「社会学講座」アーカイブ(演習《現代マンガ時評》・2)

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講義一覧

8/29 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」 (8月第5週分)
8/22&23 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(8月第4週分)
8/15 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(8月第3週分)

8/8  演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(8月第2週分)
8/1  演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(8月第1週分)
7/25 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」 (7月第4週分)

7/18 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(7月第3週分)
7/11 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(7月第2週分)
7/4  
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(7月第1週分)
6/27 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(6月第4週分)
6/20 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(6月第3週分)
6/13 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(6月第2週分)
6/6  
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(6月第1週分)
5/30 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(5月第5週分)
5/23 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(5月第4週分)
5/16 演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(5月第3週分)
5/9  演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(5月第2週分)
5/3  演習(ゼミ)「現代マンガ時評」(5月第1週分)

 

8月29日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(8月第5週分)

 先週のゼミで実施した緊急特集に関しては、各方面から(刺激的なモノを中心に)様々な声を頂きました。
 1週間経って振り返ってみますと、その内容はともかくとして、このゼミの本来の趣旨である「良作・佳作を発掘し、その良い所を多くの人に伝える」という所から大きく逸脱していたと思います。この点は深く反省ですね。
 今後は原点に立ち戻って、自信を持って高評価が出せるような作品を見つけて紹介する事に力を注ぎたいと思います。これからもどうか何卒。

 また、今回から「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年サンデー」の連載作品について、特筆すべき点のあった作品について述べる、「今週号のチェックポイント」を開始します。これにより、連載が進むにつれて段々“味”が出てきた作品についてフォローが出来るようになると思いますし、レビュー作品が少ない新連載の谷間期のゼミをいくらか充実させる事が出来ると思います。
 ただし、先程紹介した当ゼミの趣旨に則って、原則として“良くなって来た作品”だけを紹介しようと思っています。(A評価を付けていた作品を、B+やBに下げなければならないような事情が出てきた場合は別ですが……)

 さらに今週と来週の2回に渡って、「週刊少年ジャンプ」夏季増刊「赤マルジャンプ・2002SUMMER」の全作品レビューを行います。ただし、作品数が多いので、普段のレビューに比べると、かなり簡単な内容になってしまうと思われます。あらかじめご了承下さい。
 (前回の「赤マル」レビューに関しては、5月9日付ゼミのレジュメを参照)

 ……では、ゼミを始めましょう。

 まずは情報なんですが、今週は1つだけ。
 「週刊少年ジャンプ」の今週号(39号)で、正式に連載打ち切りがアナウンスされた『世紀末リーダー伝たけし!』の作者・島袋光年氏ですが、逮捕された件については起訴、そして同じ児童買春の別件容疑2件で再逮捕されました。裁判に向けての証拠固めのため、さらに拘置所(留置所)での取り調べが1ヶ月ほど続く事になりそうです。
 まぁ、裁判が始まってしまえば、事実関係を争わずに島袋氏がワビを入れて即日結審→次の公判で判決(おそらく執行猶予付き懲役刑)…という流れになりそうでありますが。しかし、ここまで大事になってしまったら、どのような形でも現役復帰はかなり難しくなりましたね。どこかで同じ事を言ったかも知れませんが、少なくともギャグ作家としては才能のあった人ですので、残念です。

 ……では、今週のレビューですが、新連載の谷間に入ってしまったため、今回の「ジャンプ」「サンデー」のレビュー対象作は、『──たけし!』打ち切りに伴う代原読み切り1作品しかありません。しかも、その代原を描いた作家さんが、島袋光年氏の猛プッシュでデビューを果たしたという経歴を持つ郷田こうやさん。何というか、凄まじいまでの因縁を感じさせるお話ですね(苦笑)。
 それではまず、この1作品のレビューと、今日から始まります「今週のチェックポイント」を合わせてどうぞ。

 

☆「週刊少年ジャンプ」2002年39号☆

 ◎読み切り『青春忍伝! 毒河童』作画:郷田こうや

 ……というわけで、“しまぶーの忘れ形見”という有り難くない異名を戴く事になりそうな、郷田こうやさんの代原作品レビューです。

 郷田さんは第54回赤塚賞(01年上期)の佳作受賞者で、描いた原稿が代原として本誌に掲載されるのは、これで4回目という事になります。
 当ゼミでも、デビュー2作目の『偉大なる教師』と3作目の『ボウギャクビジン』についてのレビューを実施していますので、興味のある方はそちらもどうぞ。(レビュー詳細については2月27日付、及び4月11日付レジュメを参照)

 さて、今回の『青春忍伝! 毒河童』ですが、まず結論から言ってしまうと、“代原の域は越えているが、連載を前提とする作品としては不満”という微妙なレヴェルのギャグマンガという事になるでしょうか。
 まるっきり寒いギャグばかり…というわけではないですが、かといって多くの読者を何度も笑いに持っていく事は難しい…という、そんなレヴェルの作品です。ネタそのものは悪くないのですが、間の悪さなどが手伝って、完成度が鈍ってしまったのでしょう

 しかし、これを郷田さん本人の過去作品と比較すると、格段の進歩が窺えます。
 まず、絵柄がこれまでの作品に比べて一気に洗練されています。これまでの3作品では、極太線を多用した荒っぽさの残るタッチが目立ったのですが、この作品では個性を残したまま、オーソドックスなペンタッチに近付いていっています。ギャグマンガ家として重要な、キャラのディフォルメ絵も描けるようになって来ていますし、もはや「ジャンプ」系のギャグマンガ家としてはかなり上位の画力と言っても良いでしょう。
 またギャグの持っていき方も、以前の“同パターンネタ一本槍”型から脱皮して、色々なパターンのギャグを適当な密度で次々と繰り出せるようになって来ました。『偉大なる教師』のあたりでは、ギャグに対する迷いらしきものも見られたのですが、この試行錯誤が今になって活きて来ているような気がします。

 ただし、最初に触れたように、ここまでレヴェルアップを果たしても、まだまだ未熟な点も多くありますこれからの課題としては、間の取り方(ページをまたいでオチを見せる…など)の上達、もっとオチ部分にインパクトを持たせる事、そしてギャグのパターンを増やす事…などが挙げられるでしょう。
 その確率としては、現時点では何とも言えませんが、もしもこれらの課題の克服が果たせた場合は、最終的には「サンデー」の椎名高志さんのような名コメディ作家になる可能性もあると思います。郷田さんの更なるレヴェルアップに期待しましょう。

 評価はちょっと甘目かもしれませんが、B+寄りのB。とにかく次回作が楽しみな作家さんです。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介《第3回掲載時の評価:B+

 主人公・セナの視点を通じて、アメフトの基本ルールを読者にさりげなく伝えたポイント、秀逸です。
 ダラダラと試合を引き伸ばさないのも良い傾向ですし、連載5回目にして早くも“化ける”予感がして来ました。少なくとも今回だけならA−評価に値すると思います。

  

☆「週刊少年サンデー」2002年39号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 ◎『からくりサーカス』作画:藤田和日郎《開講前に連載開始のため、評価未了》

 語弊のある言い方かも知れませんが、相変わらず“人の死なせ方”が抜群に上手いですね。
 ある程度デジタル的に泣かせる話を量産できる才能というのは、異形ながら貴重だと思います。

 ◎『ふぁいとの暁』作画:あおやぎ孝夫《第3回掲載時の評価:B

 やや良化の兆しです。今回みたいに、読者にストレスを与える一方で、少しずつ救いのある話が続けられるようになれば、画風が活きて来るのではないかと。

 ◎『いでじゅう!』作画:モリタイシ《第3回掲載時の評価:A−

 回を追うごとに、どんどん良くなって来ています。レギュラーキャラ4人に、週代わりで準レギュラーキャラを交えていく作戦が功を奏している格好です。
 392〜394ページの辺りは個人的に完璧にツボでした。他の方はどう思われたのか知りたいところです。

 ◎『一番湯のカナタ』作画:椎名高志《第3回掲載時の評価:A−

 正直、ここ最近は息切れ気味だと思っていたんですが、新キャラ・ワネットの登場で一気に形勢逆転! 見事にテコ入れ大成功ですね。
 問題は、主人公・カナタの影が段々薄くなってゆく所なんですが(苦笑)、どうやってそれを克服してゆくか、椎名さんの手腕に期待しましょう。

 

 ……と、いうわけで、以上がレビューと「今週のチェックポイント」でした。

 それでは、これから「赤マルジャンプ」全作品レビュー(前編)です。前回と同様、本誌連載陣のショートギャグは対象外としました。

◆「赤マルジャンプ」完全レビュー(前編)◆

 ◎読み切り『電人タロー』作画:小林ゆき

 本誌連載デビュー作『あっけら貫刃帖』12回打ち切りの憂き目に遭い、一敗地にまみれた小林ゆきさんの復帰作です。
 連載終了からそう間が無かったのですが、少しタッチが変わったようですね。全体的に丁寧になってますし、特に女の子キャラのイメージが『あっけら──』の頃と随分違います。好みが分かれそうな絵柄というのは相変わらずですが、少なくとも悪くはなっていないと言えそうです。
 ただ、ストーリーが小じんまりとまとまり過ぎているのも相変わらずなのが痛いですね。具体的に説明するのが難しいですが、もう少しスケールの大きな話が描けるようになれば良いのですが……。

 評価は微妙ですが、B寄りB+というところでしょうか。

 

 ◎読み切り『アマツキツネ絵巻』作画:海図洋介

 昨年に『犬士ヒムカ』天下一漫画賞佳作を受賞し、本誌デビューを飾った海図洋介さんの1年ぶりの新作となります。
 デビュー当時から随分洗練されていた絵柄の方は、1年経っても健在。少なくとも絵だけ見れば、原作付きの作画担当作家が目指せるレヴェルです。
 ただし、ストーリーの方は、よく練られてはいるのですが、やや詰め込みすぎて中盤辺りでダレてしまうのが難点。特に、話全体のポイントとなる「ユタの筆」のエピソードの印象が随分とボヤけてしまったのは致命傷に近いです。
 もう少しシンプルに、読者に分かって欲しい部分だけ描いておけば、随分と印象が違ったかも知れません。
 評価は絵柄を加味してもBが限界でしょう。


 ◎読み切り『UN★TURBO』作画:吉田真

 第58回手塚賞(99年下期)で準入選を受賞、その後も散発的に「ジャンプ」系雑誌で作品を発表している吉田真さんの新作です。
 絵柄の方は、背景処理があまりにもお粗末ですし、幼いんだか老けてるんだか微妙な上、表情の変化が乏しい人物描写問題点が残っているような気がします。パッと見はそんなに不快感が残らないんですけどねぇ。
 ストーリーは、プロットがしっかり出来ているのか、綺麗にまとまっているようには見えます。ただし、先にストーリーありきで考えてしまったためか、主人公のキャラと行動から一貫性が欠けているのが残念ですね。
 絵柄、ストーリーともパッと見は良いんですが、中身的には今一歩。ちと厳しいかもですが、B−としておきましょう。


 ◎読み切り『40mmアイアン』作画:高野ひろ

 高野ひろさんは、「週刊少年ジャンプ」系の雑誌には初登場となる新人作家さん。恐らく女性作家さんですね。

 の方は、キャリア実質2年(プロフィールより)という事を考えると、線にも無駄が少なくてアマチュア臭さが感じられないのが良い感じです。ただし、表情の描き分けが全くと言って良い程出来ていないので、妙なぎこちなさが残っているような気もします。まぁこの辺りは、これからのキャリアが解決してくれる事でしょう。
 ストーリーは、典型的な悪役が、典型的な善玉に負けるべくして負ける……という、言い方は悪いですが、かなり使い古されたパターンを何のヒネりもなく流用したような感じで、独自色が全く感じられなかったのが非常に残念です。ワンシーンだけでも、ほとんど全ての読者を驚かせたり感動させたりする場面があれば良かったのですが……。
 評価はB−

 
 ◎読み切り『リ・サイクルZ』作画:安藤英

 第63回手塚賞(02年上期)で佳作を受賞、今回が受賞後第一作&デビュー作となる新人・安藤英さんの作品です。
 絵柄は鳥山明&尾田栄一郎両氏の影響が色濃く見られるものの、一応は別モノの画風には仕上がっているようです。ただ、良し悪しは別にして個性がキツい絵柄ではあるので、これを如何に作品に活かしていくのかが、今後の活動ではカギになってくるのではないでしょうか。
 ストーリーは、主人公の体を改造したポイントが、最後の戦闘で伏線になっているなど、“技あり”な部分が見逃せません。ただ、ご都合主義的な面が多々見られるので、今の状態で連載を始めたりすると、短期間でボロが出てしまいそうではあります。また、不必要な設定が多すぎる嫌いもあり、ちょっとセンスが古臭い気がしないでもありません
 評価はB−寄りといったところですね。


 ◎読み切り『TORA TAKE OFF !!』作画:ゆきと

 第62回手塚賞(01年下期)で準入選を受賞したゆきとさんの受賞後第一作&デビュー作という事になります。

 絵柄まだ完成手前という感じ。トビラのダンクシュートシーンなんかは、下手な人には描けないアングルでしょうから、実力不足というわけでは無さそうです。どうやらペンではなくロットリングを使っているようですが、それがプラスになっていないのが問題点でしょう。
 話も地味ながら、テンポ良く進んでいると思います。地区予選1回戦が舞台…というスケールの小ささは否めませんが、まぁ等身大のストーリーというところでコレくらいが丁度良いのかもしれません。
 唯一もったいない点が、主人公・トラが太ったままでスーパープレイを突然連発できるようになった理由付けが曖昧だったという所でしょうか。ここをもう少し丁寧に押えておけば、読者の感情移入度も高まったのではないかと思われます。
 評価は。連載獲得には、もう一押し欲しいところです。

 ◎読み切り『なるほど納得てんこもり !! おバカちん研究所』作画:日の丸ひろし

 第49回赤塚賞(98年下期)で佳作を受賞以来、増刊号や本誌の代原で度々作品を掲載している日の丸ひろしさんのショートギャグ作品です。
 この作品、マンガというよりも企画モノ的なショートギャグ数個によって構成されています。
 中には『ウォーリーを探せ!』(古!)的なオフザケもありますが、これは論外。メインの、お笑い芸人の“いつもここから”や“鉄拳”のような1枚絵+キャプションというギャグも、どうにも消化不良気味で話になりません
 絵柄やタイトルのセンスにも古臭さや世間とのズレも感じますし、どうも将来性も怪しい感じです。相当の意識改革が無ければ、このまま埋もれてしまう作家さんでしょう。評価は久々の

 ……というわけで、今週は目次順に前半の7作品のレビューをお送りしました。残るはまた来週です。

 では、今週のゼミを終わります。また来週この時間に 

 


 

8月22日(木)・23日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(8月第4週分)

 今週もゼミを始めます。
 今週のゼミは、通常の内容に加えて、どうやら2ch掲示板で当講座のゼミ内容を含めて話題になっているという『がきんちょ強』関連の“緊急特集”として、
 「どうして『がきんちょ強』は『じゃりん子チエ』になれなかったのか?」
 ……という内容の講義を予定しています。講義日程が詰まり気味のため、2日にまたがる可能性大ですが、最悪でも金曜夜のテレホタイムには間に合うようにしますので、どうぞご注目下さい。

 あと、最近よく当ゼミについて頂くご意見として、
 「レビュー内の作者紹介に的外れな内容が多い」
 ……と、いうものがあります。
 これについては、毎回ある程度時間をかけて調査をかけているのですが、やはり長年専門的にマンガ評論をなさっている方たちよりは作家さんに関する知識量とキャリアが不足しており、時々誤りや曖昧な内容を含んだ事を述べてしまうケースが、ままございます。
 言葉通り駒木の不徳の致す所であり、ご指摘を受けるたびに本当に申し訳なく思っているのですが、いかんせん、今の駒木ではどうしようもならない部分もあります。ですので、もしも作家さんの情報について、ゼミで発表した内容よりも更に詳しい情報・知識をお持ちの方がいらっしゃるなら、是非駒木研究室までメールでお知らせ下さいませ。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 ……それでは、気を取り直して講義へ。まずは情報系のお話ですが、今週は「週刊少年サンデー」系の月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」の6月期分の発表がありましたので、受賞者・受賞作を紹介しておきます。特に、今月は“入選”作が出て、受賞作の掲載が確定していますので、どうぞご注目を。

少年サンデーまんがカレッジ
(02年6月期)

 入選=1編
  ・『サブ・ヒューマンレース』
   小澤 淳(23歳・東京)
 
(「ここがポイント!!」〜本誌より引用)
 白昼夢のような異世界を描きつつも、リアルな若者の“渇き”を表現するのに成功しています。また、大ゴマや空間を大胆に使うことで感情を上手く演出している点も評価できます。エンターテインメントを意識しつつ、強いメッセージをさらりと流す作者の才気が見どころ。

 佳作=該当作なし
 努力賞=1編
  ・『higher higher』
   中馬孝博(23歳・福岡)
 あと一歩で賞(選外)=2編
  ・『Dragon Tattoo』
   寺本直子(22歳・島根)
  ・『パワー・パワー』
   町田哲也(26歳・東京)

 入選受賞作については、本誌か増刊に掲載決定、という事で、審査員サイドもべた褒めといった感じですね。当ゼミでも、本誌掲載の時は勿論、増刊で掲載になった場合でも、評価によっては「その他注目作」のカテゴリ内でレビューを掲載したいと思っています。

 次は「週刊少年ジャンプ」関連ですが、どうやら鳥山明さんが『ドラゴンボール』の続編か、非常に関係の深い作品の連載を開始する模様です。
 このには『──たけし!』の他にもう1作品(長期連載作品?)が終了して、都合2作品の新連載が立ち上げられるとの噂があるんですが、『ドラゴンボール』は、どうやら更にその後の新連載シリーズに回されるようですね。
 …と、いうことはですね、このままいくと、『ドラゴンボール』と『ワンピース』との、“新旧看板作品対決”が見られるわけですよ。まさに“夢のカード”
 この対決がどの位のレヴェルで争われるかはさておき、何だかボクシングのホリフィールドVSフォアマンとか、プロレスの馬場&ハンセンVS三沢&小橋みたいなマッチメークなんで、今からとても楽しみではありますよね。

 ……と、いうわけで情報系の話題は以上で、続いて今週分のレビューをお送りします。

 今週は「週刊少年ジャンプ」が合併号休刊のため、レビューもお休み。春にやった「赤マルジャンプ」レビューも、現在のところは考えていません。(受講生の皆さんのリクエストが多ければ考えますが……)
 「週刊少年サンデー」からは新連載1本と新連載第3回の後追いレビューが1本。計2本のレビューという事になりますね。若干数が少なめですが、今日はこの後に特集もありますので、どうぞご容赦を。

 文中の7段階評価はこちらをどうぞ。

☆「週刊少年サンデー」2002年38号☆

 ◎新連載『きみのカケラ』作画:高橋しん

 「週刊ビッグコミックスピリッツ」で、『いいひと。』、『最終兵器彼女』とヒットを連発して来た高橋しんさんが、心機一転(?)して、少年誌に進出です。
 しかし、本誌18ページの「高橋しん先生より」を見るまで失念していたんですが、実は高橋さん、「週刊少年サンデー」は2度目の登場でした。
 前回登場は、今から6年前の1996年に前・後編計83ページで掲載された『有森裕子物語』。駒木、勿論この頃にはもうバリバリの「サンデー」読者だったんですが、作品が駒木のあまり好きではないスポーツ・ノンフィクション物だったため、相当な飛ばし読みをしていた模様です(苦笑)。
 しかし、この時には『いいひと。』連載中だったはずで、小学館もかなり無茶な事をさせるもんですねぇ(恐らく『いいひと。』を休載させたのだと思いますが)。だって、江口寿史氏なら1〜2年はかかりそうな仕事量ですよ、これ(笑)。
 まぁこの頃の高橋さんは、ちょうど“使い勝手の良い”新進気鋭の若手だったという事なんでしょうね。まるで、「ギャラ安い〜」とかボヤきながらハードスケジュールに追われる、売れかけの吉本芸人みたいな話です。

 …と、蛇足が過ぎました。作品の内容に触れてゆきましょう。

 まずはいつもながら独特の絵柄なんですが、適度にシリアスとデフォルメを使い分けていますし、世界観とミスマッチな絵柄でもないですので、これで良いんじゃないかと思います
 ただ、何でもそうですが、“独特”なモノというのは、熱心な支持者を生む一方で、存在すら嫌悪するようなアンチも生んでしまうので、青年誌よりも大衆受けする事が求められる少年誌では、以前より損をする事も多いかも知れませんね。

 次にストーリー
 まず目を引くのがオープニングですね。これは少し意識すれば判ると思うんですが、明らかに映画を意識しています。後々のストーリーの伏線になるようなインパクトの大きい“事件”を描いて、タイトルがバーン! ……という感じ。
 どちらかというと映画よりも連続TVアニメに近いマンガという媒体でコレをやって、果たして効果的に働くのかどうか、という事はさておき。とりあえず、そういう手の込んだ演出をやろうと考えて、実際にそれを立派な形でやってのけてしまった…という点に関しては素直に評価するべきなんじゃないかと思います。

 ただ、第1話のストーリー全体を俯瞰してみると、とにかく与える情報量が多すぎるのが気になるところです。
 ネームが多いのは高橋さんの作品ではよくある事なんですが、今回の作品は特に、とにかく読者が覚えておかなくちゃならないキャラやその設定が多すぎて、63ページを読み終えた時にはヘトヘトになってしまうんですね。
 これで下手糞な作家だと、「もういいや」で熱心に読む事を止めてしまうので、そうは疲れないんです。けれど、高橋さんの場合は、ちゃんと表現力が備わっているので無理矢理にでも読ませ切ってしまうんですよね。だから余計に疲れるんです。何というか、打球はどう見ても凡フライなのに、パワーだけでスタンドにギリギリ届いたホームラン、みたいな感じでしょうか。

 なので、本来の良い作品ならば、最終ページを読み終わった後には「続きが気になる。早く来週号読みたいなぁ」…と思わせるんですが、この作品は「やっと終わった…。とりあえずしばらく休ませて」と思わせてしまうんですね。これはちょっとさすがにマイナスかなぁ、と思います。
 いつも駒木は「とにかく話は贅沢なほどテンポ良く」なんて事を述べたりするのですが、この作品に関しては、第1話を3回に分けてちょうどいい感じになるんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか?

 ……まぁ、色々言いたいことを言いましたが、この『きみのカケラ』話のスケールも大きいですし、これでもう少し主役2人のキャラが立ってくれば、十分サンデーの主翼を担う作品になれる可能性はあると思います。
 ──というか、この作品が打ち切りになると、色んな意味でイタ過ぎると思うんで、何とか良作に育っていって欲しいと思います。

 とりあえずの評価はB+寄りのA−としておきましょう。ただし第3回では変動の可能性が大です。
 

 ◎新連載第3回『ふぁいとの暁』作画:あおやぎ孝夫《第1回掲載時の評価:B

 さて、「サンデー」では久々のバスケットマンガ『ふぁいとの暁』の後追いレビューです。

 どうやらこの作品のスタイルは、「無茶な要求をされ続ける主人公が、決して笑顔を絶やさず、黙々と努力して課題を達成していくサクセス・ストーリー」で固まったような気がしますね。
 この形式は、かなり長期にわたって読者にストレスを与え続けて、ある程度まで話を進めたら反動でドーンとカタルシスを与えるタイプの話になります。で、ある程度主人公が強くなったら、今度は溜め込んだ実力で一気にその世界の頂点に登りつめていって、ハッピーエンドに繋がっていく…という話の進め方になるはずです。
 この形式は昔から色んなマンガで採用されてきたもので、駄作も多いですが、佳作・秀作も多いです。現在の「サンデー」連載作品では『DAN DOH!! Xi』が典型的なこのパターンのストーリーですね。
 ちなみにこの形式、短期で勝負をかけなくてはいけない「ジャンプ」の作品では少なくて(得てして、そういう数少ないこのタイプの作品が10回打ち切りになって、見るも無残な終わり方になるんですが)、比較的長期連載になりやすい「マガジン」では非常によく見られます。ただ、「マガジン」でこのパターンを採った作品は、どうもご都合主義がミックスされて、とんでもない駄作になってしまうケースが多いので、あまり好感が持てなかったりしますが。

 …まぁそういうわけでして、『ふぁいとの暁』は、かなり使い古されたパターンのストーリーです。それが悪いとは言いませんが、同タイプの作品が多数出回っている以上、何がしかこの作品の独自性を出していかないと凡作で終わってしまいます
 しかし、どうも現時点では、この作品の独自性はかなり弱いような気がしてなりません。作者のあおやぎさんは、主人公が要所要所で見せる(ある種、場違いな)笑顔を作品のシンボルにしようと努力されているようですが、これがむしろ話全体のシリアスさを削いでしまっているようで、逆効果になってしまっています。変に極端な演出をしろとは言いませんから、せめて深刻なシーンは深刻に感じられるように演出してもらいたいものです。

 評価はB−寄りBで据え置きです。現時点ではかなり苦戦が強いられそうです。何せ、今の「サンデー」にはスポーツ系連載作品だけで9作品もあったりしますから、その中に埋没しないだけでも大変だと思います。

 ……と、いうわけでレビューも終了。続いて、今週のゼミの目玉・緊急特集をお送りします。

 緊急特集! 「『がきんちょ強』は、何故『じゃりん子チエ』になれなかったのか?」 

 ……さて、冒頭で述べた通り、今週は緊急特集として、「週刊コミックバンチ」連載中の『がきんちょ強』作画:松家幸治)についての分析を行いたいと思います。

 ご存知の通り、『がきんちょ強』は、第1回「世界漫画愛読者大賞」で読者投票ポイント2位を獲得し、準グランプリを受賞した作品です。このゼミでも「世界漫画愛読者大賞」エントリー作(読み切り)掲載時と、新連載第1回にレビューを実施しました。(それぞれ2月20日分6月6日分レジュメに掲載)

 当ゼミでの評価は2回ともB+(漫画好きに推奨できる作品)。相当な数の問題点や、連載を続けて行く上での課題は山積みになっているものの、作者である松家さんの持っているセンスを高めに評価して、このランクをつけたのを記憶しています。
 しかしこの作品は、ネット世界での評判が回を追うごとに低くなり、ついには当講座に問い合わせ・指摘が来るまでになりました
 駒木自身も確かに、いつまで経っても連載開始当初以来の問題点や課題がクリアされない、現状の『がきんちょ強』に思うところがありましたので、談話室(BBS)にて、B+からB(商業誌の作品として及第点。可も不可もなし)への評価格下げをお知らせしました。ただ、それでもまだ巷の評判とはギャップが大きかった模様で、「『がきんちょ強』は不快でたまらない」という意見が多数派を占めているようでした。

 そういう状況に至って駒木は、「何故、ここまで『がきんちょ強』は嫌われるのか?」という疑問を持ち、その答えを出すために、この作品が強く影響を受けている名作マンガ・『じゃりん子チエ』(「週刊アクション」連載《完結》/作画:はるき悦巳との比較・分析を行ってみる事にしました。
 …そしてそんな比較・分析の結果、いくつかその疑問を解明させてくれそうな答えが見つかりましたので、ここで皆さんにその“研究成果”を報告させて頂きたいと思います。

 ──とまぁ、大袈裟な事を言いましたが、内容はそんなに大仰なものじゃありませんので、過大な期待と緊張は遠慮して頂いて、気軽に受講して頂ければと思います。

 ※注:8月23日発売・現時点で最新号での『がきんちょ強』では、これまでの路線からの大幅な転換が図られました。これについても分析の最後に述べますので、分析自体は先号までの内容について行ったものだとご承知おき下さい。


 1.『がきんちょ強』と『じゃりん子チエ』との関係

 まず、この分析の前提条件として、『がきんちょ強』『じゃりん子チエ』との関連性について説明しておきたいと思います。

 『がきんちょ強』の読み切りが「コミックバンチ」に掲載された時点で、既に気がつかれた方も多かったと思いますが、この作品は、『じゃりん子チエ』の影響をかなり色濃く受けています。

 まず、大阪かそれに近い地区の下町エリアが舞台で、登場人物の大半が関西弁(大阪の方言)で喋っているという点からして、かなり『じゃりん子チエ』に近いです
 さらに、『がきんちょ強』の読み切り・連載両方で描かれた町内小学生相撲大会のエピソードは、『じゃりん子チエ』でもかなり似たような話があり、名脇役であるヒラメちゃんが大活躍するエピソードとして、数多い『じゃりん子チエ』“サーガ”の中でも特に有名なものであります。

 そしてもう1点、これは意外と知られていないようですが、『がきんちょ強』の中で、鳥取出身のテキ屋が、語尾に「〜とっとり」をつけて話し、それを鳥取弁として通用させる…という事をやっているのですが、これも『じゃりん子チエ』で酷似した設定があるのです。
 それは、猫の小鉄とアントニオJr.が主人公になって猫の世界を描く『じゃりん子チエ』番外編の中での設定で、この番外編で地方の猫が喋る時は、“関西弁+語尾にその地方を表すフレーズ”になるのです。
 例えば東北の猫が喋る時は、
 「そんな事言うたらアカンがなズーズー
 となり、博多の猫が喋る時は、
 「どおしたどってん、早よ返事せんかいばってん
 ……と、いう感じになります。
 この“猫方言”を使う猫が登場するのは、『じゃりん子チエ』本編ではなく、別枠の単行本になっている『じゃりん子チエ番外編』『どら
猫小鉄』という別の単行本ですので、『じゃりん子チエ』を知らない人が偶然、この設定を知っているとは考え難いと思われます。まぁ、知っていたからといって、それを中途半端に人間の言葉で使ってしまう感覚には、いささかの疑問を感じますが。

 ──というわけで、『がきんちょ強』は『じゃりん子チエ』の影響をかなり色濃く受けているという事は間違いないと思われます。
 …それによく考えてみたら、作品タイトルも、両方とも「わんぱくな子供を表す5文字の言葉+主人公の名前」ですよね。もうこれは“影響”というよりも、確信犯的な強いオマージュ(または劣化コピー)と言ってしまってもいいと思われます。

 それでは、次のトピックからは、そんな酷似した設定・内容の両作品の中で明らかに異なる点を指摘しつつ、その中で『がきんちょ強』の問題点を浮き彫りにしていきたいと思います。

 2.『がきんちょ強』における、主人公と脇役の設定ミスについて

 『がきんちょ強』と『じゃりん子チエ』の間で異なる点として真っ先に挙げられるのは、何と言っても主人公とそのキャラクターでしょう。

 このポイントについては、両作品を見比べると一発で判りますので、あえて詳しくは述べませんが、『がきんちょ強』の主人公・は、『じゃりん子チエ』では主人公・チエの“愚父”テツにあたるキャラクターです。よく言えば怖い物知らず、悪く言えば好き放題・やりたい放題な傍若無人キャラ、という事になります。
 こういうキャラクターを主人公に持ってくるというのは、実はかなり危険な行為です。何故なら、このキャラは“劇薬”であり、放っておくと作品そのものまで壊しかねないからなのです。
 で、これだけ『がきんちょ強』に対して不快感を抱く読者が多いというのは、その“劇薬”(つまりアクの強い、強のキャラ)が中和されずに作品そのものに悪影響を与えているためだと思われます。

 一方の『じゃりん子チエ』では、この“劇薬”キャラ・テツのエグい部分を程よく中和させる事に成功しています
 これは『じゃりん子チエ』をよく読んで頂けるとよく分かるのですが、テツという登場人物は、これだけ怖い物知らず・傍若無人なキャラであるにも関わらず、作品に出てくる主な登場人物の中では相当弱い立場に置かれているのです。
 例えば、テツの一家での力関係を強い者順に並べていくと、
 「おバァはん→(チエ&ヨシ江で場合によって逆転)→小鉄→テツ→おジィはん」
 ……という形になります。テツは猫よりも弱いんです。
 一家以外での人間関係を考えても、花井拳骨(父)という最強キャラが控えていますし、普段はテツより弱い百合根(お好み焼き屋)も“有事”には酒に酔って天下無敵になります。ハッキリとテツより弱いキャラとなると、町のチンピラ・ヤクザやレイモンド飛田などの悪人・小悪人ばかりです。また、カルメラ屋2人組チエの担任・花井(息子)もテツより弱いキャラですが、テツがこの3人をイジめた場合には強烈なしっぺ返しが来るようにしてバランスを取っています

 ……このように、『じゃりん子チエ』では巧みにテツという“劇薬”を中和して上手く活かしているわけですが、先に述べたように、『がきんちょ強』では、それに大失敗してしまっています
 その理由としては、“劇薬”である強の傍若無人な行動にブレーキをかける役回りの脇役が極端に少ないことが挙げられます。
 現時点で強よりも明らかに力上位のキャラといえば、強のクラスを担任している学校の先生くらいしかいません。それにしても強が上手く追及を逃げ切ってしまうので、引き分けに持ち込むのがやっとです。
 また、本来なら強兄妹に対する“強大な敵”であったはずの居候先の母親と息子が、既に強に力負けして白旗状態強兄妹に意地悪するどころか、逆に強が居候先の母子をイビっている状態です(これも読者の不快感を煽った理由の1つでしょう)『じゃりん子チエ』で言えば、主人公・チエのポジションにいる強の妹にしても、強の乱暴狼藉をただ指をくわえて見ているだけの弱弱しいキャラであり、ブレーキ役を全く果たしていません
 こんな状態では、どんなに話を練ろうと「強が好き放題暴れて終わり、以上!」…という感じになってしまい、いくら“感動のエッセンス”を持ってきても、機能しません。侵入先の一家を惨殺して奪い取って来た金で人助けする話の『ねずみ小僧』みたいなもので、全く有り難くない感動話になってしまうのです。

 『がきんちょ強』の登場人物を使って、本当に面白いギャグを作るなら、強の妹をチエみたいな主人公にして、強の傍若無人振りを痛快に阻止するような話が良いでしょう。『じゃりん子チエ』そのまんまですが、そこまで設定を真似ておいて何を今更、という話です。
 
 
 3.一人称ドラマ『がきんちょ強』の限界

 当然の事だとツッコミを受けそうですが、『がきんちょ強』では、主人公・強は他のキャラとは完全に“格”の違う絶対的な主人公になっていて、話も一貫してずっと強の視点から描かれています。小説で言えば“一人称”のお話です。
 そのため、話の中心となるのも、ギャグの中心となるのも全て強であって、彼抜きでストーリーが進んだり、ギャグが放たれたりする事はほとんどありません。
 勿論、これはこれで構わないのですが、この形式では、ただでさえ印象の弱い脇役キャラが、どんどん影が薄くなってしまいますし、強の歯止めの利かない暴走ばかりがクローズアップされていく事になります。さらに、話やギャグの流れがワンパターンに陥ってしまうという欠陥にも繋がってしまっています。

 では、一方の『じゃりん子チエ』はどうかというと、実はこの作品、チエを一応の主人公にしながらも、場面場面で主役級キャラが代わってゆく“三人称”ドラマなのです。
 『じゃりん子チエ』では、実に数ページ〜10数ページという短いスパンで、次々に視点が変わり、その都度主役級の人物が変わっていきます。そうして何話分ものページ数を費やし、色々な場所で同時進行的に話が進行させた後、やがて沢山の登場人物が一斉に集まってドンパチが起こって大団円…というパターンとなります。
 この形式は、話を収拾させるのが大変な代わりに、限られたページ数で非常に多くのキャラクターやエピソードが活きて来る事になり、大変密度の濃い話になってゆきます。『じゃりん子チエ』の登場人物&猫が、揃いも揃って個性抜群なのは、実はそういうポイントがあったのです。

 ……ですから、『がきんちょ強』をもっと質の良い作品にするためには、強以外のキャラクターを主役級に据えた話を散りばめて、脇役のキャラをどんどん立てていく事が必要だと思われます。


 4.「ギャグ満載の人情モノ」になりきれない「人情味溢れるギャグマンガ」・『がきんちょ強』

 さて、これまで『がきんちょ強』と『じゃりん子チエ』にある、多くの共通点といくつかの相違点を挙げて来ましたが、ここで両作品に最も大きな違いを挙げて、この分析の締めくくりとしたいと思います。

 その“最も大きな違い”とは、小見出しに挙げた、「ギャグ満載の人情モノ」と「人情味溢れるギャグマンガ」との差であります。勿論、前者が『じゃりん子チエ』で、後者が『がきんちょ強』ということになります。

 『じゃりん子チエ』は、とても“笑い所”の多いマンガでありますが、実はギャグマンガではなくて人情モノマンガです。ストーリーの間に非常に多くのギャグが散りばめられていますが、最終的には人の心の暖かさを重視したドラマになっています。読者を感動させるべき所では、完全にギャグを抜いて感動させます。そのため、いくら作中で「フンドシから漏れたスカ屁以下のような…」という下品な表現が連発されても、読後感が爽やかなのです。
 しかし『がきんちょ強』は、そういった路線を目指しながらも、そこまで達していませんこれは主人公・強が暴走しすぎて人情どころじゃなくなっている事、さらにはギャグで読者を笑わせようとする方に作者の神経が回りすぎていて、人情味を効果的に生かしきれていない事から来たものだと思われます。せっかく人がホロリとしそうになっているところに下品なギャグが飛んでくるので、気分が台無しになってしまうんですね。

 そういうわけで、『がきんちょ強』はギャグと人情のメリハリが利いていないのです。これを何とかしない事には、多数読者の支持は得られないことでしょう

 

 ──と、思ったら、最新号(8/23日発売号)にて、『がきんちょ強』は大幅なイメージ転換が図られました。最後にこれについて述べておきましょう。
 

 5.『がきんちょ強』に未来はあるのか?〜人情路線への大転換 !?

 最新号の『がきんちょ強』は、これまでの話とは明らかに違う話が掲載されました。主人公・強が引き起こすエゲつないドタバタを描いた話ではなく、ほぼギャグを封印した人情モノマンガになっていたのです。

 ポイントは、強が学校の友人たちと空き地でサッカーをしている途中に、ボールが塀を乗り越えて人家の盆栽鉢植えを壊してしまうシーンです。
 これまでの『がきんちょ強』ならば、
 「強が蹴ったボールが盆栽を壊して、強が友人に罪をなすりつけて逃亡→担任登場、強さらに逃亡→最後に因果応報が巡って強に不幸が訪れる→次回へ続く」
 ……という形になるのですが、今回は違いました。なんと、傍若無人な強が友人を庇って、「自分がやりました」と言ったのです。これに感動した盆栽の持ち主が、強たちを招いて歓待し……という形で非常に心温まる話に展開されていきます。とうとうこれ以降、ほとんど最後までギャグらしいギャグは無く、ホロリとさせられっ放しで話が終わっていきます

 今回の話は、メタファー(暗喩)の利かせ方も見事で、非常に良質な話に仕上がっていました。なので、こういう話になっても評価はできるのですが、急に良い子になってしまった強に違和感を感じたのも確かです。萩原流行が『いいひと。』の主役を張るくらい、これはヘンな事なのです。
 この“強の改心”が、作者・松家幸治さんの確信犯的なシフトチェンジなのかどうかは分かりませんが、もし今後の『がきんちょ強』が同じ路線の話を続けていくという事になれば、これはもう別の作品の連載が今週から始まったと認識して良いと思います。
 その場合、これまでのように読者に不快感を与えるという事はなくなるでしょう。ただしその分、作品の持っていたインパクトも大きく削がれる事になります。事実、今回の『がきんちょ強』は、『じゃりん子チエ』というより、『三丁目の夕日』みたいな感じになっていました。

 ……結局、この“路線変更”は、『がきんちょ強』が「バンチ」の看板作品になることを諦め、ウェブサイト「OHP」のしばたさんが仰るところの“ごはん系”のポジションを目指して、ただ雑誌の片隅で細々と生き残る道を選択した、という事になるのでしょう。
 それが果たして良いのか、悪いのか。ここで結論を下す事は止めておきますが、脳天を突き抜けるような傑作を求めて止まないタイプである駒木には、何ともやりきれない思いが残ってしまったりしますね。


 ……と、いうわけで、今週号の路線変更もあって締まらない終わり方になりましたが、以上で今回の特集を終わります。

 次回のゼミは「ジャンプ」の代原レビューを中心にお送りする事になりますが、他にも何か佳作・良作が見つかれば、それも紹介したいと思います。

 では、また来週のゼミをお楽しみに。

 


 

8月15日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(8月第3週分)

 さて、お盆、そして終戦記念の日にお送りする『現代マンガ時評』です。こんな日に「ジャンプ」の打ち切りがどう、とか、「バンチ」の編集姿勢がどう、とかいう妙に湿っぽい話をするのはアレなのですが(苦笑)、まぁ、いつも通りの平常心で講義を実施したいと思います。

 まずは情報系の話題から。今週は「週刊少年ジャンプ」系の月例新人賞・「天下一漫画賞」・6月期の審査結果発表が出ています。今月は久々にデビュー確定の佳作も出ているようです。では、例によって受賞者・受賞作一覧をご覧頂きましょう。

第71回ジャンプ天下一漫画賞(02年6月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作=1編
  『だんでらいおん』
   空知英秋(23歳・北海道)
 《講評:天使の話はよくある話だがこれは新しかった。セリフ回し、ギャグの間などが上手く、今にも動き出しそうなキャラが生きていた。ただラストの盛り上がりが少々物足りなかった》 
 審査員・編集部特別賞=該当作無し
 最終候補(選外佳作)=6編
  ・『RHYTHM』
   相模恒大(19歳・北海道)
  ・『JET少年』
   村上洋之介(25歳・東京)
  ・『瑰詭草紙(きかいそうし)』
   渡辺柾明(23歳・山形)
  ・『サムライマスビーツ』
   奥村秦地(22歳・福岡) 
  ・『TIGERパンチャー』
   鈴木愛(25歳・北海道)
  ・『輔─タスク─』
   島悠子(21歳・神奈川) 

 佳作の『だんでらいおん』は、本来ならば冬の増刊号でデビューするはずなのですが、『世紀末リーダー伝たけし!』が急遽打ち切りになった事で、いきなりの本誌登場もあり得ます(ページ数は合いませんが、他にもう1作品取材休みが出た時は、どうにか掲載可能)。受講生の皆さんも、頭の片隅くらいには置いてもらいたいと思います。

 そして話は前後しますが、ここでも島袋光年氏逮捕関連の続報を改めてお伝えしましょう。
 島袋光年氏逮捕から約1週間になりますが、その間に連載中の『世紀末リーダー伝たけし!』の37・38合併号をもっての打ち切りと、単行本の発売中止が決定されました。単行本に関しては、恐らくこのまま絶版になるものと思われます。
 既刊の単行本(1〜24巻)については、発行部数が多いですので、今なら古本屋で入手するのは極めて容易でしょう。ただし、単行本未収録分については、近い将来“幻の作品”化する可能性が大です。ですから、『たけし』ファンやマンガ収集をなさっている方は、今の内にスクラップを取ってスキャニング等しておいた方が良いかと思います。

 ……情報系の話題は以上です。では、今週のレビューに移りましょう。
 今週は「週刊少年ジャンプ」から新連載第3回の後追いレビューが1本、そして読みきり1本の計2本。そして、今週合併号で休刊の「週刊少年サンデー」の代わりに、「週刊コミックバンチ」から『エンカウンター ─遭遇─』の後追いレビューをお送りします。都合、3本のレビューということになりますね。

 文中の7段階評価はこちらをどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年37・38合併号☆

 ◎新連載第3回『SWORD BREAKER』作画:梅澤春人《第1回掲載時の評価:保留

 今日のレビュー1作品目は、第1回で評価を保留していた『SWORD BREAKER』からです。

 第1回のレビューでは、全体的に荒っぽい絵柄に注文を出しつつも、テンポが早くて読み応えのあるストーリーには及第点をつけました。評価自体は“ファンタジー世界編”での様子を見てから、という事で保留とさせてもらったんですが、マズマズの好ダッシュと言って良いものだったと思います。

 が。

 第2回、第3回とファンタジー世界での話が進むにつれて、この作品に対する期待が物凄い勢いで萎んでいってしまいました
 まず第2回、結局舞台は変わってもやってる事は不良を懲らしめてるだけ、という梅澤さんの話作りにおけるフトコロの狭さが露呈されてしまいました。
 さらに、続く第3回では、「説明的セリフの連発」及び「下手クソなアマチュア作家がやりそうな、コテコテの中ボス登場」という、“これだけはファンタジーでやっちゃダメだ”的な展開に突っ走ってしまう“惨事”

 今の時点で辛らつな判断を下すのは早計かも知れませんが、この『SWORD BREAKER』、当ゼミでお馴染みのファンタジー作品・『キメラ』(作画:緒方てい)からオリジナリティと表現力を差し引いたような、読んでいて居た堪れない作品になりそうな気がします。

 打ち切りを決めるアンケートは低年齢層が中心のため、果たして小・中学生がこの作品をどう評価するかは分かりませんが、この作品、少なくとも恵まれた終わり方はできないのではないかな…と思います。

 評価はB−に。設定やキャラクターで余程のテコ入れをしない限り、評価が覆る事はないでしょう。


 ◎読み切り『司鬼道士 仙堂寺八紘』作画:かずはじめ

 今週は代原ではない中編読み切りが1作品掲載されています。『MIND ASSASSIN』『明稜帝梧桐勢十郎』などでお馴染み、かずはじめさんの新作です。
 前作『鴉MAN』で痛恨の短期打ち切り終了となったかずさんですが、増刊号での試運転を経て、連載を念頭においた読み切り作品で本誌復帰となりました。果たして、作品のデキはどうでしょうか──?

 まずからですが、この人くらい作品ごとの絵柄変化が少ない人も珍しいですよね。まぁ、クセのあるタッチでもパッと見で下手には見えない絵なので、このままでも十分だと思いますけどね。
 あと、今回はいつにも増して背景が白っぽい感じがするのですが、これはまぁ、アシスタントの仕事量を削ったんでしょうね(苦笑)。半失業中の中、恐らく100万円に届くかどうかという原稿料で経費を使っていられないでしょうし(苦笑)、まぁこれも仕方ないかな、というところですね。

 さて、ストーリーの方。今回、この作品のレビューをするにあたって、マンガの奥深さのようなものを1つ勉強させてもらいました
 実は今回のお話、プロット・シナリオそのものは、極めてオーソドックスな、ちょっと悪く言うと「有望な新人マンガ家が新人賞に応募する作品のようなストーリー」という感じなのです。しかし、そういうやや平凡な話が、かずさんの手にかかると、立派な作品になってしまうから興味深いです。
 まず、話の展開に無理が全く無いという事。いつも駒木がゼミで言っている「作者の都合による話や設定の矛盾」が全く無いんですよね。これはもうトコトンまでにシナリオを練っている証拠です。一切妥協していません。
 で、そういう“ストーリーから作り始めた作品”というのは、ストーリー上の役割に応じてキャラクターを当てはめていくので、キャラ立ちが弱い事が多くなるのですが、この作品ではそれも及第点レヴェルまで克服しています
 そして、特にこの作品で素晴らしい所はセリフ回しです。この作品ではセリフの量がかなり多いんですが、それらが全て完璧なまでに喋り言葉で表現されているため、長ゼリフ独特のイヤらしさが全く無いのです。「ジャンプ」系作家さんは軒並みコレが下手なので、特に目立ちますね。
 その他のコマ割りや効果などの構成・演出も問題無し。かずさんの技量の程を見せ付けられた…という感じです恐れ入りました

 ただ、ストーリーそのものに新味が薄かったため、評価はA−くらいに落ち着いてしまいます。何というか、物凄く上手い漫才師が若手のネタをやったらどうなるか?…みたいなケースですからね、今回は。
 恐らくこの作品は冬以降の新連載候補に挙げられる事になると思います。ただ、かずさんの作品はことごとくまでに本誌連載になるとダメになってしまうので、ちょっと心配ですねぇ。いっその事、別出版社のメジャー月刊誌に移籍して、40〜50ページの月刊連載をした方が良いんじゃないか…と思ったりもするのですが、どんなものでしょうか。

《その他、今週の注目作》

 ◎『エンカウンター〜遭遇〜』(週刊コミックバンチ2002年29号より連載中/作画:木之花さくや《読み切り掲載時の評価:B/連載第1回掲載時の評価:保留

 ご存知、「世界漫画愛読者大賞」グランプリ受賞作です。今週号(36・37合併号)で連載8回目という事になりますが、ようやく作品の全体像らしきものが見えて来たので、後追いレビューをしてみたいと思います。

 …さて、この作品ですが──。
 このようなレビューを始めて8ヶ月になりますが、こういうタイプの連載作品は初めてです。
 どういう事かと言いますと、この作品は、作家さんが労力を費やすベクトルが「ストーリーテリングをする上で、手抜きをしたりそれを誤魔化す事」に全力を費やしているのですよ。何というか、言語道断です。
 …ハッキリ言って、ここまで酷い展開になっていくとは予想してませんでした。キャリアのある作家さんですから、一念発起して、もうちょっと気合の入った作品にしてくれるはずと、少しは期待していたのですが……。

 では、具体的にこの『エンカウンター』がどういう(ダメな)作品なのか、概説していきます。

 まず、連載開始から2ヶ月弱に渡って次々と伏線が張り続けられます。深まり続けるばかりの謎、そしてワラワラと現れる主人公たちを見つめる謎の人物。メチャクチャ伏線の数が多いです。ミステリ系マンガでもそこまで伏線引きません、というくらい多いです。その上、その伏線は7週間にわたって小出しで提供されます
 そして、それらの雑多な設定をその2ヶ月弱の間に忘れてしまうと、なかなか話に着いて行けなくなってしまいます。作者の木之花さん夫妻は「単行本でまとめて読んでくれ」と思ってるのかも知れませんが、単行本を買わない大多数の「バンチ」読者に重い負担を強います
 どうしてそこまでするのかと言うと、多分、話のポイントを小出しして間延びさせると、楽だからなんでしょう(苦笑)。最低1年分の話を用意しないといけないわけですし。間延びさせるためなら、いかなる小細工も読者の負担も辞さない、というのが木之花夫妻の姿勢のようです。
 これでもし、楽したいためでなければ、ただ単にセンスが無いだけです。まぁ、どっちにしろダメダメですね(苦笑)。 
 もはやどうでもいいんですが、これが以前、木之花さんが「バンチ」でコメントしていた「あっという間にできた単行本1冊分のネーム」だったら、非常に寒い事になりますねぇ……。

 またこの作品では時折、話に出て来る超常現象等を解説するためにマニアックなウンチクが挿入されます。が、難しい資料をキャラクターに棒読みさせる形ですので解説になってません
 こういうのが毎週続くにつれ、こちらの被害妄想と空耳でしょうが、「こっちはこれだけ調べて、こんなに博識なんだぜ、へっへー」という木之花夫妻の荒い鼻息が聞こえて来るようで、ストレスが異常に溜まって来ます

 でも、ここまではまだ我慢できます。どれだけ伏線を張ろうが大風呂敷広げようが間延びさせようが博識ぶろうが構いません。ちゃんと納得できる形で、「おお、これは面白いまとめ方だなぁ」と思わせてくれれば、少々の我慢はさせてもらいますよ。
 しかし今週の連載8回目、深まりまくった謎を解決し、超常現象の犯人を探り出したその方法は、「超能力で犯人を一発で検索」という、謎解き・伏線処理一切無視の荒業・“人間google”でした。
 この結果を目にした駒木、思わずその場で、
 「それまで読者に強いた負担は何やねん、伏線も全然処理しきってないし、そもそも2ヶ月も引っ張るような話かい!」
 ……と、はしたなくも関西弁で怒鳴り散らしたくなりました。

 さらに作品を読んでみると分かるのですが、犯人が判明してからもまだ2〜3週間引っ張るようです、木之花夫妻。いつになったらUFOとか、イングランド騎士団が発見したインダス遺跡の話になるのでしょうか……? いや、もう期待も何もかも打ち砕かれてしまった今ではどうしようもないのですが……。

 ……まぁそういうわけで、『エンカウンター』は、「この作品をこのネタで面白くしよう」という描き方ではなく、「このネタでできるだけ長い間引っ張ろう」という描き方をされています。で、話の展開が難しい場面では「この難しい場面をいかに面白く乗り切るか」ではなく、「この難しい場面からいかに逃げ出すか」を最優先に描かれています

 もうハッキリ言います。志が低すぎます。

 これ以上書いていると、こちらも受講生の皆さんも嫌な気分になるだけなので、とっとと評価に行きます。
 評価はB−。マンガとしての体は保ってますのでC評価はしませんが、志の低さに呆れ果てます。


 ……あと、「バンチ」を読んでいて気になるんですが、連載が進むにつれて、どんどん間延びしてゆくのは『エンカウンター』に限らず、他の作品もそうなんですよね…。特に、以前このゼミで高い評価を進呈した『報復のムフロン』『レムリア』も酷い事になっちゃってます。どっちも評価をB程度まで下げないといけないかな…という程です。
 どうもこれ、打ち切りが極端に少ない「コミックバンチ」のシステムが悪い方向に出ちゃってるような気がしてならないんですよ。作家が現状に甘えちゃうんでしょうね。「終わらせなければ良い待遇で仕事が続けられるぞ」って感じで。それじゃ本末転倒ですよねぇ。

 最近では「バンチ」の部数も減っていると聞きますし、どうにかしないと、本当に地盤沈下を起こしそうでヤバい気がします。

 

 ……と、今日は後半湿っぽい事ばかり言っちゃいましたが、どうかご容赦を。それでは今週のゼミを終わります。 

 


 

8月8日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(8月第2週分)

 いやー、ビックリしましたねぇ。島袋光年氏、女子高生買春で逮捕。詳しくはすぐ後に述べますが、連載中のメジャーマンガ誌連載作家が不祥事で逮捕されたっていうのは、非常に珍しい事じゃないでしょうか。
 まぁ普通、週刊連載作家っていうのは週の休みが0.5日あれば良い方って聞きますから、本来なら出会い系サイト経由で女子高生漁ってる暇なんて無いんですけどねぇ(苦笑)。

 さて、ではゼミを始めましょう。今週のレビュー対象作は3本という事で、まぁ講義をする方にしても受講される人にしても丁度良い数ではないかと思います。

 では、まずは皆さんお待ちかね(?)の情報系の話題から。

 冒頭でもお伝えしましたが、昨日(8/7)、「週刊少年ジャンプ」で『世紀末リーダー伝たけし!』を連載中の島袋光年氏が児童買春の疑いで逮捕されました
 有名雑誌の現役作家逮捕という事で、8日付朝刊では各紙の社会面に記事が掲載されましたが、ここではBBSで情報提供して頂いた100bさんに敬意を表して読売新聞から引用する事にします。

 神奈川県警少年課と伊勢佐木署は7日、漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載中の漫画家・島袋光年容疑者(27)(東京都世田谷区玉川1)を児童買春・児童ポルノ処罰法違反(児童買春)の疑いで逮捕した。

 調べによると、島袋容疑者は昨年11月12日、横浜市神奈川区内のホテルで、同市内の女子高生(16)に現金8万円を渡し、みだらな行為をした疑い。

 島袋容疑者は携帯電話の出会い系サイトを通じて女子高生と知り合ったが、女子高生には偽名を使い、コンピューター会社員を名乗っていたという。

 島袋容疑者は、1996年にデビューした人気漫画家。翌97年から「週刊少年ジャンプ」に「世紀末リーダー伝 たけし!」を連載。昨年、同作品で小学館漫画賞(児童向け部門)を受賞している。
(読売新聞より)

 他紙の報道によると、島袋氏は警察の取り調べに対して既にいくつかの余罪を自供している模様です。しかしながら当講座といたしましては、ウルトラマンコスモスの一件もありましたし、とりあえず現段階では断定的な扱いをする事は避け、続報を待ちたいと思います
 とはいえ、こういう事態になってしまった以上、「ジャンプ」での『──たけし!』の扱いは厳しいものにならざるを得ないでしょう。既に9月発売予定の単行本が発売延期になり、集英社のウェブサイトからも『──たけし!』関連のコンテンツが削除されたという情報が入ってますし(情報元:『最後通牒・半分版』さん)、連載終了や無期限休止などの“処分”が近々発表されそうです。
 それにそもそも、一度逮捕されてしまったら、保釈(起訴の場合)、または釈放(不起訴の場合)されるまでの間(最短10日前後、最長40日以上)は勾留されてしまいますから執筆は不可能ですしね。
 どうやら、次週発売の37・38合併号は既に印刷・初期流通が済んでいる事もあり、『──たけし!』は掲載される模様ですが、これが事実上の最終回という事になりそうです。一説によれば、今のエピソードを終わらせたら完結という線で話が決まっていたそうですので、ある意味勿体無いことではあります。
 『──たけし!』終了後は、恐らく何週か代原や代原作家の短期集中連載で乗り切って、秋の新連載シーズンに備える事になるんではないかと思います。
 それにしてもこの事件、不謹慎な話ながら、これで次の打ち切り枠が1つ減るので、ボーダー上の作家さんにとっては“朗報”になっちゃうんですよね、いやはや(苦笑)。

 ……さて、情報をもう1つ。
 明日発売の『週刊コミックバンチ』最新号で、「世界漫画愛読者大賞」入選作の『満腹ボクサー徳川。』が連載開始となります。
 何と言いますか、まさに「ジャンプ新人海賊杯」と同じパターンになって来ましたよね。『満腹ボクサー徳川。』は、悪い作品とは思いませんし、連載にすれば平均点近辺を取り続けるであろう手堅い作品ですので、それはそれで良いんですが、自分で自分の雑誌の賞の価値を下げるような事は止めた方が良いような気がしますが……。
 

 ……では、今週のレビューへ。今週は「週刊少年ジャンプ」から新連載第3回の後追いレビューが1本、読み切りが1本、そして「週刊少年サンデー」から読み切りが1本。合計3本のレビューとなります。
 レビュー中の7段階評価についてはこちらをどうぞ。

 

☆「週刊少年ジャンプ」2002年36号☆

 ◎新連載第3回『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介《第1回掲載時の評価:B+

 今週もセンターカラー&ページ増と、編集部のプッシュが続く『アイシールド21』の後追いレビューです。

 この3回目までで、主人公を含めた主要キャラ3人のキャラ立てをこなして、いよいよ次回からアメフトの試合に突入する事になるわけですが、確かにここまでの話の運び方やコマ割りなどはソツがありません上手いです。主要キャラ3人も、容姿・性格共にハッキリと区別されていますし、どの要素をもってしても、間違いなくプロの描く作品と言えると思います。

 ですが、この作品が「他のプロの描いた作品と比べて上位にランクされるのか?」と考えると、やはり少し首を傾げざるを得ません
 というのも、作品のノリがコメディからギャグにややシフトし過ぎているためなのか、どうにも1話ごとの見せ場がインパクトに欠けてしまうんですよね。「ここだ!」と言う所でヒル魔が出てきて場が茶化されてしまうような展開が続いているのです。
 あと、話のポイントになるのが、主人公・セナの「足が速い」という設定だけ、というのも気になります。要はワンパターンなんですね。まぁ、これも試合シーンに突入すれば幾分解消できそうではありますが……。

 一言で言えば、「名作になるまでのプラスアルファが足りない」というところでしょうか。それは即ち、アンケート葉書に記入される「面白かった作品3つ」に入るための決め手に欠けているということにもなります。
 作者のお2人にとっては、せっかくのビッグチャンスなんですから、是非とも活かしきって欲しいものです。

 評価はB+で据え置き。打ち切りへ突き抜けないためにも、よりインパクトのある話作りに励んでもらいたいと思います。

 
 ◎読み切り『イケてる戦隊ごきげんジャー』作画:原淳

 今週は『ホイッスル!』が休載のため、代原が掲載されました。それにしても最近の「週刊少年ジャンプ」は弛み過ぎです。当たり前のように毎週代原が載る雑誌なんてどうかしてますよ、まったく。

 ……まぁこんな事、ここで言ってもどうにもなりませんから話を進めましょう。今回の代原作家である原淳さんは、調べてみると意外と豊富なキャリアが浮かび上がってきました。
 まず「ジャンプ」での実績としては、本誌99年11号から01年45号に至るまでに5回代原が掲載されていて、さらに99年の春増刊にも読み切りが掲載されています。内容の大半は、今回と同じ戦隊モノパロディギャグマンガですね。
 そして、「ジャンプ」系雑誌で活動する以前には、エニックスの『ドラクエ4コマ』で作品を発表したり、今は休刊した「ギャグ王」で連載もしています。その連載作品で96年には単行本も出していますが、評判は芳しくなかったようで、現在は絶版となっているようです。
 ……それにしても、いくら人気がイマイチだったとは言え、他誌の連載作家が3年以上代原作家に甘んじているというのも、ある意味根性座ってる話だと思いますね。普段どのようにして生計を立てているのか、心配になってしまいます(苦笑)。

 では、作品の話に移ります。
 まずですが、ハッキリ言って上手くはありません。ただ、伊達に6年以上キャリアは重ねていないと見えて、下手なりに独自の絵柄が完成されているので不快には感じませんね。
 ただ、肝心のギャグの方も6年がかりで半端に低い水準のまま固まってしまっていては問題ですね。まぁ、他の「ジャンプ」代原ギャグ作家さんと比べると番付が1〜2枚上だろうか、という感じがしますが、この作品のすぐ後に掲載されている『ピューと吹く! ジャガー』と比べてしまうと、さすがにキツいです。
 この作品の(そして恐らく原さんの)最大の問題点は、間で笑わせるギャグが下手だという事です。間で笑わせようとしながら、ギャグの展開がせっかちなんですね。
 『──ジャガー』なんかを見てもらえれば分かると思いますが、大体、間で引っ張るギャグの場合は最低でも“間”をもたせるのに2コマ以上は使います。しかし、この作品では1コマ間を置いただけで、すぐにオチへ行っててしまうのです。これだと“溜め”が利かないので笑いようが無いんですよね。このポイントを良くするだけで、作品の完成度は大きく違ってくると思うんですが……

 評価はB−。『たけし』緊急打ち切りで代原作家さんにはたくさんのチャンスが回って来そうな気がしますので、原さんにも早いところリベンジしてもらいたいものです。

 

☆「週刊少年サンデー」2002年36・37合併号☆

 ◎読み切り『白い夏』作:武論尊/画:あだち充

 マンガ界の超大物タッグによる中編読み切りの登場です。原作の武論尊さんは、昨年『ライジング・サン』で玉砕して以来の「サンデー」本誌登場となります。

 さて、作者お2人のプロフィールは余りにも有名すぎるので割愛するとしまして、早速作品の内容に話を進めましょう。

 あだちさんの絵についても言及する余地は無いですね。まぁ、「もうちょっとキャラの顔を他作品と描き分けたらどないや」と言いたくなりますが、これももはや、あだちさんの確信犯に近いようですので、追及するのは止めておきます。

 で、武論尊さんのストーリーの方ですが、こちらもベテラン作家さんにありがちな陳腐さが無くは無いのですが、それよりもよく練られたプロットに敬意を表するべきでしょう。回想シーンと現在のシーンでセリフをシンクロさせる小技も効果的ですし、何よりも50ページ以上のお話で全く間延びさせていないという点はさすがだと思います。
 しかし、この作品の最大の問題点は「少年誌にそぐわない」という事ですね。どう考えてもこの作品は「ビッグコミックオリジナル」に掲載されるべき作品のような気がします。やはり少年誌では、淡々と語られてしみじみと終わる話は向かないような気がするのですが……。

 評価は難しいところですが、「週刊少年サンデー」のマンガとしてはB+、青年誌や成年誌のマンガとしてはA−ということにしたいと思います。

 

 ……と、いうところで今週のゼミも終了です。次回は「サンデー」が合併号で休刊なんですが、その分、「コミックバンチ」などからレビュー対象作を引っ張って来られれば…と思います。では、また来週。

 


 

8月1日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(8月第1週分)

 さて、8月最初のゼミを実施するわけですが……。

 いやぁ、大変です。今週のレビュー対象作品が、「週刊少年ジャンプ」と「週刊少年サンデー」だけで6本あるんですよ。「ジャンプ」なんて連載4本も休んでるのに(から?)6本。
 しかし、いつからマンガ雑誌で「取材休み」の制度が始まったんでしょうねぇ。駒木の記憶が正しければ、メジャー少年週刊4誌の中では「マガジン」が最初で、それを他誌、特に現体制のジャンプが模倣しているような気がするんですが。そう言えば、いつだったか『激烈バカ』が取材休みになってて、「どこに、何を取材に行ってんねん」と大いに逆上した覚えがあります。
 前から気になってたんですが、青年や成年(not成年向)マンガ誌では、取材とか言い訳しないで、堂々と休載してますね。この辺は何でしょう、伝統の違いとかあるんでしょうか。誰かご存知の方がいらっしゃったら、談話室かメールでよろしく。

 ……と、無駄口叩いてないで、ゼミの方を進めていきましょう。今日はお話するような情報系の話題もありませんし、早速レビューの方へ。

 今日のレビュー対象作は、「週刊少年ジャンプ」から新連載1本と読み切り1本、そして「週刊少年サンデー」からは、新連載1本、新連載第3回の後追いレビュー1本、読み切りが1本、そして前号からの前・後編モノの総括レビューが1本。2誌合わせて6本のレビューを実施します。もう何だか泣きたいですが、やります。下手に来週回しとかにすると、「ジャンプ」に2本代原が入ったりして、結局今週と同じような事になったりしそうなんで……。

 レビュー中の7段階評価についてはこちらをどうぞ。


☆「週刊少年ジャンプ」2002年35号☆

 ◎新連載『SWORD BREAKER』作画:梅澤春人

 気が付いたら、もう中堅というよりベテラン作家になりつつある、梅澤春人さんの新連載が登場です。梅沢さんは、「週刊少年ジャンプ」では5回目の連載となります。

 さて、この作品は、本誌2002年10号に掲載された同名読み切り作品の連載リニューアル版です。(評価詳細に関しては2月6日付レジュメを参照のこと)
 前号から始まった『アイシールド21』と同じ形式ですね。「ジャンプ」としては定番の、そして当たり外れの差が極めて大きい連載立ち上げ方式です。果たして、この作品はどうなるのでしょうか──?

 ではまずいつも通り絵柄から。梅澤作品を読んでいるといつも気になるのですが、とにかく無闇に顔アップとバストアップのコマが多いんですよね。今回はまだ新連載第1回という事で、梅沢さんにしてはかなり凝った構図が使われたりしていますが(おまけに遠近感が結構グダグダなんですが^^;;)、これはあまり感心できる事じゃありません。
 どなたかは失念しましたが、とある有名なマンガ家さんがおっしゃるには「顔のアップとバストアップが多い作家は楽をしようとしているんだよ」との事。確かに他のそういう作品(どれがとはどうとは言いませんが、今週号の337Pから始まる連載作品なんかを見ても、言い得て妙なんですよね(笑)。
 あと気になる点をもう1つ作品を追うたびに不良の描写の現実感が無くなるのはいかがなものでしょうか? これ以上悪化すると、伝説の打ち切りマンガ『サイレントナイト翔』作画:車田正美の第1話冒頭みたいになってしまいそうで、ちょっと心配です。

 …と、絵柄の方はかなり苦言を呈させてもらったのですが、ストーリーの方はと言うと、読み切り時からの大幅なリニューアルが功を奏していて、まずは及第点というところでしょうか。冒頭のコテコテファンタジーさ加減にはいささか辟易しますが、現代劇に話が飛んでからはテンポが良くて“読ませて”くれますね。普通の作家さんなら何話か引っ張ってしまいがちな現代劇編を1話でケリをつけてしまったのは大変良かったと思います。ただ、またちょっと絵柄の話に戻りますが、年を追っても虎一の顔が老けないために時代の進行が分かり辛いのは問題だと思いますが。21歳の顔と30歳の顔が同じというのは、現実はともかくとして、マンガ的には良くないでしょう。
 結論としては、絵を中心に色々問題点は抱えているものの、とりあえず第1話は上手く乗り切った…というところでしょうか。ただ、今回はあくまでも本編から独立したプロローグ的な位置付けのため、どうにも全体的な評価が下し辛いという面があります
 よって、評価は現時点では保留とさせてもらいまして、第3回終了時点で判断をしたいと思います。

 

 ◎読み切り『CROSS BEAT』作画:天野洋一

 第63回手塚賞(02年上期)で、最高評点を獲得して準入選となった、天野洋一さん『CROSS BEAT』が本誌に掲載となりました。
 どうやら今回の本誌作品掲載は、連載陣の取材休みに合わせて実施する事がかなり前から決まっていたようで、天野さんが地元・岡山の地方紙からインタビューを受けたりもしています。(詳しくはこちら。それにしても、過去の手塚賞受賞者に挙げられたのが小林よしのり氏北条司氏、というのが、いかにも一般紙ですね《笑》)
 インタビュー記事などによると、天野さんは高校卒業後、岡山在住のままデザイナーの仕事を始め、その傍らでマンガの投稿を続けていたようです。「天下一漫画賞」募集のカットを描いていたとの情報もあり、担当もついていた事から、かなりの投稿歴が窺えます。年の割には意外と下積み長いかもしれませんね。

 ※談話室等で色々なご指摘を受けるのですが、ジャンプ系新人の情報をサンデー系新人のそれに比べて詳しく提供できるのは、ジャンプ系作家さんの情報を扱うウェブサイトの方が圧倒的に充実しているからなんですよね。駒木が把握している範囲で秀逸なサイトを挙げると、「シェルター」さん、「葵屋」さん、「KTRの趣味の館」さん。特に「KTR」さんは完成度が凄いです。
 どなたか、少年サンデー系の新人賞や掲載作品のデータベース・サイトをご存知の方がいらっしゃったら、駒木まで情報提供をよろしくお願いします。(何だか今日はお願い続きですね《苦笑》)

 では、作品レビューを進めていきましょう。
 まず絵柄ですが、投稿見習い期間が長かったためか、新人作家さんにしては手慣れた印象を受けます。特にデフォルメの上手さは新人の域を優に越えているのではないでしょうか。ただ若干、洗練された部分と荒削りの部分が混在していて、その部分だけはいかにもキャリアの浅さを感じさせますね。まぁ、十分合格点を出せるレヴェルだと思います。
 ストーリーの方は、ここ最近「マガジン」系を中心に増えてきた音楽モノ。このジャンルは、音が聞こえないマンガという媒体で如何に音楽を表現するかがポイントであり、腕の見せ所でもあるわけですが、天野さんは既存の作品を随分と研究されたようで、このポイントもソツなくクリアしています。敢えて難を言えば、『月下の棋士』や『ヒカルの碁』で良く使われる、実力者に褒めさせる事で物事の価値を表現する技法を使い過ぎているのが、まさしく玉にキズなのですが、まぁこれも許容範囲でしょう。
 しかし、話全体もソツなくまとめてはいるのですが、今ひとつ読者を引き込んだり、感動させたりするポイントに欠けていたような感じが拭えませんでした。クライマックスにかけての見せ場に魅力が薄いのです。これは、欠点を無くす事に全力を挙げた結果、長所を伸ばしきれなかったというところがあったからではないでしょうか。
 天野さんがこれから本誌連載を勝ち取るために必要なのは、まさにそこ、読者の心をグイッと掴むという事だと思います。せっかくここまでマンガに情熱を捧げて本誌掲載を勝ち取ったのですから、もう一息です。次回作、楽しみにしています。

 評価は、やや厳しいかもしれませんがB+としておきましょう。自分に足りないモノを早く見つけられるよう、頑張ってもらいたいものです。

 

☆「週刊少年サンデー」2002年34号☆

 ◎新連載『ふぁいとの暁』作画:あおやぎ孝夫

 「サンデー」本誌02年15号にて、『背番号は○』が掲載された、あおやぎ孝夫さんが連載を獲得して「サンデー」に凱旋です。『背番号──』掲載時は、当ゼミでも「ぜひ連載を」と言っていただけに、大変嬉しく思っています。(詳しい評価は3月13日付レジュメを参照)

 あおやぎさんは、今から約4年前の第43回「新人コミック大賞」に入選してデビュー。「月刊コミックGATTA」で連載を獲得していたのですが、残念ながら雑誌休刊により打ち切りとなり、「サンデー」に移籍して来ました。持ち前の爽やかな作風が連載でどこまで威力を発揮するのか、見ものです。

 絵柄に関しては、読み切り掲載時にも述べましたが、全く問題ありません。躍動感のあるバスケシーンの描写も巧みで、基礎画力の高さを感じさせてくれます
 しかし、ちょっと意外…というよりやや失望させられたのが今作のストーリーでした。前作のストーリーからも、あおやぎさんがステレオタイプな話が好きなのは分かっていたのですが、よりにもよって相当使い古された「主人公二軍・三軍から這い上がり型」シナリオで来るとは……。
 確かに他作品をオマージュにした名作マンガも多く存在するのですが、このタイプのシナリオで本当の名作というのは少ないんです。少し昔の作品で言えば『名門! 第三野球部』、今で言えば『Mr.FULLSWING』といった、多くの読者から失笑をもって迎えられてしまうようなモノばかりなんですよね。
 しかもこういう話は、あおやぎさんの画風と全く合わない泥臭い話になってしまうものなので、チグハグな印象を与えてしまいます。1回読んだだけで結論を急ぐわけには行きませんが、どうも悪い方向へ流れつつあるようで心配です。
 
 とりあえずの評価はB−寄りB「こんなはずじゃなかったのになあ」というのが、現在の駒木の本音です。ぜひ、あと2週間で駒木の鼻をあかすような方向へシフトしてくれる事を祈っています。

 
 ◎新連載第3回『いでじゅう!』作画:モリタイシ)《第1回掲載時の評価:

 7月18日付ゼミで1回目のレビューを行った、『いでじゅう!』の後追いレビューです。

 一言で言いますと、かなり良くなっています。……というより、モリさんが前から持っていた良い所が目立ち始めた、と表現した方が良いでしょうか。

 成功の要因は、主人公よりも目立つ変態系脇役キャラのキャラ立ちを最優先して、そちらを実質上の主役に据えてしまった思い切りの良さでしょうか。もうどう考えても主役は林田じゃなくて、オカマチョンマゲの藤原になっちゃってますからねぇ(笑)。
 あと、質の高いギャグを理詰めで計算して出せる、というギャグ作家でも誰もが持っているわけではないスキルが、回を追うごとに活かしきれるようになって来ています
 ギャグのバリエーションもセリフあり、絵あり、パロディありと多彩でお見事。まぁ、20代後半以上にしか分からない『キン肉マン』パロまでやっちゃったのは、是非は分かれると思いますが(個人的にはおもくそツボでしたけど)。

 これであとは、通勤・通学電車で読んでいると笑いを堪えるのに苦労してしまうようなホームラン級のギャグを量産できるかどうか。それさえ出来れば、『神聖モテモテ王国』(作画:ながいけん)の再来となりそうです。

 評価は迷うところなんですが、B+寄りのA−に大幅アップとさせてもらいましょう。これからの更なるレヴェルアップに期待です。

 
 ◎読み切り(前・後編もの)『まじっく快斗』作画:青山剛昌

 『名探偵コナン』青山剛昌さんが不定期で本誌に掲載するライフワーク的作品・『まじっく快斗』の登場です。

 『まじっく快斗』は、『名探偵コナン』の世界とリンクしている怪盗モノの作品。つまり、両作品で主人公が逆の立場になっているわけですね。
 まぁ、普段から原作抜きで『コナン』のストーリーやトリックを考えている実力派の作家さんが描いている作品なわけですから、こっちの方も内容の濃さには定評があります。ただ、今回はこれまでのシリーズを全く考慮せずに独立した読み切り作品としてレビューをしてみたいと思います。

 もう絵柄については、評価するまでもないキャリアと技術を持った作家さんですので割愛させてもらいます。
 で、ストーリーなんですが、熟練のテクニックを生かして高い完成度を持った作品に仕上げているのは、よーく分かります。伏線とその処理や、決して少なくないキャラクターを無理なく登場させるあたりなどは、並の作家さんでは無理でしょう。
 ただし、今回のシリーズ、どうも作者の青山さんの思考ベクトルが、「読者を満足させる」方向ではなくて、「読者を騙す」方向へシフトし過ぎたのではないかと思ってしまいました
 後から読み返さないと思い出せないような伏線が多すぎて(しかも前・後編ですし、この作品)、せっかくのラストシーンで感情移入し難いですし、しかも多くの伏線を詰め込みすぎたせいか微妙に話全体の流れに矛盾点が出て来てしまっているようにも思えます。もう少し気持ち良く騙して欲しかったなぁ、というのが正直なところですし、それがミステリのルールだと思うんですよね。

 評価はB寄りB+。昔のゲーム雑誌風のアオリで言うと、「青山剛昌ファンなら買い!」みたいな作品でしょうか(笑)。

 
 ◎読み切り『ミリ吉四六』作画:ささけん

 「少年サンデー」新人・若手読み切りシリーズ「荒ぶれ昇龍!」の第5弾、ラストを飾ったのは、01年度11月期「サンデーまんがカレッジ」入選受賞作、ささけんさんの『ミリ吉四六』です。
 ささけんさんは、2000年夏の「赤マルジャンプ」に作品を掲載していて、どうやらそれより前にもマンガ家として活動していたような節もあります。結構下積みキャリアの長い人のようですね。
 また、「うわの空・藤志郎一座」なる小劇団に参加している事も、調べてて判明しました。

  さて、『ミリ吉四六』受賞発表時の編集部選評は以下のようなもの。

 絵・話ともに、凄まじいパワーを感じます。貴方のような人が、サンデーを変えていくのかもしれませんね。しかし、パワーだけでは週刊連載作家となるのは、難しいでしょう。これからはパワーだけでなく、絵・話を盛り上げる技術を学んでください。期待してます。

 この作品を読んだ後、改めてこの選評を見てみると、確かに簡潔にこの作品の全てを言い当てているように思えます。ですから、もうレビュー終わらせたいんですが、疲れたし(笑)。

 ……まぁ冗談は止めにして、もうちょっと詳しくレビューをしてみましょう。
 まず絵は即戦力級に上手いです。絵そのものだけではなくて、トーンの使い方や構図の取り方などの細かい点も、若手作家さんとしては上手すぎるくらい上手いです。しかも、もう自分の絵柄を掴んでますから、どんな作品を描くにしてもそれなりの対応が出来るでしょう
 ストーリーの基本的な所も、キッチリと良く出来たスポ根モノに仕上がっていて、さすが入選受賞作といったところ。ただ、話がギャグにシフトし過ぎていたり、主人公の吉四六よりも、脇役の日野の方に読者が感情移入してしまいやすい構成のために、最後の吉四六が大活躍するシーンでもカタルシスを得難いといった辺りにまだ改善の余地がありそうです。選評でも手放しで褒めていないのはそういう点があったからなのではないかと思います。もう一磨き出来れば、一気に売れっ子にまで出世できそうな、荒削りの大型新人、といったところでしょうかね。

 評価はA−寄りのB+としておきましょう。早く次回作が読んでみたい作家さんの1人です。

 

 ……と、やっと6作品のレビューをする事が出来ました。これが再来週くらいになると、一気に楽になれるんですが、そうなったら今度はネタ不足ですからね。難しいものです。では、また来週。

 


 

7月25日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(7月第4週分)

 さて、今週もゼミの時間となりました。

 実は今週、採用試験明けという事で、色々な企画やら『エンカウンター』の再レビューやらも考えていたんですが、この忙しさの前に全てご破算になってしまいました(苦笑)。
 今週はどうやら、レビュー3本というあたりで落ち着きそうです。珠美ちゃんが日誌で「レビューの本数が多い」って言ってましたが、結局普通の数になっちゃいましたね。まぁその分、来週はもっとエラいことになっちゃうんですけど……。(来週は「ジャンプ」で新連載1本「サンデー」で新連載1本、第3回1本、さらに読み切り2本のレビューが既に確定してるんです。これで他誌に佳作が掲載されたり、『HUNTER×HUNTER』や『ROOKIES』が落ちたりすると、さらにレビュー対象作が……
ひぃ

 まぁ、とりあえず今週はレビュー3本ということで、どうぞよろしく。ではまず、情報系の話題を軽く。

 先週にも少し触れましたが、「週刊少年ジャンプ」の打ち切り2作目は、やはり『NUMBER10』(作画:キユ)でした。
 当ゼミでの第3回時点での評価はBで、巷の評判も悪くありませんでしたから、本来ならば生き残ってもおかしくない作品だったんですが……。ただ、今の「ジャンプ」には『ホイッスル』が連載中な上に、同時期に連載が始まったのが『プリティフェイス』『ヒカルの碁・第二部』でしたから、かなり新連載立ち上げのタイミングが悪かったかな、という気はします。
 あと、作品のクオリティ的な事を言うと、やはりキャラ立ちとストーリーのインパクトが弱かった事でしょうね。端的に言ってしまうと、“『少林サッカー』少林抜き”みたいなマンガでしたから……。
 これでキユさんは2連載2打ち切りちょっと「ジャンプ」で週刊連載復帰は難しいかも知れませんね。ひょっとしたら、「チャンピオン」などの他社他誌への移籍もありうるかも知れません。

 ……今週の情報系ネタはこれくらいでしょうか。それでは時間も切羽詰ってますから、早速レビューへと移りましょう。

 今週のレビュー対象作は「週刊少年ジャンプ」からの2本と、「週刊少年サンデー」からの1本です。今週から前・後編で掲載の『まじっく快斗』は、来週の後編掲載を待って2回分まとめてのレビューを行います。
 レビュー中の7段階評価についてはこちらをどうぞ。

☆「週刊少年ジャンプ」2002年34号☆

 ◎新連載『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介

 「ストーリーキング」ネーム部門大賞受賞→3月に前・後編で本誌掲載…という経路を辿って週刊連載となりました、若手作家さん2人による大型新連載のスタートです。
 巻末コメントや「ストーリーキング」の募集カットなどを見ると、腕の良いアシスタントを編集部から紹介したり、念入りな取材を敢行したりしているようですね。これは実績の無い若手作家さんへの待遇としては破格のものであり、いかに「ジャンプ」編集部がこの作品に期待をかけているか分かろうというものです。
 恐らく、「ジャンプ」編集部はこの作品で『ヒカルの碁』に続く2匹目のドジョウを狙っているんでしょうね。比較的マイナーな競技がテーマだったり、「ストーリーキング」出身の原作者と絵の上手い作家のコンビによる作品だったり…と、状況的にはかなり似通ってる部分が多いですし。
 まぁ個人的な事を言わせて頂くと、駒木はアメフトのファンですので、これを機にアメフト人気が高まってくれれば嬉しいんですけれどもね。でも、ちょっとあざとい感じもしますよね(苦笑)。

 さて、お2人のプロフィールや読み切り版『アイシールド21』のレビューなどは、以下のリンクを辿ってご覧下さい。

 ◆村田雄介さんのプロフィールと、村田さんの読み切り『怪盗COLT』のレビュー……2月20日付レジュメ
 ◆
稲垣理一郎さんのプロフィールと、読み切り版『アイシールド21』前編のレビュー……3月6日付レジュメ
 ◆読み切り版『アイシールド21』後編のレビュー……3月13日付レジュメ

 ……長い間サボらずに仕事してると、いざという時に役立って、我ながらイイ感じです(笑)。

 では、レビューに移りましょう。

 まず絵柄に関しては何も注文つけなくてもいいと思います。むしろ、アシスタントを動員しているためか、以前よりもクオリティが上がっています
 しかし、今更気付いたんですが、村田さんも稲垣さんも(さらにはアシスタントさんも)、かなり鳥山明さんの影響を受けてますね。なんだか鳥山作品の21世紀版みたいな感じで、「いかにも『ジャンプ』だなぁ」って印象を受けました。

 そして肝心のストーリーですが……。
 実は読み切りの時点では、駒木はこの作品に対して、かなりの酷評をしていたんですよね。簡単に言うと、キャラと舞台設定の作りこみが浅過ぎる事と、作品全体のキーポイントであるアメフトの描写が甘すぎると指摘させてもらったんです。正直、これを連載に降ろすには相当荷が重そうだと思ったものでした。
 ところが、連載第1回を読んでみると、問題点のほとんどが解消されているじゃないですか! キャラクターや諸々の設定にも深みが出て来てますし、アメフト描写に関しても取材の効果が出たんでしょう、かなり印象度を増して来た感じがします。読み切りの時には、栗田とヒル魔が何故アメフトをやりたいのかすら描かれてませんでしたから、これは大きな進歩でしょう。
 読み切りからページ数の少ない週刊連載になった途端にスケールダウンする作品は多いんですが、その逆っていうのはあまり見た事がありません。この辺が若さゆえの柔軟さというところなのでしょうか。

 ただ、ここに来て新たな問題点も浮上しています
 まず1点目は、主人公より脇役の方が主役のようなキャラ立ちをしてしまい、主人公のサクセスストーリーにカタルシスが感じられ難い点。そして2点目は、読者の意表を突く場面が少ないために、ストーリーからやや平板な印象を受けてしまう点です。
 この辺りが“1匹目のドジョウ”である『ヒカルの碁』と違うところですね。これから第3回までにどうやって軌道修正してくるのか楽しみです。

 評価は、とりあえずB+としましょう。これからしばらく後には、いくつかの長期連載が終わりそうな気配ですので、あまり打ち切りの心配はしなくて済みそうです。それを考えると、キユさんってのは本当に間が悪い人ですねぇ……。

 ◎読み切り『もて塾恋愛相談』作画:大亜門

 今週は『シャーマンキング』の原稿が落ちて休載ということで、代原が掲載されました。
 この作品はどうやら、02年4月期の「天下一漫画賞」最終候補作・『もて塾へ行こう!』をベースに改稿、もしくは同じ設定を使い回して描かれた、新人さんの習作原稿のようです(結果発表のページに掲載されていたコマが、今回の作品では使用されていませんでしたので)こういう緊急事態がなければ掲載される事も無かったでしょうから、作者の大亜門さんは強運ですね。
 しかしこの作品、特徴のある題名だったので思い出しましたが、作家さんの名前がペンネームに変わっていたりもしたので、うっかり見逃すところでした(苦笑)。

 さて、それではレビューへ。

 まずは絵柄からですが、新人のギャグ作家さんにしてはなかなか作画が手慣れていますね。ギャグ作家としてなら十分プロで活動していける力は備えていると思います。大亜門さんの年齢が24歳という事を考えると、アマチュアなどで活動の経験があるのかもしれませんね。
 難を言えば、もう少し可愛い女の子が描ければ、大きな武器になるんですが、これは今後の課題という事なのでしょう。

 そしてギャグ全般の評価ですが、まず驚かされるのは、構図とテンポの巧みさですね。コマ割りやセリフ回しにおけるギャグマンガの基本形は完璧にマスターできています。ちゃんと見せ場では表現をオーバーにするなど、その辺りのセンスも非凡なものを持っていますね。あまりにも上手くまとめているので、やや古臭く感じてしまうほどです。新人なのに既にいぶし銀というのは非常に珍しいと思われます。
 キャラクターの数や設定作りも基本に忠実で、相当ギャグマンガの研究をした上でのこの作品、という事が伝わってきます
 ただ、惜しむらくは、読者のほとんどが馬鹿笑いできるようなホームラン級のギャグが無かった事で、それさえあれば立派に一人前のプロの作品に仕上がっていたはずなので非常に惜しいです。
 あと、既に『最後通牒・半分版』さんで話題になっていたんで恐縮ですが、冒頭のシーンにも触れておかなければなりませんね。この作品、1コマ目と2コマ目が完全に他作品のパロディで、しかも1コマ目で裸に剥かれている女の子キャラがどう見ても全員『あずまんが大王』主要キャラだったりするんですね(笑)
 こういう遊び心のパロディは、『ピューと吹く! ジャガー』なんかでもあったりするんですが、やっぱり人気連載作家だから許されるという面があったりしますので、新人・若手の内は控えて欲しいものです。

 評価は新人さんの習作としては高評価のを進呈。比べちゃアレですが、『シュールマン』のクボヒデキ氏よりはよっぽど将来性がありそうです。

 

☆「週刊少年サンデー」2002年34号☆

 ◎読み切り『カラス〜the master of GAMES〜』作画:佐藤周一郎

 新人・若手読み切りシリーズ「荒ぶれ昇龍!」の第4弾は、これが本誌2度目の登場となる新人さん・佐藤周一郎さんです。

 佐藤さんが以前本誌に登場したのは「サンデー特選GAGバトル7連弾」の時で、『ピー坊21』という作品を発表しています。
 その時の詳しい評価は、2月27日付レジュメを参照してもらえればお分かりになると思いますが、「将来性は感じられるものの、ギャグ作家の適性は疑問」というものでした。今回はそれを自覚されてかどうか分かりませんが、ストーリーマンガに活路を求めて、44ページの中編作品に挑戦という事になりました。こういう器用なことが出来るわけですから、確かにマンガ家としての素質はあるんですよね…。

 絵柄はまだ、以前からの課題であるタッチの堅さ…というかアマチュア臭さが抜けきれていないのですが、5ヶ月前よりは幾らかレヴェルアップしています。あとは、前作はゆうきまさみさんの影響が見てとれたのに、今回はそれがほとんど無くなっているのが気になりますね。この間、他の作家さんのアシスタントなどをして画風が若干変わったのかも分かりません。

 そしてストーリー。まず、かなりストーリーの引っ張り方が強引なのは否定できませんね。舞台設定もかなり無茶ですし、状況説明も不足しすぎです。ただ、話そのものは比較的分かりやすい流れになっているので、読み難いという事はありません。これに関しては一応の評価が出来ると思います。あ、オチはとても面白かったですね。ここも評価できるポイントです。
 で、もう1点気になったのは主人公のキャラ造型です。「ゲームコントローラーを握った時だけ強気になれる、普段は弱気なただのゲーム好き少年」という設定なのに、場面場面で作者の都合により(笑)、突然シリアスなキャラになってしまうんですよね。これはストーリー展開の強引さも相まって、かなりの我田引水な印象を抱いてしまいました。
 結局これは、自分の描きたいストーリーをそのまま描きたいがために、色々な矛盾点に目をつぶってしまった結果なのだと思います。駒木も小説描くので分かるのですが、作者が想定していたストーリーを無理に押し通そうとすると、どこかで不自然な点が出てきてしまうんですよね。例えば、大したきっかけもないのに主人公とヒロインが恋に落ちたりとか、次々と殺人事件の容疑者が自殺していったりとか(笑)。
 「マンガはキャラクターだ」なんてよく言われますが、その路線のなれの果てである『BLACK CAT』を見ていると、やっぱりストーリーマンガには魅力のあるストーリーがまずありきで良いと思いますよね。ですが、やっぱりストーリーだけじゃダメなんですよ。登場人物の個性などと符合するような話作りをしないと、本物のストーリーにはならない気がします。

 評価は一応を進呈しましょう。現時点では連載までの道は遠いと思いますが、どんどん才能を磨いていって欲しいと思います。

 ……と、いうわけで今日のゼミは以上で終わります。来週のゼミをお楽しみに。ではでは。

 


 

7月18日(木) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評」(7月第3週分)

 特編カリキュラム中でも、ゼミだけは平常実施です。今週に入ってから受講生の数がジリジリ減っていて、メチャクチャもどかしい気分なんですけれども、これで休んでる受講生さんが復帰してくれれば……と思っています。どうぞよろしく。

 さて、まずは情報系の話題を手短に。
 まずは「週刊少年ジャンプ」の新連載シリーズのお知らせから。
 「ジャンプ」は、いつも直前になって新連載シリーズの発表をするので油断ならないのですが、まさか一番忙しい今週に来るとは(苦笑)。
 今回の新連載は2作品。共に今年「ジャンプ」本誌で読み切りが掲載された作品で、まず来週号(34号)から始まるのが、『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介)で、そして恐らく次々号(35号)から始まるのが『SWORD BREAKER』作画:梅澤春人)です。
 読み切り掲載時の当ゼミでの評価は共にB(プロの作品として平均点。可も不可もなく)でしたので、個人的には半分不安、半分期待というところですね。

 作品別のポイントも挙げておきますね。まず『アイシールド21』は、読み切りではイマイチ踏み込んでいなかったアメフトシーンをどう描ききるかで完成度が随分と変わって来るでしょう。
 あと、『SWORD──』の方は、もはやマンガ界では半ばタブーと言っていい“剣と魔法のファンタジー”ですから、余程目新しいものを提示していかないと、『ベルセルク』を曾孫コピーしたような劣化したモノになってしまいそうな気がします。それをどうにかするのは作家さんのストーリーテリング力なんですが……おっと、これ以上は作品を読んでからにしましょう(笑)。

 新連載に伴って、入れ替わりに最終回を迎える作品も2つ。1つは以前から打ち切りが確実視されていた『少年エスパーねじめ』作画:尾玉なみえ)で、今週もう最終回を迎えてしまいました。また、もう1作品は、どうやら紆余曲折の上に『NUMBER10』(作画:キユ)で落ち着きそうな感じに。『世紀末リーダー伝たけし』も一時期は人気的にヤバそうだったんですが、ここまで来たら今のエピソードが完結するまで思う存分描いてもらう方針のようです。
 ゼミを始めてから、以前より熱心に打ち切りレースを見ているわけなんですが、同じくらい人気の無い作品群から打ち切り候補を決める時、最後にモノを言うのは実績なんですよね。そういう意味では新連載作品は、とにかくスタートダッシュが大事ということになります。既連載作と競り合ったら負けますからね。そういう視点で、前回の新連載シリーズでスタートダッシュに大成功した作品を挙げるなら『プリティフェイス』ですね。こう言っちゃ、ミもフタもありませんが、やっぱり絵が上手い作家さんがお色気路線に行くと、何かと得なんですねぇ…。

 次に、「週刊少年サンデー」の月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」の結果発表がありました。

少年サンデーまんがカレッジ
(02年5月期)

 入選=該当作なし
 佳作=該当作なし

 努力賞=1編
  ・『くろの称号』
   衣笠絵里(24歳・大阪)
 あと一歩で賞(選外)=3編
  ・『Make Money Spirit!!』
   肉団子(22歳・兵庫)
  ・『チープ・トリック』
   小林裕和(21歳・東京)
  ・『聖童のポートレイト』
   石井雅倫(19歳・大阪)

 1ヵ月分のみの発表ということで、やや低調な結果に。やっぱりこの辺に、「サンデー」の「ジャンプ」との新人開拓力の違いが出てしまっている気がします。こればっかりは構造的な問題なのでしょうね。

 さて、それでは今週のレビューへ。今週のレビュー対象作は、「サンデー」から2作品と、「週刊ビックコミックスピリッツ」から高橋しんさんの読み切り『LOVE STORY, KILLED.』をお送りします。

 文中の7段階評価はこちらをどうぞ。

☆「週刊少年サンデー」2002年33号☆

 ◎新連載『いでじゅう!』作画:モリタイシ

 先週のゼミでもお伝えしました通り、「サンデー」では今週から新連載とベテラン作家さんの読み切りシリーズが始まりました。今週はその第1弾ということになります。

 この作品の作者・モリタイシさんは、「少年サンデー超増刊」出身の若手作家さん。今年の2月に本誌で読み切りが掲載されていますので、ご記憶の方もいらっしゃるかと思います。モリさんのプロフィールや、その作品の詳しい評価、さらに画力についてのコメントは、こちらのレジュメを参照してください。

 …というわけで今回は、作品全体の完成度などに限定して話を進めて行きたいと思います。

 まず、この作品はコメディに近いギャグマンガですね。ごく普通の学校が舞台で、ごく普通の少年を主人公にし、そこへ変態チックな脇役を多数絡ませることで笑いを呼ぶ…という手法がとられています。
 実はこの手法には先例が存在しています。かつて「週刊少年ジャンプ」に連載されていた『ボンボン坂高校演劇部』作画:高橋ゆたか)がそれです。『ボンボン坂──』も純粋なギャグというよりコメディに近いライトな作品で、連載中は絶えず中程度の人気を維持して、無事に完結に至りました。打ち切りが多い高橋さんの作品の中でも、珍しく成功した作品と言って良いでしょう。

 では、この作品も同じような経路を辿って、マズマズの成功を収めるのか、というと、現時点ではやや疑問が残ります。
 と、いいますのも、実は先例である『ボンボン坂──』は、ギャグそのものよりも、主人公とヒロインのラブコメ的要素がメインテーマだったのです。多くの読者も「ギャグは大して面白くないけど、恋の行方は気になるぞ」というスタンスで作品を楽しんでいたのではないかと思います。
 そもそもこの、“普通の舞台、普通の主人公にボケの脇役”というパターンは、あまり爆発的な笑いが期待できない設定なのです。他の成功しているギャグ作品をチェックして頂けると判ると思いますが、爆発的な笑いが期待できるようにするためには、まず第一に“主人公、または主役格が壊れている”という事が大事なんです。主役がボケて、重要な脇役がそれをツッコむ…という形がベストというわけです。

 もちろんこの不利なスタイルでも、その不利さを覆して、爆発的な笑いを期待できる破壊力十分のギ