「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

6/28(第38回) 競馬学特論「G1予想・宝塚記念編」
6/27(第37回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(6月第4週分・後半)
6/25(第36回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(6月第4週分・前半)
6/23(第35回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(6月第3週分・後半)
6/20(第34回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(6月第3週分・前半)
6/17(第33回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(6月第2週分・後半)
6/12(第32回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(6月第2週分・前半)
6/9(第31回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(6月第1週分・後半)
6/7(第30回) 競馬学特論「G1予想・安田記念編」
6/5(第29回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(6月第1週分・前半)
6/2 2時限(第28回) (競馬学特論「G1プレイバック・東京優駿(日本ダービー)編」

6/2 1時限(第27回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(5月第5週分・後半)

 

2003年第38回講義
6月28日(土) 競馬学特論
「G1予想・宝塚記念編」

 春シーズン最後の競馬学特論ですので、出来れば珠美ちゃんとの対談形式でお送りしたかったのですが、今回もいかんせん、「時間の都合」という厄介なモノが出て来てしまいました。残念ながら短縮講義とさせて頂き、レース回顧に少し多目の時間を割きたいと考えています。

 ……それでは、早速出馬表と予想をご覧頂きましょう。

宝塚記念 阪神・2200・芝

馬  名 騎 手
    サイレントディール 安藤勝
アグネスデジタル 四位
    アサカディフィート 池添
    マイソールサウンド 本田
シンボリクリスエス デザーモ
ネオユニヴァース デムーロ
    サンライズジェガー 後藤
×   イーグルカフェ 吉田稔
    ツルマルボーイ 横山典
    10 ヒシミラクル 角田
    11 ファストタテヤマ 安田
    12 バランスオブゲーム 武幸
× 13 ダンツフレーム

藤田

    14 メジロランバート
    15 ストップザワールド 福永
× 16 タップダンスシチー 佐藤哲

 

× 17 ダイタクバートラム 武豊

 ──例年は、この時期になると必ず廃止論や6月開催論が囁かれるほど盛り上がらない宝塚記念ですが、今年に限っては現時点で考え得る限りで最高の豪華メンバーが揃ったのではないかと思います。
 例年ならば、G1級の馬が1〜2頭出て来れば御の字のこのレースで、今年は“例年なら大本命クラス”の馬が少なくとも3頭。しかも、恐らくは主催者サイドも半ば諦めていたであろう、宝塚記念へのダービー馬参戦も実現し、上位拮抗というか高レヴェル混戦模様の、馬券的にも非常に厄介なレースになったのではないでしょうか。

 ステップレースは、例年なら天皇賞組が圧倒的優位に立つのですが、今年はご存知の通り、空前の低レヴェルの上に波乱の決着とあって、全くアテになりません。ハンデ戦の目黒記念の結果が参考外なのはいつも通りで、唯一トライアルらしいトライアルの金鯱賞も、チャンピオンクラスの馬たちへの挑戦者決定戦という趣がありました。
 やはり今年は別路線組、または休養明けの実績馬に一目置かなくてはならなさそうです。ただし、安田記念に関しては、この宝塚記念と比べるとかなりメンバーの質が落ちる感じでしたので、G1だからといって過剰にその着順・成績を過剰に重視するのは如何なものかと思っています。

 次に展開です。逃げそうな馬は3頭いますが、思わぬ馬の“奇襲逃げ”がない限りは、恐らくタップダンスシチーが押し出されるように外枠からハナに立つでしょう
 後続の位置取りに関しては、出走馬が17頭いる割に脚質の棲み分けが出来ていますので、やや縦長の展開で平均ペースのまま落ち着きそうです。言わば全馬マイペースの展開といったところでしょうか。
 ただしそういった展開の場合、やや先行有利になるのが近代競馬の定め。さすがに追い込み脚質の馬はちょっと苦しい展開になってしまうのではないかと思います。やや馬場が渋り気味という事もありますし、せめて直線入口では10〜12番手から捲り気味に進出するようでないと間に合わない可能性が大です。

 ……それでは、各馬のポイントについて述べていきたいのですが、今日は時間がありませんので、有力馬だけに絞って話をしてゆきます。

 駒木の本命はシンボリクリスエス。言わず知れた、今の日本のチャンピオンディスタンスにおける現役最強古馬ですね。今回は有馬記念以来のレースになりますが、調教を十分に積んでいる上、休み明けの成績が抜群に良いという事もあり、ブランクによる悪影響を心配する必要は全く無いと思われます。
 昨年秋は、3歳馬の身で、ナリタトップロードら“テイエムオペラオー時代”の英雄たちを次々と破り、ジャパンカップ日本馬最先着(出遅れるも3着)、有馬記念制覇など、素晴らしいパフォーマンスを見せ付けました。今回のメンバーでも、能力的優位は明らかで、「マトモに走れば勝てる」馬であると思われます。

 対抗にはダービー馬・ネオユニヴァース。昨年のローエングリンの例を見るに及ばず、53kgの軽量は大きな武器になるでしょう。体調も万全ですし、名手・デムーロを鞍上に、6連勝でいきなりの古馬越えを目指します。
 ただし、例年のレヴェルなら大本命を背負ってもおかしくないのですが、世代レヴェルが全く掴めていない今の段階では、余りに信用し過ぎるのもどうかと思われます。秋には三冠挑戦を控えていますが、このレースの結果如何ではその価値に疑問符が付きかねないだけに、将来の種牡馬生活すら左右する大事な一戦となりそうです。

 3番手評価には昨年の覇者・ダンツフレームを抜擢しました。3歳時代はジャングルポケットと互角以上に戦い、昨年の宝塚記念ではツルマルボーイ以下に完勝した実績からも、そうそう実力的に見劣りする馬とは思えません。天皇賞・安田記念の敗北から人気の盲点になっているようですが、この2レースはいずれも得意範囲外の距離で、思い切って度外視してしまうのも手でしょう。
 例年、不当に人気が下がっていた実績馬がヒョコっと2着にやって来るこのレース、その意味ではこの馬が馬券上の本線だと思っています(笑)。

 4番手はアグネスデジタル。言わずと知れたワールドワイドなG1レース6勝馬です。前走の安田記念は八分のデキで見事な差し切りと、さすがは実績馬と唸らされるパフォーマンスでした。
 勿論、今回も優勝候補の一角です。アッサリと差し切ってしまっても全くおかしくはありません。ただ、さすがに2200mだと、ラスト1ハロンの粘りが欠けてしまうのではないか…という不安が否めません。果たして結果はどうなるでしょうか?

 以下は伏兵ということになりますが、最近充実著しいタップダンスシチーは、有馬記念の2着がフロックでなかった事を証明するための正念場になります。個人的にはここまで挙げた4頭のよりも頭一つ下の格付けになってしまうのですが、また展開に恵まれれば今度はアッサリと逃げ切ってしまってもおかしくありません。
 怖いのは、こちらも最近充実著しいイーグルカフェ。最近は直線でコンスタントに伸びて来るだけに、展開がハマった時は非常に怖い馬です。
 印の範囲外になりますが、ツルマルボーイもギリギリで2着候補の一員でしょう。ただ、今回は力関係だけでなく馬場状態がやや渋り気味という不利な条件が揃ってしまい、強く推せないところではあります。

 ……というわけで、フォーカスです。駒木は馬連BOX・3連複で5、6、13。元返しの押さえで枠連1-3も考えます(笑)。珠美ちゃんは、2-5、2-6、5-6、2-16、2-13、2-17の馬連6点です。

 それでは、また日曜夜の回顧編でお会いしましょう。


駒木:「……というわけで、辛いお時間のスタートだ(苦笑)」
珠美:「毎週のことですけど、ホント、溜息が出てしまいますね……」
駒木:「でも、今週は講義の時間が無くて良かった。多分、普通に1頭ずつ論評してたら、ヒシミラクルのところで『この馬が勝ったら、自分は競馬を辞める』…とか口走ってたと思うから(笑)」
珠美:「逆にその方が良かったんじゃありません?(笑)」
駒木:「酷い言われようだな〜(苦笑)。まぁ、実際そう思えて来るよ、最近の不調じゃね。
 あぁ、いつまでも雑談してちゃいけない。本題に入ろう」
珠美:「……ハイ。それでは改めて、レース結果を振り返っていきますが、まずは上位の着順をご覧頂きましょう」

宝塚記念 結果(5着まで)
1着 10 ヒシミラクル
2着 ツルマルボーイ
3着 16 タップダンスシチー
4着 ネオユニヴァース
5着 シンボリクリスエス

駒木:「3番人気までの馬が綺麗に飛んで、中堅どころの馬がワン・ツー・スリーか。まぁどの馬もG1馬かG2馬でG1でも2着の経験ある馬ばかりだから、こうなってもおかしくはないんだよね。ただ、この上位3頭を馬券の軸にする図太い神経は、僕には到底持てないけれどね(苦笑)」
珠美:「馬券と言えば、1220万円をヒシミラクルの単勝に投じた男性がいたとニュースで報じられましたね。配当金は2億円弱だったそうです。凄いですね……」
駒木:「安田記念の高額当たり馬券の配当を直接コロがしたんじゃないか…とか言われてるけどね。一部じゃタイムスリッパーなんじゃないかとまで(笑)。でも、それなら馬単と3連複で勝負するだろうと思うんだけど。あ、2着馬と3着馬忘れてたのかな?(笑)
 まぁ、個人的には、そんなバカげた行為で金を儲けられても羨ましいとは思わんけどね。どうせ、そんな金銭感覚じゃ、何年もしない内に蕩尽しちゃうだろうし」
珠美:「私は素直に羨ましいです(笑)。……それでは、上位馬を中心に1頭ずつ簡単にレース回顧をお願いしたいと思います。まず見事にG1レース3勝目を挙げたヒシミラクルからですが、勝因は何だったんでしょうか?」
駒木:「勝ちパターンにハマったって感じだなぁ。残り1000m前後からペースが上がってロングスパート合戦。しかも最後は全馬バテバテの泥仕合。ワンペースで走り続けるようなレースにはとことん向いている馬だからね。
 向正面で、シンボリクリスエスのデザーモと、アグネスデジタルの四位が後ろを随分と気にしてるんだよね。アレは多分、ネオユニヴァースの動向を気にしてたんだと思う。そこで出し抜けを食らわせようとペースを上げたら、逆にヒシミラクルに出し抜かれてしまったというね(苦笑)」
珠美:「では、実力で勝ったというわけではないと?」
駒木:「いや、“ノーマークで自分のパターンになったら現役最強馬クラスとも互角以上に闘える”という実力はあるわけだから、そこまで言っちゃマズい。そういう“限定付の強豪馬”って、意外とバカに出来ないんだよね。
 ただ、今回はアグネスデジタルやダンツフレームの凡走に助けられた感もあったし、マトモなレースになったらまだまだ分からないって感じはする。でも、この馬が出るG1は変なレースになっちゃうんだよなぁ(苦笑)」
珠美:「2着は昨年に続いてツルマルボーイでした」
駒木:「変則ペースに惑わされず、キチンと自分のレースをしたのがこの馬。全馬バテたラストの1ハロンでスタミナを残していたのが好結果に繋がったね。でも、それで届かないんだから、やっぱりちょっと物足りない」
珠美:「3着のタップダンスシチーはいかがでしたか?」
駒木:「うん、普通にG1で入着以上が目指せる馬に成長したって事で良いんじゃないかな。どの世代にも必ず1頭いる、ソコソコの実力を兼ね備えたペースメーカー役ってところ。チャンスが巡って来たらG1の1つくらい狙えそうではあるけどね」
珠美:「4着、5着には人気を分けた2頭が。ネオユニヴァースシンボリクリスエスでした」
駒木:「ネオユニヴァースはちょっとヘタレなレースしちゃったねぇ。道中は澱みの無いペースに戸惑っていた感じだったし、直線でも結構早い段階で勝負圏内から脱落しちゃったし。一応は4着に入って、最低限の面目は保った感じだけど、これが現時点でのフルの実力としたら前途は厳しいね。三冠獲っても史上最弱の三冠馬になっちゃうかも知れない。
 シンボリクリスエスは……。う〜ん、いつもなら一番力強い走りをする所で一杯になっちゃったからなぁ。タップダンスシチーに競り負けるなんて、普通じゃ考えられないから、どこか体調が万全じゃ無かったってことなんだろう」
珠美:「私の本命馬・アグネスデジタルは全く良い所がありませんでした(苦笑)」
駒木:「4コーナー手前で既に圏外だったもんね。これも実力通り走っていない。ベタな言い方だけど、前走でデキ途上の状態で激走した反動が来ちゃったのかな。まぁ、こちらは秋の天皇賞に期待だね。ただ、この馬が天皇賞勝ったら、田原成貴が『またやったなスイ』とか本に書きそうでイヤなんだけどな(笑)」
珠美:「(苦笑)……でもこれで、とうとう春のG1シーズンは終わってしまいました。私は安田記念の万馬券で何とか助かったという感じです」
駒木:「僕は救いようの無い感じだね(苦笑)。まぁ、今年はちょっと競馬の予想に専念できない事情が積み重なってるからね。受講生の皆さんには、僕の予想を外して馬券を買う事を薦めておくよ(笑)」
珠美:「では、そろそろお時間となりました」
駒木:「じゃ、講義を終わろうか。ご苦労様」
珠美:「博士も、受講生の皆さんもお疲れ様でした♪」

 


 

2003年第37回講義
6月27日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(6月第4週分・後半)

 お約束通り、何とか週内のゼミ実施が叶いました。そのせいで談話室(BBS)の質疑応答が完全に滞ってしまっていましたが、こちらの方も来週からは可能な限り迅速な対応をして行きたいと思っています。

 さて、今週は「週刊少年サンデー」30号のレビューとチェックポイントの他に、「読書メモ」として、先日発売になった月刊増刊・「少年サンデー・スーパー」7月号に掲載された『絶対可憐チルドレン』(作画:椎名高志)を紹介させてもらいます。
 最近でこそ連載の失敗で“流浪生活”を強いられている椎名さんですが、実は知る人ぞ知る短編の名手。今回の作品もその実力がフルに発揮されたものとなりました。講義の後半部分にどうぞご注目下さい。

 ……それではまず、いつも通り情報系の話題から。今日は「サンデー」来週号の読み切りについてのお知らせです。

 来週の「サンデー」に掲載される読み切りは、先日の「小学館新人コミック大賞・少年部門」で大賞を受賞した『ゴッドルーキー』(作画:宇佐美道子)。各種増刊や系列雑誌が充実している「サンデー」では、新人さんのデビュー作が本誌に掲載される事は稀なのですが、今回は大抜擢の本誌デビューとなります。
 この『ゴッドルーキー』、「新人コミック大賞」審査員各氏の選評を総合すると、「話運びやセリフなどに高いセンスを感じさせるが、ストーリーはやや平板で課題が残る」…というもの。当ゼミのレビュー基準からすれば微妙なタイプの作品と言う事になるでしょうか(笑)。まぁ、色々な意味で注目ですね。

 ……では、「サンデー」今週号のレビューとチェックポイントへ。今週のレビュー対象作は読み切りレビューの1本のみとなります。

☆「週刊少年サンデー」2003年30号☆

 ◎読み切り『暗号名はBF』作画:田中保左奈

 ギャグ系短期集中連載も一段落つき、今週からストーリー系の読み切りシリーズが始まります。

 今週の『暗号名はBF』(=コードネームはベイビーフェイス)の作者・田中保左奈さんは、椎名高志さんのアシスタント出身の若手作家さんです。
 田中さんは、ネット界隈の一部で話題になったウェブコミック『ポカちゃんと僕』の原画を担当しており、その作者紹介に略歴が掲載されていましたので、そちらを参考にしてキャリアを紹介させてもらいます。
 田中さんは「サンデーまんがカレッジ」で佳作を受賞、さらに第35回(94年下期)「小学館新人コミック大賞」で入選を受賞し、デビュー。これまで98〜99年『ワイルドフラワーズ』02年『プレイヤー〜禁断のゲーム〜』/原作:若桑一人)の2度、増刊連載を経験しています。また、本誌には、ほぼ1年前に『プレイヤー〜禁断のゲーム〜』の読み切り版を発表して以来の登場となります。
 ご本人は略歴で「もはや若手とは言えない」…みたいな事を書いてましたが、確かに作家歴だけなら、もう既に中堅の域に突入していますね。少年誌系で週刊連載未経験の若手さんとしては、「ジャンプ」系“ベテラン若手”の霧木凡ケンさんに次ぐくらいのキャリアじゃないでしょうか。


 余談ですが、Googleで検索していたら、増刊00年8月号のラインナップが出て来たんですが、そのメンツが凄すぎます。橋口たかしさん、井上和郎さん、雷句誠さん、松江名俊さん、曾西けんじさん、片山ユキオさん連載or短期連載経験者のオンパレード。更にはかつて「ジャンプ」で、“「新人海賊杯」(世界漫画愛読者大賞の事実上の前身)2位で連載獲得→突き抜け”というディープな経歴を持つ坂本眞一さんまで。今度東京行く時、国会図書館で読んで来ようかなぁ(笑)。

 ……さて、無駄話はそこまでにしまして、『暗号名はBF』の内容について述べてゆきましょう。

 まずからですが、基本的には見栄えの良い好感度の高い絵柄だと思います。キャリアもキャリアですし、このまま即連載に突入したとしても全く問題無いでしょう。
 ただ、ペンタッチが全般的に一本調子で、ちょっとメリハリに欠けているのではないか…という事と、人物キャラの頭部が実際よりも相当大きめに描かれていて多少違和感を感じる…という以上2点が多少気になります。読む人によっては、「下手ではないんだけど、なんだか読んでて疲れる」…などと感じてしまうかも知れません。

 次はストーリー・設定に関してですが、こちらも大筋はマズマズまとまっていると思います。
 ある時は普通の中学生、またある時は日本を守る凄腕のスパイ…というアンバランスな二重生活をする主人公の日常・非日常を限られたページ数の中で上手く描写出来ていますし、“変身前”と“変身後”での容姿以上のコントラストもメリハリという面では効果的でした。

 しかし、残念な事は、
 「女スパイが主人公の色仕掛けに陥落し、機密データを奪われる→実は、接触を察知していてダミーを掴ませた→女スパイが、再度主人公の色仕掛けに陥落してギブアップ」
 ……という、シナリオで最も重要な部分にかなり無理があるという事です。
 こういうストーリーの場合、
 「女スパイ、色仕掛けに陥落→実は騙された振りをしていて、主人公が手玉に取られていた→クライマックスで主人公逆襲。逮捕・連行されてゆく女スパイが、主人公に恋している自分に気付く」
 ……なんてパターンなら(ベタですけど)自然なのですが、今回のシナリオでは、女スパイが敵襲ではなく自分が騙される事を予測していた事になってしまい、どうにも不自然なのです。
 他にも、主人公の“素”が不自然なまでにウブだったりとか(あんな環境で生活している中学2年生の少年が、性に全く目覚めてないのは異常です)サブキャラ・マジョラムが余りに作者にとって便利すぎるキャラになっている部分など、あちこちに細かいキズが目立っていて、「読み切りならともかく、これで長期連載はなぁ……」という仕上がりになってしまったのが非常に残念でした。

 ……というわけで評価。本来、ここまでまとまった作品ならA−からB+くらいの評価を出すところなんですが、やはりシナリオのキーポイントでの矛盾は大きな減点材料になってしまいます。やや辛口ながらB+寄りのBとしておきましょう。


◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「タイムスリップできるならどの時代で何をしたいか」。連載陣の皆さんは原始時代から未来までバラバラの回答。さすがは発想力溢れるマンガ家さんたちですね。
 駒木は……候補が一杯ありすぎて困ってしまうんですけどね(笑)。自分が生まれる前にあったスポーツの名勝負を生で観てみたいですし、20年前に戻って“いじめられっ子”だった自分に処世術を教え込みたいですし、10年前に戻って、初めて彼女が出来て浮かれてた自分に喝を入れてやりたいですし、5年前の自分には「麻雀やってる暇あったら歴史の勉強して小説書け」と言ってやりたいですし……って、本当にグータラだったんだな、俺は。
 あ、でも一番やりたいのは、何百年か未来に飛んで、その頃発刊されている「世界の歴史」シリーズを読んでみる事ですね。21世紀初頭の日本と世界がどんな感じで俯瞰されているのか、非常に興味があります。

 ◎『史上最強の弟子ケンイチ』作画:松江名俊【現時点での評価:B+/雑感】
 
 こういう話では、ほぼ必ず「ロミオとジュリエット」が演目になるんですよね。何故なら、それはキスシーンがあるから(笑)。
 しかも必ずヒロインがジュリエットで、美男子系のゲストキャラがロミオをやり、主人公は見ちゃいられないくらい取り乱すというのがパターンなんですよねぇ。まぁ、同じMNO(モテナイ男)として、気持ちは痛いほどよく分かりますが(苦笑)。

 ◎『MAJOR』作画:満田拓也【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 先週のこのコーナーで、「これでファールってのはどうよ?」って言ったんですが、完膚なきまでにファールでしたね(苦笑)。まぁ、よく考えたらあそこでホームランだと救いが無さ過ぎますか。
 どっちにせよ、これで高校編の試合はラストマッチになるのかな? 伏線は完全に処理しちゃいましたし、ここまでで時間掛かり過ぎてますし。ここから甲子園編とか始めちゃうと、週刊誌で『なんと孫六』作画:さだやす圭)やってるような感じになっちゃいますよねぇ。

 
 ◎『からくりサーカス』作画:藤田和日郎【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 連載開始当初と比べて、勝のキャラが変わり過ぎ(笑)
 でも、それで全く違和感が無いと言う事は、長い間かけて、地味ながら確実に勝が成長する過程を描き続けて来たからなんでしょうね。多分、“キャラクターが勝手に動き出す”というのはこういう事を言うんでしょう。

 ◎『美鳥の日々』作画:井上和郎【現時点での評価:B+/雑感】

 ついにネットアイドルネタまで引っ張り出して来ましたかー。……ていうか、美鳥のサイトはどう考えてもバーチャルネットアイドルサイトだと思うんですが(笑)。
 人生相談のコンテンツなんか、ウチの去年の新歓祭(3000万ちゆデー)思い出してしまいました。まぁ珠美ちゃんは少しシャレの利かない子なので、あんな形になっちまいましたがね(苦笑)。

 
 ……さて、いつもの講義内容はこれで終了ですが、先に予告しました通り、今日は引き続き“読書メモ”をお送りします。

◇駒木博士の読書メモ(6月第4週後半)◇

 ◎『絶対可憐チルドレン』作画:椎名高志/『少年サンデー超増刊』7月号掲載

 先ほどは田中保左名さんの読み切り作品をレビューしましたが、今度はお師匠さんの番ですね。

 椎名さんはご存知、長期連載作・『GS美神極楽大作戦!!』を代表作に持つベテラン作家さん。ただ、最近はヒット作に恵まれず、現在は「サンデー」系少年誌を“行脚”して、読み切りや短期集中連載をこなしています。そして、今回の増刊登場もその一環で、今月から3回連続で読み切りを発表するとの事です。

 で、今回の3連続読み切りシリーズの第1弾ですが、これがもう、近頃の不振はどこへ行ったんだろうと言うような素晴らしい傑作でした! 
 キャラクターを構築するにあたって大事な、主観(このキャラならどう動くかという“人間性”の把握)と客観(そのキャラの動きを読者はどう受け止めるかと言う予想)の認識と、それに応じた描写がほぼ完璧に出来ていますし、ヒロインの女の子たちが、“子供の皮を被った大人”ではなく、“極度にマセた子供”に描けているのも素晴らしいです。
 また、目立たない所でも、キッチリと築き上げた世界観をわざとらしい“説明”ではなく必要最小限の“描写”で全うしているなど、普通の作家さんがしたくても出来ない事を次々とやってのけています。この作品、一見だけではトリッキーでマニア向けのように感じますが、ストーリーテリングの根底に流れている部分は見事なまでに基本に忠実なもので、これから読み切りを描こうとしている新人・新人予備軍の方たちには格好のテキストであるとさえ言えるものです。

 そして何よりこの作品の凄い所は、まだ1話目だと言うのに、既に以前いくつかのエピソードが描かれているかのような“(良い意味で)手垢のついた完成度”の高さです。既にファンサイトなどでは「この作品で連載を!」…という声も高いですが、確かにこれは今すぐにでも週刊連載で読んでみたい気持ちにさせられます

 “アンチ・アンチエスパー”といった、やや反則気味の設定など、“玉にキズ”的な要素も無きにしも非ずですが、それでもこの作品の圧倒的な完成度を揺るがせるには至りません。評価は文句ナシのA。今の所はシリーズ化の予定は無いようですが、是非とも続編、または連載化を実現させてもらいたいものです。素晴らしい作品を有難う御座いました。

 ……というわけで、久しぶりに後味の良いゼミの締め括りが出来ました。この調子で来週以降も傑作揃いだと良いんですけどね。では、ゼミはまた来週。明日は競馬学特論でお会いしましょう。

 


 

2003年第36回講義
6月25日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(6月第4週分・前半)

 ようやく日程がほぼ正常になりました。今週の「現代マンガ時評」前半分をお送りします。

 さて、今日は情報系の話題がありませんので、早速レビューとチェックポイントへ。
 レビュー対象作は、新連載1本と新連載第3回の後追いレビュー1本の計2本です。代原読み切りとか無くて、本当に良かったと思っています(笑)。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年30号☆

 ◎新連載『武装錬金』作画:和月伸宏

 新連載シリーズも第3弾。いよいよ和月伸宏さんが登場です。先週に連載を開始したつの丸さん同様、打ち切りを喰らった後、長らくのブランクを経ての再起作となります。気分はタイトル奪回に賭ける元チャンピオンのプロボクサーといったところでしょうか。

 そんな和月伸宏さんは1970年5月生まれの33歳。そのキャリアは、弱冠16歳にして87年上期の「手塚賞」で佳作を受賞をしたところから始まります。マンガの新人賞において、若いという事はそれだけで受賞への“武器”となりますが、それにしてもかなりの“若年受賞”と言えるでしょう。
 ただ、この年齢では本格的な活動は難しかったようで、ここから数年間の空白期間が存在します。どうやらこの間に上京し、複数の作家さんの下でアシスタント修行を積んでいたようです。その修行時代中の91年には「ホップ☆ステップ賞セレクション」6巻で“仮デビュー”を果たしています。
 本格的な作家活動のスタートは92年の増刊春号での読み切り掲載から。同年の増刊冬号では後のヒット作・『るろうに剣心』のプロトタイプとなる作品を発表、これが人気を博したのか、翌年には再度プロトタイプの読み切りを本誌(93年21・22合併号)に発表し、これが連載獲得の決め手となりました。

 待望の連載は94年19号からスタートとなりました。その作品は勿論、『るろうに剣心 ─明治剣客浪漫譚─』です。
 この『るろうに剣心』は、魅力的なキャラクターや(少年誌としては)なかなか重厚なストーリー展開で上々の人気を獲得。後にはアニメ化・OVA化され、同人人気も当時の「ジャンプ」で1、2を争うものとなりました。
 『スラムダンク』終了後の、いわゆる“ジャンプ暗黒期”に突入すると、『るろうに剣心』は「ジャンプ」の看板作品としても(若干“看板”としては物足りないながらも)懸命な働きを見せ、この連載は99年43号に大団円を迎えるまで255回の長期連載となりました。

 これで売れっ子作家のポジションを確固たるものにした和月さんですが、2度目の連載作品となった『GUN BLAZE WEST』は無念の2クール・28回打ち切り(01年2号〜35号)。この時は実績作家の特権で“突き抜け”を免除されていましたので、事実上のストレート打ち切りでした。
 この作品は駒木個人の感想としても「打ち切り止む無し」というクオリティに留まり、ヒットを2度連続させる事の難しさを象徴するような打ち切り劇となりました。

 そして今回は、本格デビュー以来初となる現代劇のアクション・ファンタジーで2度目のヒットを目指します。果たしてその内容はどんなものになっているでしょうか?

 ……というわけで、『武装錬金』についてお話を進めてゆきましょう。

 まずに関してですが、絵柄そのものは以前と変わらないものの、『るろうに』の頃の荒っぽさは影を潜めて、完成度が随分と増しているような気がします。駒木は絵心が全く無い人間なので表現が難しいのですが、人物が人間っぽく描かれるようになった感じがするんですよね。
 あと見逃せないのが、マンガ的ディフォルメ表現のソツの無さ。和月さんの画風はメリハリが弱いという弱点を抱えているのですが、この表現の巧みさはそれをカバーし、更にストーリーにもメリハリを効かせていると思います。

 次はストーリー&設定に関して。
 ……目ざとい受講生の方は気付いていらっしゃるでしょうが、今回のシナリオの大筋は、実は最近の「ジャンプ」で“流行モード”になっている、「正義感溢れる主人公がその正義感ゆえに第三者の揉め事に巻き込まれ、その中で特殊能力を手に入れてパートナーと共に問題解決へ動き出す」…というものです。今年の連載作品で言えば、『TATTOO HEARTS』(作画:加治佐修)や『闇神コウ〜暗闇にドッキリ!〜』(作画:加地君也)に当てはまるパターンですね。

 しかしこのパターン、流行している割には連載の成功には結びついておらず、それどころか短期打ち切り人気低迷といった事態が相次いで発生しています。
 では、どうしてこんな現象が発生するのでしょうか? 要因は大きく分けて2つ考えられます。
 1つはキャラクターの造形不足で、主人公が“正義感溢れる少年マンガの王道的キャラ”というだけの没個性キャラになってしまったり、サブキャラ・悪役が各々の役割をこなすだけの“記号”になってしまったり…というもの。つまりキャラが設定に負けている状態なわけですね。
 そして2つ目は、シナリオの練りこみ不足世界観などの設定は完成されていても、それを活かしたエピソードが作れていない事が多いのです。こういう場合はキャラクターもこなれていない場合が多いので、“没個性なキャラが没個性なストーリーを展開する”というネガティブ相乗効果が炸裂してしまう結果になってしまいます。
 要するにこのパターンは、比較的簡単に世界観や設定を構築出来る割に、魅力あるストーリーやキャラクターを練り上げる事が難しいんですね。ギョーカイ的な言い方をすると、「編集会議のネーム審査は潜り抜け易いが、いざ連載を始めてみると、たちまち暗礁に乗り上げる」…という感じになるでしょうか。

 ──では、この『武装錬金』の場合はどうでしょうか?

 まずキャラクターの構築については、とりあえず主人公・サブキャラ共に十分な合格点をあげられるでしょう。
 決め台詞(『粋じゃねえ』とか『曲がった事が大嫌い』とか)に頼らずに主人公の“正義の味方”ぶりが演出出来ているのも良いですし、パートナー役との性格のコントラスト(“動”と“静”)もベタですが良い効果を出しています。
 また、主人公の周囲に“活動のハンデ”、または“萌え担当”となる妹キャラや、狂言回し担当の半エキストラ的なキャラクターを配置しているのもポイントが高いです。この辺りはさすがに“元・「ジャンプ」看板作家”という肩書きがダテではない事を証明していますね。

 次にシナリオの練りこみについてですが、連載第1回という事でまだ“様子見”の段階ながら、こちらもまぁ及第点は出せる出来具合になっていると思います。
 まず、登場人物のキャラクター・設定に沿った形で、しかも細かい伏線を消化させながら自然な“巻き込まれ型ストーリー”が演出出来ているのは高く評価できるポイントです。それに、この話における設定の要である“武装錬金”の設定が、「闘争本能に反応して“スイッチ・オン”」…というストレートで理屈抜きなものだったのも、やや安直とはいえ、理屈っぽくならずに済んで逆に良かったのではないでしょうか。
 ただし、シナリオの細かい部分では“狙い過ぎ”な過剰演出や、勢いに任せ過ぎて少々ご都合主義になってしまった見せ場のアクションシーンなどの減点材料も見受けられます。特に妹を化け物に食われた主人公が怒りを爆発させるシーン、この“泣かせ”のシーンが消化不良だったのが非常に惜しいポイントだったと思います。

 ……というわけで、ややキャラクター偏重で“名作崩れの人気作”に陥る嫌いがあるものの、この『武装錬金』、第1回を見る限りではマズマズの好スタートを切ったと言えると思います。余程シナリオに難が出て来ない限り、長期連載も展望できる期待作になるのではないでしょうか。暫定評価はA−としておきましょう。

 
 ◎新連載第3回『キックス メガミックス』作画:吉川雅之【第1回掲載時の評価:B−

 さて、今週からは後追いレビューもスタートです。まずは今回の新連載シリーズ第1弾の『キックス メガミックス』から。

 あまりクドクドと苦言を呈したくないので、簡潔にまとめてしまいますが、今回に至っても、2週前に指摘した問題点は全く改善されず、それどころかますます泥沼にハマっていってしまっているような感さえ窺えます。
 中でも一番マズいのは、ストーリー展開が既に間延び&ワンパターン状態に陥っている事でしょう。主人公がテコンドーの才能があるという事は第1話の時点で明らかになっているのに、それと同様のパターンが工夫も無しに3回続いてしまっています。それも第2回からは敵役の方が明らかに“良い人キャラ”のため、主人公の快進撃が全く読後の爽快感に繋がっておらず、これはもう最悪の展開と言ってしまえると思います。
 また、ここまで来てもストーリーの長期的な展望が全く見えて来ないのも問題でしょう。普通の読者はそこまで気が長くありませんし、駒木のような熱心にマンガを読み込む人間でも、作品から漂う行き当たりバッタリ感に辟易してしまいます。

 評価は戒めの意味も込めてCにダウンさせます。現在のところ、突き抜け候補一番手と考えて良いでしょう。というか、この作品を2クール以上続けさせたら、駒木は茨木編集長のセンスを本気で疑い始めると思います(笑)。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 今週は、読者投稿コーナー『ジャンプ団』の人気イラストコーナー・『まんが★王』があったんですが、このコーナー見ていつも思うのは、「これに出て来たキャラで本当にマンガ描いたら、メチャクチャつまんなそう」って事だったりします(苦笑)。
 何て言うか、イラストと一緒に載っている設定が、もっともらしい割には話作りに全く役に立たないものばかりなんですよね。そのキャラがどういう人間なのか、人物像が全く見えて来ないと言うか。まぁ、それを絵から読者に想像させる狙いもあるんでしょうけどね。

 『Mr.FULLSWING』作画:鈴木信也【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 少し前の擬似打ち切りネタもそうでしたが、鈴木さん、自虐ネタはいつも強烈ですなー(笑)。笑えるか笑えないか微妙な小ネタを連発するより、週に1発自虐ネタをブチかませば、もっとファンが増える気がするんですが。まぁ大きなお世話ですね(苦笑)。
 ただ、私立兄御田学園なんですが、本物の真性オタクの皆さんはあんな常識的な行動はとりません。本屋で立ち読み中にボソボソっと何やら独白したかと思ったら、いきなり「ゲフゲフゲフ」と笑ったりします。まぁ、そんなマジ描写をされても、そんなマンガ絶対に読みたくありませんが(笑)。

 ◎『HUNTER×HUNTER』作画:冨樫義博【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 今週から登場した昆虫型生物の“女王”、てっきり『レベルE』に出てたマクバク星人かと思ったんですが、容姿を見比べると微妙に違うみたいですね。まぁよく考えたら、マクバク星人はメスしか産まないので、王じゃなくて女王を産むわけですし。
 しかし今週は新キャラたちが続々と出て来たんですが、この作品のパターンとして、大量にサブキャラが出て来た直後には必ず大量の人死にがあるんですよね。う〜、おっかねぇ。

  
 ◎『BLEACH』作画:久保帯人【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 この作品における“ヤムチャ”的ポジションの石田クンも完全勝利。しかし相手が七番隊の序列第4位ってところが、他のメンバーとの微妙な力関係を表しているようないないような(笑)
 でもまぁ、主役クラスが頭より体を動かす方が得意なタイプだけに、こういうクールなタイプがいるとメリハリがついて良い感じですね。
 しかし、「どうやら尸魂界じゃ“最強の使い手”ってのは、だらだらと御託の長い奴の事を言うらしい」ってセリフ、決まってますなぁ。このマンガの後に某『BLACK CAT』なんか読むと効果倍増です。

 
 ……では、前半分はこれまで。後半分は頑張って週内実施を目指します。ではでは。

 


 

2003年第35回講義
6月23日(月) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(6月第3週分・後半)

 お待たせしました。先週分のゼミ・後半分をお送りします。
 今日はあまり大きなボリュームじゃないんですが、そのエネルギーは、明日か明後日の「ジャンプ」レビューに回したいと思います。
 今日は外出し損ねて、まだ「ジャンプ」の新連載・『武装錬金』読んでないんですが、既にネット界隈では「糞だ」「いや、普通じゃん」…と、意見が激しくぶつかっているようで。 ──まぁ「傑作だ!」という声がほとんど上がっていないのがアレなんですが(苦笑)、当講座ではどのような評価になるか、どうぞご注目下さい。

 
 ……では、今日も「サンデー」関連情報からいきましょう。来週は読み切り作品が掲載されますので、そちらの紹介をしておきましょう。

 次号(30号)に掲載されるのは、『暗号名はBF(コードネームはベイビーフェイス)作画:田中保左奈)。
 作者の田中さんは、昨年に増刊連載作品『プレイヤー 〜禁断のゲーム〜』原作:若桑一人)の読み切り版を本誌02年32号で発表して以来、久々の本誌登場となります。原作者抜きでどのようなストーリーテリングを見せてくれるのでしょうか? 
 勿論、この作品についてはレビューで色々とお話する予定です。

 しかし、今年の「サンデー」は「ジャンプ」以上に若手・新人作家さんの本誌登用をやっているのですが、その割には新連載の立ち上げは遅れているんですよねぇ。
 まぁ今のラインナップは昨年の今頃よりも粒揃いで、「今すぐ打ち切れ」と言いたくなるようなモノは無いのですが、それにしたってボチボチ新陳代謝を図る頃だと思うんですけどね。(打ち切られる作家さんにとっては、たまったもんじゃないでしょうが^^;;)

 ……では、レビューとチェックポイントへ。今日のレビュー対象作は、短期集中連載の総括レビュー1本です。チェックポイントと併せてどうぞ。 

☆「週刊少年サンデー」2003年29号☆

 ◎短期集中連載総括『ビープ!』作画:しょうけしん【第1回掲載時の評価:

 先週のアオリで薄々とは予測出来てましたが、なんと3回で連載終了です。まさに短期集中ですねぇ。
 まぁ、ここまで短かったら逆に良からぬ憶測(打ち切りか否か)が排除できて良いですよね(笑)。初めから3回限りと決めた上での起用だったんだと思えますから(笑)。

 ちなみに「サンデー」の場合、短期集中連載から本格連載へ移行するかどうかを1〜2週目の段階で決めてしまう事も多いので、3回で終了だからといって冷遇されているとはならないと思います。(駒木も含めて)読者って、表象的なモノから色々と憶測してしまうわけですが、どうもそういうのは大抵外れているみたいですね(苦笑)。
 最近はこのゼミでも、“『こうじゃないの?』と憶測→関係者筋から『そうじゃありません』と指摘”…というパターンがよくあって、反省する事しきりです。でも、憶測じゃない本当の事は、得てしてオフレコだったりするんですよ、この業界(苦笑)。本当にサジ加減が難しいですね、いやはや。

 閑話休題。作品の内容について述べましょう。

 これは第1回のレビューでも少し触れましたが、今回の連載では、ギャグで笑わせる以外に友情ドラマによる感動(言わば“泣かせ”)を盛り込もうという試みが為されていたように思えます。しかし、その試みは果たして成功したでしょうか? 
 残念ながら、答えはです。

 では何故、この試行は失敗に終わったのでしょうか。
 その理由としてはまず、ページ数が相当に限定(15ページ前後)された状況では、笑わせて泣かせて…というのは余りに忙し過ぎたという事が1つ目です。3回という連載回数もその足を引っ張った事でしょう。
 そして2つ目には、しょうけしんさんが、「どのようにしたら読者は感動し、涙腺を刺激されるか」というメカニズムを理解していない、もしくはそれを作品に活かすだけの技量に乏しい事が挙げられます。これは、この作品にとっては致命的な“キズ”と言っていいものです。

 ここで“泣かせ”のメカニズムについて詳しく述べる事は控えますが(無粋な行為ですし、駒木も小説家志望の端くれとして、切り札的な手の内はバラしたくありませんので)、読者を感動させようとするのであれば、もっと主人公に親近感を持たせ、3話かけて1本の感動的なシナリオを消化させるようなペースで進行するべきだったと思います。
 性格の悪い主人公に、とってつけたような別れのドラマを演じさせても、読者は感動するどころか白けてしまうのではないでしょうか。しかもそれで水準には達しているギャグの技量が活かし切れなくなってしまっては、せっかくのチャレンジも逆効果にしかならないでしょう。

 ……というわけで、評価は“落第点”のB−に後退です。少なくとも意欲だけは窺えただけに、態勢を整えて再チャレンジしてもらいたいところですね。 

 
◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 おなじみ巻末コメントのテーマは、「一番怖かったホラー映画」。“最多得票”は4票で『女優霊』。駒木は未見ですが、筋金入りのホラー映画ファンでも、この映画は心底怖いそうですね。
 駒木が一番震えた作品は、映画じゃなくて小説なんですが、綾辻行人さんの『殺人鬼』シリーズですね(これ、厳密に言うとスプラッタに属するんですが)。恐怖感で言ったら『黒い家』とかも捨て難いんですが、文字読むだけで肉体的苦痛を実感させる描写はもう……。結構、グロ画像とか平気なタイプなんですが、このシリーズだけはもう勘弁願いたいですね(苦笑)。

 ◎『いでじゅう!』作画:モリタイシ【現時点での評価:A−/雑感】

 2本立てって言っても、ページ数大して変わらんじゃないか……というツッコミはさておき、それにしても季節感の無いネタで勝負してきましたなー(笑)。
 しかしネタが部活動対抗リレーとは、またマニアックなところを。しかもちゃんと「部にまつわる物をバトン代わりにする」という部分を押さえているし、ポイント高いですね。
 ちなみに、駒木が高校生時代に見た部活動対抗リレーでは、水泳部の“バトン”はコースロープで、柔道部のは(!)でした。パフォーマンス賞とかは無かったんですが、野球部がゴール地点にベースと審判を配置して、アンカーがそこへ滑り込んで「セーフ!」とやらかした時はバカウケ状態でしたね。面白い事考えるバカがいたものです。

 あと、今回忘れちゃいけないのが、モモリの柔道着+ブルマ。これはやっぱり『帯をギュっとね!』で、作者の河合克敏さんがムッツリスケベだという事が判明したあの名シーンのオマージュなんでしょうねぇ。

 ◎『MAJOR』作画:満田拓也【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 さぁ、いよいよ大詰めですね。これで打球がファールって事は、ちょっと考え難い気がするんですが、どうなんでしょうね。
 これに関しては別のマンガレビューサイトさんで、
 「いくら吾郎たちが努力したと言っても、海堂の連中の方がもっと血の滲むような努力と苦労をしているはず。そんな彼らが、主人公の敵だからという理由で負けるのは納得いかない」
 ……という意見があり、なるほどなぁ…と思ったものです。主人公が勝つのが原則の少年マンガとは言え、譲っちゃいけない部分ってのはあるはずですよね。
 まぁしかし、主人公に奇跡が起こりまくって勝ちまくるスポーツマンガの最高峰・『プロゴルファー猿』を生み出した「サンデー」ですから、その辺は何でもアリなのかも知れませんけどね(苦笑)。

 ◎『売ったれダイキチ!』作:若桑一人/画:武村勇治【現時点での評価:A−/雑感】

 いくら一般公開の文化祭でも、実際にはこれほどトイレが混む事は有り得ないんですが(だって、学校ってアホみたいにトイレ多いですよ)女子トイレの混雑という題材そのものには現実味がありますね。だって、イベントやスポーツの会場とかでは、確かに女子トイレって恐ろしいほど混んでますからねぇ。傍から見てて、「そんなに何十分も待たされて大丈夫なのか?」…といらぬ心配をしてしまったり。
 その点、男は楽なんですよね。“回転率”がめっぽう早い上、どうしても我慢ならん時は物陰で済ませてしまったりも出来ますし(笑)。

 ところで、先週の土曜日に母校の文化祭に行ったんですが、駒木が所属していたSF研究部(実態は文芸部+漫研+TRPG同好会)の後輩たちは、模擬店でマンガ喫茶をやって繁盛させてました。要は、日頃から身内でやっている事──各々でマンガを持ち寄って、茶を飲んで菓子を食べながら読む──をオープンにして金を取っただけなんですが(笑)。
 今や10年以上の先輩となった駒木などは、「上手い事やったなぁ」…と思う反面、よく“当局”から許可が出たなぁと感慨にふけったり。駒木が在籍していた頃は、マンガを読んでるのがバレた時点でかなりヤバかったんですけど、少しずつ時代が変わってるのかも知れません。その内、模擬店インターネットカフェなんてのも登場しそうですね。


 ◎『かってに改蔵』作画:久米田康治【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 いいなぁ、ごっつぁんゴール(笑)。
 駒木なんて、ごっつぁんゴールのボールが流れて来たと思ったら、それが蹴ったら骨折間違いなしのボーリング球だったり、狙っていたボールをごっつぁんゴールで横取りされて悔しがってる所に、それがきっかけで起こった修羅場(ごっつぁんセーブ)の処理について相談されたりとか、27年余の人生、ずうっとそんなのばっかですよ。
 ……ひょっとしたら、駒木はゴールキーパーなんでしょうか。だとしたら、せめてチラベルトみたいにフリーキックで良いから蹴らせて欲しいもんです。誰ですか、アンタはごっつぁんゴールも外す男だろ? とか言ってる人は。

 

 ……というわけで、最後は訳が分からなくなってしまいましたが(苦笑)、今日はここまで。今週は少し時間が取れそうなので、出来るだけ頑張ってみる事にします。ではでは。

 


 

2003年第34回講義
6月20日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(6月第3週分・前半)

 お待たせしました。今週前半分のゼミを開講します。
 既に「サンデー」も発売され、早いところ、
 「俺にも“ごっつぁんゴール”をよこせ! アシストはもう嫌なんだよ! 本当に嫌なんだよ! 分かってんのか! 俺が顔面ブロックで転がした球を自分の手柄のようにゴールするのは勘弁してくれ! いや、それならせめて礼を言え!」
 ……とか絶叫したいところなのですが(←何があったんだよ)、とりあえず今日は「ジャンプ」関連の内容でお送りします。

 ──ではまず、情報系の話題から。今日の目玉は、4月期から新装なった月例新人賞・「ジャンプ十二傑新人漫画賞」の審査結果発表です。
 第1回の応募作数は、なんと手塚賞のそれを大きく凌ぐ524作品。しかも最終候補に残った作品数が12と、全てにおいて月例新人賞の常識を越えたスケールの争いとなりました。まさに“最高評価作はデビュー確約”というオイシイ条件が功を奏した形で、さすがは新人育成の「ジャンプ」…といった感じがしますね。
 では以下、受賞者及び受賞作を紹介しておきます。

第1回ジャンプ十二傑新人漫画賞(03年4月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作(&十二傑賞)=1編 
 ・『黄金の暁』
(=赤マルジャンプ夏号に掲載決定)
  岩本直輝(17歳・秋田)
 
《講評:キャラクターの行動がきちんと一貫していて、一つ一つのエピソードがキャラクターの性格を表し、魅力を引き立てるものになっている。画力も高いレベルにあり、17歳という年齢にも将来性を大いに期待させられる。今後は魅力的な表情やデザインをより深く研究・追求して欲しい》 
 最終候補(選外佳作)=11編

  ・『モンスター’Sトレイシー』
   小泉雅恵(18歳・新潟)
  ・『佐藤政夫34歳』
   今井正二(28歳・千葉)
  ・『BIO ROBOT』
   小林真依(20歳・大阪)
  ・『足跡』
   松本祐介(21歳・兵庫)
  ・『剣道花信』
   角石俊輔(21歳・東京)
  ・『School』
   高橋英里(19歳・埼玉)
  ・『Are You Hungry?』
   佳川尚生(26歳・埼玉)
  ・『ガンマンハンター☆コンドル&バッファロー』
   石川直紀(24歳・東京) 
  ・『不死身の剣』
   田中拓磨(20歳・富山)
  ・『あくまのススメ。』
   石川綾一(20歳・宮城)
  ・『スカイレース』
   千阪圭太郎(18歳・京都)

 今回最終候補以上に残った皆さんの過去のキャリアについては以下の通りです。

 ◎佳作&十二傑賞受賞岩本直輝さん02年7月期「天下一漫画賞」で最終候補。
 ◎最終候補小林真依さん01年11月期、02年10月期「天下一」でも最終候補。

 今回デビューが決まった岩本さん、昨年最終候補に残った時は「オリジナリティ」の項目以外は無印でしたが、今回は4つの項目に“◎”、または“○”印が付くという“躍進”。この1年間で飛躍的に力が伸びたという事でしょうか。若いって良いですねー(苦笑)。

 ……それでは、今週号の「ジャンプ」のレビュー&チェックポイントをお送りします。レビュー対象作は、新連載と読み切り各1本の計2本です。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年29号☆

 ◎新連載『ごっちゃんです!』作画:つの丸

 4週連続新連載シリーズも2週目に入りました。ここからは“暗黒期”の「ジャンプ」で活躍した作家さんたちが次々と登場します。
 そして今週から連載が始まったのは、日本競馬マンガ史上に残る名作・『みどりのマキバオー』でお馴染みのつの丸さんが描く相撲マンガ・『ごっちゃんです!』です。

 つの丸さんは、第2回「GAGキング」で入賞し、91年春に増刊・本誌で相次いで読み切りを発表してデビュー。当時はサルを主役にしたギャグ作品を得意とし、92年には『モンモンモン』で初めての週刊連載を果たします(93年冬で打ち切られるまで83回連載)。
 そして94年冬、これまでの猿キャラ一辺倒の作風をかなぐり捨てて、競馬マンガ『みどりのマキバオー』を連載開始。連載当初は稚拙な画力や既成の作品の影響を強く感じさせるストーリーに評判はイマイチでしたが、連載を進める内にグングンと大化けして、やがて当時の「ジャンプ」を代表する作品の1つにまで“成長”を遂げます。同作品はアニメ化もされ、誰もが認める大ヒット作となりました。
 しかし、『マキバオー』終了後のつの丸さんは停滞に入ってしまいます。『サバイビー』『重臣 猪狩虎次郎』と立て続けに連載を立ち上げますが、いずれも2クールで打ち切り
 独特すぎる作風、作品の魅力が発揮されるまでに時間がかかる“スロースターター”ぶりが、アンケート至上主義の「ジャンプ」では足を引っ張った格好となりました。
 そんな中で立ち上げられた今回の新連載は、約2年ぶりの復帰作。読み切りでの“試運転”もなく、いきなりの連載開始となりましたが……?

 ……では、内容について述べていきましょう。

 まずに関して。つの丸さんの画風は、パッと見だけだとメチャクチャ下手そうに見えるんですが、全体を見てみるとキッチリ丁寧な描写が出来ていたりするんですよね。よくよく考えれば、『マキバオー』では難易度の高い競馬シーンを巧みに描いていたわけですから、下手なはずが無いんですが。
 勿論、“今風の絵柄”を外すという事は、読者の支持を集めるに当たっては不利に働きます。ただ、つの丸さんの場合はそれを半ば意識的・確信犯的にやってるわけで、「かなり損な生き方してるよなぁ……」と思ってしまいますよね(笑)。

 次にストーリー・設定の面についてですが、こちらは「かなり実験的な事をやってるなぁ……」という印象を抱きました。
 これもすぐには気付かないかと思うんですが、第1話のストーリーは、実はスポーツ系マンガによくある、
「スポーツに関しては全くの素人である主人公が、ひょんな事から誤解されて、部のヒーローに祭り上げられる」
 ……というパターンなんですよね。往年の名作・『キャプテン』以来の伝統的なスタイルです。

 従来のこのスタイルの作品では、部のヒーローに祭り上げられた主人公は、必ず今の自分では周囲の期待に添えない事に苦悩します。そして、そこから努力と友情で這い上がっていく過程にスポットを当ててお話を展開させていきます。見事な少年マンガの図式ですね。
 ところが、この『ごっちゃんです!』では、部のヒーローに祭り上げられた主人公は、苦悩するどころか有頂天になってしまいます。それどころか主人公に“話のスポットライト”は当たらず、その主人公の奇行に巻き込まれ、主人公の代わりに苦悩する脇役にスポットが当たってしまっているのです。
 で、そこへ更に、ギャグマンガのノリでストーリー作品を描いていく…という“つの丸方式”が加わって、その結果、伝統的なスタイルのスポ根系作品にも関わらず、化学反応を起こした金属のように、全く別物の作品になってしまったわけです。

 さて、問題はこの“実験”をどう評価するかですが、それはやはり、この作品を読者が「面白い」と思うかどうかにかかって来るのでしょう。が、その判断を下すのは、正直に言って大変に難しいところだったりします。
 何しろ前例が乏しいパターンです。経験とデータが蓄積されていない以上、第1話の時点で「これで大丈夫」、「いやダメだ」…などとは、軽はずみに言えないのです。
 ただ、敢えてここで1つだけ意見を言わせてもらいますと、この作品のように、読者に主人公への感情移入をさせ難くするような設定、これまでの常識を基準にするなら“アウト”です。もしもこの作品が失敗に終わるとするならば、その原因の多くはそこに求められる事になるのではないかと思っています。

 ……というわけで、今回の時点での評価は保留とします。評価を下せるのは第3回、ひょっとしたら最終回になるかも知れませんね。

 
 ◎読み切り『KING OR CURSE』作画:坂本裕次郎

 今週の読み切り枠は、先日の03年度上期「手塚賞」最高評点獲得&準入選受賞を果たした新鋭・坂本裕次郎さん『KING OR CURSE』です。

 さて、この作品についてなんですが、“作者紹介”のページに載っている「手塚賞」審査員のコメント実に的を射ていまして、駒木が敢えて熱弁を振るう必要が無くなってしまいました(苦笑)。というわけで、ここでは審査員諸氏の講評を改めて紹介し、そこへ駒木の解説・意見を付記する形でレビューとしたいと思います。

 それでは、まず絵に関しての講評から。

「パワーはあるけど、画面が狭いのが残念」(尾田栄一郎さん)
「絵は、まだ上手いとは言えないが迫力がある」(鳥山明さん)
「迫力のあるシーンはかなり良い」(近藤裕氏)
「画力は高評価。ただ、画面の整理をしないと、読者に何をやっているのか伝わらない」(茨木政彦氏)

 ……まぁ、ご覧の通りですね(笑)。

 絵に関してのコメントを残した4審査員全員が言及しているように、確かに誌面から飛び出すような迫力を感じさせるパワフルな絵柄だったと思います。
 ただし、それがストレートに画力の評価に結びついていない(4人の中で、画力そのものを評価したのは茨木氏だけ)のは、その迫力を持たせるのに、“場面のズームアップ”と“キャラクターの表情を極端に変化させる”ことだけに頼り過ぎたためでしょう。ひょっとしたら、それが発展途上の画力を誤魔化すための苦肉の策だったのかも知れません。そのため、逆に「画面が狭い」という注文をつけられる結果になってしまったわけですね。
 また、その他気になった点として、ややディティール(エキストラ的キャラクターや、人物の服装など)への配慮が足りない箇所が目立った事が上げられます。ただこれは、“描く力が無い”のではなく、作品内の世界観の構築が甘かったために“描きようが無かった”のかも知れないですね。

 そして、ストーリー・設定について。こちらはさすが「手塚賞」だけあって、審査員全員からコメントが出ています。 

「少年誌のツボは押さえているし、話も分かりやすくていい」(鳥山明さん)
「戦いの制限による面白さは感じた」(尾田栄一郎さん)
「面白く読めた。ただ、ラストの『期限切れ』オチはいらなかったかも」(高橋和希さん)
「『呪言虫』のアイデアは高評価」(茨木政彦氏)
「ストーリーとしてのまとまりはあるが、キングタイガーの性格が分かり辛い。最強の大悪党と呼ばれているのに、すごくいい人に見えてしまう」(手塚プロダクション)
「『魔女』が悪者を封じ込めるという設定に少し混乱。村人達のキングタイガーに対する反応の変化が急すぎるのも残念」(ほったゆみさん)
「世界観と設定の説明不足が読者の理解を妨げている」(近藤裕氏)

 まず高い評価を得たのは、「ストーリー全体のまとまりが良い」という事と、主人公に呪いをかけてハンデを背負わせる…というアイディアについてでした。
 確かにこの作品は、シナリオ全体の流れには余り違和感はありません。更に“呪言虫”のアイディアが上手に効いて、ありきたりの“『ドラゴンボール』風・勧善懲悪シナリオ”に陥る事も避けられました。恐らくは、これらの事が、この作品を準入選受賞まで押し上げた大きな理由になるのでしょう。

 しかし審査員諸氏の中には、“少年誌のお約束”に甘んじず、シビアに作品の内容を分析した方もいらっしゃいます。さすがはこの辺り、厳しいプロの目という奴ですね。で、その結果、一読しただけでは見落とされてしまいそうな設定部分の矛盾点や、シナリオの自然さを演出するために犯したご都合主義が複数指摘されました。

 特に指摘が目立ったのは、主人公・キングタイガーについてのキャラ造形の甘さ大悪党なのに良い人みたいだ…という、下手をすれば致命傷になりかねない批判がなされています。これは「大悪党なのだが、呪いのせいで悪事を働く事をガマンする」という原則が全編でキチンと守られなかった事を言っているのだと思いますが、確かにそれは指摘の通りでしょう。
 今回はそれが目立たなかったのは、このキャラ造形の甘さが“怪我の功名”的に働いて読後感が良くなったからですね。しかし、今後はこういった甘い部分を改善しないと、いつか強烈なしっぺ返しを喰らう事になるのではないかと思います。

 この他には「世界観や設定の説明が不足気味」…という評がありましたが、これは駒木が見たところ、説明不足じゃなくて考えて無かっただけ…という気がしています。そうでなければ、同じ“悪”の属性を持つ魔女が大悪党に呪いをかける…などといった、ディディール部分全体に漂う統一感の無さが説明できません。この辺りも今後の課題でしょうね。
 そういう意味で、この設定構築が満点に近い形で出来ていたのが、「赤マル」春号に掲載されていた『天上都市』作画:中島諭宇樹)でした。細かい設定をキチンと作っておき、ストーリーで必要な部分しか語らないこれがベストの形でしょう。

 ……というわけで総合的な評価なんですが、画力、ストーリーテリング力、共にまだまだ荒削りながら、一応は形になっているということでBとしておきます。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 今週の巻末コメントでは、加地君也さんのコメントがネットで「不遜だ」と批判を受けたようですが、まぁ学校の成績なんてそんなもんですからねぇ。大体、物事を本気で勉強するようになるのは社会に出てからですし。
 ちなみに駒木、予備校生時代に一番苦手にしていた科目は世界史でした(笑)

 ◎『Mr.FULLSWING』作画:鈴木信也【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 夏の大会の組み合わせ抽選会、まぁ闇夜に浮かび上がる岸田今日子の顔くらい異様な説明的なセリフはともかくとして、有力校のほとんどが高野連から出場自粛を勧告されそうな外見というのは如何なものか(笑)。これで良いんですか? 東京都民より東京に詳しい埼玉の皆さん。
 しかしなぁ、主催者、せめてイスぐらい用意しろよ(笑)。

 ◎『シャーマンキング』作画:武井宏之【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 もしかしたら、じゃなくて当たり前のように変態ですがな……と言おうとしたら、KTRさんに先を越されてしまいました(苦笑)。


 ◎『Ultra Red』作画:鈴木央【現時点での評価:/連載総括】

 完膚無きまでの打ち切られぶりでした。一応、3クール続いたわけになるんですが、連載開始当初のムードからすれば、突き抜けなかっただけでも意外だったくらいですからねぇ。
 で、総括なんですが、正直、ストーリーもクソも無い“天下一武道会”方式で延々と来て、挙句にその途中で尻切れトンボで終わってしまったら総括のしようが無いというか(苦笑)。まぁ、“可もなく不可もなく”程度にずっと読めていたという事は、B評価のままで良いという事なんでしょう。
 

 今日のゼミはこれで終了です。後半分は、やっぱり来週回しかなー、といったところです。ではでは。

 


 

2003年第33回講義
6月17日(火) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(6月第2週分・後半)

 予告より3日遅れのゼミ後半分実施となりました。最近は謝ってばかりなんですが、本当に申し訳ないです。

 最近は、講義と昼間のモデム配りだけならともかく、来月の採用試験の準備やら、来年春までに脱稿目標の長編小説執筆やらで、本当にいくら時間があっても足りない日々が続いているんですよね……。正直、今のところは週2回のゼミと競馬学特論(G1予想)を実施するだけで精一杯といったところです。まぁそういう状況に対応するための業務縮小だったんですが、現実は想定よりも厳しく襲いかかって来ている…というのが本音ですね。
 何時になるかは判りませんが、溜まりに溜まっている講義にケリをつけるための集中カリキュラムを必ず組みますので、どうかしばらくは今の状況でお許し下さいますよう、宜しくお願い致します。

 それでは今週のゼミ・後半分を始めます。今日は「週刊少年サンデー」関連の話題の後に、お待たせしていた第2回「世界漫画愛読者大賞」の投票結果総括を実施します。物凄く時期外れかつ意義が薄いのは自覚していますが、一応のケジメとしてやらせてもらいます。どうせ今回限りで事実上廃止になる賞ですし、興味の薄い方はスルーして頂いて結構です(笑)。

 ……というわけで、まずは「サンデー」関連のお話から。まずは情報系の話題としまして、月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」の審査結果を紹介しておきます。

少年サンデーまんがカレッジ
(03年4月期)

 入選=該当作なし
 佳作=1編
  ・『無敵モグラのケンタ!』
   大塚真史(21歳・神奈川)
 努力賞=3編
  ・『ワールド・イズ・マイン』
   小嶋亮(20歳・福岡)
  ・『ちぇんじ あ ごーごー』
   蕨南うか(22歳・埼玉)
  ・『ボウズマルモウケ』
   小林沙耶花(20歳・埼玉)
 あと一歩で賞(選外)=4編 
  ・『紅の少女』
   麻倉愛菜(17歳・神奈川)  
  ・『30時間の時計』
   林廼晴(23歳・台湾)
  ・『RING RING』
   幻素(22歳・京都)  
  ・『現世怪奇譚』
   小川公世(17歳・鹿児島)

 今回の受賞者さんの中で、過去の経歴を持っていると思われる方は「あと一歩で賞」の幻素さん。どうやら02年秋の「アフタヌーン四季賞」で準入選を受賞してらっしゃるみたいです。
 その時の受賞コメントを読むと、それまで何度も「アフタヌーン四季賞」に投稿されていたみたいなんですが、ここへ来て小学館、しかも少年誌に鞍替え(掛け持ち?)とは珍しいパターンですね。まぁ「アフタヌーン四季賞」は結構懐の深いところのある(?)賞みたいなんで、こういうケースがあっても不思議じゃないんですけどね。

 ……それでは、日付の上ではもう先週になりました、「サンデー」28号のチェックポイントをお届けしておきます。

☆「週刊少年サンデー」2003年28号☆
 
◆「サンデー」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントのテーマは、「自分の漫画がドラマ化されるなら、どのキャラをどのタレントにやって欲しいですか?」
 やはり真面目路線か、狙った回答かで分かれましたね。これもやはりですが、あだち充さんは自虐ネタでした。「イメージがわきません」の安西信行さんは、冨樫義博先生に相談……いえ、何でもありません。
 有り得ない話ですが、ウチの研究室にキャスティングするなら、珠美ちゃんは仲間由紀恵さんですね。仲間さんに演じてもらえれば、本人より凶暴性が薄れそうなんで……って、珠美ちゃん、僕に向けて広辞苑を、しかも縦に持って振りかぶるのは怖いから止めてくれ……いや、お願いですから止めていただけませんでしょうか。

 ◎『金色のガッシュ』作画:雷句誠【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 雷句さんって、どんな時にでも笑いを取らなきゃ、本当に気が済まないんですね(笑)。「そこは笑わせるところじゃないだろう」って場面でも無理矢理ギャグに結びつけ、しかもシリアス系のテンションも落とさないと。そこまでこの人を駆り立てるのは一体何なんでしょうか(笑)。

 ◎『ワイルドライフ』作画:藤崎聖人【現時点での評価:B/雑感】

 ウサギが食糞する事は知ってましたが、パンダもやるんですなー。しかも健康管理に影響してたとは初耳でした。
 ところでウサギの食糞に関しては、マンガ家の鈴木みそさんが、昔ウサギを飼っていた当時にコラムでよくネタにしてたのを思い出します。
 「おい、お前の姉ちゃんの糞、食わせてくれるって約束だろ?」
 「ひとつだけだぞ」

 ……ウサギの世界ではこんな会話が行われてるのでは? いや耳が聞こえないから会話が成り立たないんだった…なんてのがあった記憶が。最近はそうでもないですが、昔の鈴木みそさんは、「丼1杯のウンコをいくらで食うか?」とか、そんなネタを十八番にしてたんですよね、(笑)。
 あ、お食事中の方、失礼しました……っていうか、講義中にメシ食ってちゃダメですよ(笑)。

 ◎『うえきの法則』作画:福地翼【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 んー……。
 なんか、必殺技合戦からだんだん底抜け脱線ゲームみたいになってる気が。『ガッシュ』と違って、描いているご本人がギャグになってると思っていないだけ業が深いんですよねぇ。
 その内、「カマしたギャグを衝撃波に変える力!」とか言い出しそうで怖いですよね(笑)。

 「コマネチ!」
 ちゅど〜ん!
 「ゲッツ! アェ〜ンド、ターン!」
 ちゅどど〜ん!
 「♪鉄のフォルゴレー、無敵フォルゴレー」
 ちゅどどどど〜ん!

 ……今度の敵は笑えるが強いんだぞ! ……って、別のマンガになっとりますがな。

 
 ──というわけで、ちと暴走気味でしたが(笑)、チェックポイントは以上です。(色々あってテンション高いんです^^;;)

 それでは、これからは少しトーンを変えて、今日の講義後半、第2回「世界漫画愛読者大賞」投票結果総括に移りたいと思います。

特別企画:第2回「世界漫画愛読者大賞」総括

 ……当講座、及び当ゼミの受講生の皆さんは既に十分ご存知でしょうが、改めてこの賞について、簡単ですが説明しておきましょう。
 この「世界漫画愛読者大賞」は、「週刊コミックバンチ」及び関連企業が主催・後援したプロ・アマ・オープン&公募形式のマンガ賞です。
 この賞の特徴は大きく分けて2つ。1点目は、総額1億円、最高ランクの賞であるグランプリの賞金が5000万円という、マンガ業界では前代未聞の高額賞金を用意した事。そしてもう1つは、賞の結果に読者の意見を最大限に反映させるため、中間選考に読者審査員を招聘し、また最終選考の結果を全て読者投票に委ねたでした。

 しかし、鳴り物入りで開催された第1回の「世界漫画愛読者大賞」は、業界に旋風を巻き起こすどころか失笑を買うような惨憺たる結果に終わってしまいます。
 まず問題だったのが寄せられた応募作品の量と質でした。応募総数は、メジャーマンガ誌における月例新人賞並である215本に留まり、しかも最終候補まで残った応募者の大半が、かつてマンガ家を目指したものの夢半ばで破れた“落第生”ばかりという、およそ世界最高レヴェルの賞に相応しくない有様になってしまいました。
 そこへ加え、賞の目玉であった読者投票による最終選考にシステム上の大きな欠陥があり、そんな低レヴェルの最終候補作品たちが、著しく歪んだ形で過大評価されてしまったのです。

 ……この第1回の詳しい顛末は、昨年実施した「徹底検証! 世界漫画愛読者大賞」に譲りますが、この時に(半ば間違って)各賞を受賞した“栄えある”作品たちのその後もまた、悲惨なものでありました
 中でも、グランプリを受賞した『エンカウンター −遭遇ー』は、読者から“圧倒的な信任”を受けた作品であったにも関わらず、連載当初からその内容・人気共にドン底に低迷。その余りの体たらくに長期の連載休止を余儀なくされ、挙句には原作担当者(作画担当者の夫)が事実上の“更迭”となる始末。現在は連載の再開こそ為されましたが、この作品を取り巻くムードは芳しくありません。
 この他にも、もはや人情ギャグマンガではなく、“力量不足の作者が週刊連載のプレッシャーに負け、内部崩壊を起こしてゆくのを観察するためのマンガ”に趣旨が変わりつつある、準グランプリ作・『がきんちょ強』や、「連載開始以来、この作品は何が変わりましたか?」…という問いに「強いて言えばページ数が減りました」…としか答えようの無い4コママンガ賞受賞作・『熱血! 男盛り』など、第1回「愛読者賞」で主要な賞を受賞した作品群は、お世辞にも「バンチ」に貢献したと言い難い状況です。
 そんな「愛読者賞」組の中で、例外的に健闘していると言えるのは読者投票5位の入選作・『満腹ボクサー徳川。』ですが、これも商業的な成功を収めたと言うには程遠く、コアな「バンチ」ファン──何故か、彼らは好きな連載作品の単行本をあまり買いません──の間だけの人気作に終わってしまっている感が否めません。

 そして、今回の第2回「世界漫画愛読者大賞」です。
 こちらも昨秋から実施した講義・「第2回世界漫画愛読者大賞への道」をご覧頂ければ大まかな展開は把握出来ると思いますが、応募総数の更なる大幅減少応募締め切り後のグランプリ選出基準厳格化など、おおよそ“世界”を冠につけるイベントに相応しくないドタバタ状態で審査が進行していってしまいました。
 それでも、何とかほぼ予定通りに審査は進行し、今回から3段階にチェンジされた読者投票審査の結果が発表になりました。既に各種媒体で発表されていますが、ここでも改めて紹介しておきましょう。
 

作品名
(合計得票順)
個別
人気票
総合
人気票
()内は支持率
合計
得票
『摩虎羅』 1172 737
(21.1%)
1909

※グランプリ信任投票※

 投票総数:2354(うち有効投票数1533
 信任:909票 不信任:624票
 信任率
(信任票数/有効投票数)
 =59.3%(規定の信任率に達せず不信任)
 ※純粋に信任票数を投票総数で割った“粗信任率率”38.6%

『東京下町日和』 1184 638
(18.3%)
1822
『軍神の惑星』 1326 479
(13.7%)
1805
『鬼狂丸』 1228 447
(12.8%)
1675
『大江戸電光石火』 1065 484
(13.9%)
1549
『華陀医仙 Dr.KADA』 897 292
(8.4%)
1189
『極楽堂運送』 847 264
(7.7%)
1111
『ちゃきちゃき江戸っ子花次郎の基本的考察』 683 145
(4.2%)
828

 ……ご覧のように、『摩虎羅』が最高得票を獲得したものの、今回新設されたグランプリ信任投票で規定の信任率を得られませんでした。これにより、同作品は準グランプリとなって、グランプリは“該当作なし”という事になりました。
 『摩虎羅』の獲得した得票は、個別人気投票の段階では4

位、逆転を果たした総合人気投票でも得票率が20%強で、最高得票と言えど“辛勝”と言わざるを得ないもの。この程度の支持率では、グランプリ信任の高いハードルは越えられなかったという事なのでしょう。
 グランプリ信任投票での、信任909票という数字も微妙ですね。個別人気投票で支持した読者をまとめ切れず、総合人気投票で他の作品に投票した人の大半をグランプリ信任に取り込めなかったのが、表を見れば一目で判ってしまいます。信任率59.3%という数字は結構際どいですが、大量の無効・保留票も考慮すると、今回ばかり不信任という不名誉な結果も致し方ないといったところではないでしょうか。 

 ……さて、これから今回の投票結果の全体像について多少の検証を加えていきたいのですが、ここで比較対象として、前回の読者投票結果も紹介しておきますね。

作品名
(合計得票順)
個別人気票 総合人気票
※1
合計得票
『エンカウンター』 1773 5018
(グランプリ信任率96%=信任)
※2
6791
『がきんちょ強』 1445 3625 5070
『アラビアンナイト』 1505 3504 5009
『142cmのハングオン』 1630 2981 4611
『満腹ボクサー徳川。』 1447 2976 4423
『飛翔の駒』 1154 1882 3036
『黒鳥姫』 1009 1767 2776
『逃げるな!!! 駿平』 1181 1573 2754
『熱血! 男盛り』 762 1819 2581
『灰色の街』 648 567 1215
 ※1…第1回の総合人気投票はポイント制で実施。投票ハガキに貼られた応募券(エントリー作品が掲載された週の「バンチ」に付いていた物)の枚数に応じて、ハガキ1通あたり2票・3票・5票の投票権が与えられた。
 ※2…第1回のグランプリ信任投票は、「総合人気投票で支持した作品をグランプリに信任するかどうか」を選択する形で、総合人気投票と同時に実施。つまり、この場合は『エンカウンター』に投票した人以外に、グランプリ信任投票の投票権は事実上無かった。

 ──こうして2回分の結果を見比べてみますと、第2回における各作品の得票数が、前回に比べて大幅にダウンしているのがよく分かりますね。
 第2回の個別人気投票で最高得票を得た『軍神の惑星』でも、前回の結果で換算すると6位相当の票数しか得られませんでしたし、総合人気投票の得票数合計も、ポイント制廃止だけでは説明のつかない前年比1/7以下という数字に低迷してしまいました。

 ……で、恐らくこれには2つの可能性が考えられます。

 1点目は、単純に「コミックバンチ」の部数そのものが低下した事による影響です。

 この業界の公称部数ほど当てにならないモノはないのですが、一時期に比べるとコンビニなどでの「バンチ」の入荷数が目減りしているのは明らかで、実売部数は漸減傾向にあると思われます。
 部数が増減しても、普通、アンケート葉書の回収率は一定のはずですから、実売部数が減っていれば自ずと得票総数は目減りする事になります。

 そして2つ目の理由は、最終候補作のレヴェルが低く、読者の支持票を集められなかった事、及びそれに伴って「バンチ」読者に“「愛読者賞」離れ現象”が現れたのではないか…というものです。ちなみに駒木個人としてはこちらの方を重く見ています。

 ここで皆さんに注目してもらいたいのは、グランプリ信任投票における投票総数2354票という数字です。
 今回のグランプリ信任投票は、個別人気投票と同じく通常の読者アンケート(ハガキ代読者負担)で実施されました。ということは、各週の個別人気投票に寄せられたアンケートハガキの枚数も、2354に誤差をプラス・マイナスしたものと推定できる事になります。恐らくは、各週2200〜2500ぐらいの範疇に納まるのではないでしょうか。

 そう考えると、今回の最終候補8作品の中で、個別人気投票において、明らかに過半数の支持を受けていると思われるのは、なんと『軍神の惑星』『鬼狂丸』の2作品のみ。それにしても得票率は6割以下です。
 そうでなくても今回の「愛読者大賞」は、第1回の大失敗を経て強引に実施されたもの。当初から読者は疑心暗鬼の状態で最終審査(読者投票)に臨んだと推測できます。
 ところが、そこで突きつけられた最終エントリー作品は、読者の過半数の支持すら得られないものばかり。これでは読者が「愛読者大賞」そのものへの関心・期待を失ってしまったと考えても全く不自然ではないでしょう。その結果が、総合人気投票の投票総数激減とグランプリ信任投票における大量の無効・保留票(全体の35%)発生に繋がったのではないでしょうか? つまり、「バンチ」読者は『摩虎羅』だけでなく、「愛読者大賞」そのものに三行半を突きつけたというわけです。応募作品数の低迷を考えると、この賞はマンガ家&マンガ家志望者からも見放されていると思われますし、有り体に言って、「愛読者対象」はその存在意義が消え失せているといっても過言ではないと思います。
 ……どうやら「愛読者大賞」は今回限りで事実上廃止または規模縮小されると思われますが、あらゆる全ての選択とタイミングを逸してきた主催者サイドが、最後の引き際だけはギリギリ見誤らなかったというのは皮肉ですよね。

 それにしても驚かされるのが、準グランプリの『摩虎羅』でさえ、個別人気投票ではギリギリ過半数か、もしくは過半数割れの票数しか得られなかったという事実ですね。『摩虎羅』の作者のお二方には申し訳ないですが、ここは『エンカウンター』の再現が避けられて良かった…とするべきなんでしょう。
 
 
 ──さてさて、あまりに悲観的な内容ばかりで締め括ってもアレですので、どこかの大河長編マンガじゃありませんが、もうちょっとだけ続けることにします。

 ここからは蛇足を承知で、2回分の投票結果から見た、平均的「バンチ」読者の好きな作品のタイプ、嫌いな作品のタイプを少しばかり分析してみたいと思います。ネット界隈ではコアな読者の評判に特化されがちですので、ここで一度、ライトな読者を含めた「バンチ読者」の最大公約数的な趣味・嗜好を把握してみるのも面白いでしょう。

 で、まず全般的に言える事は、「奇抜さ・斬新さより古臭くても手堅い方を好む」「暗いテーマの重厚な作品より、明るくてライトなエンターテインメント作品を好む」…という事ですね。
 『東京下町日和』のように、多少古臭くても読んで爽快感を得られる作品、または肩の力を抜いて読む事が出来る作品が上位に食い込む一方で、どことなく“陰”のムードが漂う作品は、たとえ題材やシナリオが斬新なものであったにしても、軒並み下位に低迷しています。
 コアな読者の皆さんには、じゃあ『がきんちょ強』はどうなんだ?…と言われそうですが、この作品、小難しい事を考えずにページを読み飛ばしてゆくライトな読者の間では、肩の力を抜いて読める“ごはん系”作品という扱いを受けているのではないでしょうか。

 次に絵柄について。こちらでは、キャリアの浅さで絵が雑な作品はある程度“大目に見る”ものの、キャリアを重ねてクセの強すぎる絵柄で固まってしまった作品は全く相手にしない…という傾向が見て取れます。
 前者の“大目に見て”みらった作品が、『142cmのハングオン』、『鬼狂丸』で、後者にあたる作品が『逃げるな!!! 駿平』や『極楽堂運送』などになるでしょう。つまり、“クセの強すぎる絵では、「バンチ」読者には内容以前に受け付けてもらえない。しかし、若さゆえの過ち(笑)には結構優しい”…という事になるのでしょう。

 あと、『華陀医仙』の低迷からは、「バンチ」読者は少年マンガを大人向けにしたモノは求めているが、そのものズバリの子供向けマンガは読みたくない…という事が分かりますね。
 また、全体的にギャグ作品が低迷気味である点もよく囁かれますが、元々ギャグ作品は雑誌の読者アンケートで票が伸び悩む傾向があるそうですので、読者の傾向と片付けるのは乱暴かも知れません。そういう意味では、かの問題作・『がきんちょ強』が第1回で準グランプリを獲ったのは、実は快挙と言える事だったりします。(もっとも、全体的な低レヴェルに助けられた面の方が大きいでしょうが……)

 ──さて。以上の傾向を総合しますと、「バンチ」読者の最大公約数的な趣味・嗜好とは、

 「絵が一定以上の水準で見栄えし、マンガ雑誌の1作品として気軽に読み飛ばせる、オーソドックスで安定感のあるストーリーのエンターテインメント系作品が読みたい。また、新人の作品は一応温かい目で見るが、積極的なプッシュはしない」

 ……というものになると思います。
 しかし、これが果たして「バンチ」の編集サイドが求める理想と一致するかどうかは極めて微妙でしょうね。今挙げたような“読者が求める作品”を集めていっても、単行本がバカ売れしたり、アニメ・映画等のメディアミックスが成功するとは思えませんし、作家の創作意欲が満たされる環境とも思えませんので。
 まぁ結局は、理屈抜きで大多数の人が「面白い」と感じるようなメガヒット作を出せば済む話なんですが、これが出来たら苦労しないんですよね(苦笑)。まったく、難しいお仕事ですね、マンガ雑誌の編集って。

 
 ……というわけで、やや支離滅裂になりましたが、今回の特別企画はいかがだったでしょうか?
 「駒木風情が偉そうに『バンチ』を語るんじゃねえ!」…という声も聞こえて来そうですが、恐らく「バンチ」関連でこんな企画をやる事はもう無いと思いますので、どうかお目こぼしを頂きたいと思います。

 では、ゼミを終わります。6月第3週分のゼミは、明日の深夜から準備にとりかかる予定です。