「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

10/31 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(10月第5週分)
10/30 歴史学(一般教養)「学校で教えたい世界史」(18) 

10/28 
歴史学(一般教養)「学校で教えたい世界史」(17)
10/27 マーケティング概論「無料の公衆電話登場」
10/26 
競馬学特論「G1予想・天皇賞(秋)編」
10/25 特別企画・仁経大校内FMラジオ放送採録
珠美と順子のミッドナイトムーンライト」(第1回)

10/24 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(10月第4週分)
10/23 
歴史学(一般教養)「学校で教えたい世界史」(16)
10/21 
歴史学(一般教養)「学校で教えたい世界史」(15)
10/20 
伝統文化論「江戸落語界出世事情」(2・最終回)
10/19 
競馬学特論「G1予想・菊花賞編」
10/17 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(10月第3週分)
10/16 
歴史学(一般教養)「学校で教えたい世界史」(14)

 

10月31日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(10月第5週分)

 今週は完全な“新連載の谷間”というわけで、代替企画を考える羽目になってしまいました。
 先週の時点では、「週刊少年サンデー」の新人増刊号から1〜2作品拾い上げてみようか…なんて考えていたんですが、肝心の雑誌現物を買いそびれてしまいました(苦笑)。
 店頭に大量の在庫が残っていた事に油断して放っておいたら、今週に入って一斉に返本されてしまったみたいです。新古書店で見つけ次第、何とかしたいと思っていますが……。

 ──というわけで、仕方ないので今回は別の企画にさせてもらいました。
 先週金曜日に発売された、「週刊少年ジャンプ」特別編集増刊・「読むジャンプ」から、第11回ジャンプ小説大賞の入選作・『そして龍太はニャーと鳴く』(作:松原真琴)のレビューをお送りしたいと思います。
 「マンガ時評」で小説のレビューをする事自体が“反則”ですし、小説家を志望している駒木が小説をレビューするなど、おこがましいにも程があるとは思うんですが、どうか今回だけはご勘弁願います。レビュー対象作も、描かれた当時はアマチュアさんの作品だったわけですから、ギリギリセーフかな…という気がしますしね。

 ──というわけで、まずは情報系の話題を1つだけ。

 このゼミでも以前から度々採り上げて来ました島袋光年氏の買春事件ですが、ついに横浜地裁で判決公判があり、最終的な決着を見ることとなりました。
 注目の量刑は、懲役2年執行猶予4年。予想通りの執行猶予付き判決となりました。今後は島袋氏の作家活動に注目が集まる事になるのでしょうが、少年マンガ作家としてはほとんど前例の無いケースだけに、集英社など出版業界がどのような対応を見せるのかがカギとなりそうです。

 ……それでは、レギュラー企画のレビューから行います。今週は「週刊少年ジャンプ」から代原読み切りのレビュー1本のみですが、“チェックポイント”と合わせてお楽しみ下さい。
 レビュー中の7段階評価の表はこちらをどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年48号☆

 ◎読み切り『抱きしめて! ベースボール・ラブ』作画:セジマ金属

 今週は『ピューと吹く! ジャガー』が休載のため、代原のギャグ短編読み切りが掲載されました。
 作者のセジマ金属さんは、若手ギャグ作家さん2人の合作ペンネーム。昨年から今回の同題名のギャグ短編を、本誌(代原)や「赤マルジャンプ」誌上でたびたび発表しています。ちなみに今回で、本誌では3回目の登場となります。

 さてそれでは作品の内容について述べてゆきましょう。

 まず絵柄は、心なしか以前より若干レヴェルが上がったような気がします。ギャグマンガですし、これならもう問題ないでしょう。ただ、中途半端な頭身のデフォルメが若干の垢抜けなさを醸し出しているのは、やや問題でしょうか。

 そして肝心のギャグの内容ですが、こちらは合作デビュー以来の問題点が全く是正されておらず、非常に残念なデキになってしまっています。何しろ、ギャグの基本中の基本である“起承転結”が出来ていないのですから、良い作品になるわけが無いのです。
 今回は都合5本のショートギャグで構成されていましたが、そのほとんどにおいて、本来なら“転”、つまり最大のネタフリが来る部分でオチが来てしまっているのです。つまり“起承結”です。しかも、オチてしまった後にもう一度オチ──しかも先のモノより弱い──が来てしまうので、肝心の所で笑えません
 ショートギャグと言うのは、話を“ハードランディング”させてナンボなのですが、この作品は完全な“ソフトランディング”。言ってみれば“起承結終”といったところでしょうか。そのためにこの作品は、ネタそのものの馬鹿馬鹿しさを“笑われて”はもらえますが、“笑わせる”ことは出来ないのです。これでは『──ジャガー』に取って代わることなど不可能です。

 評価はC寄りB−。とにかくギャグ作りの基本に立ち返って猛特訓しない事にはどうしようもありません。チャンスのある内に少しでも巻き返す事が出来るよう、祈っておきたいと思います。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『遊☆戯☆王』作画:高橋和希《開講前に連載開始のため、評価未了》

 一番最後のページ、確かに「この男は…一体 !!」なんですが、マンガ的表現のレヴェルを遥かに超越した謎の男に対して、遊戯がクソ真顔でモノローグをブチかましているのが非常に笑えます。
 元からヤンキー口調の癖に仲間を呼ぶ時は“クン”付けだったりしてお茶目さ全開の遊戯君ですが、もうちょっと肩の力を抜いて、ツッコミ入れるなり、とりあえず驚いてみるなり、出来る事からコツコツやっていくべきだと思いますが。

 …などと、「変ドラ」さんの「白ドラ」みたいな事を言ってみました(笑)。

 ◎『ボボボーボ・ボーボボ』作画:澤井啓夫《開講前に連載開始のため、評価未了》

 小学生相手のギャグマンガなのに、『キン肉マン』が元ネタの大ギャグをやってしまうあたり、いい根性してるなぁと関心。しかし、トコロテンに頭突きされても効くんですかね、実際のところ(笑)。

☆「週刊少年サンデー」2002年48号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 ◎『金色のガッシュ !!』作画:雷句誠《開講前に連載開始のため、評価未了》

 先週から一転して、今回からマジモード突入ですね。これがまた、ビリビリ来る位の緊張感が伝わって来て良い感じです。絵柄だけ見ると、決して器用な感じは窺えないんですが、雷句さんって意外と芸達者なんですよね。

 ◎『うえきの法則』作画:福地翼《開講前に連載開始のため、評価未了》 

 こちらは、まるで「ジャンプ」のマンガを見ているかのような展開に……。読んでて「ハンター試験第3次ですか?」とか言いたくなりました。
 しかしこの作品も大概、かつての名作の影響受けまくりですよね。『BLACK CAT』ほど中身がグダグダじゃない分だけ救いがありますが、回を追うごとにオリジナリティが減退していくのは読んでいて辛いです。

 ◎『一番湯のカナタ』作画:椎名高志《第3回掲載時の評価:A−

 椎名さんが完全に吹っ切れた感じですね。話のベースはテコ入れ以前と同じなんですが、『GS美神極楽大作戦 !!』以来の“煩悩路線”が見事に決まっていますよね。主役のリョウが硬派な分だけ、独自色も出てますし。
 特に秀逸なのは最終ページ最終コマ。やっぱりセイリュートのセリフがズバっと決まってるんですよねぇ。


《その他、今週の注目作》

 ◎『そして龍太はニャーと鳴く』(「週刊少年ジャンプ」特別増刊「読むジャンプ」掲載《小説》/作:松原真琴

 先に紹介しました通り、「週刊少年ジャンプ」系の小説新人賞・「ジャンプ小説大賞」の入選作『そして龍太はニャーと鳴く』のレビューをお送りします。

 まず、この小説のポイントは、何と言っても題名です。『そして龍太はニャーと鳴く』。“狙って”はいるものの、いかにも「狙ってます」的なあざとさが感じられず、語呂も良い上に、これから読もうとする人への好奇心をそそらせるという、本当に素晴らしいタイトルと言えるでしょう。
 小説の1、2次審査(下読み)にあたる人は大抵、題名と梗概(あらすじ)、そして冒頭の数枚で大体の評価をしてしまうそうですが、そういう意味で言えば、これほど下読みを潜り抜けるのに適した作品は無いとも言えます。また、最終審査でもこのセンスは高い評価をされたはずで、ひょっとするとこの小説が入選に届いたのは半分以上は題名のお陰なのではないかと思わせるほどです。

 余談ですが、題名だけで審査員の度肝を抜いてしまった小説の代表例としては、第1回ファンタジーノベル大賞受賞作で、直木賞候補にもなった、酒見賢一さん『後宮小説』が挙げられます。
 どの審査員の先生方も一様に、その題名と冒頭の1行、いきなり「腹上死であった、と記載されている」と描かれているのを見た時点で「これは傑作だ」と確信させた…との伝説が残っている名作です。実際、全部読んでも傑作です。

 毎月毎月、マンガ新人賞のタイトルをチェックしてはレジュメに転記していて思うのですが、やはり入選作には入選作を獲るだけのタイトルが命名されていて、最終候補止まりの作品にはそれなりのタイトルしか付いていないんですよね。全体的なセンスが題名に集約されると言うか何と言うか……。
 だとすると、初めに題名ありき、ではなくて全体的な才能あってこそのこの題名なのかも知れません。
 

 ……さて、話を戻して小説の内容について述べさせてもらいましょう。

 文体は一人称、しかも『我輩は猫である』以来、日本文学の王道パターンと言うべき動物を擬人化させた一人称です。宮部みゆきさんの出世作・『パーフェクトブルー』も、犬視点一人称のミステリ小説という事で有名です。
 この動物視点は、ごく普通に話を進めるだけで擬人法特有のユーモラスな雰囲気が醸し出されるので、ある意味得と言えば得なんです。得なんですが、その代わり先人、しかも日本の文学界を代表する大物作家さんによって使い古された技法でもありますので、上手く使いこなせなければ二番煎じどころか出涸らしのようなカスカスの小説になってしまうのです。正に諸刃の剣ですね。
 しかし、この小説は見事にその難関もクリアしています。ともすれば、猫世界の描写に力を入れ過ぎて本筋のストーリーの陰がやや薄くなるくらいの念入りな描写で読者を惹き込んでいます。
 そして、この描写を支えているのがレヴェルの高い文章力です。会話文にも地の文も嫌味が無くて、なおかつ滑らかで読みやすいんですよね。文字通りのライトノベル──心地良い軽さを持った小説──になっています。

 時々ライトノベル作家で“軽さ”と“軽薄さ”を取り違えてる方っていませんか? 文章力が足りないのをノリだけで誤魔化そうとしているのが一発で分かってしまう人
 具体的に言うと、会話が冗長なボケとツッコミの連続で、かと思えばやたらと説明的な記述が多かったりする小説を描く人と言えばお分かりになるでしょうか(駒木もそんな偉そうな事言えないんですが)。
 ──ですが、この『そして龍太は──』は、そんな要素が微塵も感じられないのです。褒めすぎるのもアレですが、一般向けの一流エンターテインメント系作家さんが“敢えて”ライトノベルを描いているような、そんな感覚すら窺えるのです。

 ただ、問題点が皆無かと言うと、やはりそういうわけでもありません。まぁ、新人賞の作品ですから当たり前と言えば当たり前なんですが。
 まず1つは、先にも述べましたが、猫世界の描写に力が入り過ぎて、肝心の本筋が弱くなってしまった事。ただ、これも審査員の先生方にしてみれば「背伸びしてない辺りが新人らしくてヨロシイ」という結論になったようなんですが。
 そしてもう1点は、全体的にやや説明不足の嫌いがある事。駒木の個人的なジャッジでは“ギリギリセーフ”なのですが、読む人によっては不親切な小説だと思われてしまうかも分かりません。“危うい”んですよね。全編通して、何となく。

 …とまぁ、問題点も有るにはあるのですが、それでも凡百のライトノベル作家の方々と比べると、その才能の差は歴然としていると思います。次回作はこの作品の続編だそうですが、別の機会にでも本格的なエンターテインメント長編小説を読ませて頂きたい、そんな願いを抱かずにはいられません。

 評価なんて、さすがにおこがまし過ぎて付けられません。ただ、自分より年下の人にこんな作品を描かれて、ジェラシーすら感じてしまう位良い作品だと思った…という事だけ言い添えておきますね。

 
 さて、今回のゼミは以上です。次回も“新連載の谷間”なんですが、他の雑誌から注目作を引っ張ってくるなりして、質・量をキープしたいと考えています。では、また。

 


 

10月30日(水) 歴史学(一般教養)
「学校で教えたい世界史」(18)
第2章:オリエント(12)〜
4王国の分立

※過去の講義のレジュメはこちら
第1回第2回第3回第4回(以上第1章)/第5回第6回(以上インターミッション1)/第7回第8回第9回第10回第11回第12回第13回第14回第15回第16回第17回


 前回は、メソポタミア辺境の小王国から、短期間ながらオリエントの覇者にまで昇り詰めたアッシリア帝国の歴史を概観してみました。
 そして今回は、このアッシリア帝国を倒し、更にはその後のオリエント世界に割拠した4つの王国について述べることにしましょう。
 その4つの王国とは、まず1つ目がメソポタミアの東、イラン地方からやって来た騎馬民族がまとまって出来上がったメディア王国。次に2つ目が、ハンムラビ王の時代以来、メソポタミア地方の中心地として栄えたバビロニアを首都に持つカルデア王国。3つ目が小アジアの西端からアナトリア半島全体に勢力を広げていったリディア王国。そして最後の4つ目が、衰えつつも依然として存在感を発揮していた古代エジプト王国であります。
 以上、これら4つの王国がアッシリア以後のオリエント世界を支配する事になったのでありました。

 それではこれより、これら4つの国それぞれの歴史について、簡単ながらお話してゆくことにしましょう。

 まずはメディア王国から。この国では文書を遺す習慣が無く、未だに余り詳しい事が分かっていないのでありますが、可能な範囲でお話します。

 この国は先に述べた通り、元々はメソポタミアとは縁の薄いイラン系の騎馬民族たちが統合して出来たものですが、このメディアの民族そのものは紀元前10世紀頃から存在したと言われています。
 但し、この民族は紀元前7世紀に至るまで他民族の支配下にあり、アッシリアが強大化した後は、その属領になっていたりもしました。
 しかし、アッシリアのオリエント支配にほころびが見え始めた紀元前7世紀後半には事実上の独立を果たし、周囲の民族を臣従させるなどして勢力を伸ばしてゆきました。ちなみに、この時メディアの支配下に置かれていた民族の中に、後にこの国を滅ぼして最終的なオリエントの覇者になるペルシア民族がいました。
 そして前回にもお話した通り、メディア王国は同時期に建国したカルデア王国と同盟を結び、アッシリア帝国を滅ぼして更にその勢いを増してゆきます。最盛期(紀元前6世紀前半)には、その領土は現在のアルメニアからイランの大部分、そしてアフガニスタンの西端に至る広大なものとなりました。今回採り上げた4つの王国の中では飛びぬけて広い領土を有していた事になります。

 しかし、最後にはこの広い領土が逆に仇となりました。要は目立ち過ぎたわけです。

 紀元前550年、この国の強さに恐れを抱くようになった同盟国カルデアが、当時急速に力をつけつつあったペルシアに働きかけ、メディアを挟み撃ちにします
 その結果、戦いはペルシアの圧勝に終わり、メディア王国は呆気なく滅亡。新たに興ったペルシア帝国に吸収されることとなったのでありました。

 
 次にカルデア王国であります。本拠地がバビロニアであった事から、ハンムラビ王のバビロニア王朝“古バビロニア王国”とし、この国“新バビロニア王国”とする呼び方もあります。
 この国は、古バビロニア王国時代からの住人・アムル人と、シリアの歴史で紹介したアラム人の2つの民族によって構成されていました。この講義の第14回で述べた、カッシート族を経てエラム人の手に渡ったメソポタミアを、異民族から奪回したのもこの人々です。

 このバビロニア一帯、紀元前8世紀終盤〜7世紀初頭のアッシリア全盛期には、当時のオリエントの他地域と同じように、その大帝国の支配下に置かれ、厳しい占領政策を敷かれていました。しかし、先程から述べていますように、紀元前7世紀アッシリアの混乱に乗じて独立を回復すると、間もなくしてメディアと同盟を結び、これを滅ぼします。この時、カルデア王国はオリエントを代表する国となったのでありました。

 カルデア王国の領土は、基本的にはメソポタミア中・南部の限られた範囲に留まっていましたが、この国の最盛期であるネブカドネザル2世王(在位:紀元前605〜562年)の時代には、エジプトを破り、ユダ王国を滅亡させるなどして、その勢力圏を一気に押し広げました第16回で述べた“バビロン捕囚”が実施されたのもこの時です。

 また、ネブカドネザル2世の時代には、様々な建築物が築かれた事でも知られています。その中でも、“世界七不思議”の1つと言われた“バビロンの空中庭園”が非常に有名であります。
 この空中庭園、今風に言えば、ビルの屋上に出来た庭付き植物園でありました。ホームシックに悩んでいた、同盟国・メディア王国から嫁いで来た王女のために、王がメディアから植物を取り寄せて作らせたと言われています。血なまぐさい戦争や強制移住をやった王にも、一片のロマンチシズムはあったと見えます。

 しかし、このカルデア王国もネブカドネザル2世の死後は急速に衰退します。経済力を背景にした豪商たちが政治にも口出しするようになって、国が乱れたとも言われています。
 その最期の時は、紀元前539年に訪れました。カルデア王国は、かつての同盟国・ペルシア帝国によって占領され、その11年前にカルデアの陰謀の前に滅びたメディア王国(これも元々は同盟国ですが)と同じ運命を辿る事になったのでありました。


 そして3番目に採り上げるのは、アナトリア半島、つまり現在のトルコ共和国がある地域を支配したリディア王国であります。
 リディアの人々は、かつてアナトリア半島に栄えた、あのヒッタイト族の末裔と言われており、半島の西端でひっそりと暮らしていました。が、紀元前7世紀、アッシリアの衰退や異民族(アジア系騎馬民族のスキタイ人など)の侵入などによりアナトリア半島が大混乱に陥ると、これに乗じて領土を一気に広げ、大規模な王国を建設するに至ったのでありました。

 このリディア王国は、その地理的条件からギリシアとの交流・交易があり商業が盛んで、更には貴金属が採取出来たこともあり、世界で初めて鋳造貨幣を発行した国として知られています。これらの貨幣、始めは金と銀の合金で、後には100%金貨の貨幣も発行しています。

 ただ、リディア王国は他の国のように国力や歴史的なバックボーンに乏しく、対外的には終始受身の姿勢を強いられました。建国間もなくから東隣のメディア王国からの侵攻を受け、長年の防衛戦争を強いられました。
 この戦争の時は、戦闘中に、当時は不吉の兆しと言われていた日食が起こり、休戦→和解を果たし命拾いをしましたが、そのメディアがペルシアに滅ぼされると、万事休す。このリディアも紀元前546年にペルシアに滅ぼされる事となったのでありました。


 最後にエジプトについても少し述べておきましょう。
 エジプトについては、第10回から第12回までの3回でお話しましたので繰り返して詳述しませんが、紀元前8〜6世紀は、古代エジプト王国の中でも“末期王朝”と呼ばれる衰退期にあたりました。
 そのため、アッシリアが侵攻してきた時もその勢いに抗えず、一時期は下エジプトが征服される憂き目に遭ってしまいました。しかし、さすがのアッシリアも本拠から遠くはなれたエジプトの支配は楽でなかったらしく、その支配は永続せずに間もなく独立を回復しています。アッシリアが滅亡する寸前には同盟を結んでさえいました。
 アッシリアの滅亡後も、長年、独立だけは維持しつつオリエント4強の一角を占め続けたのですが、この国もまた、ペルシア帝国の餌食となって、紀元前525年には属州化されてしまうのです。


 ……と、ひどく駆け足でありましたが、アッシリア滅亡後に栄えた4つの王国の歴史についてお話をしました。
 いよいよ次回は古代オリエント史のフィナーレです。この4つの王国を猛烈な勢いで飲み込んでいった新興国・アケメネス朝ペルシア王国についてお話をします。それでは、また次回に。(次回へ続く) 

 


 

10月28日(月) 歴史学(一般教養)
「学校で教えたい世界史」(17)
第2章:オリエント(11)〜
アッシリア帝国

※過去の講義のレジュメはこちら
第1回第2回第3回第4回(以上第1章)/第5回第6回(以上インターミッション1)/第7回第8回第9回第10回第11回第12回第13回第14回第15回第16回


 前回までの数回は、バビロニア帝国滅亡後(紀元前16世紀以降)のメソポタミア文明地域の様子を地域ごとに分けて述べてゆきました。
 そして今回は、それらの地域史の中でたびたび登場した、アッシリアという国の歴史についてお話したいと思います。紀元前7世紀に、短期間ながらオリエントの完全統一を達成したという大帝国であります。

 このアッシリアは、メソポタミアの北の辺境・ティグリス川上流域にある都市・アッシュルを中心とする国で、その歴史は殊のほか深く、紀元前21世紀に建国されています。
 しかし紀元前21世紀と言えば、メソポタミアではウル第3王朝が全盛の時代。そのため、建国当時のアッシリアは、南にある強大な領域国家の様子を恐々窺いつつ、半ば属国のような立場で生き続ける弱小国でありました。
 ただ、アッシュルという都市は、メソポタミア、シリア・パレスティナ、アナトリア半島の主要都市との交易をするのに有利な地理条件にあったため、建国当初は商業で栄えたそうであります。特にアッシリア産の錫はアナトリア半島との交易で莫大な利益を生み、ヒッタイトがアナトリアで力を増してアッシリア人を追放するまでの数百年間、大量の銀を本国にもたらしたと記録に残っています。

 このようなアッシリアの“下積み”時代は約1000年にも及ぶのですが、その間にも時には優れた君主が現れて、存在感をアピールしています。
 その中でも特に興味深いエピソードが残されているのは、かのハンムラビ王の時代にバビロニア王国と丁丁発止の駆け引きを繰り広げたと言う傑物・シャムシ=アダド1世という王についてであります。
 ただ、この王様を有名にしているのは、政治や外交の表舞台での活躍よりも、本来なら目の届かないところでで発揮されていた、自分の息子に対する過保護と“教育パパ”振りでありました。

 中でも特に王の手を煩わせたのが、2人いた息子の内の次男坊、つまりは第2王子で、王からこの“馬鹿息子”に対する手紙が山のように発掘されています。
 例えば、いざ他国の王家から王女を后に迎えようとした時などは特に大変でありました。やれ「結納金は幾らが良い」という手紙を送ったり、かと思えば、すぐにその額の倍以上の支度金を王のポケットマネーから捻出するわ、挙句の果てには関係者への祝儀まで送り届けさせる始末
 で、その第2王子が結婚した後も全く成長の跡が窺えないと悟るや、次から次へと叱咤激励の手紙を送ってハッパをかけます。

 お前の兄は戦場に出て敵将を討ち取ったのだ。しかしお前は、日がな女たちに囲まれて収まりかえっているではないか。お前も勇気を出して戦場に出て“男”となれ。兄のように名声を得てみよ。

 しかし、兄と比較されてスネてしまったのか、この王子の行状は一向に良くならなりません。そこで王は更に手紙を書いてよこしたのでありました。

 お前はいつまで私が手を引いて歩かせねばならんのだ。お前はまだ子供か。一人前の男ではなかったのか。ヒゲも生えていない若造とでも言うのか。いつまでお前は仕事を怠けるつもりか。お前の兄が大群を率いて戦場に馳せ参じる様を見ているはずだ。お前はせめて宮殿や家事の管理ぐらいやってみろ。

 ……まるでテキストサイト管理人に送りつけられた中傷メールのような罵詈雑言の羅列であります。が、南方では着々とハンムラビ王による征服活動が進んでいるという当時の周辺事情を考えると、このシャムシ=アダド1世王の焦りも痛い程よく分かるものであります。
 そして結局、シャムシ=アダド1世が没した後のアッシリアは、瞬く間にハンムラビ王に攻められ、敢え無く属国化されてしまったのでありました。
 この後もアッシリアの苦難の歴史は続き、バビロニアが滅んだ後も、すぐさま強大化したミタンニ王国によって、やはり属国となる事を強いられてしまうのです。

 その流れがやや変わり始めるのは、紀元前14世紀半ばの事アッシュール=ウバリト1世という王は、この国をミタンニの属国から独立させ、国力増強と軍国化を開始します。ここから、後のアッシリアの強大な軍事力が培われる事になるのであります。
 ただし、かと言って、そう簡単に状況が一変したわけではありません。それからの約500年間は、戦勝によって領土を増やしたかと思えば、あっという間にその領土を失って後退する…という、一進一退の時代が続くのです。売れない演歌歌手の半生記を見ているかのような停滞振りですが、ここままアッシリアの歴史が終わらないのは、冒頭で述べた通りであります。

 紀元前9世紀、いよいよオリエント世界にアッシリア帝国の時代が到来したのでありました──

 後にオリエントの覇者となるアッシリアの、そのベースとなる部分を築き上げた王は、アッシュルナシルパル2世(在位:紀元前883〜859)“アッシリアの狼”という異名を与えられた、その石像に遺された鷲鼻で冷徹な表情が今なお見る者の恐怖をそそる専制君主であります。
 アッシュルナシルパル2世が行ったのは、強化・整備された軍隊による征服活動と、その占領地に対する徹底的な恐怖政治でありました。
 彼の手によって占領された国々の被征服民たちは、住み慣れた土地から引き離されて、この時期に建設されたばかりの新首都・カルフー(現在のイラクにあるニムルード)に強制移住させられました。故国への愛着を奪い、反抗のモチベーションを奪おうとする厳しい政策であります。これは、前回イスラエル王国の歴史を扱った時に採り上げた通りであります。
 更に厳しかったのが、反乱を起こした占領地やその首謀者達に対する処罰でした。女・子供に至るまで皆殺しにするのは当たり前。処刑された遺体の皮を剥ぎ、それを城壁に貼り付けていったり、人柱や首柱が築かれたり、生きたまま業火の中へ放り込む…といったような残虐な処刑が当たり前のように行われたようであります。幸運にして生かされた人々も、奴隷の身分に落とされたり、目や鼻や耳をくり抜かれたり削ぎ落とされたりしたのでありました。
 そして、この世界史上類を見ない激烈な占領政策は、これ以後、アッシリアに代々引き継がれていく伝統的な政策になってゆきました。

 その後は、ごく一時期内政が混乱した事もありましたが、アッシリアは紀元前8世紀以降、飛躍的な発展を遂げてゆく事になります。厳しい占領政策にも関わらず、各地での反乱は絶えませんでしたが、そのことごとくを力で捻じ伏せて、被征服民に付け入る隙を与えませんでした。
 そんなアッシリアがいよいよ絶頂を極めるのが、ティグラト=ピレセル3世(在位:紀元前744〜727)の治世で、この時代には、これまでの占領政策以外にも、大規模な行政改革軍制改革が実施されています。
 アッシリアは元々から複数宰相制官僚による行政組織綿密に組織化された軍隊を持つ、完成度の高い中央集権国家だったのですが、この時期になると、広がり過ぎた領土を効率良く治めるためにも諸々の改革が必要だったようであります。特に軍制改革では初めて異民族出身の兵士が採用され、この国のグローバル化が進んでいた事を窺わせてくれます。(もっとも、この軍隊の多国籍化は軍のまとまりを欠く原因となり、後のアッシリア衰退の一因となるのでありますが……)
 そして、この偉大な先王の“遺産”を引き継いだ子や孫たちは、バビロニアやイスラエル、更にはエジプトといった古代オリエント史を代表する強国らを次々と飲み込んでゆき、エサルハッドン王(在位:紀元前680〜669)の時代には、遂にオリエント世界の大半を統一する事に成功します(紀元前671年)。なお、その息子であり後継者であるアッシュール=バニパル王は、膨大な粘土板文書を納めた大図書館を建設した事で有名です。

 こうして栄華を極めたアッシリア大帝国でありましたが、その絶頂を深く味わう暇も無く、間もなくして衰退への道を辿ってゆくことになります
 衰退の理由は様々ありますが、まずは厳格な占領政策にも関わらず、国内各地で反乱が頻発した事が挙げられます。反逆者にどれだけ残虐な罰を与えようと、それは被制服民のアッシリアに対する敵愾心を煽るだけの意味しか持たなかったのであります。
 そしてそこへ新興勢力がメソポタミアに現れた事がアッシリアを更に窮地に追い込みました。折悪しく、王室の後継者争いが揉めていて国内が不一致状態であったのも大きく影響したようです。また、先ほど述べた軍制改革のもたらした統率力の減退もそれに拍車をかけました。
 日本の平家一門豊臣家の時もそうでしたが、どれだけ天下を極めようと、一旦ベクトルが衰退の方向へ向かい出すと、その転落のスピードは極めて速いものであります。アッシリアの場合は友好国や忠実な属国を確保する作業を完全に怠っていましたので、特にその傾向が強くなったようであります。
 そんなアッシリアの滅亡は紀元前609年。その3年前に首都ニネヴェ(カルフーから2度遷都されている)が陥落しており、事実上はそこでアッシリアは国家としての機能が破壊されています。アッシリアを倒したのは、バビロニアに建設されたカルデア王国と、イランから西へと進撃してきた新興国・メディア王国の連合軍であります。
 アッシリア帝国は、天下統一からわずか60年での滅亡となりました。1500年の歴史を持つ国としては余りにも呆気ない最期と言えるでしょう。

 アッシリアの滅亡後のオリエントは、先ほど挙げたカルデアとメディアを含めた4つの大国が割拠する“四国時代”に突入します。その時代のあらましについては、また次回に譲る事としましょう。次回へ続く

 


 

10月27日(日) マーケティング概論
「無料の公衆電話登場」

 講義開始早々いきなりですが、まずはこちらのニュースをご覧下さい。

 10円玉もテレホンカードもいらないタダで使える公衆電話が、24日、札幌にお目見えしました。ただし、15秒間の時間が必要です。
 無料の公衆電話が設置されたのはJR札幌駅の「パセオ」です。東京にあるインターネット関連会社が、全国に先駆けて札幌でサービスを本格的に始めました。
 電話は液晶画面のタッチパネル方式になっていて、相手先の番号をダイヤルすると、まずこのように音声と画像で15秒間の広告が流れ、その後、相手先を呼び出す仕組みです。相手先が固定電話の場合は全国どこでも最長で9分間携帯電話の場合は1分間、無料で話せます。24日は札幌駅に隣接する西側通路に2台と、地下に1台設置されました。(北海道テレビニュースより)

 15秒のCM映像を観る代わりに、数十円分の電話代を、そのスポンサーに負担してもらう事が出来るという、何とも我々ユーザーに有り難い機能を搭載した公衆電話が登場した…というニュースでした。
 どうやらこの電話機、制限時間を過ぎると自動的に回線が切れる短時間通話専用電話機のようですが、それでも自宅や待ち合わせ相手への簡単な連絡などには非常に有効に活用できそうです。
 「携帯電話が1分」とか聞くと、随分と短時間のように思えますが、これも使い方次第です。何しろ日本最強のフードファイター・白田信幸選手なら、1分で寿司60カン(1.5kg)は楽勝で完食出来るのです。1分あれば何だって出来ます。いずれ、この電話機から60万の英語教材を売りつける猛者も現れる事でしょう。
 不可能なのは「おもいっきりテレビ」の人生相談くらいなもの。魔の「奥さん1人? じゃあCM行くから」攻撃は余りにも強大であります。

 ……まぁ、そんな冗談はさておきまして、この電話機のように、我々はCM・広告と接する事によって様々な恩恵を得て生活をしています
 普段我々はそんな事を意識しませんが、それは広告が余りにも日常生活に浸透しすぎているため。呼吸したり屁をしたりするのと同じ感覚で広告を見聞きしているので、気が付かないだけなのです。

 まず、広告から得ている恩恵の最たるものと言えば、民放のテレビCMが挙げられるでしょう。スポンサーがCMを流す事と引き換えに番組制作費を提供しているからこそ、我々はタダでテレビ番組を楽しめるわけです。
 例えば、サッカーのW杯中継。CS放送なら幾らかの受信料を支払わなければならないところを、試合直前とハーフタイムに、アメリカ空軍の絨毯爆撃の如く流れるCMのお陰で、我々はタダで観戦する事が出来たわけです。
 それを考えれば、かつてのオウム真理教のマントラよろしく我々を洗脳せんばかりに流された

♪ヤンヤワヤワエッオッオイ〜アッエ〜エオ〜

……という、何故キリンビールのCMでコレなのか分からない、意味不明のハミングも許せようというものです。

 テレビCMに並んで我々が恩恵を受けていると言えば、雑誌広告が挙げられるでしょう。特に紙質の良いグラビア雑誌やゲーム雑誌などの場合は、広告が無ければ雑誌の定価が数倍に跳ね上がるとさえ言われています。これは、全編広告のような車情報誌やアルバイト雑誌などでは特に顕著な事でしょう。
 では、雑誌広告がどの程度の金額を出版社に提供しているのでしょうか? ここで少し具体例を紹介しましょう。これは「週刊ファミ通」に連載されていた『おとなのしくみ』作画:鈴木みそ)で採り上げられていたもので、年代が97年とやや古いのですが、それを除けば極めて正確な数字です。
 「週刊ファミ通」の場合、面積比で最も高額なスペースが裏表紙1ページ200万円で、その次が表紙をめくってすぐの見開き2ページ250万円です。その他は、最初の見開きをめくった所にあるもう1つの見開き2ページ225万円で、目次の隣の1ページ115万円他のカラーページは一律1ページ100万円ですが、時折見られる折込型の特殊なものは“時価”とのこと。
 ……まぁ、全て合わせると数千万は下らないでしょうね。これだけの金が、エンターブレインの利益となり、または間接的に購買者の財布へ還元されていると言うわけです。勿論、これは「ファミ通」のようなメジャー雑誌だからこその数字であって、マイナー誌の場合はもっと安いはずです。確か、「近代麻雀」誌のモノクロ広告なら1/4ページで数万円という安さだったと記憶しています。今は潰れた雀荘のマスターから直接聴きました。

 この他、CMによる消費者への還元で少し変わったものと言えば、一時期アメリカで流行した“無料パソコンというものがありました。タダでソコソコの性能のパソコンを配る替わりにハードディスクに腐るほどCMがインストールされていると言う、結婚条件で言えば「玉の輿だけど姑と同居」みたいな、痛し痒しな製品だったと記憶しています。
 また、かつてファミコン・ディスクシステムの書き換えで、広告付のゲームと言うものもありました。確か、広告付のゲームは書換料が100円引きだったはずです。そして、その広告は何故か永谷園。お茶漬けとディスクシステムとの間に如何なる関係があったのか、もし解明出来ればノーベル賞間違いナシの深遠な謎がそこに秘められていたのでした。
 …まぁ、社長の息子が「ゼルダの伝説」が好きだったのか、社長本人が「燃えろ! 野球拳」が好きだったのかのどちらかだと思いますが。

 ……とまぁ、色々な場面において、我々は広告による恩恵を得て生活をしています。
 しかしそれならば、もっともっと様々な商品に広告を掲載すれば、我々はもっともっと経済的な生活が出来るのではないでしょうか?

 例えば、現時点で既に値下がりしようの無いところまでデフレが進んでいるファストフード。これにも牛丼のドンブリに広告を掲載するとか、ハンバーガーの包装紙に広告をプリントするなどで、更なる値下げが望めそうです。
 但しこの場合、食べ物が相手でありますから、スポンサーが限定されるのが難点と言えるかも知れません。TOTOのウォシュレットなどは言語道断ですし、ピンクの小粒・コーラックの広告を掲載してしまった日には、食べた側からケツの方へ下ってしまいそうで気が気ではありません。

 ちょっとヒネったところでは、寄席や演芸なんてのはどうでしょう。漫才や落語のどこかで15秒なり30秒なりの生CMを入れてもらうわけです。その代わりに木戸銭はロハ(無料)。
 しかし、これも演者によっては逆効果になってしまうという欠点も有ります。

 例えば、昭和のいる・こいるの場合、

 「いや〜この商品は良いよ! なぁ?」
 「あー、はいはいはいはいはい、そりゃ良かった」

 ……となってしまい、ちっとも有り難くありません

 ましてや、立川談志などに至っては、

 「……いいですか、こんな商品をね、買うヤツは馬鹿なんです」

 ……などと言って、そのまま舞台を降りてしまう事は確実であります。

 まぁ、中にはデフォルトでCMをやっているオール阪神・巨人の例(「♪車にポピー!」)がありますし、投機目的で綾波レイの等身大フィギュアを買って大損こいた事で有名な、借金まみれ夫婦漫才師・太平かつみ&尾崎小百合みたいに、どんな仕事でも目一杯やる人もいますので、これは人選次第で何とかなるかと思われます。

 本来高額な費用がかかるところを軽減させるという意味では、冠婚葬祭などもCMを導入してしまえば良いでしょう。結婚式なら披露宴で、式に関連した業者にスピーチしてもらうわけです。

 結婚式場の担当者は続いて結婚する人向けのお薦めプランなどをアピールし、ハネムーン担当の旅行会には国内&海外旅行のお得プランなどをPRして頂く。中には富士ラテックスから担当が馳せ参じるカップルなどもあり、「さすが新婚、お盛んだなぁ」…などと出席者を感嘆させたりするのも一興でしょう。
 恐らくそんな新婚夫婦は、その新居も広告まみれになっているはずです。恐らく寝室の天井には、タモリがニンマリと笑ってユンケルを掲げてる広告とか、ケインコスギが「ファイト! 一発!」と叫んでる広告とかがデカデカと掲げられているに違いありません。

 ただ、冠婚葬祭でも困ってしまうケースもあります。お葬式です。参列者を前にして、
 次の葬儀のご用命は、私たち○○祭典をよろしく」
 とか、
 人間、いつ死ぬか分かりませんから、前もって墓くらいは建てておきましょう。お子さんも親孝行のためにどうぞ」
 ……などと言うわけにもゆきませんので。まぁ、この辺は研究の余地が有ると思います。

 
 …とまぁ、そんなこんなで長々と話して来ましたが、そろそろ時間となりました。このあたりで講義を締めさせて頂きます。
 最後に。広告付のエプロンを着用した、無料の若くて美人のメイドさんを派遣してくれる業者の方がいらっしゃいましたら、すぐに駒木研究室までご一報を。(この項終わり)

 


 

10月26日(土) 競馬学特論
「G1予想・天皇賞(秋)編」

駒木:「さて今日は、いつもより輪にかけて時間が無いんで、かなりの駆け足になるよ」
珠美:「ごめんなさい。昨日付の、私の特別企画が足を引っ張る形になってしまいました…」
駒木:「いいんだよ、どうせ大スランプ中のヤツの予想なんか、誰も聴きたいと思ってないだろうから(笑)。
 ……とりあえず、各馬の短評を述べていって、最後にまとめる形で行こう。珠美ちゃんの出番が大分削られちゃうけど、今週は我慢してもらうね」
珠美:「ハイ、分かりました(笑)。…それでは出馬表を先にどうぞ」

天皇賞(秋) 中山・2000・芝外

馬  名 騎 手
ナリタトップロード 四位
    アグネスフライト 勝浦
    トラストファイヤー 江田照
    アラタマインディ 飯田
    テンザンセイザ 田中勝
エイシンプレストン 福永
  ツルマルボーイ 河内
× × シンボリクリスエス 岡部
    ブレイクタイム 松永
  × 10 テイエムオーシャン 本田
    11 イブキガバメント 横山典
    12 ゴーステディ 吉田
    13 トーホウシデン ペリエ
  14 エアシャカール 武豊
    15 アグネススペシャル 蛯名
16 ダンツフレーム 藤田
×   17 サンライズペガサス 柴田善
    18 ロサード 後藤

駒木:「それじゃ早速始めようかな」
珠美:「ではまず、1枠の2頭からお願いします」
駒木:「ナリタトップロードは、自分よりも格上の馬が次々とリタイアしていって、やっと格付け最上位になれたね。でもそれが、馬場状態的にも枠順的にも微妙な時に回ってくる辺りがいかにもこの馬らしい(苦笑)。実力はあるんだから、あとはそれを全開できるかだけだろうね。
 アグネスフライトは1年7ヶ月振りじゃどうしようもないね。トウカイテイオーの有馬記念でも1年ぶりだったし」
珠美:「次は2枠の2頭なんですが、これは力が足りませんか?」
駒木:「トラストファイヤーアラタマインディね。うん、力不足。競馬に絶対は無いけど、この2頭を1着や2着の候補に推せるだけの根拠がどこにも見当たらない」
珠美:「では3枠の2頭を。やっぱりここではエイシンプレストンが注目になりますか?」
駒木:「そうだね。まずテンザンセイザは、ちょっと苦しいかな。G3級というジャッジが妥当だと思う。
 エイシンプレストンは、日本だとイマイチ勝ち切れないのが微妙な所だよね。ステイゴールドみたいな海外限定日本最強馬なのかも知れない。ただし、今回のメンバーなら少なくとも実力は5本の指には入るから、その5本の中の何番目になるかが問題だと思う」
珠美:「次は4枠ですね。取捨選択が難しい馬が2頭揃いましたが?」
駒木:「この2頭がいなければ、予想がどれだけ楽だったか(笑)。ただし、切れ味勝負のツルマルボーイと、ジワジワと伸びて来て届くかどうかがカギのシンボリクリスエスとは、タイプがかなり違う。予想する人はそこを十分考えて欲しいね」
珠美:「取捨選択は後回しですか(笑)。では先に進みましょう。5枠の2頭です。これも悩ましいですね(苦笑)」
駒木:「この2頭がいなければ……って、もういいか(笑)。
 ブレイクタイムは初めての2000m挑戦だね。ここでポイントになるのは、この馬が本質的にはスプリンターなのか、マイラーなのかどちらだろうか…ということ。マイラーだったら、2000mならギリギリ辛抱できる。ヤマニンゼファーの例もあるしね。で、結論から言うと、僕はこの馬はマイラーだと思う。ただし、肝心の能力面の裏付けがイマイチ甘いかな…という気もする。
 テイエムオーシャンの前走は豪快だったけど、相手に恵まれた感が強かったから度外視ね。去年の有馬記念から考えると、“牝馬では最強、牡馬と混じるとG3級”っていう感じだったんだけど、それがひと夏越してどこまで成長してるかがカギだろう。馬体が40kgも成長してたのは確かにプラス。これも人によって結論が分かれそうだね。詳しくはこれも後で」
珠美:「では6枠の2頭を。2頭とも人気薄ですが……?」
駒木:「イブキガバメントは去年のこのレースで4着。有馬記念の時にも注目してたんだけど、その時はイマイチだったね。とにかく決め脚だけが取柄の馬だから、ペースが遅くなって馬群が密集しないとダメなんだけど、今回はそうもなりそうにないね。何故か?
 それは、ゴーステディが平均ペースで逃げるから。いい感じで話が繋がったなぁ(笑)。……まぁ、ゴーステディはペースメーカーで終わっちゃうだろうね。有力馬の内、何頭かが凡走するとしても、少なくとも2〜3頭はこの馬を交わせるくらいの走りはするはずだから」
珠美:「…7枠からは3頭ずつになりますが、いっぺんいお願いしますね」
駒木:「トーホウシデンはペリエ騎手ってのが気になるよなぁ。去年は大分痛い目に遭わされた(苦笑)。ただ、今回はさすがに苦しいかな。菊花賞2着といっても“谷間の世代”の、しかも“ごっつぁんゴール”的な2着だったし。これで勝ったら本当にペリエ・マジックだ。
 エアシャカールは、宝塚記念の時に言ったように、このクラスの馬にしては瞬発力が無さ過ぎる。中山の良績は3歳春以前のものだし、参考にするには弱いかな。ただ、とにかく早めに抜け出して粘るしかない馬だから、東京じゃなくて中山になったのはプラスと言えそうだね。
 アグネススペシャルはオールカマー2着ってのが最大の勲章か。でも、今年のオールカマーはローカルG3も真っ青の低レヴェルだったしなぁ……。これも見送りが賢明」
珠美:「では最後に8枠の3頭を」
駒木:「ダンツフレームの単勝オッズを見てビックリした。いくら前走がアレだったからと言って、この低評価は無いだろうという感じ。“マイル路線で今ひとつ”…という印象が強いけど、本質的には中距離以上で力を発揮する馬だと思う。今年の宝塚記念は強かったし、3歳時にはジャングルポケットと互角の勝負をしてたんだから、もっと高く評価されて良いんだけどなぁ。
 サンライズペガサス典型的な“G2大将”なのかな。瞬発力だけでは通用しないレヴェルになると、着順が伸び悩む傾向があるよね。G1でも2着候補にはなる馬だろうけど……。あと、今週の追い切りは不満だね。
 ロサードは、もうG1クラスとは勝負付けが済んでるかな。個人的には好きなタイプの馬なんだけど、実力がねぇ。
 ……まぁ、こんなところかな」
珠美:「…ありがとうございました。それでは、今から総括をしていただきますね。まず、東京から中山に変更になった事で変化した点はありますか?」
駒木:「東京の芝2000だと、外枠は完全にアウトなくらい不利だったんだけど、中山だと逆だね。内枠の馬がインに封じ込められて苦戦する可能性もある。
 あとは、皐月賞の傾向から言うと、直線が短い割には意外と追い込みが決まり易い。でも逃げ・先行もよく決まる。まぁ、『直線短いから追い込み不利』って考えると痛い目に遭うだろうね」
珠美:「展開はどうでしょうか。先ほど、ゴーステディが平均ペースで逃げるとおっしゃいましたけど?」
駒木:「陣営が断言してるね。『平均に早いペースで行って粘り込む形がベスト』だって。だから、スローペースにはならずに、ある程度縦長で淀みの無い流れになるかな。そうなると、スピードよりも地力というか、総合力の勝負になりそうだね。まぁ、このメンツだと、上がりの時計も早くなりそうだけど。
 展開そのものは、脚質がバラけてるからスムーズだろうね。展開で有利・不利はあまり分かれないと思う。ナリタトップロードがどういう作戦を採るかくらいかな、迷いそうなのは。思い切って2番手に出るか、それとも追い込みにかけるか。まぁ小器用な馬だから、スムーズに走れれば、どっちにしろ好走できそうだけど」
珠美:「では、そろそろ結論に移りましょうか。博士の印の根拠を教えて下さい」
駒木:「僕の予想は、頭の中で主観的なランク分けをやってみるんだよね。
 で、今回の場合、第1集団はナリタトップロードとダンツフレーム。言うならばこれが“G1を勝てる馬”クラス。ちなみに、テイエムオペラオーとかジャングルポケットみたいな馬は“G1を勝つ馬”クラスね。だから1ランク下。そういう意味では、今回のレースは粒揃いだけど、必ずしもハイレヴェルってわけじゃないんだよね。まぁ、先週の菊花賞よりは雲泥の差だけど。
 第2集団が“G1で好走するかもしれない馬”クラスで、ここにはツルマルボーイ、サンライズペガサスがいる。
 で、エイシンプレストンは香港なら第1集団だけど、日本で走る時は第2集団との中間に収まるって感じ。
 エアシャカールは、実績だけなら第1集団なんだけど、僕のランク付けでは第2集団のケツに何とか張り付いてるってところ。展開に恵まれてナンボだね。テイエムオーシャンも似たような感じかな。いや、年季の分だけエアシャカールより少し後ろ。やっぱり牡馬に混じると力が少し足りないかな…という判断だね。
 問題は比較材料の少ないシンボリクリスエス3歳のトップクラスがこのレースに挑戦すると、結構な確率で好走したりするんで困るんだ。ただ、これまでの実績から判断すると、第1集団にはとても入れられない。第2集団でどの位の位置を占めるかってところだろう。個人的には“エアダブリン2世”と思ってるんで、ジワジワと差してくるけど届かず3着ってのを期待してる(笑)。
 ……というわけで、第1集団の2頭で◎と○。印を分ける決め手になったのは、ナリタトップロードの“切羽詰ってます”的な境遇だね。これから中山の馬場が悪化する一方という事を考えると、ナリタトップロードがフルに実力を発揮できるチャンスはこれが最後だと思うんだ。だから、今回は勝負を賭けてメイチの仕上げで来てると読んで◎。あとは、これまで散々見せてきた本番での弱さがどうか。G2レースで見せるような強さがあれば、自ずと勝利は近付いて来ると思う。
 あと▲と△は非常に迷った。香港だったらスンナリ決まってたんだけど、ここは中山だし。ただ、強引かもしれないけど、エイシンプレストンの“G1を勝っている”という事実を重く見た。言ってみれば、漠然とした格の差だね。まぁ、後は野となれ山となれ、だね」
珠美:「私は博士の考えと少し違って、若干先行・好位グループが有利かなと思って、あとはそれに実績を重視したファクターを加味して結論を出しました
駒木:「それじゃ、最後に馬券の買い目だね。僕は1、16、6の3頭BOX&3連複。△以下の馬も狙いたいけど、ジッと我慢する。当たればデカイね。僕の買い方だと、ダブルで的中したら年間トータルプラスはほぼ確定的になるから、当てたいけれどね」
珠美:「私は1-6、1-14、6-14、1-16、1-10、1-8の6点としておきます」
駒木:「それじゃ、駆け足になっちゃったけど、これで終了だね。後は神のみぞ知る…だ」
珠美:「そうですね。騎手の皆さんとお馬さんに頑張ってもらいましょう!」
駒木:「では、講義を終わります。ご苦労様」


天皇賞 結果(5着まで)
1着 シンボリクリスエス
2着 ナリタトップロード
3着 17 サンライズペガサス
4着 14 エアシャカール
5着 13 トーホウシデン

 ※駒木博士の“戦い済んで……”
 印だけなら×−◎的中だけど、まぁ仕方ない。これまでのG1レース3つで買い目抑えた分だけ負け額も減ってるし、これで“行って来い”と思わなくちゃね。
 今回は、ある程度実力の拮抗した有力馬が揃った時は、細かい能力差とか全体の展開よりも、自分のケイバが出来るかどうかに懸かって来るもんだと痛感。ダンツフレームもエイシンプレストンも道中で後手踏んだら、あっけなくノーチャンスになってしまったし……。
 そういう意味では、結構苦しいレース運びだったナリタトップロードが2着に喰い込んでるって事は、やっぱりこの馬、ここに入ると一枚上なんだろうね。
 勝ったシンボリクリスエスに関しては、“エアダブリン2世”という失礼な表現を撤回しないといけないかな。ただ、今回は先に抜け出せたというポイントがあったので、真の評価は次走だね。

 ※栗藤珠美の“喜びの声”
 6点目ですけど、的中は的中です。素直に嬉しいですねー♪ でもまだ、先週の損害補填にはまだまだなんですけどね(苦笑)。
 あーでも、心臓に悪いレースでしたー(笑)。

 


 

10月25日(金) 特別企画
仁経大校内FMラジオ放送採録
「珠美と順子のミッドナイトムーンライト」(第1回)

 
 ◆オープニングテーマ:『something new』(Swinging Popsicle/アルバム「Fennec !!」より)
※権利上の問題で、採録では歌の部分がカットされています。ご了承ください。

ナレーション(珠美)「『珠美と順子のミッドナイトムーンライト』。この番組は、あなたのウェブ生活をサポートする、ANSI(アスカ・ネットワーク・サービス)の提供でお送りします」


珠美:「夜遅く、キャンパス内でお仕事中、お勉強中の皆さんこんばんは。今日から始まりました、真夜中の校内FM放送『ミッドナイト・ムーンライト』、パーソナリティの栗藤珠美です」
順子:「こんばんは〜、一色順子で〜す。……それにしても、始まっちゃいましたね〜、珠美先輩」
珠美:「始まっちゃったねー。私たちがラジオのパーソナリティなんて考えもしなかったけれど…」
順子:「でも、始まるのは良いんですけど、『聴いてる人、いるの?』って感じなんですけど(笑)。だってこれ、校内放送なのに深夜放送なんですよ(笑)。どう考えても無茶でしょ、夜の11時から校内放送っていうのは!」
珠美:「ごめんねー。ほら、だって私、昼間は寝てるからー(苦笑)」
順子:「そんなこと言っても、私たちを知らない人には何が何だかサッパリ分かりませんよ(笑)。……そう言えば、わたしたち、自己紹介もまだですよ。すっかり舞い上がっちゃってシロウト丸出しですよ〜(苦笑)」
珠美:「そうね(苦笑)。えーと、私たちは普段、社会学部インターネット通信課程のアシスタントをしています。私が卒業生で駒木研究室助手の栗藤珠美で、」
順子:「私がアルバイトで社会学部1回生の一色順子です。そこで私が火・水曜、珠美先輩がそれ以外の5日間、神戸の須磨にある、講師の駒木ハヤト博士の研究室で働いてるんですけど……」
珠美:「ハイ。ここの勤務シフトが、駒木博士の都合で毎日夜勤になってるんで、私は昼間寝ているんですよー…っていうことを言いたかったんです(笑)」
順子:「私たちについてもっと詳しい事を知りたい人は、今すぐ近くのインターネットが繋がっているパソコンで、http://dr.komagi.comにアクセスしてくださいね。“ドクター駒木ドットコム”です。そこに私たちのプロフィールが載ってます」
珠美:「なぜか身長と体重まで載っているという(笑)」
順子:「そうなんですよね〜。プロフィールに身長・体重載せるからって聴いた時はビックリしましたよ〜。それでも『仕方ないな〜』って思って正直に答えて、後から珠美先輩のプロフィールを見たら、身長・体重に“(自称)”って付いてて、またビックリしましたよ(笑)。なんだ、正直に答えなくても良かったんだ〜って思って……」
珠美:「え、あ、いや、あれは自称じゃなくて正直に答えてるの! それを勝手に博士が“自称”って付けたのよ、ホントに!」
順子:「え〜、でもそれは、わたしも博士を支持しますけどね〜(笑)。どう考えても体重39キロっていうのはサバ読……」

珠美:「この番組では、リスナーの皆さんからのメールを募集しています!

順子:「あ、あの……?」
珠美:「この時間帯に果たして本当にリスナーがいらっしゃるのかどうか確かめる意味も含めて、今からメールを募集します。まだ放送に不慣れな私たちを助ける意味でも、どうか皆さんからの暖かいお便りが欲しいな♪ …と思っています。私たちへの激励、質問、ご相談、何でも結構です。お気軽にどうぞ」
順子:「た、珠美先輩……」
珠美:「もしよろしければ、今いらっしゃるお部屋の電話の内線番号も書き添えて下さいね。ひょっとしたら、私たちと電話でお話できるかも知れませんよ♪
 メールアドレスはhayatokomagi@hkg.odn.ne.jpまでどうぞ。インターネット通信過程のウェブサイト・『駒木博士の社会学講座』にある、『博士直通メール』からも投稿できますが、駒木研究室と共通のメールアドレスなので、タイトルに必ず『ミッドナイトムーンライト』宛であることを明記してくださいね。お待ちしてます♪」

順子:「…珠美先輩、使わないはずの台本読んで、ごまかしましたね?」
珠美:「ね、順子ちゃん、メール欲しいよね?」
順子:「…怖いわ〜、この人。これじゃ駒木博士も大変……」
珠美:「どうしたのかな、順子ちゃん? あんまり訳の分からないこと言ってると、リスナーの皆さんが混乱しちゃうわよ?」
順子:「あ〜、欲しいで〜す、どんどん送って下さ〜い。お待ちしてま〜す(棒読み)」
珠美:「それではここで1曲お送りしましょう。私たちの上司で、この後、電話でゲスト参加していただく予定の駒木ハヤト博士からのリクエストです。
 ……博士からのメッセージによると、『少なくとも題名は珠美ちゃんにピッタリです。“は”の字にアクセントをつけて読んで下さい』…という曲、椎名林檎さんの…ま、『真夜中は純潔』…って、何ですかこれー!」

順子:「(爆笑) さすが博士。ズバリじゃないですか(笑)。まるで、こういう流れになることを予測してたかのような(笑)。
 …それでは曲の間からメールを受け付けますので、どうぞよろしく。椎名林檎さんで『真夜中
純潔』です」
珠美:「…信じられない」


 ◆1曲目:『真夜中は純潔』(椎名林檎/シングル「真夜中は純潔」より)


順子:「……というわけで、ホントならここで『お便りのコーナー』なんですけど、今日は1回目ですから、用意してるメールが無いんですよね〜。だから今日はメールが届くまで、引き続きフリートークです」
珠美:「話題をガラっと変えてお送りしますね!」
順子:「曲の間に、ドトールのミルクレープ・セットで買収されちゃいました(笑)。だから話題を変えますね(笑)。
 ……で、さっき私たち、『インターネット通信課程は毎日夜勤』って言ったじゃないですか」

珠美:「ありがとう。本当に変えてくれたのね(笑)。
 ……そうそう。講師の駒木博士が昼間に高校で講師のお仕事をしてることと、“テレホーダイ時間”に合わせるという意味で、駒木研究室は毎日夜中に仕事をするんです」

順子:「これも初めて聞いたときはビックリしました。だって“逆9時5時”ですもんね。21時から5時の8時間勤務」
珠美:「大体1年前に、インターネット通信課程を始めることになって、その時に私の勤務時間を決めたのね。でも、大学でも前例がないことだったから、大変だった記憶があるかな。だって、通勤の都合もあるじゃない? ほら、私は電車で通ってるから。博士はご自宅がすぐ近くだから良いんだけど……」
順子:「珠美先輩は、下手に早く仕事が終わっても帰れない(笑)」
珠美:「そう(苦笑)。夜中の12時過ぎたら朝まで電車が無いのよ。まるで陸上の孤島ね(笑)。…だから、始発に乗れるだろうっていう5時を退勤時刻にして、そこから逆算して8時間ということになったのね」
順子:「なるほど〜。そういうことだったんですね。
 ……でも、そんな生活じゃ、何かと不便じゃないんですか? 完全に昼夜逆転じゃないですか。わたしは週2日だし、学生だから何とかなりますけど…」

珠美:「ん〜、でも意外と何とかなるものよ。順子ちゃんが来てからは週2日お休みがもらえるようになったし」
順子:「え〜、でもどんな生活してるのか知りたいですー。前からちょっと気になってたんですけど……」
珠美:「そんな、人前で話すことじゃないと思うんだけど(笑)」
順子:「まず、朝早くに仕事が終わりますよね。お家に帰るのが6時半ごろですか?」
珠美:「残業が無ければそんなところね。でも、ご飯は研究室で食べてしまってるんで、部屋に帰ったらシャワー浴びて寝るだけ。だから7時台には就寝ね。それからお昼過ぎに起きて、軽く食事してしまうと、それから夜の9時までは自由時間だから、普通に何でも出来ちゃうかな。少し無理すれば12時ごろから動き回れるし」
順子:「あ〜、ホントですね。意外と規則正しい感じです」
珠美:「でしょ? それで出勤前にしっかり目の食事を摂って、夜食用に簡単なお弁当とかを用意して。家にいる時は出勤前にお風呂に入って気合を入れて、それからお仕事ね。
 …お休みの日は、火曜日は1日中家で寝て過ごして(笑)、水曜日は朝から夜まで1日中起きて園田競馬行ったりして過ごしてるかな」

順子:「園田競馬行ったりって(笑)。普通そこは『カレとデート』とか言いませんか?」
珠美:「そういう人がいる時は、2人で園田競馬場(笑)。そういう人、もうずっといないけどねー(苦笑)。なかなか良い出会いが無くて」
順子:「ん〜、なんとなく判る気がします(苦笑)」
珠美:「判らなくて良いんだけど(苦笑)。仁経大の学生の頃は、周りがそんな人ばっかりだから良かったんだけど、卒業した途端にパッタリといなくなっちゃったのよね。みんな、卒業したら普通の社会人になっちゃって」
順子:「でも、社会人になってからも園田競馬に通ってる人だと、趣味が合っても別の意味で大変じゃないですか?(笑) それは普通に考えると仕事してないって事ですから(笑)」
珠美:「よく考えたらねー(苦笑)。あー、でももういいの。私は長期戦で考えてるから(笑)。
 ……じゃあ1曲聴いて気分転換しましょう。川本真琴さんで『愛の才能』アルバムバージョン……才能、私も欲しいなぁ(苦笑)」

順子:「(笑)」


◆2曲目:『愛の才能』(川本真琴/アルバム「川本真琴」より)


順子:「珠美先輩、珠美先輩、曲の間に、ホントにメールが来ましたよ。凄いですね〜」
珠美:「あ、ホントだー。…ありがとうございますー」
順子:「良かったですね、ホントに聴いてくれている人がいて(笑)。
 ……えーと、メールを送ってくれたのは、経済学部3回生の匿名希望さんです。男の方ですね。

 『珠美さん、順子さん、こんばんは。今日はレポートを仕上げるためにゼミ室で徹夜しています。ラジオをチューニングしていたら偶然、エアチェックできたんでビックリしました。
 実はいつもインターネット通信課程の方も受講させてもらっています。今日はお2人の声を聴くことが出来て感激です。これからも頑張ってください。
 追伸:珠美さん、菊花賞の結果はショックでしたね。天皇賞は頑張って財布の中身を補充して下さい』

 ……本当に受講生の方ですね(笑)。珠美先輩の財布の中身まで知ってるとは、なんて熱心な(笑)」
珠美:「(苦笑)。もぅねー、ホントに大変なのよ、今」
順子:「財布の中身がですか?」
珠美:「そう。来月15日のお給料日までもう大変(苦笑)。
 …このラジオが流れてるのは仁経大だから、間違いなく競馬の話が通じると思うけど、あの日は武豊騎手が絶好調だったのね。ま、1着の回数が5着以下の回数より多い人だから、いつも絶好調って言えばそうなんだけど、その日は特に凄くて」

順子:「武豊騎手って、珠美先輩、理想の男性像に挙げてましたよね(笑)」
珠美:「そう(照笑)。ま、全部武豊騎手から馬券を買っているわけじゃないんだけれど、その日は朝からずーっと武豊騎手が乗っていた馬が2着以内に入ってたのね。だから、私もずっと追いかけていたの。そうしたらどんどん馬券が当たって。万馬券はさすがに無理だったんだけど、24倍の馬券が当たったりとかして絶好調だったのよ」
順子:「うわ〜凄い!」
珠美:「その流れで菊花賞よ。武豊騎手が乗るのが、1番人気のノーリーズン。ここまで来たら『ここは勝負に行っちゃえ!』って、思うじゃない?」
順子:「うん、うん」
珠美:「で、儲けた分も、元々財布にあった分もまとめて券売機に…」
順子:「うわ〜」
珠美:「そうしたら、ゲートが開いて5秒もしない内に、武豊騎手がノーリーズンから落馬しちゃって……」
順子:「馬券が紙くず、ですか?(苦笑)」
珠美:「気がスゥーっと遠くなったかな(苦笑)。一瞬、亡くなったお婆ちゃんの顔が浮かんだ気がしたわね」
順子:「(爆笑)」
珠美:「……匿名希望さん、ありがとうございます。でも、もう財布の中身を挽回するには手遅れかも知れません(苦笑)」
順子:「…それじゃ、またここで1曲お届けしましょう。曲の後には、今日の電話ゲスト・駒木ハヤト博士の登場です。
 曲はサッカーのW杯でお馴染みのこの曲、ポルノグラフティで、『MUGEN』。韓国戦の不正ジャッジを思い出しながらお聞き下さい(笑)」  


◆3曲目:『MUGEN』(ポルノグラフティ/シングル「MUGEN」より) 


順子:「…それでは、ここで電話ゲストをお呼びしたいと思います。私たちの上司であり、社会学部インターネット通信課程の専属講師・駒木ハヤト博士です。博士、こんばんは〜」
珠美:「こんばんは〜」
駒木:「もしもし、こんばんは〜。ちゃんとやってる? 駒木研究室からはラジオ聴けないんで、詳しい事がよく判らないんだけど……」
珠美:「ハイ、なんとか頑張ってますー」
順子:「博士の曲リクエストのメッセージ、お見事でした〜(笑)」
駒木:「ハハハ。やっぱり、そういう展開になった?」
順子:「は〜い、なりました〜(笑)」
珠美:「なりましたー、じゃないでしょ! まったくもー」
駒木:「まぁ、珠美ちゃんも22歳になったんだから、そろそろ大人の対応を覚えないといけないよね」
珠美:「って言うか、27歳にもなって、あんなメッセージを書いて送ってくる博士に言われたくありませんけど。
 ……それより、本題というか、ご用件があるんですよね? ちょっと“巻き”が入ってますし、早速お願いしたいんですが……」

駒木:「あー、はいはい。……ええとね、今日は、来る11月30日と12月1日に開催予定の、インターネット通信課程開設1周年記念イベントの告知をするために、こうして出させてもらいました。
 まだイベントの正式名称は決まってないんですが、内容は決定しています。まず、この1年間ゼミで採り上げたマンガ作品を表彰する、『仁川経済大学コミックアワード』の発表が1つ。そして、もう1つが、この『ミッドナイトムーンライト』の公開生放送
珠美順子「エー!!」
駒木:「あれ、言ってなかったっけ?」
順子:「聞いてないですよ〜」
珠美:「初耳です」
駒木:「じゃあ、コスプレしてもらう事も聞いてない?」
珠美:「こ、コスプレですか?」
順子:「耳とか猫手袋とかして『にょ』とか言うんですか?」
駒木:「あー、コスプレはしてもらうけど、それじゃない(笑)。まぁ、分かる人にだけ分かってもらうとすると、珠美ちゃんには『あなたを、犯人です』とか言ってもらう事になるかな(笑)」
珠美:「……?」
順子:「で、私はホウキか何か持って、ずっと笑ってなきゃいけないんですか(笑)」
駒木:「鋭いけど、そこはまだ未定。まぁ、これはイベントの時のお楽しみだね。
 他にも、来場してくれた皆さんにはプレミアムグッズをお配りする計画もあるので、是非当日はお誘い合わせの上、ウェブサイトにアクセスして下さい」
珠美:「私たちも色々やらされるみたいですけど、楽しいイベントになりそうですね。ラジオをお聴きの皆さんも、どうぞよろしくお願いしますね。
 ……これで一応、博士の出番は終了したんですが……」

順子:「……え〜と、この後にあるもう1つのコーナーに、駒木博士にも参加してもらいたいんですけど、いいですか?」
駒木:「はいはい。構わないよー」
順子:「それじゃあ、いきましょう。『トゥー・コールド(too cold)』のコーナー!」(BGM:「ドラゴンクエスト」の竜王変身登場テーマ)
珠美:「このコーナーは、リスナーの皆さんから寄せられた、日常に潜む、思わず鳥肌の立つような寒〜い会話を紹介するコーナーですが…」
順子:「今日はまだ投稿が来てないので、駒木博士にネタの見本を聞かせてもらおうと思います。実は博士には前もって、いくつかの見本を作ってもらってました。さっきのやりとりが白々しかったのはそのためです(笑)」
珠美:「それじゃ、時間も押してますので早速、1本目をお願いできますか?」
駒木:「はいはい。とりあえず、『寒い会話を』って言われたんで、用意したんだけどね。これは僕の知り合いが、高校生の時、憧れだった女の子との初デートの時にやっちゃった実話です」

:「あのな、ちょっと聞きたい事あるんやけど……」
:「何?」
:「えーとな、答えにくい質問かも知れんけど、出来たら答えて欲しいねん」
:「んー、何かなー?」

:「お前、まだバージンか?」

珠美:「博士……(溜息)」
駒木:「……あれ? 寒い会話でしょ、コレ?」
順子:「寒いって言うか…、まぁ確かに寒いんですけど、寒いというより最低なんですけど、コレ。実話って言うのが特にイタいです」
駒木:「う〜ん、ひょっとして、もっと笑えるヤツとか、そういうのがご希望?」
珠美:「ハイ、ご希望です」
駒木:「じゃあ、これも実話。僕がまだ20歳手前で塾の新人講師だった頃にあった会話

生徒(♀):「ねー、駒木先生」
駒木:「何?」

生徒(♀):「先生って、SMAPの香取慎吾に似てるよね」

珠美順子「え〜〜〜〜〜〜〜?」
駒木:「な、なんだよー、自分で言ったわけじゃないんだからさー。それに『寒い会話』だろ? 自分で寒いって言ってるから良いじゃないかー」
順子:「だから笑えないんですって、博士のネタは!」
珠美:「博士、今すぐ謝ってください、い・ま・す・ぐ、ご本人と全国中のファンの皆さんに謝ってください!」
順子:「ほら、早く!」
駒木:「どうしてここまで部下に言われなきゃいけないんだよ……。
 えーと、申し訳有りませんでした。謹んでお詫びし、発言を撤回させて頂きます。これでいい?」
順子:「私たちが求めてるのは、そういうシビアなのとか、シュールなのじゃなくて……まぁ、それでも良いんですけど、もっと素直に笑えるものの方が良いかなって……」
駒木:「ひょっとして、嘉門達夫のネタみたいなの? 例えば…」

:「誕生日おめでとう。これ、プレゼント」
:「うわー、ありがとう♪ 今すぐ開けていい?」
:「いいよ」
:「(ガサゴソ)……うわぁ、高そうな口紅ー。本当に貰っていいの? 何かお返ししなきゃ…」

:「いや、少しずつ、(口紅を)返してもらったらいいからね……」

駒木:「…こういうの?」
珠美:「こういうのです(笑)」
順子:「初めからこれを例に出せば良かったんですね。博士に頼ったのが間違いでした」
駒木:「酷い言われようだなあ……」
珠美:「ま、そういうわけで、こういう『寒〜い会話』をどんどん送ってくださいね。メールの宛先は、さっきお知らせしたメールアドレスと同じです。タイトルに『寒〜い話』と書いて下さいね」
順子:「それじゃあ博士、ありがとうございました」
駒木:「はいはい。お役に立てなくてごめんね」
珠美:「いえいえ(苦笑)。ありがとうございました。
 ……それでは、またここで1曲聴いていただきます。少し懐かしいナンバーから、奥居香さんで『ハッピーマン』です」


◆4曲目:『ハッピーマン』(奥居香/シングル「ハッピーマン」より) 


珠美:「…というところで、そろそろお別れの時間になりました。何だか今日はずっとドタバタしてばかりでしたね。申し訳有りませんでした」
順子:「これからも頑張りますので、また聴いてくださいね。メールもよろしくお願いします」
珠美:「それでは、また近い内にお会いしましょう。お相手は栗藤珠美と」
順子:「一色順子でした。それではまた〜」


◆エンディングテーマ:『風がそよぐ場所』(小松未歩/シングル「風がそよぐ場所」より)

ナレーション(珠美)「『珠美と順子のミッドナイトムーンライト』。この番組は、あなたのウェブ生活をサポートする、ANSI(アスカ・ネットワーク・サービス)の提供でお送りしました」


※番組からのお知らせ:公開生放送に際して、インターネット通信課程の受講生の皆さんからもメールを募集します。駒木研究室のメンバーに質問したい事やメッセージなどは『お便りのコーナー』、寒い会話のネタは『トゥーコールドのコーナー』または『寒い話』とタイトルに明記して、送ってください。匿名で結構ですので、よろしくお願いします。ただし、全てのメールを紹介できるわけではありませんので、あらかじめご了承ください。

 


 

10月24日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(10月第4週分)

 今週もレビュー対象作が少なくて、ゼミを構成するのにも四苦八苦です(苦笑)。最近の「ジャンプ」は、一時期に比べて連載作品の入れ替えも代原の掲載も減ってますから、どうしてもこういう事になってしまいますね。
 特に来週は、もし代原が無ければレビュー対象作がゼロという事態に……。まぁいざとなったら、「サンデー」の増刊辺りから有望な新人作家さんの作品を発掘してみようか…とか、色々考えてはいますが。

 ──それでは、本題に移りましょう。まずは情報系の話題からですが、今日は1点だけ

 この社会学講座では既にお馴染み、「週刊コミックバンチ」系のコンペテイション・イベントである「世界漫画愛読者大賞」の、今年度分の応募総数が発表になりましたので、お伝えしておきましょう。
 今回は募集期間を1年とし(前回は半年)、応募作品を増やす事で作品レヴェルの底上げを図ったわけですが、いざ蓋を開けてみると応募総数は117作品ということに。何と前回(215作品)の約半数強に留まってしまいました。
 この117作品の中から、グランプリ候補作の10作品(最低賞金100万円)と佳作16作品(賞金50万円)が出るわけで、恐らくこの手の漫画賞としては空前絶後の低競争率という事になりそうです。
 「世界漫画愛読者大賞」は、完成原稿以外に3話分のネームを用意しなくてはいけないので、敷居が高い賞であると言えばそうなんですが、それにしてもこの応募の少なさはどうでしょうか。よほど第1回受賞組の不振が嫌気されてるんでしょうねぇ。「連載1年保証」と言っても、人気が芳しくなければ強制休載で飼い殺しにされるって事が『エンカウンター』の不振で露呈されてしまいましたし……。
 「バンチ」には、「応募数は減ったが、第1回がハイレヴェルだった影響を受けてレヴェルそのものは上がっている」…という旨の、支持率の低い総理大臣がやる所信表明演説並に苦しい弁明をしてましたが、恐らく舞台裏では悲鳴が上がっていることと思います(笑)。
 とまぁこんな状態で、果たしてマトモな漫画賞になるかどうかは激しく疑問なのですが(前回も“マンガ人生敗者復活戦”の様相でしたし)、当ゼミでは第2回も全作品レビューをする方向で考慮中です。候補の10作品中、せめて1作品だけでも素晴らしい作品が出て来る事を今から祈っておきたいと思います。

 それではレビューと“チェックポイント”に移りましょう。今週のレビューは、「ジャンプ」から第3回の後追いレビューを1本お送りします。チェックポイントと併せてどうぞ。
 レビュー中の7段階評価の表はこちらをどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年47号☆

 ◎新連載第3回『Ultra Red』作画:鈴木央《第1回掲載時の評価:B+

 第1回掲載時に“構成などは水準以上だが、ストーリーそのものがベタ過ぎる”というコメントをさせてもらったんですが、この第3回を読み終わった後に抱く感想もこれと同じです。
 格闘シーンや主人公のバックボーン作りなどは、反則スレスレながらも“マンガの文法”を守っているために、不快感は感じられません。話のテンポも間延びしていませんし、鈴木さんのこの作品に対する真摯な気持ちが窺えます。
 しかし、これらのポイントを加味した上でも、ストーリーにオリジナリティが無いですし、展開が単純過ぎます。何しろ、のべつまくなしに敵が現れては、主人公がそれを倒してゆくだけなのですから、話もクソもあったもんじゃありません。言い方は悪いですが、エロマンガのエロを格闘に挿げ替えて作った格闘マンガみたいな感じになってしまっています。

 そして何よりも問題なのは、第3回に至っても、この作品の根底にあるテーマが見えて来ないというところです。
 果たして主人公の最終目的は何なのか。そしてその目的を達成するための第一歩となるものは何か。これが全く読者に提示されていないため、余計に散漫な印象を与えてしまうのです。
 長期連載を経験した事のある作家さんが、このパターンにハマってしまったのは大変意外なのですが、このまま行ってしまうと間違いなく、人気下降→短期打ち切り…というケースになってしまいますので、早急な改善が望まれるところです。(というか第3回までで判断されるとすれば、もう手遅れなのですが)

 評価は前回のB+から、B−寄りに大幅ダウンとさせて頂きます。
 しかし、秋の新連載2本が2本とも低評価というのは少し寂しい話ですよね。どちらか1作品でも大化けしてくれば良いんですが……。


 ◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『こちら葛飾区亀有公園前派出所』作画:秋元治《開講前に連載開始のため、評価未了》

 久しぶりに『こち亀』らしい『こち亀』を見たような気がします。5年位前までは、毎週こんなノリだったはずなんですけどねぇ。
 しかし、安い寿司に群がる褐色の肌をした外国人たちって、これ表現的にセーフなんでしょうか? まぁ、一応、「日焼けですから」で誤魔化せる範囲だと思いますけれども、ちと軽率な感がありますね。

 ◎『いちご100%』作画:河下水希《第3回掲載時の評価:

 作品そのものは評価を上げるほど“大化け”してないんですが、ヒロイン1号の西野つかさが大化けしましたなぁ(笑)。多分、今週でヤラれてしまった男子の数は数万人じゃ利かないような気がしますが。あ、駒木も含めて(笑)。
 こういうヤンチャなキャラのヒロインが健気(けなげ)になると、破壊力ありますなぁ。これが100%計算だったら凄いですが、果たしてどうでしょうか。

 ◎『プリティフェイス』作画:叶恭弘《第3回掲載時の評価:B+

 何だか回を追うごとに乱堂(由奈)が、“女の子に化けた男”から、“男の心を持ち合わせた女の子”に変わっていってる気がするんですが(笑)。ていうか乱堂、女言葉使いこなし過ぎ(笑)。
 作者の叶さんも予想外の長期連載モードになってますが、果たしてどういう結末にするんでしょう? ひょっとしたら、打ち切りが決まった時点でいつでも完結に向かっていけるようにストーリーを準備してるのかも知れませんが……。

 

☆「週刊少年サンデー」2002年47号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 ◎『金色のガッシュ !!』作画:雷句誠《開講前に連載開始のため、評価未了》

 相変わらず笑わせてくれます、フォルゴレ&キャンチョメ編自信を持ってケツ丸出し出来るのが素晴らしい!
 …ただ、このコンビの話の場合、下手にお涙頂戴系の感動話に持っていくよりも、素直に笑わせることに専念した方が良いんじゃないか…とも思います。 

 ◎『うえきの法則』作画:福地翼《開講前に連載開始のため、評価未了》 

 植木がビーズ爆弾に向かって突っ込んでゆくシーン、これは渾身の名シーンではあるんですが、出来ればこのシーンで終わって「次回へ続く」が良かったですね。惜しい場面でした。

 ◎『旋風の橘』作画:猪熊しのぶ《第3回掲載時の評価:

 詳しく内容を語ると酷い言葉しか出て来ませんので、一言だけ。

 オイ、テコ入れするにもやり方ってモンがあるやろ!

 政治の世界で、自民党の中でダイナミックな首相交代をする事を“擬似政権交代”とか言いますが、この作品は“擬似打ち切り”ですねぇ。曲がりなりにもここまで10か月積み上げて来た全てが、今週で台無しです。こんな事で良いのかなぁ……。

 あ、結局色々喋っちゃいましたね(笑)。

 
 ……さて、今週のゼミはここまでなんですが、ここで1つお知らせを。
 当社会学講座では、来月の末で開講1周年を迎えるにあたり、記念行事を実施する予定です。
 で、その行事の一環として、このゼミの1年分の総まとめ的企画をやろうと思っています。その名も、

「第1回 仁川経済大学コミックアワード」

 ……この1年間のレビュー対象作の中から優秀な作品などを選んで、(勝手に)表彰させて頂く…というわけです。
 まぁ、他のマンガ専門ウェブサイトさんに比べると、当ゼミの守備範囲は狭いも良い所なんで、恐らくは日本で最も権威も格式も歴史も価値も無いマンガ賞になる事は確実なんですが、とにかく“やったモン勝ち”でやってみようと、そう思っています。
 一応、今のところ考えている賞は、“仁川経済大学賞(グランプリ)“「ジャンプ」・「サンデー」コミック大賞”“最優秀新人作家賞(初連載作品、又は連載未経験作家の読み切り作品を描いた作家さんが対象)、そして裏グランプリこと“ラズベリーコミック賞(最悪作品賞)…などです。また、詳しいシステムなどが決まり次第、このゼミでお知らせしたいと思っています。どうぞ、ご期待下さい。

 それでは、今週のゼミを終わります。また来週をお楽しみに。

 


 

10月23日(水) 歴史学(一般教養)
「学校で教えたい世界史」(16)
第2章:オリエント(10)〜
シリアとパレスティナ《続》

※過去の講義のレジュメはこちら
第1回第2回第3回第4回(以上第1章)/第5回第6回(以上インターミッション1)/第7回第8回第9回第10回第11回第12回第13回第14回第15回


 今回は、前回時間オーバーでお話しきれなかった古代イスラエル王国の歴史の続きをお送りします。

 
 紀元前930年頃、約30年の治世を終えて世を去ったソロモン王の後を子が継いでからは、イスラエル王国の政情は急速に安定を失って、わずか5年後には南北に分裂してしまいます。以後、北部をイスラエル王国、南部をユダ王国と呼びます。
 この分裂劇のそもそもの原因は、ソロモンの治世に課せられた重税に対する民衆の不満が爆発した事でありました。ソロモンの時代に耐えられた事が耐えられなくなったという事は、恐らく新王には人望が欠如していたようであります。ソロモンは政治的には凡庸ながらも人柄だけは優れていたようでありますが、子供には人柄さえも遺伝しなかったのでしょう。

 そんな分裂後のイスラエル・ユダ両王国は、政変が繰り返されて次々と王朝が交代したイスラエルと、ダヴィデの子孫によって比較的安定した政権が維持されたユダとで対照的な歴史を歩んで行きます。
 特にこの頃のイスラエルの混乱振りは目も当てられない程でありました。王室の内輪揉め、フェニキアから嫁いだ后が持ち込んだ宗教とパレスティナ土着の宗教との対立、軍隊による国王暗殺など、国家が傾くような出来事がのべつまくなしに発生している印象さえあります。酷い時には7日で滅んだ王朝もあったそうですから、現代のアフガンやカンボジアも真っ青といったところでありましょう。
 そして、そんな当時のメソポタミアは食うか食われるかの戦国の世。国内の統治すらままならないダメ国家がいつまでも存在出来るわけがありません紀元前722年、この頃ダムを突き破った大洪水のように猛烈な勢いで侵略戦争を繰り広げていたアッシリアが、遂にイスラエル王国をその毒牙にかけてしまいました
 このアッシリアは、征服した土地の民族の一部を本国へ強制移住を課し、替わりに本国からアッシリア人を植民させるという政策を採っていたため、イスラエルは国だけでなく民族丸ごと蹂躙されるという屈辱を味わう事になりました。
 実はこの時の強制移住と植民が、やがてキリスト教成立の際に深く関わる事になりますので、頭の片隅にでも置いていただけると幸いであります。

 さて一方のユダ王国は、イスラエル王国が滅亡し、更に南へと迫り来るアッシリアのプレッシャーを感じつつも、しばしの安泰を謳歌していました。
 が、紀元前7世紀終期にアッシリアが滅び、代わってエジプトやバビロニアに誕生したカルデア王国がユダ王国に激しく詰め寄ると、さしもの王国も急速に衰え始めます。それから間もなくしてダヴィデ王以来の首都・イェルサレムがカルデア軍によって陥落し、ユダ王国も遂に滅亡します(紀元前586年)。
 そして征服されたユダの人々(=ユダヤ人)は、140年前のイスラエル王国民と同じように強制移住させられ、遠く離れたバビロンで民族ごとでまとまった生活を強いられます。これが有名な“バビロン捕囚”と呼ばれるものであります。

 そんな屈辱の日々の中で、バビロンで暮らすユダヤ人の間で1つの宗教が確立されます。それがあのユダヤ教であります。
 既にご存知のように、ヘブライ人にはモーセの時代から土着の信仰のようなものが存在していました。そして紀元前7世紀後半のヨシュア王の時代に、ヤハウェという神を信じる一神教が確立されてもいたのですが、それがこの時期に、「神に救われるのはユダヤ人だけである」という“選民思想”などの重要な教義が加わったのであります。強制移住と敵地・バビロンでの集団生活という特殊なシチュエーションが、民族の団結心と屈辱感を呼び起こし、それが民族独自の宗教に対する信仰心を強める方向へ昇華したのでありましょう。
 そんな悲劇の民・ユダヤ人も、数十年後にカルデアを滅ぼしたペルシアの王によって帰国を許され、その頃にはすっかり浸透したユダヤ教と共に故郷へと戻って行きます。間もなくして首都・イェルサレムは再建されて、そこにユダヤ教の神殿も建てられました。
 その後、紀元前5世紀頃にはユダヤ教の教典・旧約聖書も編纂され、ユダヤ人とその宗教はますます栄える事になるのですが、この繁栄もまた永遠ではありませんでした。彼らのその後の苦難の歴史については、また別に語る機会がある事でしょう。

 …さて、今日は短めですがここまで。次回は、これまでも度々名前が挙がっています、古代オリエントを代表する軍事超大国・アッシリア帝国についてお話をしたいと思います。(次回へ続く

 


 

10月21日(月) 歴史学(一般教養)
「学校で教えたい世界史」(15)
第2章:オリエント(9)〜
シリアとパレスティナ

※過去の講義のレジュメはこちら
第1回第2回第3回第4回(以上第1章)/第5回第6回(以上インターミッション1)/第7回第8回第9回第10回第11回第12回第13回第14回

 
 前回はエジプトから舞台と時間を戻しまして、ハンムラビ王時代の後のメソポタミアについてお話をしましたが、今回はやや舞台を変えて、シリア、パレスティナ地方の大まかな地域史をお送りします。

 まず、この地方の古代史の担い手になった人々を紹介しますと、彼らはバビロニア王国を建てたアムル人と同じく、メソポタミアとアラビア砂漠の中間地帯からやって来たセム系の民族でありました。

 その中でも、アムル人に続くセム系民族の第2陣となったのがカナーン人と呼ばれる民族であり、更に彼らの内で、現在のレバノン周辺でいくつかの都市国家を建設した人々をまとめてフェニキア人と言います。
 彼らは紀元前2500年頃、つまりまだメソポタミアに領域国家が誕生していない頃からレバノンに住み着いていたようで、早い内から古代エジプト王朝と交流をしていたとの記録も残っています。どうやら隠れた“先進民族”だったようであります。

 フェニキアの人々は他の地域と異なり、最後まで統一国家を形成しませんでした。しかしそれでも、レバノンの各地それも海沿いに、シドン、ティルス、ウガリットなど多くの都市国家を建設し、大規模な海洋貿易や、イベリア半島や北アフリカ地方への植民活動で大きな実績を挙げていました。世界史上でもかなり早い時期に分類される海洋民族であります。
 そんな彼らが扱った貿易品目は多岐に渡り、当時は極めて貴重とされた染料や、高級木材であるレバノンスギが特に有名でありました。
 そして海洋貿易や植民活動を営む以上、フェニキア人は航海術も極めて発達していました。大変信じ難い話ですが、何とこの当時にアフリカ大陸を一周したという記録すら残っているのであります。
 …この“怪挙”に関しては紀元前5世紀の歴史家・ヘロドトスですら疑いを持っていたようです。が、その報告の中に、南半球では太陽が北中した…という、体験せねば絶対に思いつかないような貴重なレポートが記されており、皮肉な事にもこれが決め手となって、このアフリカ大陸一周は真実であると認定されています。
 それにしてもヴァスコ=ダ=ガマのインド航路開発から2000年以上前にこの偉業。古代人の才能の豊かさにはつくづく舌を巻いてしまいます。

 また、フェニキア人は独自の文字・フェニキア文字を持っていました。
 これは、古代エジプトの象形文字を簡素化したシナイ文字と呼ばれたものの改良バージョンで、22種類の文字からなるアルファベットの原型でありました。これに母音を追加されたものがギリシア文字となり、それが現行のアルファベット26文字へと発展してゆく事になります。つまり、現在使われている言語の多くはフェニキア文字をルーツとしているわけで、それを考えると我々はフェニキア人に足を向けて寝られないやら、「よくも受験勉強をヤヤコシくしてくれたな、この野郎!」とイチャモンをつけたいやら、複雑な心境に陥ってしまうものであります。

 フェニキアは統一国家を持っていませんでしたので、その歴史の終わりもかなり曖昧ではありますが、紀元前9世紀頃からアッシリア(この国に関しては次々回に述べます)の圧力を受けて衰退し、やがてペルシアなどの大国に吸収されてゆく事になります。しかし、この民族が建設した植民地はその後も繁栄を続け、これからも世界史に深く関わってくる事になります。


 さて、このフェニキア人の住んでいたエリアの東、現在のシリアがある地域には、同じくセム系のアラム人が都市国家群を形成していました。当時の都市国家で有名なものには、現在でもその名が残っているダマスクスなどが挙げられます。
 彼らもフェニキア人と同様に商業を盛んに行う民族でありましたが、内陸に住んでいた関係上、陸上貿易が中心だったようです。
 文字に関してもフェニキア人と同様に独自のアラム語アラム文字を持っていました。そしてこの言語は、陸上貿易の物産と共にメソポタミアからペルシア(イラン)方面へ広く流布し、紀元前6〜1世紀頃までこの地方の国際言語として大活躍しました。
 アラム人の都市国家は、これもやはりアッシリアの侵攻にさらされて、やがて滅亡の時を迎えますが、アラム民族はその後もメソポタミアの各地に散らばり、亡国の商業民族としてたくましく生き抜いていったようであります。何と言いますか、商売人の生命力の強さといったら、古代から現代まで変化が無いものでありますね。


 そしてこの時代・地方にまつわる歴史で一番最後に紹介するのが、パレスティナ地方に住んでいたヘブライ人──後のユダヤ人、現在のイスラエル人の祖先にあたる人々です。

 彼らのルーツもまた、セム系民族が原住地から北へと移動してきた人々なのですが、その構成はやや複雑になっています。
 まずベースとなるのは、フェニキア人と同系統のカナーン人です。実はカナーン人はレバノン(フェニキア)よりもこちらの方が“本場”で、長い間パレスティナ地方はそのものズバリ、“カナーン”と呼ばれていたようです。
 そしてそ