「社会学講座」アーカイブ

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講義一覧

3/30(第120回) 社会調査「ヤフーBBモデム配りアルバイト最終報告」(1)
3/29(第119回) 競馬学特殊講義「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(1)
3/27(第118回) 
競馬学特論「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・暫定第2戦・高松宮記念」
3/26(第117回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(3月第4週分・合同)
3/19(第116回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(3月第3週分・後半)
3/16(第115回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(3月第3週分・前半)
3/12(第114回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(3月第2週分・合同) 
3/9(番外) 
人文地理「続々・駒木博士の東京旅行記」(7・最終回)
3/6(第113回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(3月第1週分・合同)

3/2(第112回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・『青マルジャンプ』特集」

 

2003年第120回講義
3月30日(火) 社会調査
「ヤフーBBモデム配りアルバイト最終報告」(1)

◎第1期(「潜入レポ」)のレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回第6回
◎第2期(「現場報告」)のレジュメはこちらから→第1回第2回第3回第4回第5回第6回第7回第8回

 「総受講者数200万人突破記念講義シリーズ」の第2弾は、何故か半年ごとに蘇る当社会学講座の人気講義シリーズの“最終章”です。
 既に「観察レポート」で再三お伝えしてますように、駒木は先日遂にこの仕事から離職し、晴れて“元スタッフ”になっております。今後はバックヤードの噂話などを収集する事も難しくなりますので、成り行き上、このシリーズも続行困難という事に相成りました。駒木本人としても名残惜しくはありますが、せめて綺麗に幕引き出来ればなぁ…と思っております。どうか皆様、最後まで宜しくお願い申し上げます。

 というわけで始まりました最終シリーズ、今日の第1回目は、恐らく受講生の皆さんが一番興味のある事柄と思われる、例の顧客情報流出についてのお話をさせて頂きます。
 この話題については、最近になって同業他社でも同様の不祥事が発生しましたね。そのニュースを耳にした時は思わず、「アッカよ、お前もか」などと、まるで古代ローマの英雄みたいな言葉を口走りそうになったのでありますが、それにしても我らがソフトバンク=ヤフーBBは不祥事の部門においても業界のトップランナーであったのかと改めて感慨に耽る今日この頃であります。
 “後発組”のアッカの場合はそうでもありませんでしたが、他はともかく自は認めるADSL業界最大手・ヤフーBBの顧客情報に関してはマスコミの関心も高く、事件発生当初は新聞各紙で大きく報じられた事は皆さんもご存知でありましょう。実はその頃、駒木研究室には複数のマスコミから取材依頼が舞い込み、都合の合った所とは電話取材に応じたりもしたのですが、残念ながら駒木がお話した内容が報道に反映される事はありませんでした。不良企業に天誅を下すお手伝いをしようというこちらの善意が実らず非常に残念であります。
 どうも先方は、駒木のような末端スタッフにまで全会員の個人情報にアクセスする事が出来たのではないかと考えて駒木にコンタクトを取って来たようです。しかし、いくらあのソフトバンクでも、そんな一兵卒に核のボタンを委ねるようなマネなどするはずもなく、訊かれたこちらとしても素気無く否定するしかありませんでした。第一、そんな事が出来るなら「出来ちゃいますよ」と1年前に講義で喋ってます
 欲しかった言質が取れず、受話器越しに残念そうな声を漏らす記者さんの事を思うと胸の奥底から込み上げてくるモノもありましたが、「申し訳無いが、無い袖は振れんのです」と、心の中で泣いてお詫び申し上げた次第です。
 ……ただ、そんな核兵器級のネタこそありませんが、プラスチック爆弾くらいのネタは駒木でも持ってたりするのがソフトバンクの恐ろしいところ。今日はそんな「末端スタッフから見た、現場レヴェルにおける杜撰な情報管理の実態」についてお話したいと思います。
 今から話す内容には結構危ない内容が含まれておりますが、危険を放置するよりはそれを喚起する意味でもお話した方が良いだろうと判断しました。これをご覧の皆様にはくれぐれも悪用厳禁でお願いしたいと思います。
 しかし「悪用厳禁」とか言いますと、違法性の高いファイル交換ソフトやバックアップソフトを大っぴらに紹介しておいて、「悪用厳禁」の一言で済ませてしまおうとする某企業を連想してしまうのですが、まぁ因果は巡ると言う事でどうか一つ。

 ──さて、お話を始めましょう。駒木が勤務していたような電器量販店の“パラソルブース”でヤフーBBに申込む場合、お客さんは所定の申込書に必要事項(住所、氏名、電話番号等)を記入する事になります。現在使用されている申込書は複写式になっており、スタッフはその場で複写された方を控えとしてお客さんに手渡し、原本の方をお客さんの目の前で受理して、これで店頭での手続きは完了となるわけです。
 お客さんの目に届くのはここまでです。大抵の場合、お客さんは安心しきった表情で「ありがとう、後はお願いね」などといったお声をかけて下さったりもします。しかし、その後の申込書とその記載事項──即ち、個人情報の扱いを目の当たりにしたら、果たして先程と同じような安堵の表情を浮かべる事が出来るでしょうか──?

 手続きを完了したお客さんをブースから送り出すと、接客に当たったスタッフは、まず申込書記載事項の中からお客さんの氏名と電話番号を“顧客名簿”のような別紙に控え、申込書の方はその日の内に量販店の担当者(大抵はOAコーナーのチーフ)に手渡します。担当者は申込書の内容をウェブ上でソフトバンクに送信して“公式エントリー”の作業を行い、その後、申込書は量販店の管理するファイル等に綴じられて店内に保管されます。
 ただ、「店内に保管」と言うと聞こえは良いですが、別の角度から見てみると、これは申込書がソフトバンク=ヤフーBBの目の届かない所に持っていかれるという事に他なりません。ヤフーBB側が各量販店の店員について調査しているわけはありませんし、量販店はADSL各社(DION、OCN他)も含めて様々な会社から日替わりで派遣スタッフを受け入れています。その日に何人のどういう人が勤務しているかは、店側も完全には把握出来ていない場合も多いです。そういう中に大事な顧客の個人情報を残しておくと言う事は、“保管”ではなく、もはや“放置”に近いと申し上げて良いのではないでしょうか。
 実は、電器量販店の大きな悩みの一つ内部の人間による商品の万引きがあります。時にはデジカメが箱ごと1ダース盗まれるといった大胆な犯行も行われたりしており、量販店では「万引きは客を疑う前に身内を疑え」というのが鉄則になっています。
 勿論、量販店側も色々な策を講じ、店員の勤務時間中外出禁止や退勤時の私物チェック等といった、校則の厳しいお嬢様学校真っ青の施策も採られていますが、それでも盗難は後を絶ちません。今、こうやって駒木が喋っている時にも、店長からの「万引きされたデジカメ、(どうせお前が犯ったんやろうから)責任とって弁償せえ」という理不尽な要求に絶句する店員が全国各地で発生していたりするのです。ハッキリ言って、いつ個人情報の“万引き”があってもおかしくはありません
 各量販店の“パラソル”では、一月あたり30〜150ほどの新規契約が獲得されます。既にキャンペーン開始から1年以上経過している店もありますから、多い所では既に1000件を超える個人情報が“保管”されているという事になります。一連の事件のような何百万件といった規模ではありませんが、それでもまとまった数の個人情報が絶えず流出の危険に晒されている事は確かです。
 問題は、この危険性をソフトバンク=ヤフーBB側が気付いているかどうかなのですが、情報流出からしばらくして(あくまで「しばらくして」です)クレジットカード番号の記入欄があるタイプの申込書を完全破棄するよう指示がありましたので、どうやら薄々と気付いてはいるようです。もっとも、孫社長の頭髪じゃあるまいし、そんな危険を薄々と感じられても困るわけですが。

 また、申込書引渡し前にスタッフによって控えられた“顧客リスト”の扱いも、恥ずかしながらかなりいい加減です。これは全国のスタッフを勝手に代表して駒木が皆さんにお詫び申し上げておきます。
 しかしながら、これには理由がございます。各量販店のヤフーBBスタッフには店頭の“パラソル”ブース以外、貴重品を保管するような物──鍵付きのロッカーやケースなどは与えられておらず、更衣室すら貸してもらえない場合もあるのです。女子スタッフが人知れずトイレで着替えていた…なんて悲惨なケースも聞いた事があります。
 そういう状況ですから、名簿などの書類も結局は店頭のブース内に“保管”するしかありません。当然、封筒に入れるなどして目隠しをし、極力人目のつかない所に置く事になるのですが、それでも限界があります。いつだったでしょうか、(ロッカーが無いので)ブース内にカバンを置いておいた駒木が、巡回に来たSV(=スーパーバイザー)から、「こんな所にカバン置いておいたら誰が盗って行くか分からんから、せめて貴重品だけは手元に持っとけよ」…などと注意を受けた事があったのですが、その「こんな所」に1000人分の“顧客名簿”が“保管”されているのですから、これは笑えない笑い話です。
 そもそも、その情報を“管理”する我々末端スタッフも、第1期シリーズ第1回および第2回のようなエエ加減極まりない採用&研修で現場へ送り出されていますので情報漏洩に対する危機意識が高いわけがありません。それどころか、独り暮らしと思しき若い女性(NTT回線名義人が女性本人でマンション暮らしだと簡単にそう推測出来る)の申込書を眺めてニヤけてた危ないヤツもいて、その時はちょっと本気で心配になりました。
 今更こんな事を言うのもナニですが、もうちょっと派遣会社もスタッフ採用時にジックリと面接してもバチは当たらないような気がします

 ──というわけで、今日はいきなり核心に迫った話をしてみました。ちょっとアクセルを吹かし過ぎたような気がして、駒木も今頃になって背中が薄ら寒いのですが、事実は事実ですし、こういう事を言わせるような杜撰な情報管理をしている方が悪いのですから、ここは胸を張って皆さんの反応を窺いたいと思います。
 さて、このシリーズの次回は、ちょっと大人しめに現在行われている無料キャンペーンの内容についてお話をしてみたいと思います。これからADSL導入をお考えの方は是非お見逃しなく。ではでは。 (次回へ続く)

 


 

2003年第119回講義
3月29日(月) 
競馬学特殊講義
「駒木博士の高知競馬観戦旅行記」(1)

 予告通り本日から「総受講者数200万人突破記念講義シリーズ」の開幕です。要は講義回数が増えるだけなんですが(笑)、本格的に忙しくなる前の最後の一仕事という事で、出来る限り頑張ってみたいと思います。どうか何卒。

 ……というわけで、本日はその第1弾として、高知競馬場観戦記の1回目をお送りします。勿論、あの3月22日、ハルウララ号が武豊鞍上で出走して全国的にニュースで報道された、あの日の高知競馬です。
 ニュースでの報道は“外野目線”といいますか、「非・競馬ファンによる非・競馬ファンのためのハルウララレポート」みたいな感じだったのですが、この旅行記では「10年モノの競馬ファンから見た高知競馬withハルウララレポート」という感じで行きたいと思います。“外野目線”と“競馬ファン目線”とのギャップや、ニュース報道と現実の乖離振りを楽しんでもらえると嬉しいです。
 それ故、多少専門的なお話もする事になりますが、競馬ファンではない人でも楽しんで頂けるような作りにはしたいと思ってますので、皆様方もどうか最後まで宜しくお願い申し上げます。

 そしてこれも予告しておりました通り、ここで受講生の皆様へ「200万アクセス御礼プレゼント」を実施いたします。
 この3月22日、駒木が結構必死な思いをして買って来ましたハルウララの単勝馬券(高知競馬場発行の“純正品”)5名の方にプレゼント致します。
 「決して当たらない」という事で、一般的には交通安全のお守りとしても重宝されているそうですが、ご利益を拡大解釈すると色々な意味のお守り(食中毒防止、麻雀の放銃防止、嫌いな作家にファンを装って送り付けてヒット作防止etc…)になるでしょうから、どうぞドシドシご応募下さい。
 応募はメールでお願いします。他のメールと区別するため、タイトルに「ハルウララ馬券希望」と書いたものだけ受け付けます。当然1人1通まで。ハンドルネームとアドレス変えて複数応募する、なんてのは2通以上当選した場合、非常に恥ずかしい思いをするので止めましょう。
 で、メールへの記入事項ですが、これは応募されたメールの中から厳正な抽選の上、こちらから当選者の皆さんにのみ改めて発送先(ご本名、ご住所)を問い合わせるメールを送付しますので、応募のメールには特に必要事項はありません。ただし、駒木のモチベーションが上がるような激励などを頂けると、この単純なバカは大変に喜びますので宜しければ何卒。締め切りは4月5日の0時必着。遅刻の場合は、応募者少数で“定員割れ”になった場合以外は一切救いませんのでお気をつけて。

 ……では、前置きが長くなりましたが、レポートを始めます。例によってレポート中は文体を常体、人名等は原則敬称略にしております。
 なお、レポートは21日夜に自宅を出るところから始めますが、旅行自体は22日0時39分に三ノ宮駅を発つ夜行列車から始まる…という事で、最初は“0日目”からのスタートとさせてもらいます。そして、いつものパターンからいくと、本日分のレポートでは競馬場まで辿り着けないであろう事を、あらかじめ申し上げておきます(笑)。


 ◎0日目(3月21日)

 出発は19時前。夕食もそこそこに最寄駅までの徒歩の行程が腹ごなしの運動になるという慌しい旅行の幕開けとなった。0泊2日の弾丸旅行に相応しいといえば相応しいのだが、実はこの早出は不可抗力だったりする。
 というのも、この旅行の数日前からモデム配りやら何やらで忙しく、肝心の「青春18きっぷ」を入手し損ねていたのである。これまでなら随分前に購入して備えていたのだが、この度は1枚(5日分)の正規購入ではなく、2日分だけ金券ショップで短期レンタルしようと考えていて、後回しにしていたら後回しにし過ぎたという次第。何と言うか、幸先悪過ぎである。
 幸先が悪いと言えば、この日は体調を考慮して夕方まで自宅で静養し、競馬も電話投票で済ませていたのだが、その電話投票が見事なまでの裏パーフェクトで、専用口座の残高がほとんど尽きる結果になってしまっていた。何だかリングシューズの紐が切れたのを発見したテリーマンはこのくらい不安だったのだろうかと思うくらい不安になって来た。別に悪魔超人とかと戦うわけでもないのにだ。

 それでも閉店寸前の金券ショップで「青春18きっぷ」2日分を何とか入手し、時計を見ると19時30分。夜行までは5時間も余っている。時刻と言い、余った時間の長さと言い、実に中途半端である。
 5時間何するでもなく時間を潰すなんてのは耐えられないので、夜でも開いてて適当に時間が潰せる所は……と一思案した結果、フリー雀荘マンガ喫茶が思い浮かぶ。ここで「映画館の最終上映」とか「行きつけのバーで軽く一杯」とか出て来ないのが駒木の冴えない所である。
 で、「マンガ喫茶で5時間っていうのも、料金考えたら無駄遣いの極みだな」と考え、3時間半程度を雀荘、それ以降をマンガ喫茶で過ごす事にした。
 ──賢明な受講生の皆さんは既にお気づきだろうが、本当に無駄遣いの極みなのはフリー雀荘で負けるパターンだったりするわけだが、それに駒木が気がついたのは1回目の半荘の清算中の事であった。やる前から負ける事考えるヤツがいるかよ、というのはアントニオ猪木の名言だが、たまには考えた方が良い時もあるというのが、この日駒木が学んだ教訓である。

 
 ◎初日(3月22日)

 ……と、そうやって、すっかり心を荒ませた状態で、駒木は旅行初日をJR三ノ宮駅の駅構内で迎えた。旅行前から既に懐具合の心配をしているという、何とも締まらないというか情けない出発直前の佇まいである。
 周囲を見回すと、飲み会帰りと思しき人たちの姿が多くを占める中、バックパックに飲み物と軽食を詰めたコンビニ袋という、いかにも夜行列車客っぽい格好の人たちもチラホラと見受けられる。恐らくは駒木と同じ列車に乗る人たちだろう。ひょっとしたら、この中にも高知競馬を観に行く人もいるのかも知れない。

 さて、この旅行で駒木が利用する列車は「ムーンライト高知」。京都─高知間を7時間20分ほどで結ぶ夜行快速だ。
 この列車、あくまで「快速」であって特急じゃないので「青春18きっぷ」でも利用できるというのがミソである……のだが、実はこの「ムーンライト高知」、原則的には全車グリーン席(指定席料金が高額の上、「18きっぷ」使用不可で極めて運賃割高)で運行されており、「18きっぷ」の使える普通指定席は「18きっぷ」シーズンのみ、しかも1両64席しか提供されないので、路線のマイナーさと相反してかなり座席の確保し難い列車だったりする。それを証拠に、駒木は指定席券発売日である1ヶ月前に「みどりの窓口」へ駆け込んだが、三ノ宮─高知間の座席が確保出来たのは復路の高知発の便のみで、往路は数度のキャンセル待ちトライも空しく、とうとう買いそびれてしまったのである。
 ……などと言うと、「あれ、じゃあアンタどうやって高知まで行くのさ」という話になるのだが、何事でも裏道はあるのである。この辺の話を詳しくやると、何だか似非鉄道旅行マニアの薀蓄話みたいになってアレなのだが、今後高知競馬へ「18きっぷ」で行こうと思われている方へのレクチャーの意味も込めてじっくりやる事にしよう。
 実はこの時期の「ムーンライト高知」は、岡山まで「ムーンライト山陽」(京都─下関)「ムーンライト松山」(京都─松山)という同様の夜行快速が連結されており、そこまでは「ムーンライト山陽・高知・松山」という合併したての銀行みたいな呼ばれ方で運行されている。で、この中の「ムーンライト山陽」は、4両編成236席が全て普通指定席になっていて、座席確保が非常に簡単なのだ。で、今回高知へ行くに当たってはこれを最大限利用する

 つまりはこういう事だ。まず三ノ宮─岡山間を「ムーンライト山陽」の指定席で行き、「青春18きっぷ」を利用する。ただし午前3時過ぎ着の岡山で2時間以上も始発を待っていてはラチが開かないので、ここからは必要最小限の区間(岡山─阿波池田間)だけ追加料金(2800円)を支払って「ムーンライト高知」のグリーン車に乗車する。細かい話だが、この区間ならグリーン席の料金は“短距離割引”と言う事でかなり格安になっている。
 指定席券の効力が切れる阿波池田駅では、「ムーンライト高知」の10分後に始発の鈍行が発車するという、列車本数の少ない四国エリアでは奇跡的なアクセスがあるので、今度はそれに乗って高知を目指す。勿論この区間は「18きっぷ」でフリーパスだ。この場合、「ムーンライト高知」より到着が30分ほど遅れるが、まぁ許容範囲だろう。
 ただ、この行程には大きな落とし穴がある。朝の3時過ぎと5時半頃に失敗絶対不可の乗換えを強いられるので、ほぼ徹夜必至になってしまうのだ。特に岡山で寝過ごしてしまうと、「ムーンライト高知」の車両から切り離された上に広島直行…という物凄い惨事が待っている。しかも、ここまで苦労して料金面では夜行バスと大して変わらない(乗車駅や「18きっぷ」の使い方によっては割高かも)という衝撃の事実まである(笑)。まぁお薦めはしないが、一応参考までに。

 そんなゴクドーなアクセスだけ紹介してもアレなので、ここで蛇足ながら、京阪神圏又は首都圏からの高知までの真っ当なアクセスも紹介しておこう。
 まず京阪神から高知までのアクセスから。金に糸目をつけないなら、伊丹─高知間の航空便だろう。離陸したと思ったら着陸しているという、有り難味があるようで薄い高速アクセスである。
 安上がりに済ませるなら、「ムーンライト高知」のほかにもバスがある。バスは京都、大阪、神戸(三ノ宮)からそれぞれ高知への昼行、夜行便が出ていて、運賃は片道6500〜5500円程度は高知港と大阪南港を結ぶ航路で、料金は雑魚寝の2等船室で片道5000円。ただし、各港からキーステーションまでは別の交通機関を利用する必要がある。バスは利便性が高く、船は曲がりなりにも横になって眠れるというのが長所といったところか。
 東京方面からは、余程の物好きか貧乏旅行希望者か鉄道好きでない限りは、飛行機(羽田─高知間)夜行バス(東京・新宿─高知)の選択が賢明だろう。特に飛行機の場合、航空各社の大幅割引サービスでチケットが取れた場合は夜行バスより割安になる事もある。夜行バスは片道12500円が相場。ただし、所要時間約12時間の“地獄の旅”になるので根性と覚悟が必要になるかと。
 どうしても「18きっぷ」で安上がりに行きたいという人は、東京駅から昼間の東海道線を乗り継いで京都まで行き、そこから「ムーンライト高知」を使うという方法がある。この場合だと、費用は「18きっぷ」2日分+指定席券で計5110円。随分と割安になる代わりに、京都まで休憩無しで乗り継いでも最低18時間余りの所要時間がかかる。高知競馬場到着まではほぼ丸1日かかる。そんな状態では、第1レースの時点で恐らく廃人同然だろう。
 もし駒木なら、東京を朝10時半頃に出て大阪まで「18きっぷ」で行き、そこから南港まで行ってフェリーで高知まで行くルートを採る。更に所要時間は延びるが、これなら夜は横になって寝られるので疲労度は比じゃないはず。後は同じ船室にイビキをかく輩がいない事を祈ろう。費用は「18きっぷ」1日分+フェリー運賃+キー駅〜港までの運賃で8000円弱
 また、高知駅周辺は結構多くのビジネスホテルが軒を連ねているので、余程の事が無い限り宿の確保には事欠かないだろう。今回のハルウララ騒動でも駅周辺のホテルがパンクしたという話は聞かなかった。飛行機で前日午後に乗り込んで、軽く高知城等を観光して1泊、翌朝ゆったりと競馬場へ…なんてのも考え得るパターンである。

 閑話休題。旅行レポートに戻ろう。
 そういうわけで、とりあえずは「ムーンライト山陽」の指定席に潜り込むと、例によって読書タイムの開始である。今回の“旅のお供”は、かの名作『風と共に去りぬ』
 じゃじゃ馬なお嬢様とキザな皮肉屋の相手役という、未だに例の絶えないベタな組み合わせの主役による物語だが、その元祖的な存在とあって、さすがと唸らせられる内容。また、奴隷解放宣言直前の黒人奴隷が、どうやって白人社会に溶け込んでいたのかが細かく描かれていて、そっちも興味深かった。

 そうする内に列車は、明石、加古川、姫路と兵庫南西部のキー駅を次々と通過して、いよいよ岡山方面へ。ここに来て、未だ前日までの睡眠不足が抜けきらない上、乗車以来ずっと細かい活字を追いかけていたので駒木も徐々に眠たくなってきた。ヤバい。広島直行か?
 高知競馬へ行こうとしたが宮島競艇行ってた
、なんて話になったらシャレにならな……いや、シャレにはなるか。ハルウララの馬券買いに行って、もみじ饅頭持って帰ったら笑いは取れそうだ。絶対やらないけど。
 仕方ない、ちょっと危険だが岡山直前で猛烈な睡魔に襲われない内に軽く仮眠を摂っておくか。携帯電話をマナーモードのまま午前3時でアラーム設定をして、リクライニングシートを倒して目を瞑った。岡山手前で起きろよ自分、と強く脳ミソに言い聞かせながら。


 ……というわけで、やはり行きの車中で終わってしまいました(苦笑)。まぁ、高知競馬場までのアクセス講座もやったんで、どうかご容赦を。次回は何とか競馬場まで辿り着けるはずです。お楽しみに。(次回へ続く

 


 

2003年第118回講義
3月27日(土) 
競馬学特論
「駒木研究室競馬予想No.1決定戦〜04年春シリーズ・暫定第2戦・高松宮記念」

 諸事情により、講義の準備開始がドバイワールドカップの終了とほぼ同時刻になってしまいました。毎度毎度、開始時刻の遅い講義でご迷惑をおかけしております。アドマイヤドンの惨敗グセがここに来て出るとは残念至極であります。
 ……しかしまぁ、当たらない予想を極力遅く出すという意味では、迷惑を最小限に留めているという見方も出来ますか(笑)。まぁ、笑いのタネにでもなれば幸いです。

暫定第2戦・高松宮記念(中京・1200芝)
馬  名 騎 手

 下段には駒木ハヤトの短評が入ります。

        ホーマンアピール 大西
3歳前半は重賞戦線で活躍するも、復帰後2走は共に2ケタ着順で完敗。デキの良さでどこまで順位を上げられるかだろう。入着まで。
×       ギャラントアロー
前走で思わぬ大敗を喫したが、強引に逃げても粘り切る底力は依然としてファンの支持を集める。今回も先行激化が予想される展開をいかに乗り切るかがカギに。
サニングデール 福永

前年の2着馬が漸く完全復調。今回は展開もハマりそうで、一気に主役へと踊り出た。1200mのスペシャリストだけに、このレースがこの馬にとって春の総決算。モチベーションも高そうだ。

 

      シルキーラグーン 小林淳

昨秋から一気の本格化で遂にG1にまで辿り着いた。条件は厳しいが、道中でロス無く脚を貯められれば直線一気の大駆けまで。

    ×   アタゴタイショウ 藤田

ローカル専門の“善戦マン”が、前哨戦での大健闘の余勢を駆ってG1登場。ポイントはやはり先行ジリ脚をどう克服するか。

        サクラタイリン 二本柳
条件戦を一気に脱出し、久々のオープン復帰。NZトロフィーでギャラントアローに詰め寄った経歴はいかにも不気味だが……
  × シーイズトウショウ 中館

もうフロックとは言わせぬ前走の力走は印象鮮烈。斤量1キロ減で、CBC賞勝ちと同条件のコースとなれば期待も高まる。先行に固執せず、自在性のある脚質を活かせれば。

デュランダル 池添

昨秋の短距離チャンプがいよいよ始動。ぶっつけ本番は先にある目標(安田記念)を見据えた行動とも受け取れ、ここは試走の意味合いも強かろうが、実力最右翼だけに到底無視は出来ぬ。問題は直線一気に向かない小回りコースをどう克服するかだが……?

        ワンダフルデイズ 太宰

追い込み一辺倒ながら、時折素晴らしい伸びを見せて良績を挙げるクセ馬タイプ。デキも良いが、末脚の信頼度がハッキリしないのが弱味。

    ×   10 カフェボストニアン 岡部幸

G2、G3クラスなら上位を賑わすが、G1では頭打ちの感も。ジリ脚ゆえ先行粘り込みが身上だが、今回の展開では果たして……?

        11 モンパルナス 赤木

赤木騎手のG1初挑戦はこの馬から。しかし、デキも下降気味、厳しい展開予想とあっては到底強気に出れぬ。

      × 12 ウインクリューガー 武幸

高知競馬から中5日での連闘・強行軍。1400ダートを叩いてスピードへの対応を図るが、初めてづくしの条件の中でどこまでやれるか。実績は文句ナシなのだが……。

        13 フルブラスト 本田

果敢な格上挑戦の意気込みは認めるが、ダート向きの傾向あるだけに、この条件は余りにも厳しそう。

        14 フィールドスパート 野元

休み明け以来、5連続二ケタ着順で惨敗中。もはや上積みも求め辛く、終いからのケイバでどこまで順位を上げるかが興味の対象に。苦戦必至。

  15 テンシノキセキ 横山典

ビリーヴを苦も無く差し切った昨秋のセントウルSの記憶が未だに鮮やか。休み明けを叩いて体調もすごぶる良好で、このメンバーでも地力は有力候補の一角。ただ最近目立つようになったジリ脚の傾向は心配材料。

  ×   16 リキアイタイカン 竹之下
忘れちゃいけない昨年の3着馬。近走不振だが、「忘れた頃の一発」が絶えず気になる怖い怖い追い込み馬。人気薄だけにかえって怖さも。
×   17 サーガノヴェル 小牧太

強烈なスピード内包するも、極度の気性難が出世を阻んで来た。外枠利して揉まれない流れは思っても無いチャンス。ノーマークの利も加え、大穴劇のヒロインを狙う。

 

×     18 キーンランドスワン 四位

相手強化の壁に突き返された格好の前走。デキは全く悪くないが、ここではさすがに格負けしそう。左回りコースの実績に乏しいのも懸念材料で。


●展開予想
(担当:駒木ハヤト)

 純粋な逃げ馬はギャラントアローのみ。前走同様、強引にでもハナを切っていくだろう。単騎ゆえにマイペースの逃げが打てる可能性もあるが、前々でレースをしたい馬の位置取り争いに巻き込まれて厳しい展開になる可能性が高い。ちなみに逃げ脚質の連対は、このレースが今の条件に変わって以来、ショウナンカンプの1頭だけ。
 さて、そういった事情からペースそのものはかなりのハイペースになる可能性が大。特に位置取り争いが厳しい好位勢は、どの馬も息切れの懸念がつきまとう。むしろ先手を取り切れずに中位程度からのケイバを強いられた馬の方に勝機がありそうだ。
 ハイペースとなれば、やはり気になるのは後方からの直線一気だが、さすがに小回りの中京コース。差し、追い込みは直線入口で10番手くらいのポジションが欲しいところ。いかにもサニングデールが恵まれそうな話だが、最後方近い位置から仕掛けるデュランダルに果たして勝機は……?

●駒木ハヤトの「負け犬エレジー」●
《本命:サニングデール》
 

 フェブラリーSに引き続き、手堅いにもほどがあるフォーカスになって申し訳無い(苦笑)。
 単勝人気上位の馬は出来るだけ軽視しようと頑張ってみたのですが、諸々のファクターから考えるとサニングデールから行かざるを得ません。1200mオンリーのスペシャリストという事で、このレースが勝負駆けという気配もプンプン匂って来ますし、何よりも展開に恵まれ過ぎといったところ。
 シーイズトウショウは敢えて中位程度までポジションを下げざるを得なくなった場合を想定しての○印。桜花賞やCBC賞での好走例を見るまでもなく、好位粘り込みよりもむしろ、中団からの差し込みに魅力を感じさせる脚質ではあります。問題は乗り慣れない、しかも逃げたがりの鞍上がどういった作戦を採るかですが……。
 実力ナンバー1のデュランダルは、明らかに目標は安田記念と見て、ここは評価を落としました。テンシノキセキも地力は認めるものの、差して味のあるタイプではなく、脚質に融通が利かないという事で連下まで。×印2頭はイレギュラーな展開になった場合に台頭。

駒木ハヤトの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(28日未明時点)
単勝 100円 4.0
馬連 3-7 100円 9.3
  3-8 100円 7.4
  7-8 100円 11.9
  3-15 100円 13.8
  3-17 100円 131.8
  2-3 100円 13.6
馬単 3→7 100円 16.9
  3→8 100円 16.7
三連複 1-4-10 100円 11.9


●栗藤珠美の「レディース・パーセプション」●
《本命:デュランダル》

 有力馬が多くて目移りしてしまうこのレースですけれども、やはりここは、休み明けでも秋の短距離チャンピオンに敬意を表してデュランダルを本命にさせてもらいました。サニングデールも迷ったんですが、実績の差でこっちを選びました。博士と本命被るのも怖いですし(笑)。
 ちょっと穴狙いで面白いと思うのが8枠の3頭ですね。印が足りなくてサーガノヴェルだけ無印になってしまったのですが、こっそりプライベートで狙いたいところです(笑)。

栗藤珠美の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(28日未明時点)
単勝 100円 3.8
馬連 3-8 100円 11.7
  8-15 100円 17.5
  3-15 100円 13.8
  7-8 100円 11.9
  8-18 100円 53.7
  8-16 100円 412.9
馬単 8→3 100円 13.4
  8→15 100円 27.4
三連複 3-8-15 100円 18.7


●一色順子の「ド高め狙います!」●
《本命:サーガノヴェル》

 差し、追い込み有利ってことは誰でも分かるレースなんですけど、それだけに強い差し馬はどれも人気になってて、わたしとしては困ったところですね〜(苦笑)。デュランダルもサニングデールも、もうちょっと人気薄になると思ったんですけど甘かったです。
 ……というわけで、ちょっと今回は無茶を承知で大穴狙いに走ってみます。前々走でサニングデールに先着している、地力だけならどの馬にも負けないサーガノヴェルから。中央の騎手になってから少しスランプ気味の小牧太騎手ですけど、こういう時にガツンとカマしてくれるのが一流のジョッキーだと思いますしね。
 でも、サーガノヴェル、ちょっと人気しなさすぎじゃないですか? なんだかオッズ見てると怖くなります(笑)。

一色順子の購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(28日未明時点)
単勝 17 100円 66.1
馬連 3-17 100円 131.8
  16-17 100円 1778.3
  3-16 100円 359.2
  8-17 100円 197.3
  5-17 100円 620.7
  10-17 100円 403.1
馬単 17→3 100円 420.8
  17→16 100円 4105.3
三連複 3-16-17 100円 3004.3

 
●リサ=バンベリーの「ビギナーズ・ミラクル!」●
《本命:デュランダル》

 駒木博士も珠美サンも順子サンも、みんな口を揃えて「難しい、難しい」って言ってるんですよね、今日のレース(苦笑)。そんなのワタシに分かるわけないんで、本当はやっちゃいけないと思いながら、馬の名前で決めちゃいました。デュランダルとサーガノヴェルなんて、いかにもファンタジーっぽくてカッコいいですよね。で、そのノヴェルのタイトルが日本語で「天使の奇跡」というコトで(笑)。
 あとの3頭はトライアルレースの上位の馬と昔のG1ホースです。今日もこれで当たっちゃったらゴメンナサイですね。

リサ=バンベリーの購入馬券
種別 フォーカス 購入金額 オッズ
(28日未明時点)
単勝 100円 3.8
馬連 8-17 100円 197.3
  8-15 100円 17.5
  15-17 100円 261.1
  3-8 100円 7.4
  7-8 100円 11.9
  8-12 100円 205.7
馬単 8→17 100円 256.9
  8→15 100円 27.4
三連複 8-15-17 100円 437.8

 図らずも、4人の印が変に偏った感じもしますが、そこは駒木研究室ということで、どうかご容赦を。でも、順子ちゃんの買い目はオッズを見るからに恐ろしいですね(笑)。さて、結果はどう出るか、お楽しみに……。

 


高松宮記念 成績

1着 サニングデール
2着 デュランダル
  ×     3着 18 キーンランドスワン
×       4着 ギャラントアロー
  × 5着 シーイズトウショウ

単勝3 430円/馬連3-8 740円/馬単3-8 1500円/三連複3-8-18 5490円

 ※駒木ハヤトの“勝利の雄叫び”(単勝・馬連・馬単的中)
 3連複はハナ、ハナ差で残念でしたが、久々にドンピシャの的中でした。今度は現実の馬券も馬単で当ててます(笑)。
 しかし、ここまで戦前の予想通りに展開が流れるG1っていうのも珍しいのではないかと。差し馬が2頭、素直に実力を発揮してくれるってケースは、実は結構珍しかったりするんですけどね。まぁ上手い事いってくれてホッとしました。これからも、ここまでが「春の珍事」とか言われないように頑張りますんで何卒。
   

 ※栗藤珠美の“喜びの声”(馬連のみ的中)
 今回も的中……なんですけれども、また馬単を当て損なってしまいました(苦笑)。
 もう駒木博士がどうとか言っている場合じゃありませんね。本格的なスランプにならない内に、まずは自分を顧みないといけないなと痛感しています。再来週からのクラシックシーズン、気を引き締めて頑張りますので、どうか応援宜しくお願いしますね。

 ※一色順子の“終了しました……”(不的中)
 サーガノヴェルは15着。馬が「走るのイヤ」って言ってるパターンにハマっちゃいましたね。まあ、1番人気と2番人気の決着だと、わたしの予想は出番が無いので仕方ナシです。
 でも、再来週は荒れることの多い桜花賞。去年の菊花賞みたいに、一発狙ってます。期待してて下さいね〜♪

 ※リサ=バンベリーの“ハッピー・ハッピー・グッドラック”(馬連のみ的中)
 また、当たってしまいました(笑)。当たる時はどんな予想しても当たっちゃうんですね(苦笑)。
 でも、今日のレースで一番カッコ良かったのは、やっぱり2着のデュランダルでした。あの直線のスパートは、ちょっと鳥肌が立ちました。また春のレースに出て来るそうなので、追いかけてみたいと思います。

暫定第2戦終了時点での成績

  前回までの獲得ポイント 今回獲得したポイント 今回までの獲得ポイント
(暫定順位)
駒木ハヤト 1410
(1位)
2670 4080
(1位)
栗藤珠美 700
(2位タイ)
740 1440
(2位タイ)
一色順子 570
(4位)
0 570
(4位)
リサ=バンベリー 700
(2位タイ)
740 1440
(2位タイ)

 (ポイント・順位の変動について)
 単勝人気上位2頭による決着とあって、穴党の一色順子を除く3名が的中を果たした。中でも、サニングデールに◎を打った駒木ハヤトは単勝、馬単のボーナスも獲得して首位を守ると共にリードを広げた。まだまだ大きな差ではないが、とりあえず今期の主導権を握ったと判断して良さそうだ。

 


 

2003年度第117回講義
3月26日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(3月第4週分・合同)

 旅行等の取材活動で講義の間隔が開きましたが、今日から高校の仕事が始まる4月上旬まで、目一杯カリキュラムを組んで頑張る所存です。どうか何卒。

 さて、今日は今週発売の「週刊少年ジャンプ」17号、および「週刊少年サンデー」17号の内容についてゼミを行います。
 まずは今週も情報系の話題から。「ジャンプ」の読み切り企画についての話題が入って来ています。
 前週のゼミで既報の通り、今週号までで『スティール・ボール・ラン』(作画:荒木飛呂彦)が連載中断になるのに伴い、次号から連載作家陣による4週連続の読み切りシリーズが始まります。とりあえず次号掲載の第1回は武井宏之さん『麻葉童子』。タイトルからもお判りになるように、『シャーマンキング』の外伝です。
 今回の読み切りは32ページの綴じ込み付録ということで、何だかマンガ黎明期の別冊付録を髣髴とさせる企画ですね。『まんが道』(作画:藤子不二雄A)では、突発的に発生した別冊の仕事に追われて憔悴しまくる後の大御所マンガ家の皆さんが登場するのですが、今回の企画における各作家さんのスタジオの様子はどうだったのか、遠巻きにでも拝見してみたいところです(笑)。1週取材休みを貰ったとは言っても、通常時の2倍近いページ数ですからねぇ……。

 ……それでは、今週分のレビューとチェックポイントへ。レビュー対象作は、「ジャンプ」から新連載と新連載第3回の後追いが各1本、そして「サンデー」から新連載が1本、都合3本ということになります。

 ※7段階評価の一覧表はこちらからどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年17号☆

 ◎新連載『少年守護神』作画:東直輝

 「ジャンプ」の新連載シリーズも今週でラスト。東直輝さんの連載再復帰作・『少年守護神』のレビューです。

 東さんは1978年3月生まれということですから、26歳になったばかり。駒木より3つ(2学年)年下と知って、ちょっと驚きました。
 東さんのマンガ家としてのキャリアは、「これでもか、これでもか」という投稿活動から始まります。1997年6月期、1998年1月期、2月期の「天下一漫画賞」で相次いで最終候補まで残り、第2回「ストーリーキング」準キング、98年上期「手塚賞」で佳作をそれぞれ受賞と、1年弱の間に「ジャンプ」系新人賞の全てで一定の結果を出すという離れ業を見せます。
 その意欲は当然の事ながら編集サイドにも通じ、週刊本誌98年47号で遂に読み切りデビュー。約3ヶ月後には「赤マル」に「ストーリーキング」の受賞作掲載、翌99年春には連載枠獲得と、まさにトントン拍子の出世を果たしてゆきます。
 しかし、その意欲は読者の心にまでは響かなかったのか、この時の連載作『CHILDRAGON』は1クール12回で打ち切り。同じ回の「ストーリーキング」でネーム部門準キングとなった『ヒカルの碁』とは余りにも対照的な結果に終わり、一敗地にまみれた格好になります。
 それでも東さんの創作意欲は衰えず、「赤マル」00年春号、週刊本誌00年49号、「赤マル」01年春号と、相次いで読み切りを発表し、01年年末からは『ソワカ』の連載を開始。が、これも2クール22回での短期打ち切りに終わり、意欲が客観評価に繋がらないという、実力社会の恐ろしさをまたしても痛感する結果になってしまいます。
 しかし東さんはそれでも活動のペースを緩ませず、03年12号に今回の連載のプロトタイプとなった読み切り版・『少年守護神』を発表。当講座での評価は相当に低かった(C評価&ラズベリーコミック賞ノミネート)のですが、アンケート又は編集サイドの評価が良好だったのでしょう、この度の連載獲得となりました。
 ……しかし、こうしてキャリアをまとめてみますと、何と言うか、周囲に「彼は頑張ってるし、何とかしてあげたい」と思わせてしまうような仕事っぷりですよね(笑)。穿った見方でも何でもなく、編集部受けの良い作家さんなんだろうなぁ…と思います。

 ──とはいえ、やはり作品の内容は別の話。今回も読み切り版同様、残念ながら厳しい事も述べなくてはならなくなりそうです。

 まずからですが、基本的には描き込まれた見応えのある絵柄だと思います。若干、シリアスタッチとマンガタッチの区別が曖昧で妙になった部分(やたら目の大きなシリアス女の子キャラ)も見受けられますが、「ジャンプ」連載陣に混じっても標準的なレヴェルには達しているのではないでしょうか。前回、大顰蹙を買った現代風のコスチュームデザインも一応修正されており、減点箇所は多くないと思います。
 ただ、コンピューターを使って彩色されたと思しきカラーページは、ちょっとどうなのでしょう? 多分、背景が人物作画と合っていないんだと思うんですが、「ジャンプ」でやるなら、もうちょっと試行錯誤してからにして欲しかったような気もしますね。

 次にストーリー・設定ですが、こちらはシナリオの破綻していた読み切り版のプロットを踏襲してしまったため、端的に言って、かなり無茶苦茶な内容になってしまっています。
 微に入り細に入った指摘をしてしまうと、またお叱りを受けるでしょうから控えますが、シナリオ全体において、出来事の起こり方やキャラクターの行動が不自然で、末期的な御都合主義に陥ってしまっています。一応はシナリオの“ツッコミ所”を無くす配慮が為されているのですが、大元のストーリーが破綻していては折角の努力も……。
 また、読み切り版からそのまま引き継いだ設定も、上手く活かされているとは思えません。特にヒロインの特殊技能である「心を揺さぶる歌」の使い方が非常に勿体無く思えました。せっかく最初に合戦シーンがあるのですから、そこで伏線っぽくヒロインに唄わせてみれば面白かったんですが。まぁそれをやると「何だか和製『マクロス』ですね」という声も聞こえて来そうですけどね(笑)。
 あと、ひょっとするとこれら以上に問題なのかも知れないのがギャグの挟み方ですね。『銀魂』のように確信犯的な試みでも無い限りは、重厚なシナリオの中で雰囲気や世界観をブチ壊すようなギャグをおみまいするのは読み手を困惑させるだけのような感じがします。ギャグをカマす時に場の空気を読まなくちゃいけないのは、日常生活だけでなく、こういう時も一緒なのでは…と思ったり思わなかったり。

 というわけで評価はC寄りB−。読み切り版に比べて改良の跡も窺えますので“死刑宣告”は控えましたが、前途は多難だという印象は変わりません。
 どうも次号で『武装錬金』が掲載順実質最下位になっちゃうようなんですが、次の入れ替えでこっちが生き残って『武装錬金』が切られたら立ち直れなくなりそうな気がします(苦笑)。

 ◎新連載第3回『未確認少年ゲドー』作画:岡野剛【第1回掲載時の評価:保留

 そしてこちらは新連載シリーズのトップバッター・『未確認少年ゲドー』。今後の運命を分けると言われる第3回時点での後追いレビューです。

 さて、ここまで3回の内容は、『地獄先生ぬ〜べ〜』スタイルの、少人数のレギュラーキャラにゲストキャラ(未確認生物)を絡めていく…といった、一話完結型のコメディで進行していますね。大方の予想通りといったところでしょう。
 それにしても、このようなタイプの設定では、閉塞感と言うか悪性のマンネリ感が出て来ないかと懸念していたのですが、現在のところはマンネリを“手堅さ”に転化し、何とか上手く乗り切っているように思えます特に良いのがキャラクターと世界観が確立されている点で、この辺は『ぬ〜べ〜』時代に身に付けたメカニズムを上手く応用出来ているのでしょう。設定を流用した“劣化コピー”状態ではなく、アイディアの良い所だけを拝借し、独自のモノに出来ていると思います。
 ただし、作品の構造上仕方ない部分もあるのですが、シナリオの起伏のつけ方が余りにも大人しいような気がします。簡単に言うと、話の内容が淡白過ぎるんですね。もうちょっと緊迫感のようなモノを持たせても良いんじゃないかと思うんですが……。
 バトル物のようなハラハラドキドキ感を出すのが難しいならば、本気で読み手を感動させるような“泣かせ系”のストーリーをぶつけてみるのはどうでしょう。とにかく、読み手の感情に訴えかけるようなストーリーでインパクトを与えない事には、打ち切りサバイバルレースを切り抜けるのは簡単ではないと思います。

 評価は、読み切り版や第1回時より若干の上積みがあったという事でB+にしておきます。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆ 

 巻末コメントで、大亜門さん「“先生”と呼ばれるのに抵抗があったが……」という若手作家さんらしいモノが。でも確かに、マンガ業界内では“先生”というのは役職名みたいなところがありますよね。祝うつもりも無いのに出す祝儀みたいなもので、敬うつもりも無いのに呼ぶ「先生」みたいな感じでしょうか。
 ちなみに、駒木は“業界外”の人間なんで、敢えて原則“さん”付けにし、本当に尊敬している作家さんにだけ“先生”と付けるようにしています。

 ……でもよく考えたら、本当に「先生」って大した敬称じゃないんですよね。だって駒木も行く所行けば「先生」って呼ばれるくらいですから、価値無ぇったらありゃしない(笑)。生徒にとっては、ひょっとすると部活の「先輩」よりも格下だったりするかもですね。 

 ◎『スティール・ボール・ラン』作画:荒木飛呂彦【現時点での評価:A/第1期総括】

 最後は『みどりのマキバオー』の有馬記念を思わせるような展開で、主人公・ジャイロ=ツェペリが1stステージ優勝となりました。この辺の澱みの無い演出はさすがといった所ですね。
 ここまでの印象としては、31ページ連載の利点を活かし切ったページ配分や、レース物のスピード感と爽快感を重視したストーリーテリングが非常に光っていたと思います。相変わらずの“荒木理論”には多少閉口する場面もありましたが(そもそも足が萎えている人が馬を御そうと思っても、「進め」の合図も出せないでしょう、ジョジョ君?)、それも世界観の一要素と見なさなければならないでしょう。まさか、「人間があんな速度で走れるわけが無い」とか言って、この作品を全否定するわけにもいかないでしょうし。

 と言う事で、評価はA−寄りAで据え置き。現時点では当ゼミの今年度No.1長編作品という事になりますね。


 ◎『HUNTER×HUNTER』作画:冨樫義博【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 遂に“王”が誕生したわけですが、生まれながらにしての容赦無さ過ぎな暴虐さが、往年の鳥山明チックでシビれますねぇ。やっぱり本当の敵役はベラベラ喋っちゃいけないんですよね。喋らせなきゃ悪役だと判らないようなキャラばっかり出すマンガもありますが、まぁ…うん。(長井秀和風に)
 ここ最近はゴンVSナックルで結構冗長な感じがしたんですが、ひょっとしたらこの辺のアイディアを練る為の時間繋ぎだったんでしょうかね。これまではストーリーの要所になると休載が増える一方だったんですが、妥協策と言うか急場の凌ぎ方を編み出したようですね(それもどうかという話ですが)。

☆「週刊少年サンデー」2004年17号☆

 ◎新連載(シリーズ再開)『DAN DOH!!〜ネクストジェネレーション〜』作:坂田信弘/画:万乗大智【前シリーズ終了時の評価:B+

 再三お知らせしていたように、今週から“アニメ化に伴う復活”という特殊なケースで、『DAN DOH!!』の新シリーズが連載開始となりました。足掛け8年でやっと終わらせた作品を、商業的な理由とは言えもう一度蘇らせるとは、恐るべしマンガ業界ですよね(笑)。

 さて、今回は特殊なケースですので(何しろ一度連載総括までしちゃった作品です)、作者紹介は省略し、レビューに関しても、前シリーズまでの内容を念頭において、後追いレビューというか、チェックポイントのようにサラリといきたいと思います。第3回のレビューも一応はやりますが、こちらも同じくと言う事で何卒。

 ……というわけで、新シリーズの内容についてですが、今シリーズは「ネクストジェネレーション」というタイトルとは裏腹(?)に、前シリーズ終了からほぼ間もない時点から、キャラクターもそっくりそのまま引き継いでのリスタートとなりました。新庄樹靖の“ネクストジェネレーション”たるダンドー、という事なんでしょうかね。
 ストーリーについては、未確定部分が多いものの、シリーズ通じての主要キャラ&ライバルキャラ総出演による“オールスター戦”という流れになりそうですね。これは典型的な大長編作品の総決算企画と言うべきもので、以前からのファン層を満足させると共に、実は作者が一番楽しんでいる…という色々な意味で贅沢な企画だったりします。『大甲子園』(作画:水島新司)を見れば判りますよね?(笑)
 まぁ、この作品でそれをやったところで、果たしてどれ位の「サンデー」読者がついて来れるのかは微妙ではありますが、それでも“打率”の高い企画ではあると思います。歴代のキャラクターを出すだけでシナリオが薄っぺらくなるとアレですが、普通にやっていれば少なくとも大ハズレは無いでしょう。

 ただ、今回のエピソード──ダンドーがチンケなヤクザと賭けゴルフして圧勝──はちょっと頂けないかなぁ…とも思います。主要キャラ紹介を最優先させるため、敢えて中身の薄いシナリオでお茶を濁したとも言えるのですが、8年以上引っ張った作品の再出発となるべき回を、そんな悪い意味で陳腐なシナリオにしてしまうのは如何なものでしょうか。全英オープン準優勝の天才少年に相応しい華々しい再登場シーンが欲しいと個人的には思いました。

 評価は、とりあえず今回だけで8年分の評価を揺るがせるのもどうかと思いますので、保留の意味も込めてB+で据え置き。まぁ、真価が問われるのは“オールスター戦”か、その前の新庄VSダンドーに突入してからでしょうね。

 
◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「すぐに挫折してしまった挑戦って、ありますか」。
 
やはり習い事系、ダイエット・運動系が多いみたいですね。中には「会社勤め」、「社会人」というのもあって、さすがはマンガ家さんだ…と思わせてもくれます。そう言えば、かの藤子・F・不二雄先生も会社勤めを超短期で挫折したんでしたよね。
 しかし、藤田和日郎さんが、下描きナシでいきなりペン入れから始めてるってのは本当だったんですね。とやかく言う前に凄ぇと思います(笑)。

 ちなみに駒木の挫折はアコースティックギター。定番ですね(笑)。Fコードとかは何とかクリア出来たんですが、アルペジオとかスリーフィンガーが全く……(苦笑)。時間が出来たらもう一度基礎から練習し直したいんですが、時間が出来るなんて有り得ないですからねぇ。

 連載作品については、特に語りたいモノが無かったので今回はパスさせてもらいます。いや、低調だったというわけじゃなくて、ただ単にネタ不足だっただけの話です(笑)。

 次週のゼミについては、他の講義も増える関係上、週後半に合同版で実施する事になると思います。では。

 


 

2003年度第116回講義
3月19日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(3月第3週分・後半)

 モデム配り関連講義の続編でもそろそろ始めようかと思っていたんですが、とりあえずレギュラー講義を済ませておかないと……と言う事で、今日はこちらを。週明けから色々バタバタしちゃいますので、やるべき事だけ今の内…てな感じです。

 というわけで、今日は今週発売の「週刊少年サンデー」16号を教材にゼミを実施します

 まずは新連載についての情報から。
 既に連載開始だけは決まっていた『DAN DOH!!』シリーズの続編ですが、いよいよ次週発売の17号からスタートです。
 タイトルは『DAN DOH!! 〜ネクストジェネレーション〜』。勿論、作者は前シリーズまでと同じく、原作が坂田信弘さん、マンガ担当が万乗大智さんです。……もっとも、回を追うごとにゴルフ描写がトンデモ化していっているこの作品、果たして本当に坂田さんが原作書いているのかどうか、色眼鏡で見たくなってしまうのですけれどもね(笑)。
 なお、アニメの方はテレビ東京系で土曜日の朝9時半からの30分枠で放映とのこと。パンチラ御法度のテレ東でこの作品(というより万乗パンツ)がどう扱われるのか、久米田康治さんも興味津々のアニメ版『DAN DOH!!』は4月3日スタートです。

☆「週刊少年サンデー」2004年16号☆

 ◎読み切り『ダグラーバスタークウ!』作画:松浦聡彦

 今週から「週刊少年サンデー」は創刊45周年特別企画月間。巻頭から大小様々な特別企画が誌面を飾っていますが、その1つがこの読み切り。久々に松浦聡彦さんが週刊本誌に登場という事となりました。

 では、例によって作者紹介です。今週分前半の大亜門さんに続き、この松浦さんも幸か不幸かネタに事欠かないキャリアを積んでおられるので、じっくりとお話させて頂きます。

 まず、松浦さんのデビューは「少年サンデー」月刊増刊の94年2月号という事ですから、キャリア丸10年ということになりますね。ベテラン揃いの「サンデー」の中でも、もう中堅という扱いで差し支えないと思います。
 デビュー後しばらくは(「サンデー」系のデータベースが今一つ充実していないため)松浦さんのイマイチ正確な動向が掴めないのですが、96年には『ワープボーイ』(原作:荒尾和彦)で週刊本誌連載デビューを果たしていますので、「サンデー」系の若手作家さんとしては比較的順調な“出世コース”を辿っていたのでしょう。ただし、この原作付き連載デビュー作は残念ながら短期で終了。松浦さんの本格的な活躍は翌年、『タキシード銀』の連載開始を待たなくてはなりません。
 その『タキシード銀』は97年15号から00年7号に渡る約3年間の長期連載になり、松浦さんの「サンデー」読者における知名度はこれで一気にアップします。この作品に“ヒット作”というフレーズを用いて良いかどうかは微妙でしょうが、安定したクオリティで連載陣の脇を固めていた印象が強く残っています。

 ──しかし、これからの松浦さんの歩みは苦闘の歴史そのものでした。

 まずは連載終了の余韻も未だ鮮やかな00年17号より、サバイバル冒険モノ作品・『ブレイブ猿S(モンキーズ)』を連載開始しますが、これはわずか19回で終了の憂き目に。連載作品の新陳代謝の鈍い「サンデー」では異例の短期打ち切り。「ジャンプ」で言えば1クール・9回光速突き抜けに匹敵する“惨敗”でした。
 しかし、これくらいではまだ松浦さんの“実績点”は消えておらず、翌01年、松浦さんはなんと『北斗の拳』で有名な大御所・武論尊さん原作作品のマンガ担当に起用されます。しかし、「ジャンプ」では原哲夫のポジションに松浦聡彦とは、さすがは「サンデー」と言うか血迷ったか「サンデー」というか……。まぁぶっちゃけ、コメントに困るお話ですよね(笑)。
 で、その名も『ライジング・サン』なる、題名からして元自衛隊員の原作者の思想信条が現れまくった作品は、前・後編形式の読み切りで“試運転”された後に連載となりますが、武論尊のネームバリューも人気に繋がらず、掲載順は低迷。しかも読み切り版のラストシーン(主人公がゼロ戦に乗ってホワイトハウスにカミカゼアタック)が、この年起こった全米同時多発テロの内容と図らずもシンクロしてしまい、単行本の発売が自粛延期されてしまうという嫌なオマケまでついてしまいました。結局、この作品も24回で打ち切りとなり、果てには、当時まだ青臭い文章でアクセス数1日10〜20の弱小テキストサイトを運営していた駒木ハヤトなんぞにネタにされてしまう羽目になってしまいます(笑)。
 これと前後して、松浦さんは創刊間もない系列誌・『サンデーGX』『ビッグコミックスペリオール』誌で活動していましたが、「サンデー」週刊本誌からは今回の再登場まで2年半もの間、遠ざかっていたことになります。これをきっかけに再び「サンデー」に足場を築く事が出来るのか、この読み切りは重要な試金石と言えそうです。

 ……というわけで、作品の内容についてお話してゆきましょう。

 まずですが、技術的な面で駒木が口を挟む余地は全くありませんね。さすがは濃密なキャリアを経て来た作家さん、これは恐れ入りましたといった所です。
 ただし一点だけ。細かい目のトーンが週刊本誌特有の紙質の悪さの前に潰れてしまい、いくつかの場面が少々見苦しくなってしまったように思えます。久々の事でウッカリしていたのかも知れませんが、その辺のきめ細かい配慮があれば完璧だったのに……と、少々残念に思いました。

 ストーリー・設定の方も、キャリアに裏付けられたテクニックが各所で見受けられ、好感度の高い作品に仕上がっていると言えます。特にページ数に合わせたキャラクターの人数やシナリオのボリュームの絞り込み方が秀逸で、読み手に作品内容の理解について負担をかけないでよう見事に配慮されています。この辺のバランス感覚はさすがですよね。
 ただ、プロットや各種設定などは、これまでにも数多の作品で散々使い古されて来たものが大半を占め、目新しさ(読み手に与えるインパクト・感銘の度合い)は相当低かったように思えます。主人公・クウの持つ“犬並みの嗅覚”という能力でどれくらいインパクトを与えられたかがカギになるのでしょうが、それにしても非常に斬新とは言い難いモノでしょうし……。
 また、シナリオのボリュームを必要最低限に絞り込んだのは良いにしても、少々展開がスムーズ過ぎたような気もします。あまりにも主人公にとって都合の良い展開が続いたのではないか…と思うんですよね。もう少しピンチらしいピンチに遭っていれば、悪人をやっつけた時のカタルシスも大きかったような気がするんですが。

 さて、評価です。作品の完成度を大きく損ねるような欠点は見当たらないものの、安全策を採り過ぎてこじんまりとした作品になってしまった……と言う事で、B+としておきます。いわゆる「名作崩れの人気作」っぽい所もありますし、これくらいが妥当ではないかと。
 蛇足ですが、この作品を連載化しようとした場合は、余程多くの「この設定でこういう話が描きたい!」…というようなアイディアを用意しておかないと、たちまちネタ切れ、失速してしまうような気がします。特に主人公が生死を彷徨うようなシビアなシナリオがどれくらい作れるかがポイントになるのでは…と思います。

 

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「忍者になれるとしたら、どんな忍法を使いたいですか」。
 
この形式が始まってから、指折りの奇問ですね。しかし、切実な願いを日頃から抱いている連載作家の皆さん、堂々と「雲隠れの術」がトップとなりました。やっぱり編集さんから身を隠したいっていうのは、手塚治虫時代からの伝統なんですね(笑)。
 駒木は──困ったな、あんまり忍法そのものを知らないんですよねぇ。でもまぁ、とにかく不眠不休で動けるような忍法があったら是非会得したいと。……ただ、そういうのって、いかにもドーピング系の忍法になりそうで怖いですね(笑)。白い粉を溶かした液体を注射で……とか。

 
 ◎『史上最強の弟子 ケンイチ』作画:松江名俊【現時点での評価:B+/雑感】

 必殺技が無い主人公の格闘マンガって、実は相当描くのって難しいはずなんですよね。どうしても地味になりがちだし、技の名前叫んで見開きページでドカーン! ……みたいな楽も出来ませんし。
 それを考えたら、今回のエピソードっていうのは、何の変哲も無い“箸休め”的な話に見えて、実は結構凄い事をやっているような気もします(笑)。


 ◎『こわしや我聞』作画:藤木俊【現時点での評価:B/雑感】

 しかし、この期に及んでミスターベーターもどきが悪役って……(汗)
 しかもこれって、「ジャンプ」でもつい最近『銀魂』でやったネタ(しかも外し気味)だったわけなんですが、どうしてまたわざわざ被せますか?
 シナリオも、何だか大雑把な『D−LIVE!!』みたいになっちゃいましたし、どんどん迷走が進んでいるような気もします。このまま行くようだと、早い段階での評価下方修正も検討しなくてはならなくなりそうです。

 
 ……というわけで、ちょっと短いですが、今日はこれまで。
 しかし、敢えて大きく採り上げませんでしたが、『十五郎』の露骨かつ微妙なサービスカットは失笑モノでしたよねえ(^^;;)。……しかしこの作家さん、喋り言葉の語尾か小道具でしかキャラ付けが出来ないんでしょうか。駒木にとってはそっちの方が気になってしょうがなかったですね。まぁ、もうすぐ打ち切りでしょうから、気にするだけ無駄なんですが。

 次週のゼミは、旅行やらモデム配りやらで忙殺されるので、多少遅れるかもしれません。どうか何卒。

 


 

2003年度第115回講義
3月16日(火) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(3月第3週分・前半)

 ……いきなりですが、

会社で当社会学講座を受講する時は、部屋を明るくして上司から離れて受講して下さい。

 ……などと言ってみたくなる、3月第3週前半のゼミをお送りします、駒木ハヤトです(笑)。
 詳しくは後ほどのレビューでお送りしますが、それにしても見事なカラーページの無駄遣いもあったもんですね。1ページに人物作画3カットで笑いも取って原稿料倍! 集英社の経理さんも眉をひそめる新連載がスタートした今週の「週刊少年ジャンプ」を対象に、本日のゼミを行いたいと思います。「サンデー」関連の内容については、また週の後半という事で。

 ……さて、今週は公式アナウンスによる情報系の話題はありませんが、ネット上の信憑性の高い未確認情報によると、『スティール・ボール・ラン』作画:荒木飛呂彦)が来週号で1stステージ終了&一時休載となるとのこと。連載再開は6月頃とのことで、どうやら10週程度の31ページ連載と“充電休載”を繰り返すスタイルを採る事になるようです。
 「ジャンプ」では以前、『BASTARD!!』(作画:萩原一至)と『レベルE』(作画:冨樫義博)を月イチ連載にしていた事がありましたが、この情報が間違いでなければ、それ以来の変則連載スタイル採用となりますね。また、ここ2週ほどクライマックスっぽい流れになっている『銀魂』(作画:空知英秋)も、これで『SBR』の31ページが空くとなると、さすがに次期入れ替えまでは安泰っぽい感じがします。
 まぁ本来、この手の情報は大事を取って公式アナウンスまで紹介しないで待つんですが、注目度の高い作品の動向でもありますので、紹介させて頂きました。あくまでも駒木本人が公式情報を見聞したわけじゃありませんので、その辺りはご承知置き下さい。

 ……それでは、今週の「ジャンプ」掲載分のレビューとチェックポイントをお送りしましょう。レビュー対象作は、新連載1本と読み切り1本の計2本となります。

 ※7段階評価の一覧表はこちらからどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年16号☆

 ◎新連載『無敵鉄姫スピンちゃん』作画:大亜門

 「ジャンプ」春の新連載シリーズ第2弾は、当講座も期待の新鋭ギャグ作家・大亜門さん『無敵鉄姫スピンちゃん』です。
 大亜門(苗字が“大”のようですが、語呂が悪いので原則フルネームでいかせてもらいます)さんの当ゼミにおける作品レビューは、何とこれで6回目。受講生の皆さんにとってもすっかりお馴染みかと思いますが、今回は新連載1回目という事もありますし、語るネタにも事欠かない人でもありますので、改めてじっくりとプロフィールを紹介させて頂きます。

 大亜門さん77年5月29日生まれという事ですから、現在26歳。「ジャンプ」の若手作家さんとしては、キャリアの割に年長者という事になりますか。
 大亜門さんのキャリアのスタートは02年4月期の「天下一漫画賞」。本名(?)の西村大介名義で最終候補に残ったところから始まります。ちなみにこの際には、月替り審査員の矢吹健太朗さんから「既存の作品の影響が強い」という痛恨のコメントを頂戴しています。
 確かにこの時の作品、主人公がどう見ても『男塾』の江田島平八のパロディ…というミもフタもない作品だったわけですが、よりにもよって(以下略)

 ──さて、それで闘志に火が点いたのかどうかは判りませんが、この直後から大亜門さんはハイペースで習作原稿を「ジャンプ」編集部に持ち込み、代原の形ではありますが02年34号にて「ジャンプ」デビューを果たします。主人公は先述の投稿作品に続いて偽・江田島平八、しかも冒頭に『あずまんが大王』のキャラと思しき女の子たちが裸に剥かれて登場…という、「天下一」の時の出来事を知る者からすると開き直りもいいとこな作品でしたが、何はともあれ、これで仮デビューとなりました。また、その後同年44号でも、代原(「天下一」の最終候補作)掲載を果たしています。
 それからも大亜門さんは精力的な執筆活動を続け、翌年には「赤マルジャンプ」03年春号にて正式デビュー。この時の作品は、今回の新連載のプロトタイプとなる『スピンちゃん試作型』どうでもいい事ですが、この作品は当講座の第2回「コミックアワード」にて、「ジャンプ・サンデー最優秀新人ギャグ作品賞」を受賞しています。
 これで好評を得たのか、週刊本誌03年40号と48号で、正規読み切りとして『スピンちゃん』シリーズの続編を相次いで発表。このような、どう見ても「『スピンちゃん』で連載狙ってます」と言いたげなアピール活動が実を結び、遂に今回の連載獲得となりました。
 また、いわゆる代原作家から週刊本誌連載を獲得したのは今回が初のケース。これに準じるケースとしては、「ジャンプ」を離れ、「週刊少年サンデー」と「週刊コミックバンチ」で週刊連載を果たした南寛樹(南ひろたつ)さんがいますが、南さんについては何を言ってもカドが立ちそうですので、ここはノーコメントとさせて頂きます(笑)。

 ……というわけで、長くなりましたが以上がプロフィール紹介。それでは今回の新連載作品について述べさせて頂きます。

 まずはからですが、昨年に読み切りを発表してからの短期間に随分と上達しているのが窺え、正直言って驚かされました。シリアス、通常のマンガ用、そしてディフォルメと3種類の絵柄が使い分けられており、それがギャグにも活かされて良い結果に繋がっています。前作で指摘した動的表現やセリフを喋っている時の表情の不自然さもほとんど解消されており、気がついたら歴代の「ジャンプ」系ギャグ作家さんの中でも中〜上位クラスの画力にまでなっているように思えます。
 課題を挙げるならば、肝心のスピンちゃんの作画が若干ぎこちない所でしょうか。普通の人間とは容姿の造りが根本的に違うために、大亜門さんもまだ戸惑っている部分もあるのでしょう。この辺は連載を続けながら手に馴染ませていくしかないですね。

 そしてギャグについてですが、例によって個人的な“笑った/笑えなかった”は別にしても、確かな技術に支えられたハイレヴェルな作品だと思われます。特にツッコミが上手いのがポイントで、これが展開の単調さを避けたり、一つのネタから多くの“笑い所”を作り出したり…という結果に繋がっているのではないかと。
 また、入念な“試運転”を経てからの連載化だけに、完全にキャラクターが出来上がっているのもセールスポイントでしょう。読み切り版から若干のマイナーチェンジがあったようですが、これは連載にあたっての“初期化”と言うべきものと捉えた方が良い感じですね。あと、透瑠が読み切りと違って“ビュティ化”してしまっているのは、読み切り版でその役目を担当していたゲストキャラが今回不在だったというのが影響しているのだと思います。
 問題点としては、やはりマニアックに過ぎるネタがどこまで幅広い層に受け入れられるか…といった所でしょうね。一応はネタ元が判らなくても違和感だけで笑わせる事が出来るように配慮出来ていますが、これは間違いなく不安材料ではあります。このへん、駒木個人は全てのネタが完璧にストライクだったので、余計に一般層の反応が読めないんですよね(笑)。

 評価はA−をつけた読み切り版よりも進歩が窺えるという事で、A−寄りとします。低年齢層にある程度受け入れられれば、長期連載も狙える逸材だと思うのですが、さてどうなるでしょうか。

 
 ◎読み切り『ヘンテコな』作画:千坂圭太郎
 
 続いては新人作家さんの読み切り作品、03年下期「手塚