「社会学講座」アーカイブ(演習《現代マンガ時評》・1)

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講義一覧

4/25 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(4月第4週分)
4/18 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(4月第3週分)
4/11 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(4月第2週分)
4/3  演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(4月第1週分)
3/27 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(3月第4週分)
3/20 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(3月第3週分)
3/13 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(3月第2週分)
3/6  演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(3月第1週分)
2/27 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(2月第4週分)
2/20 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(2月第3週分)
2/13 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(2月第2週分)
2/6  演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(2月第1週分)
1/30 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(1月第5週分)
1/23 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(1月第4週分)
1/16 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(1月第3週分)
1/9  演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(1月第2週分)
1/3  
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(1月第1週分)
12/26 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(12月第5週分)
12/19 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(12月第4週分)
12/12 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(12月第3週分)
12/6  
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(12月第2週分)

 


4月25日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(4月第4週分)

 週に1度のゼミの時間です。
 いよいよゴールデンウィークという事で、今週から再来週くらいまでは、合併号などの、いわゆる“ゴールデンウィーク進行”となります。
 週刊マンガ誌は軒並み発売日が変動するのですが、とりあえずここでは主にレビューで扱っている2誌の発売日について。
 まず「週刊少年ジャンプ」は、来週月曜が祝日のため、次号は今週の土曜日発売で、これが合併号になります。
 次に「週刊少年サンデー」は、今号が合併号ですので、次号は再来週の水曜日ということになります。どうぞ、混乱する事の無いように気をつけて下さい。

 そう言えば、先々週辺りから終わる終わらないで混乱してしまってた『サクラテツ対話篇』ですが、案の定というか今週で打ち切り最終回となりました。藤崎竜さんは連載3作目にして2度目の打ち切り。残る1つが、あの『封神演義』でしたから、まだまだ週刊から追い出される事はないでしょうが、次回作で正念場になるような感じですね。

 では、今週分の作品レビューに移ります。今週のレビュー対象作は4作品(「ジャンプ」2作品、「サンデー」1作品、“その他”1作品)です。レビュー中の7段階評価の表はこちらをどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年21号☆ 

 ◎読み切り『ヒカルの碁・番外キャラ読切シリーズ・倉田厚』作:ほったゆみ、画:小畑健

 不定期シリーズ連載の第5弾です。ちなみに次号で藤原佐為編が掲載されます。まだ和谷とか、葉瀬中編のキャラクターが結構残ってますので、まだしばらくこのシリーズは続きそうですね。(とか書いてると、佐為と和谷で終わり、とか発表されそうで怖いんですが)

 で、今回はプロ編、そして来るべき第2部のキーパーソンとなりそうな、巨漢強豪若手プロ棋士・倉田にスポットを当てた番外編です。

 しかし、今回はもはや囲碁マンガじゃなくて競馬マンガになってしまってますねぇ。囲碁の対局シーンが出てくるのは最後の方の数コマだけ。まぁそれでも、主人公のヒカルを絡めながら、ちゃんとプロ棋士・倉田のルーツを探るという筋立てになってますので、違和感はほとんど無いんですが。このあたりはいつもながら感心させられます。

 それにしても、このシリーズが始まるまで全く意識してなかったんですが、原作者のほったゆみさんって、かなりギャンブル系の話が相当好きみたいですね。少年マンガとしては、もはや異質と言っていいくらいです。ひょっとしたら、『ヒカ碁』が大団円を迎えた後は青年誌でギャンブルマンガでも始めるかもしれませんね。
 『ヒカ碁』の中のギャンブル描写としては、本編で詳しく描かれていた、碁会所で行われる“ニギリ”(賭け碁)が印象的だったんですが、今シリーズではさらにそれがエスカレートしている感があります。三谷編で麻雀(しかもイカサマの“ブッコヌキ”まで)、そして今回では競馬シーンがかなり詳しく描かれているのには、正直言って驚かされました。

 ただ、競馬学の講師として言わせて頂くと、ディティールにおいて若干のミスが見受けられますので、指摘させて頂きます。
 まず、教育実習が行われている5月〜6月に、秋のレースである「シリウスS」がメインの競馬新聞が出てくるのはおかしいです。それに、「シリウスS」は関西のレースですから、東京が舞台のこのマンガとは整合性がありません。(ただ、これはマンガ担当の小畑さんのミスかもしれません。ウインズの中の描写も、細かいところで結構ミスがありますので)
 それから、「ウインズ新宿で単勝に350万円買った奴がいる」というのは、ちょっと色々な点で無理があるかな、と。平場のレースで350万も単勝買ったらオッズがガクンと下がって、儲かるモノも儲からなくなっちゃいますし。まぁ少年誌である事を意識して、確信犯的に過剰演出に走ったのかもしれませんが。
 同じ意味で、ベテラン騎手がムチの持ち替えが出来ないほど苦手ってのも無理がありますね。それが勝負の決め手になるのも疑問符が付くところです。

 しかしそんな細かいミスをあげつらうよりも、作品全体の完成度を素直に評価するべきでしょうね。競馬のレース描写なんかも、「週刊少年マガジン」系の競馬マンガより余程リアルだったりしますし(笑)。
 評価はB+寄りのA−にしておきましょうか。

 

 ◎読み切り『HAT HAT HAT』作画:吉津遼

 『HUNTER×HUNTER』の代原です。今週は休載理由が、いつもの「作者都合のため」ではなくて「急病のため」とあるので、かなり切羽詰った事情がありそうです。

 それはさておき、この作品の作者・吉津遼さんは、第61回(2001年上半期)の「手塚賞」佳作と第58回(01年5月期)「天下一漫画賞」佳作の受賞者という、駆け出しの新人さん。「天下一──」の受賞作が増刊「赤マルジャンプ」に掲載されて以来の作品掲載という事になるのだと思います。

 それでは、この作品は詳細にレビューを。
 絵…というか、作風全体がそうなんですが、かなり年代モノの雰囲気を持っています。“昭和”というよりも“戦後”の香りがします。昭和30〜40年代のマンガの絵を今風にアレンジしたような感じでしょうか。多少クセがキツい気もしますが、立派な個性である事は間違いないので、今の内はこれで良いでしょう。絵のレヴェル自体は、新人としてはなかなかのものでしょう。

 次にストーリーなんですが、う〜ん…………。
 ページ数が少ない事もあるのですが、話の構成がいかにも無責任すぎです。5W1Hの説明もほとんど無いまま、何の脈絡も無い、ただワケの分からない荒稽無謄なアクションシーンが始まって、延々と続いて、最後にステレオタイプなオチがあって終わり。
 作者の「こういうモノが描きたいんだ!」という意欲は買えるのですが、その意欲が余りにも強すぎて、読者が置いてけぼりになっている感が否めません。「何がなんだか」と思ってる内にお話が終わってしまっては、感情移入のしようがないのです。

 評価はB−有り体に言えば、こういう作品を“独り善がり”と言うのでしょうね。悪くない素質を持っているだけに残念でした。今後はもう少し、読者に向けたサービス精神を持つように心がけてもらいたいものです。自分が「面白い」と思える作品を描く事も大事ですが、それが“自分だけ「面白い」”作品になってしまっては、雑誌に載せてお金を貰う意味は有りません

 

☆「週刊少年サンデー」2002年21、22合併号☆

 ◎新連載『一番湯のカナタ』作画:椎名高志

 『GS美神極楽大作戦!!』で大ヒットを飛ばし、その前後に発表された作品でも好評価を得ている椎名高志さんの連載復帰作になります。

 ストーリーの大筋は、「サンデー」本誌の表紙に載っていたキャッチコピーが的確なので、そのまま引用させて頂きます。
 “エイリアンご迷惑コメディー”
 このコピーに椎名さんの作風(ドタバタ、ちょっとお色気、派手なアクションetc……)をダブらせてもらえれば、作品そのものを読まなくても大体の雰囲気は分かって頂けると思います。逆に言えば、それだけで作品の大まかな形が想像出来るという事は、どれだけ椎名さんの作風が個性豊かで特徴的かという事を証明しているわけなんですが

 絵に関しては、当然ながら特に指摘する点も無いのですが、よくよく考えてみれば、椎名さんはこれだけたくさんの作品を描いている割には、キャラの描き分けがしっかり出来ているんですよね。マンガ家さんによっては、どの作品でも同じような顔が出てくる事があったりするのですが、椎名作品でキャラ顔のダブりというのは意外と少ないんじゃないでしょうか。

 そしてストーリーですが、これが完成度が高くて驚きます。いや、本当は驚いてはいけないんでしょうけど。
 まず、1ページに1つのペースで見せ場が有り、それもギャグありアクションありでバリエーションに富んでいて、しかもテンポも良いのです。伸び悩んでいる新人マンが家さんにとっては、この作品がバイブルになるんじゃないかと言う分かり易さが心憎いです。
 さらに、詳しい5W1Hの設定説明が必要なSFファンタジーでありながら、説明的なセリフが一切無く、全て自然なエピソードの流れの中でさりげなく情報が読者に提供されているのも、これまた見事としか言いようがありません。
 この第1回だけで、マンガ家・椎名高志の真骨頂を見たような気がします。今後、この作品がどのような展開を見せるか分かりませんが、たとえ1回限りだとしても、これくらい高い完成度の作品が描けるのであれば、椎名さんは一流マンガ家のポジションを維持していけることでしょう

 評価はとりあえずA−。今後、新キャラが登場して話が更に盛り上がっていくならば、当然評価が上がる余地は十分にあります。読むのが楽しみな作品がまた1つ増えました。

 

《その他、今週の注目作》

 ◎新連載『医龍-Team Medical Dradon-』(ビッグコミック・スぺリオール2002年10号掲載/作画:乃木坂太郎) 

 今回は「ビッグコミック・スペリオール」から注目作を紹介させていただきます。

 まず作者紹介。乃木坂太郎さんは、1999年に「少年サンデー」の月刊増刊でデビュー、その後、2000年11〜12月に「週刊少年サンデー」で『キリンジ』という作品を短期集中連載していますが、人気が出ずに長期連載には至らず。その後は主だった活動は伝わって来ませんでしたので、恐らく今作が1年5ヶ月ぶりの復帰、及び青年誌への移籍第1作になるのだと思われます。

 この作品は、一言で言えば医療モノ。それも「腐った大学病院医療に一石を投じる」というスタンスの作品です
 ここまでで「あれ?」と思われた受講生の方も多いと思います。そう、『ブラックジャックによろしく』と同じコンセプトなんです。
 こういう題材がカブった作品の場合、たいてい後発作品が二番煎じで“スカ”になってしまうのですが、この作品はなかなか侮れません
 といいますのも、この作品はシビアな問題を取り扱っている割に作品のムードが明るいのです。『ブラックジャックに──』の、時折顔を背けたくなるような暗さに比べると、まさに好対照。つまり、同じコンセプトながら作品の個性を維持できているわけです。
 また、主人公を敢えてスーパーヒーロー的な天才医師にしたところも正解でした。『ブラックジャックに──』のように、徹底的に業界の暗部にスポットライトを当てるのも正解ですが、リアリズムを維持した上で王道の勧善懲悪に持っていくのも1つの好手でしょう。
 『ブラックジャックに──』でささくれだった気分を、この『医龍──』で癒すという黄金パターンが出来そうで楽しみです。

 とりあえずの評価はA寄りのA−。是非、ご一読を。

 

 ……以上が今週分のレビューでした。それでは、また来週。

 


 

4月18日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(4月第3週分)

 えーと、現代社会学特論で大きなミスがあったのはお伝えした通りなんですが、こちらでもミスをやっちゃいましたね。
 「週刊少年ジャンプ」の『サクラテツ対話篇』、推測とお断りしながらも「最終回?」なんて書いてましたが、違いました。もっとも、“打ち切りウエーティングサークル”と言っていい掲載順位なんで、早かれ遅かれ……という気がしないではないですが。しかしこの状況で、どうやって話をまとめてゆくんでしょうか…?

 さて、今週は「少年ジャンプ」の月例賞・「天下一漫画賞」の審査結果発表から。

第67回ジャンプ天下一漫画賞(02年2月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=該当作無し
  
 審査員&編集部特別賞=2編
  ・『ステップエアー』(荒木飛呂彦賞)
   安里千春(18歳・沖縄)
  ・『FLASH BACK』(編集部特別賞)
   石川晋(18歳・東京)
 最終候補(選外佳作)=6編

  ・『冥』
   森田将文(22歳・愛知)
  ・『GU(GREAT UTOPIAN)』
   古形未賄(17歳・宮崎)
  ・『チャイルドポリス』
   古瀬結花(20歳・愛媛)
  ・『チョーキン』
   梅尾光加(19歳・東京)
  ・『オンユアマーク』
   細谷奈緒(22歳・東京)
  ・『軍事生物ナガレ様?』
   糸曽賢志(23歳・東京)

 最終候補の『冥』を描いた森田将文さんは、「天下一漫画賞」の募集ページで“公開稽古”をつけてもらっていた人ですね。01年12月期に引き続いての最終候補。評価が上がっていないのは残念ですが、2ヶ月で1本完成原稿を仕上げて来る(しかも担当編集のダメ出しを経て)というのは意欲的ですね。22歳という年齢は、マンガ家志望者にとっては若くない年齢ですが、頑張ってもらいたいものです。

 それでは、定例のレビューを。レビュー中の7段階評価の表はこちらをどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年20号☆

 ◎読み切り『ラーマゲドン 拉麺最終戦争』(作画:脊川つい)

 今週の「ジャンプ」からは1作品。『HUNTER×HUNTER』の代原作品です。

 どうやらこの作品、02年1月期「天下一漫画賞」の最終候補(選外佳作)作品・『グルマゲドン 美食最終戦争』を改題したか、若しくは加筆修正したかという作品だと思われます。というわけで、作者の脊川ついさんは新人さん。年齢は24歳とのことです。

 というわけでレビューなのですが、この作品も作者の脊川さんも、まだ“仮免”教習中の段階ですので、ちょっとトーンを抑え気味にいきたいと思います。

 まず絵なのですが、上手・下手以前にサインペンかロットリングのような物で描いている事が気になりますね。
 それが悪いとは言いませんが、線に強弱が出ない分、どうしても見た目の印象は不利になりますよね。ミもフタもない言い方をすれば「未熟なのがバレてしまう」というか……。特に紙質の悪い雑誌ではモロです。
 ペンを使わない作家さんに桜玉吉さんがいますが、玉吉さんは高校から美術学校で勉強してきた人ですから別格です。余程の才能があって絵を描き慣れていないと、ちょっと難しいですよね。

 続いて内容ですが、一応これはナンセンスギャグというカテゴリに入れれば良いんでしょうね。まだ“バカになりきれていない”という感がありますし、話の辻褄が合わない部分が1〜2あったりもしますが、散発的にギャグの才能の片鱗らしきモノも見られますので、これは今後の修行次第というところなのでしょう。
 次の登場は赤塚賞で入賞した時くらいでしょうか。とりあえず次回作をチェックしてみたいですね。

 評価はB−。新人の習作原稿とすれば、まぁこんなものなのでしょう。

☆「週刊少年サンデー」2002年20号☆

 ◎新連載『史上最強の弟子ケンイチ』作画:松江名俊

 駒木自身は、この講義が始まる前の話ですので記憶が薄いんですが、「月刊少年サンデー超スーパー」の人気作で、本誌でも1度掲載された読み切りが好評だった『戦え! 梁山泊 史上最強の弟子』という作品のリメイク作という事になります。
 作者の松江名さんは、これが実質的に本誌初登場ということになります。叩き上げの3A選手がメジャーへの切符を掴んだ、みたいなものでしょうか

 それでは例によって絵とストーリーの評価を。
 まず絵なんですが、上手いようで所々粗いかな、といった感じでしょうか。園田健一さんにウヒョ助さん(「スピリッツ」で『駐禁ウォーズ』連載中)をミックスして2で割ったような、そんな絵柄です。
 しかし絵柄云々は別にして、少年誌の巻頭4色カラーで女の子の乳首が浮き出たコスチュームはマズくないんですかねぇ(^^;;)。

 次にストーリーなんですが、今回は主要キャラ2人の紹介をしただけで、ストーリー的には全く進展がありませんので、今回の評価は保留という事に。それでも、なかなか無駄のないストーリーテリングを見せてくれましたので、あと2週間ジックリと読ませてもらいましょう。

 評価は保留としたいんですが、一応Bとしておきましょう。

 ◎読み切り『爆裂アナ 黒木一鉄』作画:藤井敦

 今週のサンデーにはギャグ読み切りが一本掲載されました。作者の藤井敦さんは、昨年秋に月刊の方でデビューを果たした新人さんです。

 絵に関しては上手いわけではないですが、見づらいわけではないので、まぁ許容範囲といったところでしょう。
 そして肝心のギャグなんですが、一言で感想を言うと、
 「ジャンプの『ミスター・フルスイング』で合間合間に挟まっているちょっと寒めのギャグだけの作品」
 ……といったところ
でしょうか。爆発力の無い分だけ、外した部分のマイナス面だけが目立ってしまった感があります。
 テンポそのものは、他のサンデーの作家さんの作品と同じような「小ギャグ→ツッコミ」の繰り返し。そういう意味では「サンデー」向けの作品ではあるんですが、テンションの割にはギャグの破壊力が薄いのが、やや残念です。このパターンでギャグの破壊力が低いと、ゴマカシが利かないんですよね。
 総合するとこの作品、面白くも無ければつまらなくも無い、といったところでしょうか。

 評価はB−寄りのB。この作品も、次回作を読んでみたい、という感じでしょうか。

 ◎読み切り(?)『育ってダーリン!!(完結編)』作画:久米田康治

 かつて、作者の久米田さんが新境地を開拓しようとしたものの、見事に行き詰まった挙句に“大人の事情”で打ち切りを余儀なくされたラブコメ作品の完結編にあたる前後編の読み切りです。

 まぁ、何と言うか、一言で表現すると「無難にまとめたな」という感じでしょうか。作品に対する情熱を完全に失った中で、プロの作家さんが描くべきレヴェルを維持しているのはさすがというところです。
 もっとも、完結編の割には打ち切りになった続きを描いたわけではないですし、本当にこの作品を描く必要が、そして「サンデー」本誌に掲載する意義があったのかは疑問ですね。単行本発売の宣伝に使うなら、もうちょっとやり方があったでしょうに……。

 おっと、作品レビューというより、編集方針レビューという感じになってしまいましたね。久米田さんの気持ちも汲んで、評価は永久に保留ということにさせて頂きます。


 ……というわけで、ちょっと駆け足でしたが今週の演習でした。それでは、また来週。

 


 

4月11日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(4月第2週分)

 今週から心機一転、木曜にゼミを実施する事となりました。これからは木曜発売の雑誌に掲載された作品も、原則的に当日の内にゼミの題材として採用できるようになりました。
 また、これまでの「週刊少年ジャンプ」「週刊少年サンデー」のレビューも、一日ズレた事でより密度の濃いものに出来ると思います。これからも何卒よろしく。

 では、早速講義へ移ります。まず今週は、「少年サンデーまんがカレッジ」の審査結果発表が出ていますので、まずはそちらの紹介から。

少年サンデーまんがカレッジ
(02年2月期)

 入選=該当作なし
 佳作=該当作なし

 努力賞=1編
  ・『X-STYLE!』
   三谷菜奈(20歳・東京)
 あと一歩で賞(選外)=2編
  ・『剣士は姫を救う。』
   田中裕介(22歳・新潟)
  ・[ 山姫 ] 
   新野裕呼(21歳・岡山)

 ……翌月にグレードの高い「新人コミック大賞」を控えていた上、1ヵ月分の応募分しか審査の対象になっていなかったため、ちょっと寂しい結果発表になってしまいましたね。

 そう言えば、審査結果発表の隣のページに「橋口たかし先生も持ち込みからスタートしたんだ」と、まぁよくある“持ち込み歓迎”の告知が載ってましたね。同様のお知らせは他の雑誌でもよく見かけます。

 でもよく考えたら、メジャー誌の場合は持ち込みで素晴らしい作品を投稿しても、必ず新人賞に回されて、そこで審査を仰ぐ事になるんですよね。だから、持ち込みがデビューへの近道になるというと、別にそんなわけではないんです。
 確かに持ち込みの場合は、プロの編集さんからアドバイスがもらえるという長所もあるんですが、その一方で、その時手の空いてた人が原稿を見る事になるんで、自分と合わない編集さんが勝手に担当になってしまうという可能性も高いんですよね。それに、いかに“プロの編集さん”と言っても、「マガジン」とかの場合だと、入社間もない新人さんが持ち込みの担当なので、結局は近所の兄ちゃんに読んでもらってるのと大差なかったりします。それで「プロのアドバイス」と言われてもねぇって感じですよね。
 で、直接新人賞に応募した場合は、その作品を見て才能を感じ取ってくれた編集さんが担当になるケースが多いので、長期的に見た場合はこっちの方が得になるんじゃないかとも思えるんですよ。

 ですので、マンガ家を目指して修行している人は、敢えて上京してまで持ち込むよりも、近くの知人の講評を仰ぎながら新人賞に応募し続けた方が良いんじゃないかなあと、そう思います。
 ……んな事言って、「責任取れよ」と言われても取れないんですけどね。でも、画一的な見方をするのもどうか、という事なんですよ、ええ。

 と、余談が過ぎました。今日も講義の時間には限りが有るんですよ。サクサク行かないと。
 あ、2つほど連載終了のお知らせ。次回で「週刊少年サンデー」の『ARMS』が最終回となります。何だか典型的な大団円になりそうなムードですが、期待して待ちましょう。
 あと、こちらは推測でしかないんですが、「週刊少年ジャンプ」の『サクラテツ対話篇』も次週で最終回になりそうです。こちらは残念ながら、人気低迷の末の打ち切り。まぁ、アクの強いギャグマンガの多い今の「ジャンプ」に、ライトなドタバタコメディは合わなかったという事なんでしょうかねぇ。

 ……さて、それでは今週の読み切りレビューです。今週は対象作品が少なくて、楽できる残念だなと思ってたんですが、「ジャンプ」で代原読み切りが2本あって、結局はレビュー対象作が4本も出てしまいました。ちょっと気が遠くなりそうなんですが、サクサクとやって行きたいと思います。

 レビュー中の7段階評価の表はこちらをどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年19号☆

 ◎読み切り『メルとも! E─之介』作:真倉翔/画:加藤春日

 唐突に、43ページという中編読み切りの登場です。
 原作者の真倉翔さんは、多くの方がご存知でしょう、ヒット作『地獄先生ぬ〜べ〜』で原作を担当していた元・マンガ家の原作作家さんです。
 真倉さんと言えば、『ぬ〜べ〜』でもお馴染みの、岡野剛さんとのコンビが有名なんですが、前作『釣りッキーズピン太郎』が不発・打ち切りに終わってからコンビを解消。そして今は、今回のパートナー・加藤春日さんとコンビを組んでいます。何だか再起に賭ける漫才師みたいな感じですかね。

 一方の、その加藤春日さんは、「ストーリーキング」出身で、これが本誌初登場となる新人作家さん。増刊号「赤マルジャンプ」で、真倉さん原作の『天然天国らんげるはうす島』が掲載されています。これから連載目指して頑張って行こうという時期になるんでしょうか。

 では、例によって絵からレビューを始めましょう。
 加藤さんの絵は、ちょっと癖がありながらも、かなり垢抜けた感じのタッチです。とにかく印象的なので、すぐに絵柄を覚えてもらえるという強みはありそうです。
 ただ、どうも動きを表現するのが余り上手ではない印象も拭えません。アクションシーンでも、なんだか“セル画が少なくて紙芝居状態のアニメ”を見せられているような気がします。アシスタントが居ないので仕方が無いのですが、背景も随分と手抜き気味。まだこれからの作家さんですから苦言を呈するのは程々にしますが、もっと精進して、もっと洗練された絵が描けるようになる事を願っています。

 次に真倉さん担当のストーリー部分です。
 今回の話は『ピン太郎』と同じパターンでした。主人公の男の子のもとに、外界からの仲間がやって来るところから始まって、ヒロインとの関係を絡めつつ、悪役をあの手この手でやっつけていくという話ですね。
 このパターンは、もう真倉さんが手の内に入れている状態なので、ストーリー全体の印象としては、ソツ無くまとまっているな、という感じです。及第点はあるんじゃないでしょうか。 
 ただ、余りにもソツが無さ過ぎて目新しさに欠けてしまったという点と、長期連載を経験した作家さんにありがちな“長期連載ボケ”(=作風が成功していた時期のモノで固定されてしまう)の傾向がある辺りが少々残念でした。
 今回の読み切りは、恐らく連載へのトライアルなんでしょうが、今のままで連載に持ち込んでも、長期連載になるかどうかは微妙のような気がしますね。ナニゲに平均レヴェルが高いんですよ、今の「ジャンプ」は……。

 評価は。つまらないわけでは無いんですが、オススメというわけでも……

 

 ◎読み切り『ボウギャクビジン』作画:郷田こうや

 2月第4週分でも、代原読み切り『偉大なる教師』が掲載されていた郷田こうやさんですが、またも『HUNTER×HUNTER』の代原作家として登場です。

 今回の作品で失礼ながら意外だったのは、割と女性キャラも上手に描けるんだな、という事でした。まぁ細かい事を言えばキリが無いんですが、ギャグ作家さんで今回のレヴェルの絵が描ければ、まず問題は無いでしょう。

 次に肝心のギャグの方ですが、これも段々と自分の作風を意識しながらも、新しい事をやっていこうという意気込みが窺えて、まずは好感です。
 しかし、余りにも同じパターンのギャグ(美人のお姉さんが、容姿とギャップの有りすぎる残酷な言動と行動をする)が続きすぎた上、オチも読めてしまう内容だったため、少々物足りなさが残ってしまいました
 習作原稿として考えるとマズマズの出来なんですが、それでも他の連載ギャグ作家さんのクオリティと比べると、ちょっと可哀相かなという感じがしますね。

 評価はB寄りのB−。進歩は見えて来てますので、後は自分なりの“必勝パターン”を見つける事でしょう。今は実力を蓄えて、1〜2年先の連載ゲットを目標に、とにかく作品を描き続けてもらいたいものです。

 

 ◎読み切り『しゅるるるシュールマン』作画:クボヒデキ

 『ピューと吹く! ジャガー』が休載のため、なんと中1週という詰まったローテーションでクボヒデキさんが再登場となりました。(クボさんのプロフィールに関しては3月4週分のゼミを参照してください)

 しかし、2週間前にも指摘しましたが、どこがシュールなんでしょうか、この作品は……
 シュールじゃありません。普通のギャグです。しかも3月中旬の“寒の戻り”くらいの微妙な寒さが漂う、普通のギャグです
 それに、たった7ページしか無いんですから、もっとギャグの密度を上げないとダメです。コマ割りも荒っぽい上、ネーム(セリフ全体)の量も少な過ぎ。これではちょっと……。

 評価は当然ながら。もういい加減、出来もしないシュールから足を洗って、別の分野を開拓した方がよろしいかと思いますが? 

☆「週刊少年サンデー」2002年19号☆ 

 ◎読み切り『キャットルーキーぶっとび番外編 しっぽの怪』作画:丹羽啓介

 サンデーの連続読み切りシリーズ最終週は、月刊誌の方で長期連載されている『キャットルーキー』の番外編が登場となりました。
 本編はプロ野球マンガなんですが、この番外編は、見事に時流に乗ったというか、オカルト・陰陽道系のアクション・ストーリーになっています。さすがに押さえる所は押さえているという感じですね。

 さて、レビューの本題へ。
 この作品は番外編ですから、本来は「連載中のキャラクターが、いつもと違う側面を見せてくれる」だけで及第なんですが、それを言い出すと、この講義の存在意義が無くなっちゃいますので、敢えて論評を加えたいと思います。

 まず絵なんですが、まぁこれはいいでしょう。長期連載されてる作家さんの絵について云々というのはさすがに……というところです。ただ、どうもオカルト物には合わない画風かな、とだけは言わせてもらいますね。

 そしてストーリーの方なんですが、主要キャラの過去の姿を野球と絡めて描く事で、まず番外編としての機能をフルに果たしている。これは良いと思います。
 また、ちゃんと伏線を張りつつ、それを消化させて無駄なく話を進めている辺りもさすが、といったところでしょうか。
 ですが、苦言を呈したい点も。「伏線→消化・解決」というパターンでカバーできなかった設定を、無理矢理に事後承諾的、もっと言えばご都合主義的に解決させてしまったのは、ちょっとどうかと思います。説明的なセリフも若干多かったような気がしますし……。

 しかしまぁ、番外編としてはこの位のデキで上等なのかもしれません。本編を読んだ事の無い人が多い「週刊少年サンデー」でわざわざ掲載する事自体に疑問を抱いてはしまいますが……。
 評価は。ファンの人なら1段階プラスといったところでしょうか。

 

 あ、今週から前・後編で掲載される『育ってダーリン!!』作画:久米田康治)は、来週に2話まとめてレビューします。
 と、時間が来ました。そんなところで、今日の講義を終わります。

 


 

4月3日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(4月第1週分)

 ここ1〜2ヶ月の新連載・読み切りラッシュも一段落ついて、今日のレビュー対象作品は2作品だけ、という事になります。
 その代わり、と言ってはなんですが、今週で「週刊コミックバンチ」が10週連続で行って来た、「世界漫画愛読者大賞」最終審査作品掲載が終了しましたので、その簡単な総括を行いたいと思います。

 それでは、まず「ジャンプ」「サンデー」の新規作品レビューなんですが、今週は「週刊少年ジャンプ」に新連載・読み切り作品が掲載されませんでしたので、こちらはお休み。「週刊少年サンデー」のレビューからスタートという事になります。
 レビュー中の7段階評価の表はこちらをどうぞ。今週から若干加筆させてもらっています。

☆「週刊少年サンデー」2002年18号☆

 ◎読み切り『ブカツ』作画:夏目義徳

 この作品は、「週刊少年サンデー」11号まで『トガリ』を連載していた夏目義徳さんの復帰第一作ということになります。中2ヶ月という、かなり短い間隔での復帰ですね。
 いやしかし、こういう場合って、「この読み切りを依頼する話って、『トガリ』の連載終了(打ち切り)の話題を切り出す時、ダシに使われたんだろうなぁ」などと思えて仕方なくなりますね(苦笑)。いや、もちろん邪推なんですが。

 ではレビューなんですが、まぁ元・連載作家さんに向かって絵を云々というのは余計なお世話でしょうね。年単位で週刊連載していた人にしては絵柄の線がスッキリしてないかな、とは思いますが、もうこれは作風という事なのでしょう。

 じゃあストーリーの方はというと、大した有力校でもないごく普通の高校バスケ部の、ちょっと日常からはみ出たエピソード、というところでしょうか。この基本的な設定に関しては、作者の夏目さんが強く希望したものらしく、欄外の「夏目義徳先生より」というメッセージ欄に以下のコメントが掲載されていました。

 全国や日本一を目指すチームじゃない、それ以外のチームの練習は無意味なのでしょうか。んなこたないと信じてます。昨日の自分よりうまくなっていたい。「好き」で「楽しく」「全力」、そんなブカツの姿を過去を思い出しつつ描いてみました。これからも常に今日より成長した明日を目指していたいと思います。

 このコメントの通り、“(校舎の)外周走り”という練習内容とか、“ロイター板使って擬似ダンクシュート”とか、練習の最後の集団コートランニングとか、妙に細かいミニバスケ用リングの描写とか、バスケ部経験者じゃなかったら描けないシーンが複数あって、作者・夏目さんの意欲を感じさせる作品ですね。
 ストーリーも、まぁ及第でしょう。突然後半残り10分から本気を出し始める必然性の無さや、やる気の無い顧問が主人公たちの味方になる動機付けがやや弱い気がしますが、致命傷というところまでは行っていません。
 ただ、平凡な人たちの日常生活モノというのは、話の広がりに限界があって、どうしても名作・佳作にはなり辛いんですよね。清水義範さんの小説・『柏木誠治の生活』くらい“究極の平凡”に挑戦しているなら、また話は別なのですが、それをマンガで表現するのはかなり難しそうですし……。

 評価は。決して悪い作品じゃありません。作者の夏目さんも、十分これからもメジャー誌でやっていける力量は持っていると言って良いと思います。ですが、やっぱりもう少し起伏に富んだ作品が読みたいですね。

 

《その他、今週の注目作》

 ◎読み切り(週刊コミックバンチ18号掲載・世界漫画愛読者大賞・最終審査エントリー作品『熱血!! 男盛り』作画:南寛樹

 さて。ついに、と言いますか、とうとう、と言いますか、この「世界漫画愛読者大賞」の最終審査エントリー作品紹介も最後の10作品目となりました。
 作者の南寛樹さんは、以前、南ひろたつのペンネームで、「週刊少年サンデー」でギャグマンガを連載し、単行本も出している、今シリーズ登場の作家さんの中で最もメジャーな人、ということになります。その割にはメジャーっっぽい印象が全く漂わないのがアレですが。

 というわけで、この作品はギャグマンガです。しかも4コママンガ。まぁ、この題名で純情ストーリーモノなんて描かれた日には裸足で逃げ出しますが。
 今回の作品の内容は南さんお得意の、「むさ苦しい男キャラによるむさ苦しいギャグ」というヤツで、「サンデー」読者なら『漢魂(メンソウル)!』などでお馴染みの内容でしょう。
 そしてギャグの爆発力も往時のままで、ところどころ小爆発(個人的には拳骨野球ネタが好みでした)があるものの、爆笑には至らずといったところ。1つの雑誌の中でのアクセントにはなるものの、看板作品になるには程遠いレヴェルといったところでしょうか。

 というわけで、評価は雑誌アンケートでは「面白い作品」にも「つまらない作品」にも挙がらない、それなりの作品というところでしょうか。こういう賞レースでは、なかなか評価されにくい作品なのではないかと思います。というか、この作品に5000万やるなら、先に『モテモテ王国』ながいけんさんに5000万円あげて下さい。

 ……以上で、今回の「世界漫画愛読者大賞」の最終審査エントリー作品全10作へのレビューが終了しました。ここで、もう一度エントリー作全てを駒木のつけた評価も含めて振り返り、簡単な総括をしてみたいと思います。

 まず、作品と評価の一覧表から……

作品名 作者 評価
『満腹ボクサー徳川。』 日高建男 B
『飛将の駒』 大牙 B−
『アラビアンナイト』 長谷川哲也 B+
『がきんちょ強』 松家幸治 B+
『灰色の街』 江口孝之 B
『142cmのハングオン』 大西しゅう B
『エンカウンター -遭遇-』 木ノ花さくや B
『黒鳥姫』 葉山陽太 B
『逃げるな!!! 駿平』 野田正規 B−
『熱血!! 男盛り』 南寛樹 B

 全作品Bランク。つまり秀作・名作になりそうな作品は1本も無かった、という事になります。賞金5000万&連載1年を争う賞にしては不作であった、と言わざるを得ないでしょう。
 辛うじて“佳作”となりそうなB+評価作品が2編ありましたが、『アラビアンナイト』は作風が『蒼天の拳』と酷似しているために「バンチ」誌連載には問題点があり、『がきんちょ強』にも、「バンチ」と作風が合わない上、『じゃりん子チエ』の露骨なオマージュのためオリジナリティが無いという、これまた大きな問題点が潜んでいます。どちらも1年以上の連載となると、かなり厳しいのではないかと思います。

 個人的には、グランプリどころか、準グランプリ(賞金1500万円)に値する作品も無かったと思います。今回発表された10作品より数段面白いものが他誌で新連載されていますし……。
 そもそも、たかが1つの新連載作品を選ぶのに、どうしてここまで多額の賞金を懸けなきゃならないのかが不可解です。どうやら今年も第2回が開催されるようですが、第3回以降に関しては開催そのものから熟慮して頂きたいと思います。

 

 ……ちょっと辛らつな意見を述べたりしましたが、要は「もっと面白い作品を読ませてくれ!」っちゅう事です。読んでてワクワクするような、もしくは腹抱えて笑えるような作品をもっと読ませてもらいたいですね。
 では、今週はこの辺で。

 


 

3月27日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(3月第4週分)

 さて、今週は何かと時間が詰まっているので、手短にいきますね。レビュー中の7段階評価の表はこちらをどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年17号☆

 ◎読み切り『ヒカルの碁・番外キャラ読切シリーズ・三谷祐輝』作:ほったゆみ、画:小畑健

 シリーズ4作目なんですが、ここまで読み進めて来て、何となくこのシリーズが「ほったさんが本当に描きたかったキャラの作品」と「編集部サイドから依頼を受けて描く事になった作品」に分かれているような気がしました。
 で、駒木が考えるに、前者の代表格が先週の奈瀬編で、後者のそれが今週の三谷編かな、と。
 ほったさんには珍しく、今週の作品は凡作に近いです。「これを描きたい!」という意気込みが先週に比べると非常に弱い気がするんですよね。本編直前のエピソードを描くという方式は塔矢アキラ編と同じだし、番外編のキモである、本編で見られなかったキャラクターの側面を描くという部分も不完全のような気がします。
 見せ場といえば、“修さん”が雀荘で雀ゴロのイカサマを暴くシーンくらいでしょうか。「近代麻雀」系ではお馴染みのシーンですが、これが小畑さんのリアルな絵で表現されると新鮮さがありますよね。ほったさんは麻雀にも造詣が深そうで、いずれ麻雀モノの作品も読んでみたい気がします。

 というわけで、今週分はB+寄りのという事で。

 

 ◎読み切り『しゅるるるシュールマン』作画:クボヒデキ

 今週は『HUNTER×HUNTER』が休載と言うことで、ギャグ読みきりが掲載されています。
 作者のクボヒデキさんは、以前から代原作家として本誌にも頻繁に登場、増刊号でも活躍されている若手作家さんとの事ですが、この講義が始まってからは初めての登場となります。

 今回の作品は、題名の通りシュールなショートギャグの連作形式で15ページというもの。まぁ、新人・若手の作品にはよくある形ですよね。
 ネットでこれまでの掲載作品の評判をピックアップしますと、そんなにネット評論家筋の点は低くないようですが、今回の作品、少なくとも駒木は落第点を付けざるを得ないと思います。

 そもそも“ギャグ”とは、人が持つ常識との奇妙な違和感を提示し、それを笑いという感情に転換させる作為的行動です。
 そして“シュールなギャグ”とは、その違和感の提示を極端なレベル持っていき、話の筋的には意味不明ながらも違和感だけで強引に笑わせてしまうようなものを言います。ちなみに、お笑い界などで、シュールなギャグが“お客を選ぶ”と言われるのは、極端な違和感から笑いに至る人がいる一方で、違和感以前に話の意味不明さに困惑してしまう人が多いからだと思われます。
 では今回の「しゅるるるシュールマン」がどうかと言うと、シュールと言ってる割には違和感の提示が弱く、なおかつ、話の筋の意味不明さはシュールそのものだったりするのです。まぁ、明快に言うと「シュールギャグとして失格」なのですよ。
 クボさんの実力最高値がどこまでのラインにあるか分かりませんが、このラインで満足しているようでは、連載など夢のまた夢です。もっともっと他の作家さんの作品を研究して、将来につなげて欲しいと思います。

 評価はB−一応、ギャグ作りの手順は踏まえてますので、問題外というわけではありません。動きの基本はマスターしたプロボクサー予備軍みたいなものですので、あとはもうパンチ力だけ。今が正念場と思って頑張って欲しいですね。

☆「週刊少年サンデー」2002年17号☆

 ◎読み切り『葵DESTRUCTION!』作画:井上和郎

 「週刊少年サンデー」のストーリー読み切りシリーズ第3段は、昨年から増刊号で読み切りを掲載している新人作家さん・井上和郎さんの作品です。井上さんは、『からくりサーカス』『うしおととら』藤田和日郎さんの元・チーフアシスタントさんだったとのこと。

 まず、絵はかなり好感度が高い今風の絵ではないでしょうか? 個人的には上手だなあと感じました。ひょっとしたら師匠の藤田さんより上手かもしれませんね(苦笑)。あ、キャラの描き分けがよく出来ているのは師匠譲りかもしれませんね。

 さて、ストーリーの方ですが、これは一言で表現するなら“技あり”の作品ですね。1つのアイデアを転がしまくって、良質コメディに仕上げきっているという形で、なかなかの力量の高さが窺えました
 この作品と作者の井上さんの最大のセールスポイントは、奇抜な設定を作ったら、それをとことんまで極端にしてしまったところにあります。38歳の父親の外見がどうみても小〜中学生の女の子に見えてしまう、という設定そのものは、他の誰かでも考えられそうですが、一度決めたその設定を全編に渡って活かしまくる。これが凄い。この辺が所謂“センス”というヤツだと思います。
 設定や話の広がり方を考えると、連載にしても面白い作品だろうと。あとはアンケート次第だと思いますが、良い結果を待ちたいですね。評価はA−

《その他、今週の注目作》

 ◎読み切り(週刊コミックバンチ17号掲載・世界漫画愛読者大賞・最終審査エントリー作品『逃げるな !! 駿平』作画:野田正規

 いよいよこのシリーズも“トリ前”となりました。果たしてあと2週で、2002年を代表するような名作は出てくるのでしょうか?

 さて、エントリー9人目の作家さんは野田正規さんで、現職はマンガ家アシスタントとのこと。かつては『六三四の剣』などでお馴染みの村上もとかさんのアシスタントを長年務め、数年前には少年マガジン月例賞の佳作を受賞した経験もあるそうです。
 ……って、ここに来てまた“敗者復活組”なのですね。それが悪いわけじゃありませんが、やはり新鮮味には欠けますからねぇ。

 そして実際、この作品は、歯に衣着せず言うと新鮮味ゼロの作品でありました。なんだかもう、恐ろしく絵柄・作風が古いです。「コミックバンチ」というより「少年キング」といった風情。もしくは、昭和の時代の「週刊少年サンデー」でしょうか。
 これで話がよく出来ていれば、まだ“昔懐かし系”作品として評価できるのですが、それに関しても大概な作品であったと言わざるを得ないのが辛いところです。

 まず、絵。古臭いだけじゃなくて、プロとしてはかなり低調なレヴェルです。特に、かれこれ10年以上描いているはずの格闘シーンがリアリティに欠けている始末では……三十路を過ぎるまで一体何をやって暮らして来たか、ちょっと問い詰めたくなってしまいます。
 ストーリーも低調。序盤部分の主人公の子ども時代については、輪にかけて古臭い話、さらにデッサン狂いまくりの絵がありながらもまだマシでした。中盤以降、まさかキックボクシングマンガにかこつけた、中途半端なタイ観光案内を見せられるとは……。
 
作者がなけなしの金を叩いて行った格安タイ観光旅行を、“取材”と称して唯一の資料としている様が思い浮かびます。
 最大の見せ場である、主人公が格闘で敵を倒すシーンでの必殺技が金的蹴りというのもどうかと。それを別のキャラに「キックボクシングの才能がある」云々と言わせても説得力ゼロであります。だって反則中の反則ですよ、金的蹴り頭突き・肘撃ちが必殺技のボクシングマンガみたいなものです。

 さらにさらに。作中やインタビュー記事中で見られる格闘技への知識の薄さも致命的です。
 まず、少林寺拳法を「試合の無い格闘技」とした点。確かに、少林寺拳法には試合を行わない流派も多く存在しますが、ちゃんと大会をやっている流派も存在します。
 そして、「キックボクシングを国際式(普通の)ボクシングよりもファイトマネーで恵まれない」云々とインタビューで語っているのですが、これもやや浅薄な知識です。国際式のファイトマネーで、明らかにキックボクシングのそれより恵まれているのは重量級の世界タイトルマッチぐらいなものです。それにしてもキックの世界よりも国際式のほうが選手層が格段に厚いので、むしろキックボクサーの方がある程度稼ぎやすい世界です。
 普通、自分が好きな世界の話なら、もっと熱心に勉強して然るべきなのですが、結局は趣味の段階を超えていない。いい加減この上ない。一体、長年のアシスタント生活で何を学んできたのでしょうか? 

 このいい加減さはキャラ造形にも表われています。
 中盤以降の主要サブキャラとしてという名の自称・格闘家の大男が登場します。ビッグマウスなだけのデクの棒という典型的なヤラレキャラなのですが、これが『あしたのジョー』のマンモス西にそっくりなのです。
 “西”に似たキャラの名前が“東”。この安易さはどうでしょうか? 元ネタを知っている人間にとっては失笑モノの程度の低いパロディですし、知らない人間にはワケ分からない詰まらないキャラになってしまってます。

 よくこんな作品が最終選考まで残ったなと目を疑ってしまいますね。『痛快! マイホーム』の元・担当さんが推したんじゃなかろうか、などと邪推してしまいます。

 評価はC寄りのB−(前日から変更してます)。ここに来てこのシリーズで最低評価の作品が来るとは……(汗)。あと1週、果たしてどうなんでしょうか。ううむ、想像したくなくなって来ました。

 ……というわけで、ちょっとショートバージョンでお送りした今週のゼミでした。しばらく小休止状態になるかと思いますが、その分、来週以降は中身の濃いレビューに出来たらと思います。それでは、今週はこれまで。

 


 

3月20日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評(3月第3週分)

 さて、今週の演習です。ようやくジャンプの新連載ラッシュも終わりまして、忙しさも一段落というところでしょうか。

 ところで、2月第2週分の演習で採り上げた『ブラックジャックによろしく』(評価:)ですが、ジワジワと、それでも確実にブレイクしつつあるようです。この講義で絶賛した作品が幅広く評価されているのを見ると、我が事のように嬉しいですね。作者の佐藤秀峰さん、これからも頑張ってください

 では今日はまず、「週刊少年サンデー」の新人賞、「少年サンデーまんがカレッジ」の審査結果発表から。

少年サンデーまんがカレッジ
(01年12月・02年1月期)

 入選=該当作なし
 佳作=2編

  ・『G・S・W(ガンショットウーンド)』
   小栗聖示(23歳・京都)
  ・『花咲かパワー!!』
   葵琳果(20歳・埼玉)
 努力賞=4編
  ・『扉の向こう』
   西森生(22歳・愛知)
  ・『ONE』
   関俊昭(21歳・新潟)
  ・『GROWN UP』
   王子野尚(19歳・福岡)
  ・『LOVE★バトルらいたあ!!』
   柳沢直普(22歳・長野)
 あと一歩で賞(選外)=1編
  ・『アブラカタブラ』
   斎貴神楽(14歳・愛知)

 注目、というか目が行くのは14歳の受賞者さんでしょうかね。実力とかそういう事は別にして、完成原稿を仕上げて、それをプロの新人賞に応募してしまうところが凄いですよね。
 正直言って、14歳に少年マンガ業界のデビューに至るまでのドロドロさ加減が耐えられると思えないんですが、それでもまぁ、才能の芽が潰されないように祈っております。

 ……それでは、レビューの方へ。7段階評価の表はこちらをどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年16号☆

 ◎読み切り『ヒカルの碁・番外キャラ読切シリーズ・奈瀬明日美』作:ほったゆみ、画:小畑健

 さて、番外読み切りシリーズ、(個人的な)真打ち登場であります。
 まぁ、個人的な感想は18日の「現代社会学」講義で出し切った感がありますので、ここではストーリーテリングの専門的な話を。

 ハッキリ言って、この番外シリーズの中で一番話を作り辛いキャラだと思うんですよね、この奈瀬明日美というキャラは。
 何せ、初登場の時には名前すら無かったエキストラですからね、奈瀬さん。ファン投票の高得票という、いかにも少年マンガ誌らしい理由でレギュラーに昇格したわけです。ああ、そう言えば『かってに改蔵』の“山田さん”も同じパターンですね。
 な、もんで、奈瀬さんには普通あるはずのキャラクターに与えられた“記号”が無いんですよね。話の中で与えられた役割がゼロなんです、本来。
 そんなポジションのキャラクターを使って、しかも主役で番外編を一本作るというのですから、これは大変な作業なんですよ。番外編やセルフパロディっていうのは、そのキャラの突出した部分をデフォルメして話を転がしていくのが基本ですからね。

 ところが。
 恐ろしい事に、これがこのシリーズ中一番の傑作に仕上がってるから恐ろしいです。
 本編の中で僅かに出来上がった奈瀬さんの性格(活発で勝ち気)と、彼女の生活背景(囲碁中心で他の高校生と接点が少ない)という少ない材料だけで、キッチリとヤマ場のあるストーリーを完成させているこの凄さ。その上、奈瀬さんだけじゃなくて、もう1人の目立たない脇役・飯島君をナニゲにクローズアップしてる辺りも含めて、もう、ただただ脱帽です。

 何て言うか、ほったさんみたいな才能を持った人がマンガ界にいてくれて良かったなあって、そうしみじみと思えるような作品でした。
 評価ですが、文句ナシの。実は、経済的な事情で単行本買えてないんですが、この奈瀬編だけのために、単行本買おうと思います(笑)。

 

☆「週刊少年サンデー」2002年16号☆

 ◎読み切り『入来兄弟物語〜俺たちは燃え尽きない!〜』作画:荻晴彦

 作者の荻晴彦さんは、おそらく商業誌掲載歴ほとんど無しの新人作家さん。名前でネット検索すると、静岡大学漫画研究会製作の同人誌に同姓同名の作者名が載っていましたので、ひょっとしたら同一人物かもしれません。

 それにしても、このスポーツ・ノンフィクション物読み切りは、いい加減止めにしませんか? どうやったって名作になり得ない上、単行本化も難しいジャンルをダラダラと続けるのは得策じゃないと思いますが。
 マンガっていう媒体は、大抵のジャンルにおいて小説よりも名作を生む可能性の高いモノだと思ってます。(もっとも、現時点ではマンガ家さんの中に優れたストーリーテラーが少ないために、一部の優れた作家さんの作品を除いて圧倒的に小説優勢ですが)
 しかし、どうやってもマンガには向かないジャンルというものもありまして、1つは映像を使わないから効果のある叙述トリック物で、もう1つがこのスポーツノンフィクション短編なんですよね。
 スポーツノンフィクションというのは、取材対象(つまりスポーツ選手)の過去の出来事そのものよりも、自分自身のエピソードを語る時に滲み出てくる、取材対象の現在の心情や人生観の方が面白いわけです。
 ところがマンガでノンフィクションをやると、ただの再現フィルムになっちゃうんですね。それに、肝心の作家のアイデンティティが全然出てこないんです、マンガでは。

 前々から駒木は「マンガのスポーツノンフィクション物に名作無し」と言ってるのですが、それはそういう理由からなんです。向いてないんですね、マンガに。

 今回の話、まぁ事実を多少脚色したにせよ、定番のハートウォーミング・ストーリーに仕上がってます。入来兄弟が標準語喋ってるのが気持ち悪いですが(笑)。
 ですが、そもそも話自体がマンガに向いてないんで、高い評価はあげようがないんですね。評価。次回以降、このジャンルの話はレビューから除外するかもしれません。

 ◎読み切り『呪いのウサギ』作画:杉本ペロ

 「サンデー特選GAG7連弾」の最終回は、『ダイナマ伊藤!』を連載中の杉本ペロさんの作品です。

 さてこの作品、シリーズの最後に連載作家を持ってきて、格の差を見せつけてくれるか…と思ったんですが、うーむ……。
 結局、キャラクター変わっただけでギャグのパターンは『ダイナマ伊藤!』と変わらない上に、そのギャグの切れ味は『ダイナマ伊藤!』よりも鈍り気味。一体、何のためにこの作品を描いたのか、全く訴えかけるものが見られませんでした。残念です。

 この作品の評価はB−。スケジュール調整までして、あえて描かない方が、まだ良かったかもしれませんねえ……。

 結局、このシリーズでは、B+評価1本の他は、が1本、B−4本、が1本。
 ……な、なんだか寂しいですねぇ……。図らずも、現在の少年サンデー系新人ギャグ作家の層の薄さを露呈しただけに終わったような気がします、この企画
 やっぱり、ジャンプの赤塚賞みたいに、ギャグ専門の新人賞をやっていないところから来てるんですかね、この層の薄さは。

 

《その他、今週の注目作》

 ◎読み切り(週刊コミックバンチ16号掲載・世界漫画愛読者大賞・最終審査エントリー作品『黒鳥姫』作画:葉山陽太

 シリーズ第8回は、第6回の大西しゅうさんに続く、純粋な新人さん・葉山陽太さんの作品です。

 まず、新人さんではどうしても問題が露呈されてしまうですが、やはりまだ熟練度が足りない印象がありますね。単調なコマ割りながら、そんなに単調さを感じさせない構図の取り方などに、ある程度のセンスが感じられますが、画力は未熟。いわゆる“動きのある絵”が描けずに、平坦な印象を与えてしまいます
 しかしまぁ、これからの人なわけですから、今後の努力に期待したいものです。

 さてストーリーの方ですが、大まかなシナリオは、「不治の病に侵された若い女性画家が、遺作を残すために病院と故郷を去る。そこで画材屋に勤める男性と出会って……」という、何と言うか「週刊モーニング」の新人賞受賞作で出て来そうなお話でした。変則的なコマ割りや、微妙に稚拙な絵というのも、いかにも「モーニング」的な印象を受けました。
 話の運び方などは、なかなか新人としては高水準の、これまた「モーニング」的なものだったのですが、惜しい事に大きなヤマ場の前にページ数が尽きてしまい、極めて中途半端な印象を与える事になってしまいましたせっかくのいい雰囲気がこれで完璧に台無しです。

 以前の講義でも述べましたが、この賞は連載を前提にしたコンペテイションということになっています。ですので、連載開始後を意識させる、「次回へ続く」な終わり方でも、それはそれで構いません。
 しかし、それ以前にこの作品は、大賞賞金5000万と連載1年以上の権利を賭けた、言わば人生を賭けたトライアウトなわけです。他の9作品を叩きのめすようなインパクトを読者に与えないといけないわけです。それこそ、全身全霊を賭けて、「この作品が生涯の最高傑作だ」という完成品を作る覚悟でなくてはなりません。そうであれば、キチンと読みきりの時点でメリハリをつけて、読者に感銘を与えるストーリーを提示しなければならないはずです。
 どうも葉山さんは、その辺の意識が極めて希薄と言わざるを得ません。でなければ、どうしてこんな勝負の時に未完成なストーリーを提出できますか? まぁ、純粋な新人さんという事で、その辺の覚悟も無いまま応募したのかもしれませんが、それはそれで他の作家さんに失礼な話ですよね。これはプロの新人賞なんですから。
 これでもし、「命を賭けた全力投球の作品です」というのであれば、それはそれで読者の心を意識する能力が致命的に欠如していると言わざるを得ません。

 葉山さんの潜在能力はB+級くらいあると思うんですが、この作品に関しての評価はB−寄りのBということにしておきます。

 何だか、このシリーズの作品読んでるうちに腹が立って来るんですよね。賞金5000万と連載1年以上保証っていう事の重みを、全然応募者が自覚していないような気がしてなりません。小説で言えば直木賞と日本ミステリー大賞を合わせたようなグレードなんですよ、この賞は。
 シリーズあと残り2回、せめて1作品くらいは誰にでも薦められるような作品が出てくることを祈っております。

 ◎読み切り『セラミック・レッグ』(月刊オースーパージャンプ4月号掲載/作画:緒方てい

 この講義でもたびたび採り上げてきました、『キメラ』緒方ていさんの読み切り作品です。
 ……というかこの作品、実は緒方さんがアマチュア時代、同人誌に寄稿していた作品のようなんです。(改稿、もしくはリメイクの可能性もありますが、緒方さんのスケジュール的に全面改稿は不可能と思います)
 マイナー誌や美少女系マンガ誌ではよくある話ですが、一応メジャー級のマンガ雑誌では珍しいケースですね。

 さてこの作品ですが、簡潔に言うと“典型的な同人誌マンガの佳作”といったところでしょうか。主役に1つ“目玉”の設定を作り、後は心地よい予定調和の世界で読者をホロ酔い加減にしてくれます。短編マンガのセオリーをキチンと踏襲している、極めて質の高い習作だと思います。多分、これを同人誌作品として駒木が読んでいたら、「下手なマンガ家より上手いね」という感想を述べていると思いますね。

 ただ、やっぱりこれはあくまでも習作プロの作品としては物足りないんですよね。評価はB寄りのB+というところでしょうか。しかし、「緒方さんならこれより落ちる作品は無いだろうな」と思わせてくれる、極めて意味深い作品であるとも思います。

 ……というところで、今日のレビューは終了です。来週は『ヒカ碁』の読切シリーズ、「サンデー」の読切シリーズ、「バンチ」の愛読者大賞シリーズと、読み切りばかり3作品になりますね。多少、こちらの負担も軽減されてきましたので、さらにきめ細かいレビューが出来れば、と思います。それでは、また来週。(来週に続く)

 


 

3月13日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評(3月第2週分)

 さて、演習のお時間です。
 今週も取り扱うモノが多いので、手早く行きたいと思います。
 まず、2002年1月期の「ジャンプ天下一漫画賞」の審査結果発表から。今回は佳作受賞作が出ています。

第66回ジャンプ天下一漫画賞(02年1月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=1編
  ・『呪いの男』(赤マルジャンプ2002春号に掲載)
   藤嶋マル(18歳・秋田)
 審査員特別賞=1編
  ・『かっ飛び1番店』(岸本斉史賞)
   武田佳之(23歳・山形)
 最終候補(選外佳作)=7編

  ・『The Journy with a servant〜イギリス旅情編〜』
   安生直人(23歳・埼玉)
  ・『ミミ』
   田井裕之(21歳・神奈川)
  ・『野狐わずらひ』
   犬屋敷馨介(20歳・北海道)
  ・『世界の海はオレのもの』
   竹崎大輔(19歳・東京)
  ・『けーちゃんの宝箱』
   寺田あとん(19歳・埼玉)
  ・『グルマゲドン美食最終戦争』
   脊川椎(24歳・千葉)
  ・『M.M.S(ミスターモンスター助六)』
   奈良阪兼太郎(合作/23歳・大阪/29歳・奈良)

 先月、「なかなか佳作以上が出ませんなあ」とか言っていたら、早速出ました(苦笑)。今更な話ですが、佳作以上はデビューさせなくちゃいけないので点が辛いんですね。消費者からお金を頂く“商品”になるかどうかを判断するとなれば、そりゃあ採点も厳しくなりますよねえ。
 でもその割に、本誌に掲載する代原のレヴェルは案外無頓着ですよね。そりゃあ白紙の本が出るかどうかの瀬戸際だから事情は察しますが……。

 

☆「週刊少年ジャンプ」2002年15号☆

 ◎新連載第3回『少年エスパーねじめ』作画:尾玉なみえ《第1回掲載時の評価:

 尾玉作品の絶好調時を知る人間にとっては戦々恐々の3週間が終わりました(苦笑)。なにせ、ここまでのデキとアンケート結果で打ち切りかどうかが決まるわけですからね。
 ここまで3回の印象としては、手を変え品を変え色々やって、どうにかハイレヴェルのまま乗り切った、というところでしょうか。ただ、第1回に比べるとそれ以降は、ギャグの切れ味やインパクトの点でやや見劣りしてしまいますが……。
 尾玉さんは、理詰めよりも感覚的にギャグを繋げていくタイプの作家さんだけに、連載を続ける限り精神的な負担は大きいでしょうが、何とかもうしばらくはこのまま繋げて欲しいものですね。
 少し技術的な面も述べておきましょうか。今回の第3回では、従来の“ボケっ放し”だけでなく、“間”のギャグが多く見られました。これが、尾玉さんの計算ずくなのか、苦し紛れにひねり出したモノなのか分からないのがナンですが……。
 評価ですが、さすがにAは行き過ぎだと思いますのでランクを下げます。B+に近いA−という辺りが妥当ではないかと思われます。

 ◎読み切り(2回連続・後編)『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介《前編掲載時の評価:

 先週に引き続いての後編となります。作者お2人の経歴や前編の詳しい評価については先週分のレジュメを参照してください。

 後編はアクション部分、つまりアメフトのシーンが中心でした。やっぱりここでも村田さんの優れた画力が光っていて、ラインズマン同士の激しいコンタクトを上手く表現しているなど、多くの点で唸らされます。村田さんはスピードと迫力で勝負するシーンを描かせたら本当に上手いですよね。
 一方、ストーリーの方なんですが、やっぱり話をスムーズに見せるためにディティールを省略している点が目立って残念です。結局、アメフト部の2人が、手段を選ばすに部員を集めてまでアメフトにこだわっている動機すら明確に見えてきませんでした。…これ以上やると陰湿になってしまうのでやりませんが、細かい所まで挙げていったらキリが無い程のツッコミ処がありますよ
 厳しい事を言ってしまうと、こういう“手抜き”をしないと話をまとめられない人が原作専業でやっていくのはどうかと。同じ「ストーリーキング・ネーム部門」受賞者ということで、誌上では『ヒカ碁』のほったゆみさんと同列に扱われてますが、有り体に言って、ほったさんの方が番付が5枚以上違うような気がします。

 この作品、アンケート次第では連載になる場合もあるのですが、その時こそ、しっかりディティールまで設定とプロットを組んで、練りに練ったシナリオで勝負してもらいたいと思います。このノリのままで勝負した場合、あっという間に化けの皮が剥がれる事は目に見えていると思いますので。
 評価はで据え置き。村田さんの絵の実力だけならB+は確実なのですが……。

 

☆「週刊少年サンデー」2002年15号☆

 ◎読み切り『なにがなんだかモリマッチョ』作画:カルーメン野口

 今週も「サンデー特選GAG7連弾」が2作品。本誌での掲載順にレビューしてゆきましょう。
 まず、この作品の作者・カルーメン野口さんは、2年程前から少年サンデー系雑誌で、散発的にギャグ読み切りを発表している新人さんです。
 ただ、“新人”という言葉が似合わないほど画風が古いです。昭和50年代のコロコロコミックというか、どことなくガモウひろし氏風というか……。

 で、中身なんですが、これが題名の通り「なにがなんだか」でして。狙ってる場所とかは、まぁそれなりに分かるんですが、どれもこれも魂のこもっていない小手先のギャグなんですよね。セリフをちょっと変にしてみたり、キャラの絵面をちょっとイジってみたら、すぐに読者に笑ってもらえると勘違いしている気がしてなりません。
 これが、先述のガモウひろし氏みたいに、「マンガ家が小学校のマンガクラブで描かれるようなネタを描いたらどうなるか」という特殊な狙いなら話は分かるんですが、この作品はそこまでバカになりきっていないので、恐らくそういうわけでもないでしょう。
 評価はでいいんじゃないかと。「BSマンガ夜話」なら、「見所は11ページ目最終コマの乳首だけですね」とか言われそうな作品です。

 ◎読み切り『4649! どヤンキーラーメン』(作画:水口尚樹

 引き続き「サンデー特選GAG7連弾」。今度は新人作家さんの登場です。
 ネットで検索してみても、ほとんど情報が無かったんですが、同姓同名なのか水口さん本人の作品なのかは不明ですがこんなのが見つかりました。題名『普通えもん』。たった2本の4コマなんですが、起承転結のメリハリとギャグの切れが秀逸です。評価A−以上。色々な意味で商業誌掲載は不可能でしょうけど、同人誌か何かでもっと読んでみたい作品です。

 おっと、今回評価するのは『普通えもん』ではありませんでした。『4649! どヤンキーラーメン』の方です。

 …この作品、なかなか面白いんですが、あるポイントで非常に損をしています
 それは、この作品におけるギャグのパターンです。この作品は、“ネタ振り→1度目のギャグ(寒い)→2度目のギャグ(本当の狙い)”というパターンが繰り返されて進行するわけなのですが、この方法だと、必ず5割以上のギャグは面白くないギャグになってしまいます。計算づくとはいえ、ちょっとこれは問題ですね。肉を切らせて骨を断つという考え方も一理あるのですが、これでは骨を断つ前に、肉を切らせすぎて出血多量で死んでしまいます。
 今後の方針としては、ちょっとリスクは高くなりますがシュールな不条理ギャグを試してみてはどうかと思います。ギャグの才能が無いわけではないようですので、もっとドギツイ表現にチャレンジするのも手かと思うのです。

 評価はB−に近いB。惜しいんですけど、総合的な評価をすると、こうなってしまいます。

 ◎読み切り『背番号は○[マル]』作画:あおやぎ孝夫

 今週から5週連続でストーリーマンガの読み切りも始まりました。レビューが大変ですが、頑張ります。

 作者のあおやぎ孝夫さんは、昨年休刊になった「コミックGATTA」で既に連載経験済み。キャリアから考えると中堅マンガ家さんということになりますね。「週刊少年サンデー」本誌には初進出とのこと。

 では作品の評価へ。
 絵に関しては、細かい専門的な所まではツッコめませんが、少なくとも見た目は綺麗な絵だと思います。ただ、どこかで見たようなタッチなんですが、ちょっと誰に似ているかまでは思い出せませんでした。
 ストーリーの方は、「部内の“ミソッカス”的存在だった主人公が、実は才能を秘めていて、それが開花する……」という、話全体としてみれば、野球モノ読み切りでよくあるパターンです。ですが、短いページの中で主要キャラの個性がちゃんと表現できている事、それとありがちな勧善懲悪モノではなく、非常に爽やかなエピソードにまとめている辺りは非常に好感が持てます。地味ですが技量が無いと出来ない事をサラリとやってのけている辺り、非常に素晴らしいと思います。
 相対的な技量は間違いなく連載作家のレヴェルに達しているでしょう。特に最近の「サンデー」は“おバカさん系”の過剰演出作品が目立っているので、あおやぎさんが連載陣の一角を占めれば、雑誌全体に良いメリハリが利くと思えるのですが。
 評価はA−。余談ですが、同業者(学校教員)として、部活の練習の時だけ人格が豹変する女の先生ってのは、妙にリアルで微笑ましかったです(笑)。

 

《その他、今週の注目作》

 ◎読み切り(週刊コミックバンチ15号掲載・世界漫画愛読者大賞・最終審査エントリー作品『エンカウンター ─遭遇─』作画:木之花さくや

 このシリーズも7作目。いよいよ佳境に入った感があります。たった1話の読み切りで、作家さんの現時点での力量を分析しなければならないので、こちらとしても輪にかけてヘヴィーな作業になるんですが、それはそれでやり甲斐がありますね。

 さて、『エンカウンター…』の作者・木之花さくやさんは、2人合作のペンネーム。その正体(?)は、現役マンガ家の西野つぐみさんとDenjiroさん夫妻のセンが濃厚です。少なくとも、西野さんが主になって作品に関わっている事は、ご本人もご自身のウェブサイトで発表されていますし、絵柄も過去の作品のタッチと酷似していますので、まず間違いないと思われます。
 西野さんはマイナーともメジャーともつかないような商業誌(失礼!)で多くの作品を連載し、単行本も複数出されていますバリバリの現役作家さんという認識で良いでしょう。先週のこの講義で、エントリー作家さんをドラフト指名された新人野球選手に喩えたりしましたが、西野さんの場合は、既に台湾・韓国やアメリカのマイナーで活躍している“外国人枠”の新入団選手という事になるのでしょうか。

 では、作品について。まず絵の面ですが、これはもう、現役で活躍されている作家さんですから、注文する点はありません。見る人によって好き嫌いは出るでしょうが、絵において基本的な点で批判すべき箇所は無いですね。

 しかしストーリー面には問題が大いにあります。
 この作品、西野さん(と思しき人物)がインタビューで語ったところによると、「数年間設定を温めて来たストーリー」との事で、本当にこの作品へ力と気持ちを注いでいるのが感じ取れます。確かに、作者の「こんな話が描きたかった」という気持ちはストレートに伝わって来ます。
 しかし、どうなんでしょうか。「数年間温めて来た」というのは、どうも「『新世紀エヴァンゲリオン』を観て以来、数年間温めて来た」と、いうのが真相のようです。あちらこちらに『エヴァ』への影響が見受けられます。それはそれで良いのですが、それでも冒頭で、1992年だというのに、秘密組織の本部らしき場所の巨大画面映像が『エヴァ』のそれとソックリだったのには、いささか失笑しました。1992年と言えば、まだパソコンのハードディスクがMB単位だった頃の話。プレステ2と同性能の“スーパー”コンピューターが世界に1台あるかどうかの時代です。思い入れは分かるのですが、ちょっとリアリティに欠けた感が有りますね
 まぁでも、こういう些細な点をこれ以上ツッコむのは、揚げ足取るみたいでナニですので止めておきましょう。

 ストーリーで指摘すべき点は、もっと根本的な所にあるのです。ズバリ言うと、設定が複雑かつ説明不足な上に、話そのものが破綻しているのです。

 まず、主人公が子供時代にUFOに出遭って宇宙人にさらわれた結果、特殊な帯電体質になる、これは前提条件として構いません。話を立てる上では、計算された偶然は必然と同じですので。
 ただし、問題はここからです。舞台が10年後に移り、そこでいきなり「エンカウンター」なる秘密組織(『エヴァ』で言うところのネルフですね)がストーリー上に現れて、そこに所属する謎の少女─無痛症で超能力者(?)─が、主人公と「同調(シンクロ)する」云々と“その時点では意味不明な文言”を言い出したり、忽然と表われては姿を消したり。また、「(主人公の)能力に興味はあるが、手に余るようなら主人公を殺せ」と、主人公の能力が何かとか、それがどう手に余るのかすらサッパリ分からないまま「エンカウンター」から指示が出たり……。
 恐らく複雑な設定が、作者の頭にだけは存在するのでしょうが、余りにも説明不足で意味不明です。同じようなテンポで進む話に、『エヴァ』と同じガイナックス製作のアニメ『フリクリ』がありましたが、あちらはマニア向けである上に、シリーズ完結と同時にネタバラシが完了するのを前提としたお話。こちらは連載を前提にしているとはいえ、アンケートを前提にした読み切り作品です。不親切を通り越して、何か勘違いしてしまっている気がします。

 さらに、ストーリー上で因果関係が破綻している部分が、まま見受けられます。
 まず、主人公やその周囲の人間に、未知の菌が寄生するシーン。このシーンでは、主人公たちが縄文時代の洞窟へ行って、そこで主人公が帯電した静電気が洞窟の壁に反応して、そのショックで菌が蘇り、主人公の近くにいたために感電した人たちが気を失って、その間に菌が寄生することになっています。
 ですが、どうしてその洞窟に限ってそういう現象が起きたのか(だって、岩の壁ですよ?)という事や、宇宙から来たはずの菌がどうして縄文時代の遺跡に眠っていたのか、などの部分が全く説明されていません
 実はこれ、話作りの上で、レッドカード物の反則なのですね。話に登場する舞台装置は、必ず話の中で起こる出来事の伏線になっていなくてはならないのですよ。
 今回の話で言うと、その一連の出来事が洞窟で起こらなくてはならなかった理由が、何か1つ存在しないといけないのです。菌が寄生していた隕石がその洞窟の近くに落ちたシーンでも良いのです。何か、その洞窟という舞台と話全体を結びつける因果関係が無いと、話として失格なワケです。
 例えば推理小説で話をしますと、雪山で胸をナイフで刺されて人が殺された場合、何か1つ、その人を殺すのが雪山でないといけない理由が無いとダメなわけです。死亡推定時刻を判断しにくくさせるため、など。現実には「意味もなく」とか「何となく」という出来事は有りますが、フィクションの話で無意味な設定は、読者を混乱させるだけなので、ご法度なのです。
 また、その寄生した菌が、寄生主の人間を殺そうとすることは説明されていますが、何のために寄生主を殺そうとしているのかが全く説明がありません。これがホラーなら、「敵対する相手は謎(の人物、物体)でなくてはならない」という不文律がありますからO.K.なのですが、SF物である以上は、全ての謎を理論的に説明する必要があるわけで、これも反則行為にあたります。それに電気に関係する菌ならば、やはり電気に関連するやり方で全ての寄生主を殺すべきでしょうね。
 さらにクライマックスで、主人公が“特に理由も無く”奇跡を起こして問題を解決するシーンが出てきます。まぁ、これは昔から使われてきた手法ですので、ことさら声を荒げるのは間違ってるんでしょうが、今時、車田正美や石山東吉や桑沢アツオくらいしかやらない事をここでしなくても……と思ってしまいます。一見して“お利口さん系”のマンガなのに結末が“おバカさん”系というのは惜しいですよね。

 ……以上、細かい事を色々書いてきましたが、これは一見すると“面白そう”な作品であるからこその注文なのです。ハナから箸にも棒にもかからない作品ならここまで書きません。これらの課題を克服できれば、間違いなく名作候補になるだけに、非常に残念に思ったのです。

 この作品、言い方は悪いですが、読者を雰囲気で誤魔化してしまえば、大賞まで手が届くかもしれません。ただし、今のままで連載に踏み込めば、早かれ遅かれ破綻してしまうでしょう。それが非常に惜しい。
 『エヴァ』は、話が破綻する寸前の状態で、まるで北緯38度線で綱渡りをやるようにして、ギリギリ成立した話でした。そんな話に影響を受けて新たなストーリーを作り上げるのは並大抵の覚悟では出来ません。作者の木之花さんには是非、意気込みだけではなく覚悟も持って話作りに挑んでもらいたいと思います。返す返すも惜しい作品でした。再挑戦を待っています。
 評価は総合的に評価してです。

 ……以上、いつにも増して高ボリュームの演習になりました。次回は『ヒカ碁』番外編・奈瀬さん編なのですが、どうも恋の話らしいんですよね(慟哭)。うぅ、梅沢さんに続いて奈瀬さんもか…。

 まぁ、評価は客観的にいきます(笑)。とにかく来週をお楽しみに。(来週に続く)

 


 

3月6日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評(3月第1週分)

 えー、日誌の方ではお見苦しい場面がありました(笑)。すいませんね、どうも。

 さて、時間も無いので、早速レビューの方へ行かせてもらいます。7段階評価の表はこちらを。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年14号☆

 ◎新連載第3回『いちご100%』作画:河下水希《第1回掲載時の評価:B+

 第1回掲載時には、今後の方向性に期待をこめて高い評価をつけたのですが、どうやら駒木の意に反して、シナリオのクオリティ無視・ベタベタのラブコメ路線へ向かう模様ですね。まぁ、河下さんの作風でもありますので、それはそれで仕方ないのですが。
 しかし、果たして結末が明らかにミエミエのストーリーを、どう緩急・起伏をつけて料理していくのでしょうか。この手の話は、既に『電影少女』などでお馴染みなだけに、ライトなお色気だけでどう読者を引っ張っていくのか不安でもあります。いずれ訪れる「仮のヒロインとの別れ→真のヒロインへ乗り換え」というブラックな部分をどう描いていくかで、河下さんの“器”のようなものが見えてくるような気がします。
 それにしても、この作品のストーリー、『電影少女』の前半数十話を中抜きして湿気を抜いたような感じですね。作家間の個性の差もあるのでしょうが、時代が求めるものの差ということなのでしょうかね。
 評価は1段階下げます。
Bです。多分、半年くらいは引っ張るような気がしますけど、弟子の小林ゆきさんより先に打ち切られたらメンツ丸つぶれですね(苦笑)。

 ◎読み切り(2回連続・前編)『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介

 昨年度の「ストーリーキング」ネーム部門キング(大賞)受賞作品のマンガ化です。
 原作者の稲垣理一郎さんは、これまでは「ビッグコミックスピリッツ」系の雑誌で読み切りを数作発表している新人のマンガ家さんで、原作者としては初の商業誌掲載作ということになりますね。
 マンガ担当の村田さんのプロフィールについては、2月20日付演習内の、読み切り作品『怪盗COLT』のレビューを参照してください。

 さて、原作とマンガ担当が分かれた作品ですから、絵のクオリティについて述べるのは野暮な話です。村田さんの画力については既に『怪盗COLT』のレビューで述べていますし、ここでは割愛させて頂きます。一言で言うなら、「プロの作家として十分合格点」というところでしょう。

 問題のシナリオ部分についてお話をしましょう。
 この作品、「ストーリーキング」ネーム部門始まって以来初のキング受賞作(『ヒカルの碁』のほったゆみさんは準キング)だと記憶しているのですが、前編を読んだ限りは正直言って過大評価ではないかと思ってしまいます。
 問題点は大きく分けて2つ。
 1つ目は、お話の5W1Hが、えらく大胆に省略されている事です。
 この作品の設定はかなり不明確で、「なぜ、2人しか部員がいないアメフト部が試合をするのか」とか、「そもそも、中学校なのか高校なのか」とか、「相手チームのキャプテン(?)とアメフト部の2人はどのような因縁があるのか」とか、「主人公が俊足であることが、ここまで知られていないのは不自然だが何故か」などなど、話の根幹に関わる部分が全く説明されていません。
 恐らく、「読み切りだし、カットできる部分は全てカットしよう」と考えたのでしょう。確かにそれでテンポを上げる効果は果たしているのですが、違和感もかなり大きなものになってしまってます。
 2つ目は、作品内でのアメフトの扱い方について。
 前編を読んで抱いた印象なのですが、原作担当の稲垣さんは、アメフトが特に好きなわけではないんじゃないかと。いや、本当は大好きなのかもしれませんが、こちらに全くそれが伝わって来ないんですね。
 というのも、このマンガはアメフトマンガでありながら、アメフトそのものについての扱いが極めてぞんざいです。ルールの説明もほとんどなされていないため、アメフトを知らない人がこの作品を読んだところで、果たして理解できるのか心配になってきます。
 「難しいルール説明してもテンポ悪くなるだけだし、どうせ分かってもらえないよ」と考えたのでしょうか。ですが、それにしても不親切だと思います。

 この作品全体に漂うムードは「逃げ」なんです。
 確かに読み切りの中で詳しい設定を消化させようと思ったら、相当な技量や構成力が必要になって来ます。アメフトの(パッと見で)複雑なルールを読み切り作品の中で効果的に説明しようと思えば、それもまた難しい事だと思います。
 ですが、それを成し遂げてこそ初めて素晴らしい作品になるのではないでしょうか?
 作品のクオリティを下げないために、まず自分が楽をしてしまってはどうしようもありません。
 評価は
Bとしておきましょう。後半に期待を抱きつつも、課題は山積といったところでしょうか。

 ☆「週刊少年サンデー」2002年14号☆

 ◎読み切り『新型機動携帯シモべえ』作画:木村聡

 今週と来週は「サンデー特選GAG7連弾」が2本立てということで、レビューも2作品ずつ、ということになります。

 では、まずは“第3弾”のこの作品から。
 作者の木村聡さんは、デビュー間もない新人作家さんのようです。過去1度本誌で読み切りが掲載された事があるようですが……。
 さて、問題の内容なんですが。
 えー、何と言いますか、一言で言うと「子どもだまし」の作品ですね。正確に言うと、子どもは「ウンコ、シッコ、チンコ」の御三家ならぬ“コ”三家でしかだまされませんから、「子どもだませない」の作品、とした方がいいでしょうか。
 ギャグが全部“小手先”なんですよね。ただ単に力押しできる地力が無い事を棚に上げて「自分は技巧派だ」と勘違いしている節があります
 「週刊少年サンデー」のギャグ作家さんの中で技巧派と言えるのは、『かってに改蔵』久米田康治さんでしょうか。しかし久米田さんは、ギャグの質そのものもさることながら、とにかく1ページあたりのギャグ密度が濃いんですよね。情報収集に相当の時間をかけて、なおかつ、それを絶えず「どうネタに昇華すればいいか」を考えてないと出来ない芸当です。そして、残念ながら木村さんのこの作品には、それが全く無い、と。
 要は努力が足りないわけです。ぶっちゃけた話、ギャグ作家さんは、ストーリー作家さんが絵の技術向上にかける時間をそのままギャグの技術向上に費やす事ができるわけですから、それこそ画材にかける資金を書籍・通信費に注ぎ込むくらいの覚悟が無いと……。
 この木村さんには、もっと世の中あらゆる所にアンテナを張り巡らして、小手先じゃないギャグを編み出せるように努力してもらいたいものです。
 評価は
Cに近いB−

 ◎読み切り『煩悩寺のヘン!』作画:黒葉潤一

 「──特選GAG7連弾」の第4弾は、かつて本誌で『ファンシー雑技団』を連載していた黒葉潤一さんです。
 連載当時は現役大学生だった黒葉さんですが、卒業&連載終了後もマンガ家としての活動を続けていたようですね。
 ……そうして専業マンガ家になったことで、以前よりもレヴェルが向上しているかと思ったのですが、どうも横ばい、ひょっとすると地力が落ちてるんじゃないか、と思えてしまうのが今回の作品でした。捨て身のギャグを放っているのは分かるのですが、全部上滑りしてるような気がしてなりません。
 もっとも、黒葉さんの本来のスタイルというのは、複数の登場人物のキャラを立てておいた上で、1ページ程度のショートギャグを重ねてゆく形式でしたから、それと正反対のスタイル(少ないキャラで10数ページ回すスタイル)である今回の作品は、ちょっと黒葉さんには酷だったかな、という気もします。今回の設定を流用して、本来のスタイルで連載すれば、もう少し質の違ったものになるかも知れません。
 …とりあえず、今回の作品だけで判断すると、評価はB−になりますね。もっと精進しないと、連載復帰は難しいかも分かりません。

《その他、今週の注目作》

 ◎読み切り(週刊コミックバンチ14号掲載・世界漫画愛読者大賞・最終審査エントリー作品『142cmのハングオン』作画:大西しゅう

 シリーズ6回目にしてようやく、この作品がデビュー作となる新人作家さんが現れました。20代前半という年齢は、マンガ家デビューにしてはやや遅い方ですが、まぁマンガ家の作風は年齢よりもキャリアに影響されますから、あとはいかに生活を維持しながらマンガを描き続けていくかでしょうね。緒方ていさんみたいに、サラリーマンのかたわら同人誌で腕を磨いた後に連載デビューというケースもありますので、是非頑張ってもらいたいものです。

 さて、作品のレビューなんですが……。
 まず初めに言っておかないといけないのは、やはり画力でしょう。正直言って、まだプロを名乗って良いレヴェルではありません。まぁ、この作品を描いている頃はアマチュアなのですから、仕方ないと言えばそうですが。
 しかし、ヒロインの女友達が一瞬男に見えてしまったりとか、一番の見せ場である、「ライバルのバイクを交わし、なおかつ転倒寸前のバイクを立て直すシーン」の描写が余りにも稚拙で、何がどうなったか絵だけでは分からないとあっては、やはりマンガとしては致命的と言わざるを得ないでしょう。
 駒木は、絵よりもストーリー・シナリオを重視して見るタイプのレビュアーですが、さすがにここまでレヴェルが下がると、やはり酷評してしまいますね。

 一方、ストーリーの方ですが、これはまぁ、ある程度は話作りの基本を押さえた上で、さらになかなかの勢いがついています。絵の稚拙さをある程度はカバーするようなモノには仕上がっているのではないかな、と思いますね。何よりも、自分の好きな題材を独り善がりにならないように留意して描こうとしている姿勢に好感が持てます。
 ただ、話全体の起伏が緩やかで、既成の作品の平均値を越えるようなインパクトを出せなかったのが悔やまれます。何というか、良い意味でも悪い意味でも若さに任せて描いている影響が滲み出たストーリーだった気がします。
 総合的に判断すると評価は
B−に近いB。この作品も、ちょっと受賞には届かない感じですね。でも、「ドラフト6位で入団した高校生ルーキー」みたいな雰囲気が漂っていて、「2年くらいファームで鍛えたら面白いかな」という気にはさせてくれる作家さんです。これからに期待という事で。

 ちなみに、これまでの5人のエントリー作家さんは、「元甲子園球児の草野球選手(地区予選級の実業団選手)が入団テストを受けに来た」ような感じでしょうかね。「良いモノはあるけど、手垢が付き過ぎちゃってるよなあ」という印象です。
 何とかあと4回で、最低でも「ドラフト外れ1位〜2位クラスの大卒ルーキー」みたいな作家さんが現れる事を期待したいと思います。

 さて、次回の演習ですが、ジャンプの方は新連載ラッシュも落ち着いて一段落になります。ただ、サンデーでは来週から5週連続新人読み切りシリーズが始まるとのことで、そっちの方にかなり忙殺されそうです。特に来週は「ギャグ7連弾」も2本立てですし、何だかまた大変になりそうです(苦笑)。
 まぁ、何とか頑張りますよ。それでは、また来週。(来週に続く)

 


 

2月27日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(2月第4週分)

 今週もゼミのお時間がやってまいりました。

 それにしても、皆さん、今日発売の「週刊少年マガジン」13号は読みましたか?
 詳しくレビューする余裕も意欲も無いんで、ここで簡単に扱っちゃいますが、『つんく♂物語』作画:杉山真弓)について。
 まぁ、この手の『○○物語』というヤツは、真実1:虚構9というのが常なんですが(大抵、デビュー直前に超オフレコの出来事が起こるので)、それにしても今回の『つんく♂物語』は酷かったですね。多分、真実1:虚構49くらいなのではないかと。

 これを描かされた、仕事の断れない立場にある新人作家・杉山真弓さんは、どうにも災難としかいいようがありませんね。ま、早いトコ売れて、この作品を“消した過去”にしちゃって下さい。
 それにしても、ナイナイの岡村が命名したはずの“モーニング娘。”というユニット名を、しれっとつんく♂の手柄にしてしまうのですから、いやはや恐ろしい。
 ちなみに、当時の雰囲気をリアルに味わいたい方は、駒木の拙文「今日の特集・モー娘。新メンバー決定(5回シリーズ)」をご覧下さい。こちらは真実8:邪推2ってところですが、まだマシでしょう。

 ……それでは、今日は扱う作品も多いので、とっととレビューに行っちゃいましょう。

 ※文中の7段階評価はこちらを。簡単に言えば、B+はマンガ好きに推奨の作品A−以上は、誰にでも推奨したい作品、と考えてください。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年13号☆

 ◎新連載『少年エスパーねじめ』作画:尾玉なみえ

 一部では連載前から大きな話題になっていた、尾玉なみえさんの新連載作品ですね。
 前作『純情パイン』(評価:読切時A/連載時Bでは、慣れない週刊連載と少ないページ数のためか、見事に打ち切りの洗礼を浴びた尾玉さん。しばし雌伏(無職)の時を経て、ようやく復帰を果たしました。

 さて、今回の『少年エスパーねじめ』ですが、以前掲載された同題名の読み切りとは大きく内容・設定を変えてきました。おそらく、「面白ければ何でもアリ」と開き直った結果だと思われますが、これが大成功でしたね。
 単刀直入に言って、大変面白いです。ハンパじゃなく笑えました。笑いのツボは人によって大きく違いますが、少なくとも、この第1回に関しては大半の人が支持してくれるのではないかと思います。

 で、この作品の面白さについて。
 ギャグマンガを分析する事は愚の骨頂と分かってるのですが、まぁそれをするのがこの講義ですので少しだけ。
 尾玉作品の魅力というのは、「ボケっぱなし」の展開なわけですね。もちろん、それを生かすための間のとり方や構図も秀逸ですが。
 日本のギャグ文化の基本として、登場人物を介してツッコミも入るのですが、尾玉作品のボケ役は、これを徹底的に無視します。聞く耳持ちません。『ピューと吹くジャガー』のジャガーさんが、まだ聞き分けが良いように感じる程、これを徹底させています。
 『純情パイン』連載時は、その全てが微妙に弱かったために失敗したのですが、今回は逆に全てが合格ライン。この調子で、せめて1年以上は持続できるように頑張って頂きたいものです。
 売れちゃえば原稿落としても大丈夫ですし。

 評価ですが、少なくとも今回はA評価にしても良いと思います。問題はこのパワーの持続性ですが、それは第3回の時に検討するという事で。

 ◎新連載第3回『あっけら貫刃帖』作画:小林ゆき《第1回掲載時の評価:B+

 巷ではあんまり良い評価を聞かないのですが、駒木の好感度は依然として高いです、この作品。もっとも、大物感の無さも相変わらずなので、ジャンプの看板作品に成長する見込みは薄いままですが……。
 何が駒木の好感度の源かと言いますと、この作品、ストーリーと設定が相当練られた節があるからなんですね。かなり先まで構想を立てた上でネームを切っているみたいで、行き当たりばったり感が皆無なんですよね。何と言うか、マンガを読んでいる感覚よりもライトノベルを読んでいる感覚の方に近いんですよ。
 最近特に痛感しているのが、少年マンガ作家さんのストーリー構成力の弱さでして、そこにこういうプロットを練って勝負してくるタイプの人が出てくると、自然と目に付くというわけです。
 大半の作品が打ち切り・尻切れトンボ終了になるのがジャンプ作品の宿命ですが、この作品は、何とか小林さんの考えているラストシーンまで読みたいものです。
 評価は
B+のまま据え置きです。大物感の無さが評価アップへの最大の障害になりましたが、個人的には大変期待度が高いです。

 ◎読み切り『ヒカルの碁・番外キャラ読切シリーズ・加賀鉄男』作:ほったゆみ、画:小畑健

 キャラクター人気投票で上位に食い込んだ、『中学囲碁部編』のバイプレーヤー・加賀鉄男のサイドストーリーですね。巧みに葉瀬中囲碁部の後日談にもなっている一石二鳥的な試みが、実に心憎いですね。ホント、ほったさんって、タダでは読み終わらせてくれません。

 それにしても、この回は完全にセルフパロディになってますね。ジャンプで発表せず、同人誌にして夏コミ売った方が良いような感じがするくらいですよ(恐ろしい行列できるでしょうけど)。名作家はパロディの名手でもあるんだな、とじみじみ実感する次第です。
 評価なんて野暮なんですが、前回と同じく
A−。この「番外キャラ読切」、次回は16号の奈瀬明日美編です。ツイニキタ─(゜∀゜)─! 

 ◎読み切り『偉大なる教師』作画:郷田こうや

 第54回赤塚賞で、島袋光年さんの猛プッシュを受けて佳作を受賞した、郷田こうやさんの読み切りです。『HUNTER×HUNTER』の代原なので、習作段階の作品を編集部が預かっていたものだと思われますが。
 郷田さんの受賞&デビュー作『グッドボール』は、本誌に掲載されていたので記憶に残ってるのですが、面白い、面白くないは別にして、15ページかけて1つのネタを勢い任せに引っ張ってゆく強引さが印象的でした。大化けすれば面白いかな、と思ったのを記憶しています。

 で、今回なんですが、有り体に言うと「永久に編集者の机で眠ってた方が良かったかな」と。ショートギャグにしてしまったせいか、現時点での唯一に近いウリの“強引さ”が翳ってしまったような気がします。
 多分、今は「何が面白くて、何が面白くねえかワカンネエよお」と呻いている時期だろうと思うんですが、早く自分なりの極意を身に付けてもらいたいものです。
 今は『ジャガー』『ボーボボ』『たけし』『サクラテツ』、そして今週からの『ねじめ』と、今「ジャンプ」ではギャグ作品が5作品も連載されていて、しばらく新人に連載枠は開きそうにありませんので、今の内にじっくりと力を蓄えて貰いたいと思います。
 評価は、ちょっと厳しく
C寄りのB−としましょう。

 

☆「週刊少年サンデー」2002年13号☆

 ◎短期集中連載・最終回(第4回)『ダイキチの天下一商店』作:若桑一人、画:武村勇治)《第1回掲載時の評価:

 長期連載を賭けた短期集中連載が終了しました。この期間のアンケート結果を見て、本格連載か月刊への左遷かが決まる事になります。
 まずは、原作・若桑さんの取材力を評価したいですね。4回で全てのエッセンスを詰めなくてはいけなかったからでしょうか、若干の消化不良感が否めないのが残念ですが、弁当屋の内部事情という、手垢の付いていない内容を見つけてきた事は、やはり評価に値すると思います。
 ただ問題点も。最近の「サンデー」新連載は全部そうなんですが、どうも演出がオーバーで極端なんですよね。それも、個性を出そうというのではなく、表現力の拙さを補うために極端な演出にしているようなんですよ。これがどうも、駒木には腑に落ちないのです。

 ……と、いうわけで一長一短のこの作品、評価は据え置きでとします。個人的な見解としては、「連載になっても構わないが、敢えて読みたいとも思わない」というところでしょうか。

 ◎読み切り『ピー坊21』作画:佐藤周一郎

 「サンデー特選GAGバトル7連弾」の第2回です。
 この作品の作者・佐藤周一郎さんは、デビュー間もない新人作家さんのようで、本誌は初掲載になります。

 まず絵なんですが、多少デッサンが狂うなどの初々しさが漂うものの、拙くは無いと思います。メジャーデビュー直後のゆうきまさみさんを髣髴とさせるものがあります。と、いうことは、修行すれば相当上達しそうですね。これはまぁ、ちょっと甘いですが合格点をあげてもいいかと思います。
 ただ、課題は肝心のギャグの方に山積みです。
 今回の作品中で、少なくとも2ケタの“笑い所”が仕掛けられていたと思うのですが、その全てにおいて、駒木が笑うに至らなかったのは、やはり大問題でしょうねぇ。逆にこの作品読んだ皆さんにお訊きしたいのですが、笑えましたか、この作品?

 どうもこの佐藤さん、残酷なようですがギャグ作家を目指す事自体が間違っている気がしますね。ストーリーの構成力をつけて、コメディ作家に転身すれば芽が出るチャンスも大きいと思うのですが……。
 評価は
Cに近いB−。将来性っぽいものは感じますので、あとは精進次第でしょう。

《その他、今週の注目作》

 ◎読み切り(週刊コミックバンチ13号掲載・世界漫画愛読者大賞・最終審査エントリー作品『灰色の街』作画:江口孝之

 消えたマンガ家&マンガ家予備軍敗者復活戦の様相を呈してきたこの企画も、ついに折り返しの第5回となりました。
 今回登場の江口さんは、バンチ本誌では経歴が不明だったんですが、どうやら「ヤングマガジン・アッパーズ」の第3回新人マンガ賞・奨励賞受賞20作品も受賞してますので、事実上の選外佳作?)コミックビンゴ第1回新人賞・佳作受賞&読み切り掲載という経歴を経ている、“消えかけ”のマンガ家さんのようです。ということは、今週も敗者復活戦ですか……。

 さて今回の『灰色の街』なんですが、江口さん自身もインタビューで語っているように、複数の作家さんの影響が複合的に表われているような感じですね。駒木はとりあえず、『はっぱ64』時代の山本直樹さんを感じたりしましたが。
 まず、絵は作風なのかもしれませんが荒いです。デビューから4年以上経ってますので、江口さん自身に上達する気持ちが無いのかもしれません。まぁ下手なりに個性は出てますので、売れた後に「BSマンガ夜話」で、いしかわじゅん氏に「絵が下手だ」と叩かれる覚悟をしているなら、このままでも良いのではないかと。
 ストーリーの方は、何というか、江口さんの受賞&掲載歴を如実に物語るように、マイナー誌向けのダークな話です。少年誌と青年誌の中間を行く「コミックバンチ」には、ちょっとそぐわない気がしますね。話自体は古臭いながら割と練られていますので力量はあるのでしょうが、残念ながら、今のままではメジャー誌で売れる事は無い気がします。

 評価は減点・加点入り混じっての評価というところでしょうか。これがデビュー作だというのならばまだしも、デビューから4年以上経過して、作風も自分で固めてしまった人という事を考えると、ちょっと大成は難しい気がします。

 しかしこの賞、大賞賞金5000万円なのですが、ここまで5作品見た感じだと、1/10でも高いくらいだと思ってしまいますねぇ。

 ◎連載第3回『キメラ』(「スーパージャンプ」掲載/作画:緒方てい

 『キメラ』の第3回は、急遽巻頭カラー&増ページになりました。「SJ」編集長の期待の表われでしょう。
 しかし、肝心の作品の方は、またしても期待外れと言わなくてはならないでしょう。もちろん、これが他の作家さんの作品なら絶賛に近いレビューを掲載するところなのですが、緒方さんはデビュー作が素晴らし過ぎたために、どうしても採点が辛くなってしまいます。

 これは第1回のレビューでも述べたのですが、大事なポイントなので、もう1度述べます。
 この作品最大の問題点は、やけに説明的なセリフ回しでしょう。複雑な設定を読者に伝えようとするあまり、どうしても意欲が空回りしてしまうんですね。
 マンガに限らず、ファンタジー系作品では現実世界とは全く別の世界が構築され、そこを舞台に話が展開してゆきます。そして、そのオリジナルの世界観を、如何に上手に説明するかに作者の技量が表われるものなのです。
 駒木が知り得る限りで、これに最も長けているのが小説家の宮部みゆきさんです。『ドリームバスター』で余すところ無く発揮された宮部さんのテクニックは一読に値すると思います。
 その点、『キメラ』の緒方ていさんは、経験不足のせいか、これがどうにも苦手なようです。見せ場での演出力は凄いものを持っているだけに、非常に残念でなりません。

 一応、今回で『キメラ』レビューは一時中断とさせて頂きます。次にレビューする時は、『キメラ』が大化けした時になると思います。評価は据え置きでB+

 ……と、今週は8作品のレビューを行いました。大変です、ハイ(苦笑)。
 来週も5〜6作品はレビューしなくちゃいけないようで、今から気が重たいのですが、頑張ります。
 それでは、今週のゼミを終わります。(来週に続く)