」ハンデ一覧表)を実際に読んで頂く方が早いのですが、時間の無い方のために、ここでも簡単に説明しておきましょう。

 まず、元々の「フリーハンデ」とは、その能力比較をしたい競走馬たちを、とある条件で全て同時に走らせた場合、ゴール前で全馬が横一線になるにはどうすれば良いのかを想定して各馬に負担重量を設定し(例:芝2400mでのハンデ…馬A:61kg、馬B:59.5kg、馬C:57kg)、その数値の高さで各馬の能力を測定・比較できるようにするものです。
 この「フリーハンデ」は、同じ条件で凌ぎを削った競走馬同士の実力比較だけでなく、活躍時期の違いや得意とする条件の違いにより直接対決が不可能な馬同士でも、その数値の高さによって実力比較が可能であるという利点があります。
 よって、この「フリーハンデ」をフードファイトに適用する事で、同じ年に活躍した早食い系選手と大食い系選手の実力比較や、直接対決の無い「大食い選手権」系選手と「フードバトルクラブ」系選手との実力比較、さらには昨年の活躍選手と今年の活躍選手との能力比較が可能になるわけです。

 ──というわけで、この企画の内容、及び意義がご理解頂けましたでしょうか?

 それでは、以下に「フードファイター・フリーハンデ(以下:FFフリーハンデとする)」を編集するにあたっての規定を記しますので、あらかじめよくお読み下さい。

 

◎数値は本家の「フリーハンデ」に倣って、競走馬の負担重量風のものを使用します。重量の単位は、最近ではポンド換算が主流ですが、ここでは旧来のキロ換算の数値を使用します。ただし、競馬と違って、キロという単位に意味は有りませんので、「〜ポイント」と呼ぶ事にします。数値は0.5ポイント刻みです。
 ポイント設定の大まかな目安としては、
 ・50ポイント……フードファイター(選手)と、大食い自慢(一般人)との境界線
 ・60ポイント……「フードバトルクラブ」「大食い選手権(オールスター戦)」決勝進出レヴェル
 ……と、します。ちなみに、常識外れのビッグパフォーマンスが無い限り、65ポイントを超える事は有りません。
(逆に言えば、65ポイントを超えると、普段から一般人離れしているフードファイトの世界においてでも、常識から外れた物凄いパフォーマンスという事になります)

 また、選手間のポイント差については、
 ・0.5ポイント差……ほとんど互角だが、僅かに優劣が生じている状態
 ・1ポイント差……優劣が生じているが、逆転可能な範囲
 ・2ポイント差以上……逆転がかなり困難な差

 ……と、解釈してください。

◎今回の「FFフリーハンデ・中間レイト」の対象となる競技会は、以下の通りです。
 ・「フードバトルクラブ3rd ザ・スピード」
 ・「TVチャンピオン・全国大食い選手権・日本縦断最強新人戦」(本戦および地方予選)
 ・「『なにコレ!?』なにわ大食い選手権」
(全国大食い選手権・日本縦断最強新人戦・近畿地区予選)
 ・ネイサンズ・国際ホットドッグ早食い選手権

 

最終的に各選手に与えられるポイントは、「FFフリーハンデ」対象競技会における、ベストパフォーマンスの時の数値を採用します。
 そのため、直接対決で敗れている選手の方が、「FFFハンデ」では高い数値を得ている場合もあります。その場合は、敗れた選手が他の競技会で、よりレヴェルの高いベストパフォーマンスを見せた、ということになります。

◎ハンデは以下に挙げる7つのカテゴリに分けて設定します。
 瓶早飲み/ペットボトル早飲み(以上、食材が飲料の競技)/スプリント(5分以内)/早食い(5〜15分)/早大食い(15〜30分)/大食い45分(30〜59分)/大食い60分(60分以上)(以上、食材が食べ物の競技)

最終的に各選手へ与えられるポイントは、7つのカテゴリの中で最高値となったポイントを採用します。
 
これにより、早飲み選手、早食い選手、そして大食い選手との間での、間接的な能力比較が可能になります。

◎他、細かい点については、その都度説明します。

 

 ──それでは、今日はこれから「瓶早飲み」と「ペットボトル早飲み」のフリーハンデ及びその解説を掲載します。なお、解説文中では、人物名を敬称略、文体を常体に変更してお送りします。


 

「2002年度・FFフリーハンデ・中間レイト」
〜瓶早飲みカテゴリ〜

順位 ハンデ 選手氏名
64 白田 信幸
62.5 小林 尊
62 射手矢 侑大
  62 山本 晃也
61.5 ヒロ(安田大サーカス)
  61.5 土門 健
  61.5 駿河 豊起
61 渡辺 剛士
59.5 新井 和響
10 59 植田 一紀
11 58.5 高橋 信也
  58.5 立石 将弘
13 58 青木 健志
  58 渡辺 勝也
15 57.5 山根 優子
16 57 木村 登志男
  57 柴田 綾太
  57 加藤 昌浩
19 56.5 高橋 明子
20 56 小国 敬史
21 55.5 渡辺 高行
  55.5 渡辺 宏志
  55.5 三井田 孝敏
  55.5 福元 哲郎
  55.5 山形 統
  55.5 平田 秀幸
27 55 関 絵梨

 ※主な競技結果※

FBC3rd プレステージ

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
63(64) 白田 信幸
62.5 小林 尊
62 射手矢 侑大
62 山本 晃也
61.5 ヒロ
FBC3rd 
決勝第8ラウンド・牛乳ステージ
ハンデ
()は他競技での最高値
選手氏名
64 白田 信幸

 

〜ペットボトル早飲みカテゴリ〜

順位 ハンデ 選手氏名
66.5 土門 健
63.5 加藤 昌浩
63 山本 晃也
  63 ヒロ(安田大サーカス)
  63 小林 尊
62.5 渡辺 勝也
61 渡辺 剛士
60.5 高橋 明子
60 小国 敬史
  60 白田 信幸
11 58 青木 健志
12 54 駿河 豊起

 ※主な競技結果※

FBC3rd・1stステージ・ペットボトルの部

ハンデ(上位5名)
()は他競技での最高値

選手氏名
66.5 土門 健
63.5 加藤 昌浩
63 山本 晃也
63 ヒロ
62.5 渡辺 勝也
FBC3rd 準決勝第1試合
第2ラウンド(ペットボトル)
ハンデ
()は他競技での最高値
選手氏名
62(63) 山本 晃也
60 白田 信幸
FBC3rd 
決勝第3ラウンド・水ステージ
ハンデ
()は他競技での最高値
選手氏名
63 小林 尊

 

 早飲み系競技が初めてメジャー級のフードファイト競技会に採用されたのは、昨年末の「フードバトルクラブ・キングオブマスターズ」だった。しかし、その時の早飲み系競技の位置付けは、まだ早食い系・大食い系競技の補助的な役割に過ぎず、早飲みだけに長けた選手が活躍できる余地は与えられていなかった。

 だが、事態はわずか4ヶ月で急転を迎えた。
 今春に開催された「フードバトルクラブ3rd ザ・スピード」では、予選に純粋な瓶早飲み競技を採用し、本戦に入ってからも、早飲み系競技を勝敗の重要なポジションになるようなレギュレーションに設定したのである。
 これにより、早飲みのスペシャリストに早食い系・大食い系の選手を破るチャンスが与えられる事になったし、逆に、これまで活躍して来た早食い系・大食い系選手たちにとっては、早飲み系競技を克服しない事には成績上位が望めないという事になってしまったのである。それは間違いなく、フードファイト界の大変革であった。

 もともと早飲み系競技は、早食い系・大食い系競技とは求められている能力が全く違う。それ故、これまでのレギュレーションでは台頭しようにも出来なかった早飲み系の選手たちが、この「フードバトルクラブ3rd」で多数“発掘”される事になったのである。
 彼らは自分たちの土俵から離れると途端に脆さを露呈してしまったが、純粋な早飲み系競技では無類の強さを発揮し、これまで第一線で活躍していたフードファイターたちを次々と破っていった。
 しかし、まだフードファイト界には「フードファイト=大食い、早食い」という認識が根強いし、「フードバトルクラブ3rd」のレギュレーションも、準決勝・決勝では早食い系選手が有利なものとなっていた。そのため、いくら早飲み競技でスペシャリストたちが活躍しても、十分な評価が与えられないというのが現状である。
 とはいえ、早飲み系競技には、早食い系・大食い系の競技に比べて危険性が少なく、また「食べ物を無駄にしている」という批判にさらされ難いという長所がある。そのため、早飲み系競技が今後さらにフードファイト界での地位を向上させていく可能性は十分にあるわけで、それを考えると、「早飲み系競技はフードファイトではない」…などといった偏見は無くしておくべきだろう。勿論、この「FFフリーハンデ」では、早飲み系競技は他の競技と全く対等のものとしてレイティングを行っている。

 

 さて、そんな時代の要請によってフードファイト界に現れ出でた多くの早飲み系スペシャリストの中で、早くもフードファイトの歴史にその名を残す大偉業を達成する者が現れた。土門健である。
 彼は他の早飲み系スペシャリスト選手と同様、これまで全くフードファイトの世界と無縁であったのだが、「フードバトルクラブ3rd」が早飲み系選手を大々的に公募したのを機に、自らの足を大舞台へと踏み入れたのだった。
 まず土門は、予選のコーヒー牛乳180ml瓶10本タイムアタックを100名中6位という好成績で通過した。この瓶早飲みという競技は、才能よりも練習量がモノを言う競技であると言われており(事実、土門より上位にランクインした選手は、十分に準備期間を置いて訓練を積んだトップ選手たちと、早飲み芸を生業としている芸人のヒロであった)、それを考慮すると、土門の予選6位という成績は、この時点で考え得る最高の成績であっただろう。
 そして、本戦1stステージの第1ラウンド・ペットボトル1.5L早飲みタイムトライアルにおいて、土門が秘密裏に育て上げていた自らのポテンシャルを、一気に開花させることに成功した。
 土門は、1回目の試技こそ飲みこぼしでファウルにしたものの、2回目の試技では、独自で開発した完全オリジナルのペットボトル捌きを披露して、なんと4秒88というとんでもない新記録を叩きだしたのである。昨年末時点での大会記録が山本晃也の14秒43であったから、実に10秒弱の記録更新ということになる。陸上の100m走で言えば、いきなり現れた新人選手が8秒台を記録してしまったようなもので、まさに常識外れのビッグ・パフォーマンスであった。実は、このタイムトライアルでは、土門が2回目の試技を行う前に11秒台の新記録が誕生していたのだが、この4秒台の記録の前には余韻も含めて何もかも吹き飛ばされてしまった。
 この土門のスーパーレコードの秘密は、やはり何より彼が独自に開発した、“土門スタイル”とも言うべきペットボトル捌きテクニックである。
 「フードバトルクラブ」で採用されている1.5L入りペットボトルは、よく我々が目にする清涼飲料用のものではなくて、醤油などの調味料を入れる柔らかめの物である。このボトルは確かに扱いやすいのだが、中身を飲みすすめていく内に“吸い潰されて”しまい、最後の方になると思うように内容物が吸い込めないという構造的な欠点があった。
 だが、土門はこの欠点を“コロンブスの卵”的な手法で克服する事に成功した。
 彼の“土門スタイル”は、まず瞬間的にペットボトルを吸い潰すまで中身を喉に流し込んだ後、今度は潰れたペットボトルに息を吹き込んで一気に膨らますのである。こうすることによって、終盤の効率の悪さが解消されて大幅にタイムロスを解消する事が可能になる。短縮された10秒弱の内、その半分以上は“土門スタイル”の恩恵であり、それは土門の2回目の試技の後、見様見真似で“土門スタイル”に挑んだ選手たちが大幅な記録短縮を果たした事からも証明されている。まさにこれは、かつて中嶋広文が発明したホットドッグ早食いテクニック・“トーキョー・スタイル”に並ぶ、フードファイト界屈指の大発明であると言えよう。
 しかし土門の才能は“土門スタイル”の発明だけに留まらない。彼は、自らが発明した“土門スタイル”の利点を活かすために必要な才能をも持ち合わせているのである。
 先程から説明している通り、この“土門スタイル”は従来のペットボトル早飲みで生じていたタイムロスを無くし、ボトルの中身を5秒弱で一気に体内へ流し込む事を可能にしたものである。が、それは逆に言えば、1.5Lもの大量の液体を一気に飲み込むだけの能力が無ければ“飲みこぼし→ファウル”という事になってしまうわけで、決して万能の武器ではない。安全に記録を残したいのであれば、“土門スタイル”はむしろ危険とも言える諸刃の剣なのだ。
 その点土門は、一気に1L近くをボトルから吸い込んでしまう桁外れの肺活量と、それを受け止めるための、喉を完全に開いてしまう技術を兼ね備えていた。これによって、彼の“土門スタイル”は初めて無敵の武器たりえたのである。他の選手たちが見様見真似で“土門スタイル”に挑んだところで、土門の記録を脅かすことすら出来なかった理由はここにあった。土門は二重の意味で天才である。1つは“土門スタイル”を確立した独創性において、そしてもう1つは、それを誰よりも活かしきる事のできる身体能力において。
 さて、これからの彼の展望であるが、早食い・大食い競技で素人同然と言う現状では、今のようレギュレーションで「フードバトルクラブ」が行われる限り、その制覇は極めて困難であろう。これは、土門とは全く逆のタイプ──早飲み競技が苦手な早食い・大食い系──の選手が「フードバトルクラブ」での活躍が困難となってしまったのと同じ事である。
 しかし、もしも早飲み系競技オンリーのメジャー大会が開催されたとすれば、間違いなく優勝候補の筆頭に挙げられるであろう。今後の彼とフードファイト界の動向にはしばらく目が離せない。

 そんな土門健のセンセーショナルなデビューに、やや影が薄くなってしまったが、早食い系・大食い系の選手たちの中にも、いち早く早飲み競技に適応し、好パフォーマンスを見せつける選手も少なからずいた。
 その代表的な存在は、やはり国内メジャー大会4連覇を果たした“無敵の巨人”白田信幸だと言えるだろう。
 初めは大食い系選手として表舞台に立ち、その後は徐々に早食い能力を伸長させて、遂には早食い系タイトル・“スピードマスター”まで手にしてしまった白田であるが、彼はまた早飲みでも偉大な存在に登りつめることになった。
 彼は昨年末の「フードバトルクラブ・キングオブマスターズ」でペットボトル早飲みにも一定の適性を示していたが、「フードバトルクラブ3rd」では瓶早飲み競技で抜群の才能を発揮し始めた。予選では他の有力選手のファウルに助けられた面はあったものの堂々のトップ通過で、決勝での900ml大瓶牛乳一気飲みでも小林尊、高橋信也を全く寄せ付けず圧勝した。ペットボトル早飲みでは、調整不足のために記録が伸び悩んだが、これも間もなく“土門スタイル”をマスターしてトップクラスへ踊り出てくるだろう。
 彼の早飲みにおいての武器は、瓶の中身を吸い込んで流し込む力と、その巨体に兼ね備えられた大きな口である。特に彼の口の大きさは900ml入りの大瓶の口を完全に覆ってしまえるほどで、これにより全く中身をこぼす恐れもなく、一気に内容物を体内に流し込む事ができる。コンマ数秒単位の争いとなる瓶早飲み競技において、このアドバンテージは非常に大きい。競技会のたびに思う事だが、本当に彼の体はフードファイトをするために生まれて来たような体である。
 彼の活躍と天賦の才については、またスプリント・早食いカテゴリの解説で述べることにしよう。

 人間と言うものは、ひょっとした弾みで隠されていた才能が表に出てくる事があるものだが、「フードバトルクラブ3rd」における加藤昌浩の“早飲み開眼”は、まさにそれにあたるだろう。
 加藤はこれまでも大食い競技を中心に活躍していたトップ級の選手であったが、早飲み系競技とは無縁の存在。今春の「フードバトルクラブ3rd」が“早飲みデビュー”となっていた。
 そんな加藤の予選結果は18位。本戦進出は勝ち取ったものの、記録ではトップ通過の白田信幸と12秒以上も離されており、調整不足が否めないところだった。
 しかし、1stステージの第1ラウンド・ペットボトル早飲みの最終3巡目に突如エントリーした彼は、見様見真似の“土門スタイル”を駆使して9秒台の好記録を叩き出してしまった。これで彼はこのラウンドを2位で通過。まさに値千金のグッドパフォーマンスであった。(追記:その後、指摘を頂きまして、ビデオで再検証しましたところ、加藤選手のスタイルは“土門スタイル”では無いものでした。訂正いたします)
 加藤の勝因となったのは、おそらく趣味のトライアスロンなどの運動で鍛えられた心肺能力であろう。どこで何が幸いするか、本当に分からないものである。
 これで加藤は大食い能力に加えて、もう1つの大きな武器を手に入れた。これを突破口にして、これからも第一線で活躍を続けて欲しいものだ。

 さて、ここで昨年度の「FFフリーハンデ」の「早飲みカテゴリ」で高いレイティングを獲得した選手たちの動向を俯瞰しておこう。
 まず、昨年度「早飲みカテゴリ」レイティング1位の山本晃也は、トップこそ守れなかったものの、大会前に入念なトレーニングを積んだ成果が現れて、瓶・ペットボトルの両方で相当の好記録をマークした。今後は、肺活量や喉を開くといった、通り一遍のトレーニングだけでは克服不可能な部分に苦しむ恐れはあるものの、それでもトップクラスの地位は維持し続けてくれるものと思う。
 小林尊も、昨年末よりは早飲み能力において着実な進歩をして来たものの、土門健や白田信幸らの牙城を崩せずに不本意な結果に終わった。その最大の敗因は、彼の最大の弱点であるファウルの多さで、「フードバトルクラブ3rd」でもどれくらいの好記録をファウルでフイにしてしまったか分からない。これだけ「フードバトルクラブ」などでもファウル規定が厳しくなってきている昨今、そろそろ彼もこの問題に目を向ける時が来ているのでなかろうか。小林のこのファウル癖に関しては、また「スプリント・早食いの部」の解説文で詳しく述べる。
 ところで、曲がりなりとも記録を伸ばして来た山本や小林と対照的に、伸び悩みを見せてしまったのが小国敬史だった。予選の瓶早飲みではボーダーラインスレスレの20位、そして1stステージのペットボトル早飲みでは記録を残した10人中8位に終わってしまった。もっとも、小国は早食い系競技の実力を伸ばしてきているので、今回は単に早飲み競技の調整が不足していたのかもしれない。だが、小国は元々早飲み競技で台頭してきた選手だけに、彼の伸び悩みに一抹の寂しさは拭えなかった。

 この他の若手・ベテラン選手たちの中では、見事に苦手の早飲みを克服した射手矢侑大や、以前から早飲みが得意であると公言していた駿河豊起が目立ったところだろうか。予選では高橋信也新井和響もある程度の記録を残して気を吐いたが、トップクラスとは水を開けられてしまう格好になった。

 話題をルーキーたちに戻そう。土門健ばかりが目立ってしまった感のある早飲み系スペシャリストのルーキーたちだが、それでも特筆すべき活躍を残した選手たちは他にもたくさんいた。
 中でも、元力士で現在早飲みを芸として活動しているコメディアンのヒロは、実力は勿論、その独特の容姿や持ち前の愛嬌もあって抜群の存在感を発揮した。彼は(残念ながら)タレントとしてはあまり知名度が高くなかったために大会前は全くのノーマークで、彼が好記録を叩き出すたびに場内は驚きに包まれたが、何のことは無い、普段の実力をそのまま発揮しただけであった。彼としては早飲みで準決勝進出を果たせなかった事は無念だろうが、その悔しさをバネにして、これからも“芸”に磨きをかけてもらいたいものである。
 この他、記録としては霞んでしまったが、“土門スタイル”が公開される直前にペットボトル1.5L早飲みで11秒台を叩きだした渡辺勝也、員数合わせのタレント出場者の中で唯一気を吐いた渡辺剛士、女性として始めて早飲みで60ポイントのレイティングを受けた高橋明子、さらに予選で高橋信也らを押しのけてベスト10入りを果たした植田一紀らが有力な早飲み系ルーキーだった。
 残念な事に、(土門健を含めて)彼らは早食い系競技では全くの実力不足で、現状のレギュレーションではメジャータイトル奪取が望める地位にはいないという事である。せっかく早飲み系選手でも飛躍の機会が与えられたのだから、彼らには早飲みの世界だけに安住する事無く、早食い・大食いの世界へと足を踏み入れる勇気を持ってもらいたいものだ。


 ……と、いうわけで今回は以上です。また次回の「スプリント・早食いの部」をお楽しみに。(次回へ続く

 


 

7月28日(日) 社会経済学概論
「セレクトセール2002開催(3・番外編1)」

 ここ数日、特編カリキュラムにより中断していたシリーズを次々と再開させているわけですが、この社会経済学概論もまた、2週間ぶりのシリーズ再開となります。
 未受講の方、講義の内容を忘れてしまったという方は、過去2回のレジュメ(第1回第2回)をご覧下さい。

 さて今回は、この講義の本筋から飛び出して、“オークション(セリ市)による投資にまつわる悲喜こもごも”を述べる予定だったのですが、採り上げる予定の題材について、講義に向けて下調べをしていたところ、その題材において行われる投資が、原則的にはオークション形式で行われる投資ではない事が判明してしまいました我ながら物凄い杜撰さだったと思います。申し訳有りません。

 ……で、どうしようかと(笑)。

 いや、本来はどうしようもクソもなくてお蔵入りなのですが、その題材、調べれば調べるほど当社会学講座の講義スタイルに合っていまして、お蔵入りさせるのは非常に勿体無いんです。それに、「投資による悲喜こもごも」という部分だけは、確かに前2回分の講義と関連性があるんですね。
 ──なので、思い切ってそのまま講義を進める事にしました。講義タイトルともこれまでの内容とも全く関わりの無い話になりますが、一種の番外編だと思ってもらえれば、と思います。要は、講義内容と関係の無い雑談だけで講義が終わってしまう…という、よく教室やキャンパスありがちな展開だと解釈して下さい。

 ──と、いうわけで話を始めます。
 今回、お話するのは外国映画の買い付けについてのお話です。

 先日、駒木は映画館で『少林サッカー』を観て来ましたが、この映画はご存知の方も多いように香港映画、つまり海外から日本に輸入された外国映画です。
 普段、駒木も含めて我々は、ごく当たり前のように外国映画を映画館で観ていますが、実は外国映画が映画館で公開されるまでには、小学校の理科教科書に載っている、「雨つぶぼうや、海までの旅」のような長い長い行程を辿って来ているのです。まずはそこからお話する事にしましょう。

 さてさて。受講生の皆さんは、よく外国映画の紹介で「○○配給」とか、「配給会社:○○」…などといった言葉が書かれているのを目にしませんか? 
 ほとんどの方は「あ〜、見た事ある」とお答えになるでしょう。しかし、この配給会社が何をする会社であるかをご存知の方は、果たしてどれくらいいらっしゃるでしょうか?
 実は、我々が日本で外国映画を観る事ができるのは、全てこの配給会社のおかげなのです。

 そんな配給会社の仕事はまず、外国映画を外国の製作者から日本での上映権やビデオ・DVDの販売権などの諸権利を買い付けるところから始まります。つまり、日本国内に限定はされていますが事実上の映画の買い取りですね。
 この買い付けは、得られる権利がデカい分だけ、そのお値段も大きいです。そしてそのお金を回収するには、日本の映画館でたくさんの人に見てもらって入場料金を稼ぎ、ビデオやDVDを買ってもらわなければなりません。もしも買い付けた映画が大コケした場合は、その会社はン千万から億単位の損害を負う事になってしまいます。
 ですから、買い付ける配給会社も必死です。良い映画、集客能力が高そうな映画を見つけようとして、世界中の映画祭やフィルムマーケットを飛び回ります
 しかし、黙っていても客が入ってビデオも売れるハリウッド系の外国映画は、既に本国の大手映画製作会社と直結している子会社や系列の配給会社(メジャー系と呼ばれます)が独占していますので、日本の配給会社はそれ以外の映画の中から、ハリウッド映画に対抗できるものを探し出してこなければなりません
 というわけで、この配給会社の買い付け担当者は、巨人やダイエーにドラフトの目玉選手を逆指名で根こそぎ奪われた後から将来有望な高校生を探し出さなければならない、広島東洋カープのスカウトのような存在と言えるでしょう。
 ちなみに、『少林サッカー』を買い付けた配給会社は、クロックワークスギャガ・ヒューマックス
 前者は激安価格で買い付けた『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』で大儲けをして会社の基盤を整えた新興配給会社、後者も『セブン』『グリーンマイル』などでヒットを飛ばして成長著しい新興配給会社です。やはり歴史の浅さゆえのフットワークの良さが、『少林サッカー』のような素晴らしいバカ映画を発掘・買い付けに至らしめた要因なのでしょう。

 そして、買い付け契約が成立次第、映画のフィルム(業界用語で『プリント』と言う)は海を渡って輸入されます
 しかしこの輸入の際には、非常に煩雑な事務処理が発生するらしく、いくら日程的に余裕を取っていても、気が付けば試写会ギリギリ、なんてことも頻繁にあるそうです。何だか、テレビ東京のアニメみたいな話ですね。
 また、この際に税関のチェックを受けますので、日本の法律上、公衆の面前に晒してはいけない部分はここで修正を入れられます。その修正たるや杓子定規で厳しいものですが、それでも時々、股ぐらにぶら下がった皮付きフランクフルトが修正されずに税関を潜り抜けてしまって論議を呼ぶ事があります
 
 そうして、アレとかナニとかにボカシを入れたところで、ようやく翻訳作業&字幕入れが始まります。戸田さんの出番なわけですね。
 しかし、先ほども述べました通り、スケジュールがギリギリのカツカツであることもしばしばですので、かなり余裕の無い状況で字幕が入れられる事も、ままあるようです。
 そして、その翻訳にしても、ただ直訳すれば良いわけではありません
 字幕がスクリーンに映っている時間から計算して決められた字数制限がありますのでトルシエの通訳はこの時点でアウトですし、外国流のジョークやダジャレを日本流のそれに言い換えるという難儀な作業も待ち構えています。
 この作業がどれくらい難しいかというと、話は逆になりますが、「痔持ちの偉いさんが7人集まって会議を開いたんだよ。これ、痔セブン(G7)て言うんだよ」……という、ケーシー高峰師匠の必殺ギャグを英語やフランス語に翻訳する難しさを考えてみれば、よく理解して頂けるのではないかと思われます。
 ──と、こうした無理難題をクリアして翻訳が終了した時点で、ようやく晴れて完成品となります。しかし、まだ映画を劇場で公開するまでのハードルは残されています。そう、映倫です。

 映倫…つまり、映画の内容を倫理的な観点からチェックするこの団体は、実は業界の自主規制団体であり、法的な拘束力はありません。(外国映画の場合、法律上のチェックは既に税関でクリアしていますし)
 しかし、日本の主要な映画館は“全興連”という団体に加盟しており、なおかつこの団体は映倫通過作品しか上映してはいけないという内規があるそうなのです。なので、映画の興行収入で利益を上げようと思ったなら映倫を通過させておかなければならないのです。
 最近たまに見られる、“R15指定”(=15歳未満鑑賞禁止)“R18指定”(=18歳未満鑑賞禁止、X指定とも言う)などのレイティングをつけるのも映倫です。『バトルロワイヤル』をR15指定にして、映画の存在価値そのものを葬り去るという荒業をカマして顰蹙を買ったのは記憶に新しいところであります。
 ただこれも、厳しすぎるアメリカのレイティングに比べるとまだマシかも知れません。日本の名作アニメ『もののけ姫』は、アメリカではR指定(=日本のR15指定)ですし、余程の人畜無害映画で無い限りは、「12歳未満の子供は保護者同伴推奨」という“PG12”がついたりします。ちなみに「ピージー12」と発音します。ここで「ペログリ12」と読んでしまうと、田中康夫が12発ヤッたことになってしまうので注意が必要です。

 ……と、ここまで紆余曲折を経て、ようやく劇場公開の準備が整った事になりますが、ここでようやく配給会社の本業である“配給”の仕事になります
 “配給”とは、そうやって買い付けて輸入して翻訳して映倫に見てもらった映画を、映画館に上映してもらう契約を結ぶ事。つまり映画館に映画フィルムを配給するわけです。
 先ほども述べましたが、買い付けた映画代金を回収するためには映画館でたくさんの人に入場料金を払って観てもらわないといけませんから、資金回収のためにはより多くの映画館で上映してもらう必要があるわけです。しかし、入場料収入で食っているのは映画館の方も同じなわけで、どうせ上映するなら『スターウォーズ』などの客を呼び易い映画を上映したいのが本音。日本の配給会社が買い付けてきた、ヒットするかどうか怪しい映画を上映したがる映画館はあまり多くありません。ですから、ここから配給会社の血のにじむような営業活動が展開される事になります
 ただ、中には買い付け値段の比較的安い映画を専門に扱う小規模な配給会社もあり、そんな会社、都市部の小さな映画館のみに配給して、その買い付け値段なりの利益を追求する場合があります。これがいわゆる単館上映と言われるものです。この講義の本題である競馬で喩えるならば、トレーニングセールで200万程度で買い叩いた馬を地方競馬で走らせて細々と数十万単位の賞金を稼ぐようなものですが、稀にこういう映画が大ブレイクを果たしてしまう事もあります。ただ具体的な話は、講義も長引いてきましたので次回の講義に回す事にしましょう。

 と、こうして上映する映画館も決まったところで、次は宣伝活動です。広報の仕事も配給会社が受け持つんですね。本当に色々な仕事をやらされるものです。便所用の柄付きタワシを作ってる会社が、便器とウォシュレットもまとめて作って出荷しているようなもので、本当に頭が下がります。
 宣伝活動として真っ先に思い浮かぶのは、「タモリ倶楽部」に出演して底抜け脱線ゲームに参加……ではなくて、試写会ですね。あれはマスコミに対するパブリシティに加えて、口コミで映画の良さを広めてもらうという目的があるわけです。
 試写会の中には、力と金を注いで有名な映画評論家などをゲストに呼ぶ場合
もありますが、下手に浜村淳先生などを呼んでしまうと、映画上映前に3時間半にも及ぶ映画内容の99%までを喋られてしまって、結局は逆効果になってしまったりするので注意が必要です。
 この他、大枚を叩いてTVコマーシャルを打ったり、雑誌にPR記事を載せてもらったりするのも宣伝活動の一貫ですね。

 そうやって万事を尽くしてついに劇場公開の時がやって来ます。やっと投資したお金を回収する時なのですが、やはりというか、ここから更に厳しい現実が待っています
 もしも上映した映画が客入り好調であれば問題が無いのですが、公開間もなくから客席スカスカという映画も結構な数に上ります。メジャー系の映画でも、「かかったお金30億、入った観客30人」…などという惨事が発生したりするくらいですから、その他の映画の行く末となると推して知るべしです。
 映画館も入場料で食っているというのは先述しましたよね。だから客入りが悪い映画を抱えてしまった映画館は、できるだけ早く、他の客入りが望めそうな映画を上映したいと思うようになります。つまりは上映打ち切りです。一概には言えないそうですが、初日の客入りが悪いと、その時点で短期間での打ち切りが確定するそうで、まさにマンガ界で言うジャンプシステムそのものですね。
 もちろん、上映が短期間で打ち切りの憂き目に遭うと、配給会社は大損害です。だから配給会社はここまで必死に頑張ってきたわけなのですが、それでも必ず報われるとは限らないのがこの世界の悲しさのようです。

 劇場公開が終わると、映画館と入場料金の分配をして、今度はビデオやDVDの販売をすることになります。中にはビデオなどの販売権(二次使用権)を売りに出して手堅く資金を回収する場合もあるそうですが、どちらにしろ、ヒットした映画では大儲けできて、大コケした映画では傷口に塩を刷り込まれるケースが多いようです

 

 ……とまぁ、これが外国映画に資金が投資されてから、それを回収するまでのお話だったわけですが、いかがだったでしょうか?
 外国映画の投資というモノが、いかにバクチであるかがよくお分かり頂けたと思います。この辺り、まさにサラブレッドの購入と賞金での資金回収のエピソードと重なる部分も多く、非常に興味深いところです。

 ところで、この外国映画の配給会社の中で、歴史に残る大コケと大ヒットを立て続けにやってのけたという、非常に珍しい会社があります。
 次回もこの番外編の続きとして、外国映画投資の醍醐味を皆さんに知ってもらうために、そんな1つの映画配給会社のお話をしてみたいと思います。それでは、次回に続きます。ではでは。(次回へ続く

 


 

7月27日(土) 競馬学特別講義
「目指せ回収率アップ! 馬券学基本講座(1)」

駒木:「さて、今週から毎週土曜日の競馬学講義を復活させる事にするよ。……と、いうわけで、珠美ちゃんも今週から競馬学講義のアシスタントに復帰ということになるね。」
珠美:「ハイ。皆さん、これからもよろしくお願いします♪」
駒木:「で、今週からの講義なんだけれども、僭越ながら馬券についての基本講座をやらせてもらう事になったんだ。
 本当は僕みたいなダメ講師が引き受けちゃいけないようなヘヴィーな講義なんだけれども、『回収率75%を割っている人が、できるだけイーブン、つまり回収率100%に近づけるようにする』…というコンセプトの講義にすることを条件に引き受けさせてもらったんだ。
 これならハードルも低いし、意外と実用性がある内容にする事が出来るからね。負け額が月1万円、年12万円減るだけでどれだけ生活が楽になることか」
珠美:「そうですよねー(実感込めて)。私、バーゲンじゃない時でも、気に入った洋服とか靴を衝動買いしてみたいです(苦笑)。他にも色んなことが出来るかと思うと、もう……!(拳を握り締める)」
駒木:「(笑)。あ、そうか、この講義の企画は、もともと珠美ちゃんが僕に相談して来たところから始まったんだよね」
珠美:「そうなんです(苦笑)。私、この社会学講座の助手に就かせていただいてから、博士からアドバイスもあって、馬券の収支をつけ始めたんですね。でも、そうしたら回収率(総払戻し金額/総投資額)の悪さが嫌と言うほど分かってしまって、ビックリしちゃったんです。
 いくらかの額を負けてるっていう自覚はあったんですけど(苦笑)、でも、それなりの回収率は維持できていると思っていたんでショックを受けちゃいまして……」

駒木:「えーと、珠美ちゃんの回収率はどれくらいなんだっけ?」
珠美:「えーと、60%弱ってところでしょうか。特に最近はG1レースの勝率が悪くて(苦笑)」
駒木:「なるほどね。確かに60%切ると、ちょっと頭抱えたくなるよね。しかし、よく頑張って収支をつけていたよなぁ。普通の人なら絶対投げ出してるよ(笑)」
珠美:「本当は投げ出したかったんですけど、『投げ出したら博士に絶対叱られる』と思って頑張ってきたんです(苦笑)」
駒木:「おいおい、受講生の皆さんが誤解するような事を(苦笑)。あ、でも、投げ出してたら絶対叱ってたかな(笑)。
 まぁでも、もう大丈夫。珠美ちゃんくらい競馬を熱心に勉強してる人が今回の講義の内容を実践できれば、必ず回収率は最低でも80〜90%まで上がるから」
珠美:「本当ですか!?」
駒木:「本当だよ。しかし、力入ってるね(笑)。何か買いたい物でもあるのかな?」
珠美:「実は付属高校時代の同級生と、今年の冬に卒業旅行へ行くんです。私は飛び級進学で2年早く卒業しちゃったんですけど、旅行は一緒に行こうって前から約束してて……」
駒木:「へぇ〜。どこへ行くの?」
珠美:「年末の香港国際カップ見学ツアーです(笑)」
駒木:「(爆笑)。女子大生の卒業旅行で行くところじゃないよ、それ(笑)。でもまぁ、仁経大らしいと言えばらしいけどねぇ」
珠美:「旅行費用は今のままでも何とか捻出出来そうなんですけど、このままだと向こうに行ってからのお小遣いが…(苦笑)。なので、今からしっかり勉強して、冬までには少しは貯金しておこうって、そう思ってるんです。だから今日は助手というより受講生代表みたいなものですね(笑)」
駒木:「了解。それなら遠慮なくビシビシ行かせてもらうよ。覚悟しておいてね。
 えーと、この競馬学特別講義は今日と来週の2回シリーズで、今回は“基礎編”で、次回は“実戦編”という事にさせてもらうよ。
 今回の“基礎編”は、回収率アップを目指す人全てに実践してもらいたい基礎的な馬券戦術や心構えをレクチャーするつもり。どれも地味で楽じゃない事ばかりだけど、大切な事ばかりだから是非参考にしてもらいたいと思うんだ
 そして次回の“実戦編”では、“本命党”とか“穴党”とか言われている馬券戦術のスタンスごとに、実戦に即したいくつかのアドバイスをさせてもらおうと思っている
 ただ、誤解して欲しくないのは、今回の講座は『馬券で勝つための必勝法講座』ではなくて、『馬券の負けを減らすための経費節減講座』なので、それだけは分かっておいて欲しいんだ。
 何しろ日本の馬券っていうのは、普通に賭けてたら、100円投資して75円弱しか返って来ないシステムになっている。こんな暴利なシステムでコンスタントに勝つなんて神業に近いんだよ。悪いけど、僕の馬券の腕前ではそこまで面倒見られない。ヒントめいた物は提供できるとは思うけど、必勝法は期待しないで欲しいんだ。
 ……と、いうわけで、それじゃ「基礎編」行ってみようか」
珠美:「ハイ。よろしくお願いします♪」

 基礎編1:自分の馬券収支を必ずつけよう!

駒木:「これは珠美ちゃんはもうクリアしてるんだけどね」
珠美:「あーでも、私の知り合いでも『いつも3月くらいで嫌になって止めちゃう』って子が多いですよ(苦笑)」
駒木:「確かに辛いんだよねぇ。誰でも負けた記録を自分で書き留めたくはないってのはよく分かる。『ヒカルの碁』読んでたら、囲碁のプロテストでも勝敗記録をつけるのは必ず勝った方だったりするしね。
 でもね、これは絶対にやっておかなくちゃならない事なんだよ。人間ってのは、勝った記憶だけ鮮やかで、負けた記憶は曖昧になっちゃうように出来てるからね。
 昔、作家の浅田次郎さんがこんな風に言ってた。
 (馬券の収支をつけていない人が)勝ってるって言う時は、実際は良くてトントン。トントンって言う人は必ず負けてる。ちょっと負けてると思っている人はかなり負けてるはずなんだ』
 ……ってね(苦笑)。まぁ、人間そういうもんなんだよ」
珠美:「私も『ちょっと負けてると思ったら、かなり負けてた』ってパターンでした(苦笑)」
駒木:「ってことだね(笑)。収支をつけておけば、自分の馬券の腕前がどの程度なのかを自覚できるし、そうすれば珠美ちゃんみたいに『上手くなりたい!』と向上心を持つ事だって出来る。全てはそこから始まるんだ。だからまず皆さんも、簡単で良いから馬券収支をつけるところから始めていただきたいな、と。いくら賭けていくら戻って来たかを手帳にサラっと書くだけで十分だからね。
 あ、そう言えば、PAT(電話投票)会員だと、インターネットで電話投票した分の馬券収支が閲覧できるようになったんだよね」
珠美:「私も博士のデータを見せていただいたんですが、あれは便利ですよね。競馬場別の的中率・回収率とか、色々なデータが見られるんですけど、特に各騎手に賭けた額が分かるデータが面白かったです
駒木:「そうなんだよね。どうしてこんなに福永に賭けてるんだ、とか思っちゃったよ(苦笑)。デムーロ騎手と武豊騎手に随分お世話になっていた事が分かったりとか、池添金返せとか(笑)、色々興味深い事が知る事が出来て面白かった。
 だから収支つける自信が無い人は、PAT会員になって、全ての馬券を電話やネット投票で買うというのも手だね。競馬場行っても電話で馬券買ったりしてると、ノミ行為してるみたいでアレだけどね(笑)」
珠美:「(笑)」
駒木:「まぁとにかく、自分の回収率も把握できていなかったら、自分の現状も上達度合いも分からないんで、これは絶対にやってもらいたいところ。難しいのは百も承知。でも、馬券を当てるよりはどれだけ簡単な事かって考えたら…ね」

 基礎編2・馬券戦略の基礎は頭に入っているか再確認しよう!

駒木:「これも珠美ちゃんはクリアしてるのかな?」
珠美:「あーでも、どうでしょう? 基本的に独学ですからね、そういうのって」
駒木:「まぁ、『初心者のための競馬入門』みたいな、非オカルト系の本の内容が完璧に頭に入っていたらクリアだよ」
珠美:「あ、それなら何とか……」
駒木:「やっぱり何事も基本が大事だからね。特にギャンブルは“基礎中の基礎”って内容を押さえておくだけで随分と成績が違ってくるものなんだよ。競馬なんかの三競オートもそうだし、特にカジノ系のギャンブルは基礎戦略が大事。何しろブラックジャックなんかは、基本的なセオリーをちょっと覚えるだけで、1プレイあたりの回収期待値が100円当たり99円前後になるんだからね。
 これは逆に言うと、ギャンブルっていうのは、基礎中の基礎やセオリーも知らない人が当てずっぽうでプレイをしても、十分に勝ち負けを楽しむ事が出来たりできてしまうモノなんだってこと。もちろん、そういう人は徐々にだけど確実に負けていくから“カモ”と呼ばれるけれども(苦笑)。
 そして、ギャンブルの基礎戦術の1つにこういうのがある。『少しずつ確実にカモから搾り取る事』(笑)。だからカモになっちゃいけない。せめて搾り取られない立場にはなりましょうよ。そういう事だね
珠美:「でも、競馬の場合は、他の馬券を買っている人と勝負するわけじゃありませんよ?」
駒木:「それが違うんだ。僕たちは間接的にだけど、お互いに勝負してるんだよ
 競馬でも何でもそうだけど、『美味しいオッズ』ていうのがあるだろう? あれは予想される的中率の割にオッズが高い、つまり回収期待値が高い事を意味しているんだけど、それは他の客が割に合わない馬券を買ってくれているから起こる現象なんだよ。つまり、言い方は悪いけど、JRAがカモから回収した賭け金のオコボレを頂いてるってわけさ。カモが負けてくれたお陰でこちらが勝つ、つまりは間接的な勝負をしてるってわけだね。
 ただ、『美味しいオッズ』って言われるモノの大多数はただの勘違いなんだけどね(笑)。そもそも、美味しかろうと不味かろうと当てなきゃ意味が無いわけだしさ。まぁでも、それに気付くか気付かないだけでも、期待値的には大きいとは思うんだよね」
珠美:「なるほど。競馬って複雑ですね(苦笑)」
駒木:「まぁ、そんなヤヤコシイ事は抜きにしてもね、展開予想が出来ない、競馬用語が分からない、競馬新聞が読めない、『血統って何?』…これじゃあ回収率を上げようったって無理って事さ。
 確かに予想印とコメントだけ参考にして馬券買うだけでも馬券は当たるし、万馬券獲って儲けたりも出来るでしょ。でも長い目(数年単位)で見たら必ず回収率は75%に届かないよ。そういうもんだって、ギャンブルは」
珠美:「えーと、この『基礎編2』では、具体的には何をすればいいんでしょうか?
駒木:「話の軌道修正ありがとう(笑)。そうだね、とりあえず大きな本屋へ行って、そういう馬券の入門本を2〜3冊、立ち読みで良いから通読してみて、自分がその内容をしっかりマスターできているかどうかを確認してもらえれば良いんじゃないかな。それが出来ていれば問題ないし、出来ていなければ、その本を買って勉強すればヨシ。これはそんなに難しくないね。その本の代金ぐらい、すぐに元が取れるから大丈夫」

 基礎編3:競馬新聞はくまなく読もう!

駒木:「これは、出来ているようで出来ていない人が多いんじゃないかな。僕も昔はそうだったんだけど、予想印見て、ここ何走かの着順をザッと見て、調教欄をチラっと見て、コメント一通り読んだらハイおしまい…こんな人、結構多いんじゃないかと思う」
珠美:「えーと、私も博士とお仕事始めるまではそうでした。博士の競馬新聞の見方を参考にしている内に、私も随分と時間をかけて読むようになりましたけど……。
 なんだか、いつの間にか博士に馬券の基礎を仕込まれていたんですね、私(笑)」

駒木:「(笑)。こっちは教え込んだつもりは無いんだけどねぇ(笑)。
 ……えーと、まずこれは、本当ならスポーツ新聞や夕刊紙じゃなくて競馬新聞じゃないとダメなんだけど、とりあえずはそこまで注文はつけないよ。スポーツ新聞でも競馬新聞に近い情報量の新聞は(少ないけど)あるし、どのみち、真剣に競馬の勉強をしていったら、より詳しい情報を求めて競馬新聞が欲しくなるはずだからね。
 ちなみに僕が使っているのは『競馬ブック』の関西版。関西地区は『競馬ブック』のシェアが大きいから予想印を見るだけで人気やオッズが読めるし、データも必要最小限にして最大限のものが載っているから予想立てるにも有効だしね。足りないのは平場レースの調教コメントくらいなものだけど、それはどの新聞でも同じだからね。
 ただ、競馬新聞は各紙で編集方針が大きく違うから、一度1つの新聞に慣れてしまうと別の新聞に乗り換えるのは難しいんだよね。だから僕も『競馬ブック』を薦める事まではしない。別に回し者でも何でもないし(笑)。
珠美:「私も『競馬ブック』を使っています。でも、女友達からは『珠美、オジサン臭いよ〜』って言われちゃうんですけど(苦笑)」
駒木「(笑)。……と、話がズレたかな。とにかく何でもいいから競馬新聞の中身は全部大切だから逃さず読もうって事だよ。
 とにかく出走馬のデータを1頭ずつ見てゆくことが大事。勝ち目の濃い・薄いは関係なし。全部見るんだ。
 まずコース別戦績、距離別戦績、芝・ダート別戦績ね。最近だと地方交流戦成績ってのもあるかな。で、実はレースによっては、ここまででもう消せる馬が出てくる。結局は時間の節約になるんだよね」
珠美:「でも、気を抜くと忘れちゃうんですよね(苦笑)」
駒木:「だね。僕も調子が悪い時は焦りの余りに忘れちゃう事がしばしばあるよ。だからヘボなんだね(苦笑)。
 で、過去5走とかの戦績もジックリと。着順だけでなくて、どれくらいの人気での着順だとか、敗因や勝因は何だったのか、とかそこまで気を配れるようにね。同じ条件の同じ着順でも全然意味の違うものがあるという事に気をつけて欲しいな」
珠美:「そこを見極めるのが、さっきの基礎知識ということなんですね」
駒木:「そういう事。展開の綾で勝ち負けした事とか、基礎知識が無いと分からないでしょ?
 そういう意味で言えば、調教欄のチェックでも基礎知識は大切だよね。例えば、中3週のローテーションで何回調教タイムを出していれば十分な調教が積まれているのが分かるのか…とか、基礎知識が無いとサッパリだろうし。
 それにね。調教欄は、“危ない人気馬”をチェックする絶好のポイントなんだ。例を1つ挙げると、実績があって印もグリグリ付いてて、厩舎サイドの景気も良くて…って馬が、コッソリと2週間本格的な調教を休んでいたりする事がある。で、そんな馬は9割方消える。どれだけ実力があっても消える。
 …そういう事があるからチェックのし甲斐があるんだよね。それなのに多くのスポーツ新聞や夕刊紙の調教欄は編集がいい加減なんだよ。僕が競馬新聞を薦めるのはそういうわけ。調教は競走馬能力分析の基本。それを軽く見ているマスコミ媒体にリスペクトは抱けない」
珠美:「…あと、厩舎や騎手のコメントはどう見たら良いんですか? どの厩舎も大体強気なコメントなので迷っちゃうんですけど(苦笑)」
駒木:「メチャクチャ簡単に言うとね、『強気なコメントは無視。弱気なコメントだけを消す材料に採用』…っていうのを基本にすればいいんじゃない? 第一、規則で『勝つつもりでなければレースに出走させてはいけない』って決まってるから、『ここは8着狙いで、目標は3走後』…だなんてバカ正直なコメントはもともと出せないんだしね。あくまでコメントは参考程度って事で。
 ほら、アレだよ。意味はまるっきり逆だけど、テスト前になったら、みんな一斉に『私、全然勉強してないからぁ〜』とか言い出すのと一緒
珠美:「なるほど(笑)。ありがとうございました」
駒木:「この他にも色々あるだろうけどね、ちゃんと載ってるデータや記事には目を通す事をお薦めするよ。 
 あ、でもトラックマンやタレント予想家のコラムは別だよ。他人の予想なんて何の参考にもならないし、厳しい事を言うけど、他人に頼ってギャンブルするくらいなら止めた方が良い。自分のお金なんだから、自分で全責任を負わないとね。
 あと、予想印人気のバロメーター代わりに使うだけにしておいた方が良いよ。そもそも印が打たれるのは枠順発表前の木曜夜だし、新聞によっては『お前は穴予想な』とか言われて、自分が打ちたくもないのにで打たされた印もある。そんなのをアテにして馬券を買うなんて札束を焼却炉に放り込むようなもんさ」
珠美:「とにかく大事なのはデータということですね」
駒木:「その通り。必要なのはデータ。集め過ぎたら集め過ぎたで弊害も出てくるんだけど、それは今回の講義で喋る範疇を超えてるからやめておこう。
 僕が今言いたい事は、必要最小限のデータも把握できていないのに良い予想が立てられるはずがないという事。別に偉ぶってるわけでも何でもなくて、当たり前の事を言わせてもらっているだけなんだよ」

 基礎編4:自信の無いレースはスルーする勇気を持とう!

駒木:「さて、基礎編もいよいよ最後だね。……あれ? 珠美ちゃん、どうしたの頭抱えて?(苦笑)」
珠美:「あー、分かってます、分かってますけどー。分かってるんですけど、これが出来ないんですよ〜(涙)
駒木:「うはは、どうやら珠美ちゃんのトラウマをえぐってしまったみたいだ(苦笑)。どうやら回収率低迷の原因の1つが見つかったみたいだね」 
珠美:「博士ってよくレースをスルーされるんで、1日に3〜4レースしか馬券を購入されないじゃないですか? で、私もそれを見て、一度やってみようと思ったりもするんですけど、どうしても一度予想を始めると、それを放棄するのがもったいなくて……」
駒木:「それは『スルーしたレースで、予想が当たってたらどうしよう?』とか思っちゃうんじゃないのかな?」
珠美:「(ぐさっ!)……うぅ、ご名答ですー……」
駒木:「そんなの気にしてちゃダメだって。たまにそういう事があったとしても、長い目で見たら『買わなくて助かったー』ってケースの方が多いはずなんだから。
 僕だって調子の悪い時には、スルーしたレースの予想がことごとく当たってて、馬券を買ったレースがボロボロ外れまくったりする事もあるよ。でもそういう目先の事で一喜一憂してちゃダメ。回収率アップには長いスパンで物事を考えるようにしなくちゃ大事なのは無駄な投資を抑える事だよ。
 大丈夫。何度か我慢している内に慣れちゃうから。慣れちゃったらこっちのもんだよ。慣れ過ぎて全く冒険しなくなっちゃうのも困りものだけど、それはちょっと意識すれば微調整が利くしね。とにかく『何点買っても当たらない気がするなぁ』ってレースの馬券を買っちゃうのを止めるだけで良いんだ。それだけでも回収率は大分上向くはず。それは保証するよ
珠美:「博士はどういう基準でレースをスルーしていらっしゃるんですか?」
駒木:「ん〜、僕の場合はスルーし過ぎかもしれないんで、あまり参考にならないだろうけどねぇ。何せ、『小倉競馬は相性悪いから2ヶ月休む』って人間だから(笑)。
 まず僕が必ずスルーするのは、個人的に相性が悪い新馬戦と未勝利戦、実力が拮抗していてワケの分からない1600万条件戦とハンデ戦ね。あと、勝手の分からない関東の競馬場の条件戦もスルーするかな。
 あと、気が向いたり、多分的中しそうな気がしない限り買わないのは、勝負の綾が大きすぎる障害戦と、実力が拮抗している上に各陣営の本気度が大きく違って混乱するオープン特別とG3の重賞戦。
 だから結局、僕が原則的に馬券を買うのは、関西開催の500万以下と1000万以下の条件戦と、G2以上の重賞だけになるね。それにしたって、3点買いまで絞りきれないレースが1/3くらいあって、そんなレースもスルーしちゃう。だから、1日で馬券を買うのは3〜4レースになっちゃうんだね。随分と競馬新聞を無駄にしてるもんだ(苦笑)。
 でも、競馬新聞代以上に無駄な投資額を減らせるし、1レースあたりの予想時間を増やす事もできるし、その分だけ集中力も維持できるし。やっぱりレースをスルーする事で得られるメリットは大きいと思うなぁ」
珠美:「なるほど…。そうお聴きすると、やってみようかなあっていう気になりますね。来週から頑張ってみます!」
駒木:「うん、頑張ってね。研究室で検討してる時は、ちゃんと見張っててあげるからさ(笑)。
 ……とにかく、回収率アップのために大切な事は、『知らなければいけないことは知っておこう』、そして『無駄なお金は使わないでおこう』の2点に尽きるんだ。そのためには馬券が的中する回数にこだわっちゃダメ。馬券的中の快感が何にも勝るって気持ちは分かるけど、それでも、馬券が的中する事と投資金を効率良く回収する事は全く別物だと理解して欲しい。それは次回の『実戦編』にも繋がっていくんだけどね」
珠美:「……さて、博士、随分と時間オーバーになってしまった気がするんですけど(笑)」
駒木:「あぁ、本当だ(苦笑)。それでは今週の競馬学講座を終わります。受講生の皆さんも、珠美ちゃんもお疲れ様、だね」
珠美:「お疲れ様でした。では、また来週です♪」(次回へ続く

 


 

7月25日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(7月第4週分)

 さて、今週もゼミの時間となりました。

 実は今週、採用試験明けという事で、色々な企画やら『エンカウンター』の再レビューやらも考えていたんですが、この忙しさの前に全てご破算になってしまいました(苦笑)。
 今週はどうやら、レビュー3本というあたりで落ち着きそうです。珠美ちゃんが日誌で「レビューの本数が多い」って言ってましたが、結局普通の数になっちゃいましたね。まぁその分、来週はもっとエラいことになっちゃうんですけど……。(来週は「ジャンプ」で新連載1本「サンデー」で新連載1本、第3回1本、さらに読み切り2本のレビューが既に確定してるんです。これで他誌に佳作が掲載されたり、『HUNTER×HUNTER』や『ROOKIES』が落ちたりすると、さらにレビュー対象作が……
ひぃ

 まぁ、とりあえず今週はレビュー3本ということで、どうぞよろしく。ではまず、情報系の話題を軽く。

 先週にも少し触れましたが、「週刊少年ジャンプ」の打ち切り2作目は、やはり『NUMBER10』(作画:キユ)でした。
 当ゼミでの第3回時点での評価はBで、巷の評判も悪くありませんでしたから、本来ならば生き残ってもおかしくない作品だったんですが……。ただ、今の「ジャンプ」には『ホイッスル』が連載中な上に、同時期に連載が始まったのが『プリティフェイス』『ヒカルの碁・第二部』でしたから、かなり新連載立ち上げのタイミングが悪かったかな、という気はします。
 あと、作品のクオリティ的な事を言うと、やはりキャラ立ちとストーリーのインパクトが弱かった事でしょうね。端的に言ってしまうと、“『少林サッカー』少林抜き”みたいなマンガでしたから……。
 これでキユさんは2連載2打ち切りちょっと「ジャンプ」で週刊連載復帰は難しいかも知れませんね。ひょっとしたら、「チャンピオン」などの他社他誌への移籍もありうるかも知れません。

 ……今週の情報系ネタはこれくらいでしょうか。それでは時間も切羽詰ってますから、早速レビューへと移りましょう。

 今週のレビュー対象作は「週刊少年ジャンプ」からの2本と、「週刊少年サンデー」からの1本です。今週から前・後編で掲載の『まじっく快斗』は、来週の後編掲載を待って2回分まとめてのレビューを行います。
 レビュー中の7段階評価についてはこちらをどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年34号☆

 ◎新連載『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介

 「ストーリーキング」ネーム部門大賞受賞→3月に前・後編で本誌掲載…という経路を辿って週刊連載となりました、若手作家さん2人による大型新連載のスタートです。
 巻末コメントや「ストーリーキング」の募集カットなどを見ると、腕の良いアシスタントを編集部から紹介したり、念入りな取材を敢行したりしているようですね。これは実績の無い若手作家さんへの待遇としては破格のものであり、いかに「ジャンプ」編集部がこの作品に期待をかけているか分かろうというものです。
 恐らく、「ジャンプ」編集部はこの作品で『ヒカルの碁』に続く2匹目のドジョウを狙っているんでしょうね。比較的マイナーな競技がテーマだったり、「ストーリーキング」出身の原作者と絵の上手い作家のコンビによる作品だったり…と、状況的にはかなり似通ってる部分が多いですし。
 まぁ個人的な事を言わせて頂くと、駒木はアメフトのファンですので、これを機にアメフト人気が高まってくれれば嬉しいんですけれどもね。でも、ちょっとあざとい感じもしますよね(苦笑)。

 さて、お2人のプロフィールや読み切り版『アイシールド21』のレビューなどは、以下のリンクを辿ってご覧下さい。

 ◆村田雄介さんのプロフィールと、村田さんの読み切り『怪盗COLT』のレビュー……2月20日付レジュメ
 ◆
稲垣理一郎さんのプロフィールと、読み切り版『アイシールド21』前編のレビュー……3月6日付レジュメ
 ◆読み切り版『アイシールド21』後編のレビュー……3月13日付レジュメ

 ……長い間サボらずに仕事してると、いざという時に役立って、我ながらイイ感じです(笑)。

 では、レビューに移りましょう。

 まず絵柄に関しては何も注文つけなくてもいいと思います。むしろ、アシスタントを動員しているためか、以前よりもクオリティが上がっています
 しかし、今更気付いたんですが、村田さんも稲垣さんも(さらにはアシスタントさんも)、かなり鳥山明さんの影響を受けてますね。なんだか鳥山作品の21世紀版みたいな感じで、「いかにも『ジャンプ』だなぁ」って印象を受けました。

 そして肝心のストーリーですが……。
 実は読み切りの時点では、駒木はこの作品に対して、かなりの酷評をしていたんですよね。簡単に言うと、キャラと舞台設定の作りこみが浅過ぎる事と、作品全体のキーポイントであるアメフトの描写が甘すぎると指摘させてもらったんです。正直、これを連載に降ろすには相当荷が重そうだと思ったものでした。
 ところが、連載第1回を読んでみると、問題点のほとんどが解消されているじゃないですか! キャラクターや諸々の設定にも深みが出て来てますし、アメフト描写