「社会学講座」アーカイブ(演習《現代マンガ時評》・7)

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講義一覧

12/26(第99回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」(12月第4週分・合同)
12/19(第98回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (12月第3週分・合同)
12/12(第96回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (12月第2週分・合同)
12/5(第93回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (12月第1週分・後半)
12/3(第92回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (12月第1週分・前半)
11/28(第90回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (11月第5週分・合同)
11/21(第87回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (11月第4週分・合同)

11/13(第84回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (11月第3週分・合同)
11/6(第83回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (11月第1〜2週分・合同)
10/31(第81回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (10月第5週分・合同)
10/24(第79回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (10月第4週分・合同)
10/17(第76回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (10月第3週分・合同)
10/10(第74回) 演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (10月第2週分・合同)

10/6(第73回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (9月第5週/10月第1週分・後半)
10/2(第71回) 
演習(ゼミ)「現代マンガ時評・分割版」 (9月第5週/10月第1週分・前半)

 

2003年第99回講義
12月26日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第4週分・合同)

 03年最後のゼミをお送りします……が、コミックアワードが終わった後の脱力感が未だ抜けておりません(笑)。自分の頭の中ではもっと大掛かりなイベントにしたいという思いもあるのですが、現状ではあれが精一杯です。というか、精一杯以上かも知れません。

 で、ここで主催者側から見た「コミックアワード」の感想等を少々。

 まず、一息ついた後に受賞作一覧を眺めてみると、やっぱり今年は不作だったんだな…と改めて実感してしまいました。審査中は候補作を絞り込む事に追われて気付きませんでしたが、いざ冷静さを取り戻してみると「う〜ん、これは……」と唸らざるを得ませんね。

 で、そんな中選んだグランプリは『美食王の到着』でした。いくら全体のレヴェルがどうあれ、この作品が本当に素晴らしい作品である事は間違いないと確信持って言えます。
 ただ、駒木がこれまで最初の増刊掲載時のレビューや講評で述べて来た事の中に、大きな誤りが一点ありました「叙述トリックをマンガの世界に持ち込んだ」…という部分です。
 恥ずかしながら、式典終了後にもう1度読み返してみて気付いたんですが、この作品で使われているトリックは、実は叙述トリックとは言えないものでした。文章と絵を巧みに組み合わせて読者にわざと誤った先入観を持たせるという、また別の種類のトリックだったのです。いやはや、とんでもないミスを犯したものです。本当に駒木ってアホですね。
 ……とはいえ、そのトリックが叙述トリックじゃなかったからと言って、『美食王の到着』が良く出来た作品である事実には何の揺らぎも無く、作品の価値が下がるわけでは有りません。なので、レビューでの評価(A+寄りA)も変更しませんし、「コミックアワード」で差し上げた賞ももそのままとします。
 藤田和日郎さん、そして受講生の皆さんにお詫び申し上げます。本当にすみませんでした。

 ……あと、ラズベリーコミック賞は、去年と違って受賞作や有力候補作がファンの多い作品だったので、正直言って心苦しかったですね。ただ、やる以上は開き直るしかありませんので、思い切りやらせてもらいました。こういう賞って、大物相手に対する風刺の意味合いもありますので、『テニスの王子様』ファンの方は「我らが許斐センセイは大物だ!」と、むしろ誇りに思ってもらっても良いくらいです。(まぁ絶対に思わんでしょうけど^^;;)
 とりあえず、この手の賞というのは回数を重ねてこそですので、やれる限り毎年やりたいと思ってます。出来ればもう2〜3ほど部門賞を増やしてみたいのですが、先程述べたように物理的な限界もあり、難しいところではありますね。
 まぁとにかく今は毎週コツコツとレビューを続けるしかないですね。これを怠っていては「コミックアワード」そのものが成立しないわけですし……。

 ──さて、それでは気持ちも新たに、今週のゼミを始めたいと思います。まずは情報系の話題から。最初に、先週時間が無くて翌週回しになっていた「サンデー」系月例新人賞・「サンデーまんがカレッジ」9・10月期分の審査結果を紹介しておきます。

少年サンデーまんがカレッジ
(03年9・10月期)

 入選=該当作なし  
 佳作=該当作なし
 努力賞=2編
  ・『落ちこぼれの白虎』
   ハタアサ子(18歳・茨城)
  ・『四苦八苦』
   奥長浩子(25歳・千葉)
 あと一歩で賞(選外)=3編
  ・『ある夜のヒーロー』
   あづち涼(25歳・北海道)
  ・『BIRTH DAY』
   中谷祐太(14歳・兵庫)
  ・『妖草紙』
   赤池真美(26歳・山梨)
 最終候補=1編
  
・『ウィンブルドンヒーロー』
   岩田有正(23歳・愛知)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)

 ◎あと一歩で賞のあづち涼さん…01年11月期「まんがカレッジ」でも“あと一歩で賞”。また、18禁ゲームの原画家として活動した経験あり。

 この他、Google検索で判明した事は、努力賞のハタアサ子さんウェブ上での創作活動経験者だったり、選外の赤池真美さん講談社のコミック通信講座出身だったり…といったところ。
 ちなみにあづち涼さんのウェブサイト(直リンク張りませんが、名前で検索すれば一発で出ます)の日記によると、あづちさんは遂にまんが家目指して上京するとの事。画力は十分水準に達しているわけですから、それを武器にガンガン攻めて行ってもらいたいものです。

 情報2つ目「ジャンプ」から読み切りに関するニュースをご紹介します。
 年明け・1月5日発売の6・7合併号にて、『World 4u_』作画:江尻立真)が掲載されます。これは今年の25号に掲載された同名・同作者による読み切りの第2弾。今回も『世にも奇妙な物語』形式のホラー連作短編だと思われます。
 前作の当ゼミでのレビューでは、「作・画ともに地力は感じられるが、シナリオを凝り過ぎたためにかえってホラーの醍醐味が薄れてしまった」…という事でA−寄りB+の際どい評価でした。果たして今回はどうなるでしょうか? 注目したいところですね。

 ……それではレビューへ。今週は「ジャンプ」にしろ「サンデー」にしろ、見所が多かったように感じたんですが、実はレビュー対象作は1本のみ。「ジャンプ」年末新連載シリーズの第3回後追いレビューです。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年新年4・5合併号☆

 ◎新連載第3回『銀魂』作画:空知英秋【現時点での評価:B

 前期新連載が全滅のため、打ち切りサバイバルレースを争う相手全てが長期連載作品という過酷な状況に置かれている今期の新連載作品ですが、その中でも一番厳しい立場にいるのが、恐らくこの『銀魂』と空知英秋さんでしょう。以前にも似たような事を言った覚えがありますが、これって「有望新人プロボクサーのデビュー戦の相手がいきなり日本ランカー」みたいな話ですからねぇ……。
 もしこれが本当にボクシングの話なら、そんなマッチメイクをしたジムの会長に、「そんな、会長! いきなりコイツを潰す気ですか?」と、マネージャーが止めに入りそうなシチュエーションなんですが、今の「ジャンプ」はどうやら、マッチメイク担当が『あしたのジョー』の白木葉子お嬢様みたいな人のようで……。

 とはいえ、もうゴングが鳴ってしまった以上、後には引けません。というわけで、連載の今後を占う第3回の後追いレビューです。

 まずなんですが、相変わらず線が不安定なのが惜しいですね。初回に比べると、全般的に幾分進歩の跡が窺えるんですが、今度は線の不安定さで実際の画力よりも下手なように見えてしまっています。
 しかし、女の子描かせたら案外達者ですね、空知さんは。男キャラが大概むさ苦しいだけに、一際良い意味で目立ってます。この辺を上手くアピール出来れば、読み手の反応も良くなると思うんですが。

 ただストーリー・設定については、相変わらず世界観やキャラクターの個性付けが曖昧で迷走気味です。しかも、どうやらその問題の根源はかなり深い所にあるんじゃないかと思えて来ました。
 というのも、空知さんの描くマンガの最大の魅力「話の本筋を脱線して繰り広げられるドタバタ劇」なんですが、この魅力を活かそうとすればするほど、当然の事ながら作品そのものはドンドン迷走して行っちゃうんですよね。かと言って、キッチリとしたストーリーを追いかけて行けば、空知さんの“味”が出なくて間延びしてしまいますし、まさに「あちらを立てればこちらが立たず」な状態というわけです。言い換えると、「無理をすれば道理が引っ込むが、無理をしないと道理もクソも無い」といったところでしょうか。
 しかも非常に厄介な事には、その事を空知さんご本人も気付いてそうなんですよね。で、「どうすりゃ良いんだろう?」と迷いながらも、抜本的な対策が見出せないまま、流されるがままに話を迷走させているような気がするんですよ。ハッキリ言って重症です。やっぱり時期尚早でしたね、この連載は。

 ここから活路を見出すとなると、もう完全に開き直るしかないでしょうね。それこそ以前の『幕張』みたく、確信犯的に刹那的なウケ狙いをハイスパートで繰り出して、「中身は無いけど、何だか面白い」と読み手に思わせるような作品にしてゆくしかないでしょう。(もっとも、第3回時点でそんな事を言ってる時点で、「ジャンプ」では致命的な出遅れなんですが……)
 ただ、そういう作品は、いくら刹那的な「面白い、面白くない」の次元では高評価を得られても、当ゼミが掲げる「よく構成が出来ている作品かどうか」という判断基準で評価をした場合は点数を厳しくせざるを得ません
 そういうわけで、今回も評価はB+寄りBに止める事にします。前回レビューに比べると、絵などの面で若干改善したように思えるので、0.5ランク評価を上げておきました。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 久々に巻末コメントへのコメントを少しだけ箇条書きで。

 ・岸本斉史さん…うん、フグは良いですよね。というか、フグそのものよりも、鍋の最後に食う雑炊が一番好きなんですが、駒木は。あの雑炊の味がインスタントで出せたら、毎日買って食いたいくらいです。
 ・つの丸さん……いや、そんな巻末コメント読んで応募してくるような人はカリスマになれんでしょう(笑)。

 あと今週号では、毎度恒例・年末進行の合間に絶対落とせない仕事を増やして、日頃泣かされている作家にリベンジするぞ企画・現役連載作家4コマ競作スペシャルがありました。
 しかし今回は輪にかけて出来が酷いですねぇ……。さすがにギャグ系作家さんは水準のモノを出して来ましたけれど、ストーリー系作家さんのは半分以上が4コママンガにすらなってないというか。特に今年度ラズベリーコミック賞作家さんのは何ですかアレ(´Д`;)。この場であんまり悪口は言いたくないですけど、余りにも余りにもですよ。

 ◎『アイシールド21』作:稲垣理一郎/画:村田雄介【現時点での評価:A/雑感】

 いやー凄いわ、今回。もう凄いとしか言いようが無いです。何だか詳しく検証したらアラが見つかりそうなプレーだけれども、「そんな細かい事考えずに読め!」と言われたらそうせざるを得ないような凄味がありました。
 しかし、今回の内容を見てると思うんですが、やっぱりこの作品って、単行本で読むより雑誌サイズで読んだ方が良いんですよね。週刊マンガ誌特有の悪い紙質も、この作品に限っては何故か合うんですよ。ただ、それだと商業的な実績には繋がらないんですよね……。

 ◎『いちご100%』作画:河下水希【現時点での評価:B/雑感】

 いやー凄いわ、今回。もう凄いとしか言いようが(以下略・笑)。
 各女子キャラの萌え要素が完全に仕上がり切ってるので、今回みたいな余興のような話でも十分に作品として成立しちゃうんですよねぇ。
 しかし、いくら何でも「いかん!! パンツのせいで客が暴徒と化した!!」ってのは色々な意味でダメ過ぎるでしょう(笑)。

 
 

☆「週刊少年サンデー」2004年新年4・5合併号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「このお正月にやろうと思ってること」。
 んー、ボケられそうにない質問だけに、回答も皆さん普通になさってますねー。そんな中でウケ狙いに走ったと思われる川久保栄二さんの回答が全然ギャグになっていないあたり、さすがは『十五郎』の作者といったところですか。
 駒木は正月くらい箱根駅伝見てノンビリ過ごしたかったんですが、どうやら2日から連発でモデム配りに狩り出されそうです(涙)。

 
 ◎『いでじゅう!』作画:モリタイシ【現時点での評価:A−/雑感】

 密度の濃いハイスパートなギャグ連発で、非常に良かったんじゃないでしょうか。絵が荒れてたのは相当ネームに苦しんで時間ギリギリになっちゃったんですかね?
 しかし、色々やった割には肝心の(?)おみくじ引くのを忘れているのは勿体無かったですね。ベタながら結構面白いネタが作れそうではあるんですけど……。

 ◎『きみのカケラ』作画:高橋しん)【現時点での評価:B−/雑感】

 10回限定の“最終章”という事で、今回から連載再開。まぁいわゆる一つの敗戦処理というヤツですね。
 しかし、そんな状況でありながら更に風呂敷広げようとするってのはどういう……(汗)。そりゃ、これだけ空白期間が開いたら普通に話を繋げても判り辛いのには違いないんですが、でもねぇ……。どうしてこの作品がこんな事になったのか、分かってらっしゃるんでしょうかと、ちょっと問い掛けてみたいですね。
 あと、エロと暴力描写には耐性の強過ぎる駒木でも、今回の“児童ポルノ&それを素で覗いてる親父”ってのは、「うわー、大丈夫かコレ」と思いました(笑)。ああいうシーンってのは、覗いてる方(♂)が覗かれている方(♀)と同年代かそれ以下じゃないと、相当インモラルになっちゃいますよね。

 ◎『からくりサーカス』作画:藤田和日郎【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 あんなエグいシーン(自動人形の血まみれ分解)でも、人間じゃなかったらモザイクもかからんのですかねー
 今週は「ジャンプ」の『武装錬金』とかでもグロ規制のモザイクがあったんですが、出来ればああいう類のモザイクって止めて欲しいんですけどね。理由はどうあれ、作者の意図を歪めるような規制はかけて欲しくないです。特に駒木も小説家を志しているだけに余計感じます。
 ただ、そういうショッキングなシーンが小さい子供にトラウマを植え付けちゃうのも事実ではあるんですよねー。駒木も幼少の頃、『ダッシュ勝平』で、主人公の仲間たちがヤクザに真剣でバッサバッサ斬られるのを見て、かなりショックを覚えた記憶がありますし。7〜8歳まで高校で「バスケやってたらヤクザに斬られなくちゃならんのか」と本気で心配してましたからね(笑)。う〜ん、やっぱり難しい問題ですよねぇ。

 ◎『ファンタジスタ』作画:草葉道輝【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 スポーツでは、有力選手を試合に投入する事を“カードを切る”なんて言いますが、スポーツ物のマンガでは逆なんですよね。有力選手を完全燃焼させて退場させる事が“カードを切る”ことになるんですよ。
 そういう意味で、今回の展開は素晴らしいです。このタイミングでグロッソという“カード”を切った草場さんの決断力に拍手を贈りたいですね。


 ……というわけで、今年最後のゼミをお送りしました。来年のゼミは、「赤マルジャンプ」冬号の完全レビューから始動することになると思います。ではでは。

 


 

2003年第98回講義
12月19日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第3週分・合同)

 「コミックアワード」の準備の合間を縫って、今週のゼミをやっておきます。本当なら前・後半に分けなければならないくらいのボリュームがあった週なんですが、とりあえずこんな状態なので、レビュー中心で簡単に実施しておきます。情報系の話題は次週回し、チェックポイントについても連載終了になった『神撫手』の総括だけとさせてもらいます。
 たくさんお話したい事もあるんですけどね……。何とか時間の都合をつけたかったのですが、無念です。

 では、もう早速レビューへ行っちゃいましょう。今週のレビュー対象作は、「ジャンプ」からは新連載1本と新連載第3回の後追いレビューが1本、更には代原ギャグ読み切りが1本。そして「サンデー」からも新連載1本計4本となります。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年新年3号☆

 ◎新連載『LIVE』作画:梅澤春人

 「ジャンプ」の年末新連載シリーズ最終・第3弾は、『SWORD BREAKER』の連載終了以来、約1年ぶりの復帰となる梅澤春人さんの新作が登場です。

 梅澤さんの「ジャンプ」デビューは89年ですから、キャリアは14年余りという事になりますね。いつの間にか、現在の「ジャンプ」連載陣では重鎮クラスのベテランになっているんですね。
 梅澤さんと言えば、真っ先に不良・暴力モノが連想されますが、デビュー作は意外にもSFモノの『酒呑☆ドージ』。これは翌年に連載化されますが、残念ながら15話・1クールで打ち切りに終わります。
 そして翌年、現在の作風の原点とも言える作品・『HARELUYA』の連載をスタートさせますが、これも10回・1クールで打ち切り。本来ならこれで“デビュー以来2連続短期打ち切りは「ジャンプ」追放”というルールが適用になるところでしたが、打ち切りが決まった後の連載終盤で人気が急上昇。急転直下、短いインターバルを置いて続編を連載する事が決定します。この時に仕切り直しで連載されたのが、梅沢さんの代表作となる『BφY−HARELUYA II−』で、これは92年末から約6年にも及ぶ長期連載になりました。
 『BφY』の連載終了後も意欲十分の梅澤さんは、1度の読み切り発表を挟んで、99年末からは『無頼男─ブレーメン─』の連載を開始します。ここでも連載当初は『BφY』で培った梅澤さん独特の世界観が支持を受けましたが、徐々に尻すぼみの状態となり、約1年半後に打ち切り終了となりました。
 その後、一時期は「コミックバンチ」との繋がりをアピールするなど、自信の立場も含めて流動的な時期もありましたが、結局は02年から「ジャンプ」で活動再開。今度はファンタジーという未知の分野に挑戦し、『SWORD BREAKER』の読み切り発表、そして連載開始となりますが、こちらは敢え無く16回の短期打ち切りに。そしてそれから1年、今回の新連載となるわけです。

 さて、作者のプロフィール紹介はこれくらいにしまして(クソ忙しい時に限って、ベテラン作家のプロフィールを作らなくてはいけない悲劇^^;;)、作品の内容についてお話してゆきましょう。
 まずはなんですが、さすがにキャリアをここまで重ねた作家さんが、そうそう絵柄を変える事が出来るはずもなく、この作品でも“いつも通りの梅澤春人”といった感じになっています。いや、むしろ以前よりも手抜き(無意味な顔アップやバストアップ)が減って、読み易くなっている…と言えるかも知れません
 梅澤さんは元々、それほど絵の達者なタイプの作家さんではないのですが、第1回の絵柄を見る限りでは、“連載作家として標準レヴェル”くらいの評価は出せそうです。

 次にストーリーと設定なんですが、こちらは「随分とまた開き直ったもんだなぁ……」というのが第一印象でした。
 というのも、主役格のキャラクター2人は、設定こそ新しくしたものの、これまでの梅澤作品のパターン──トンガリヘアーの乱暴者と、無造作ヘアーの正義感だけ強い大人しい少年──を綺麗にトレースしています。しかも“乱暴なのは悪魔だから”という理由付けまで物凄い開き直り振り。徹底した自己分析と、デジタル的に“ウケる要素”を追求しようという姿勢がヒシヒシと窺えます。
 それでいて、作品全体のスケールはグッと押さえられ、お話そのものとしては不良モノにドタバタコメディの要素を交えた日常劇です。こちらも「大きなスケールのストーリーならではの醍醐味を犠牲にしても、ここは手堅く読者の支持を固めてゆこう」…という意図が見え隠れしています。

 つまりこの作品は、過去の梅澤作品の縮小再生産で生まれたモノなんですね。野球で言えば、ノーアウトからフォアボールで出たランナーを、2回の送りバントで3塁まで送るような、そんな手堅い作品です。
 勿論、これは技術が熟練したベテランでなくては出来ませんし、ベテラン作家なら全員が出来るというものでもありません。1回目の送りバントでダブルプレーを献上してしまう作家さんも結構多いのです。そういう意味においては、梅澤さんはまだ、往時の実力を維持したまま頑張っている……と言えるでしょう。
 ただし、こういう手法で生み出された作品は、人気作足りえても、なかなか名作には及びません。作品のスケールを犠牲にしている以上、シナリオのクオリティにも限界が出て来るからです。作風こそ全く違いますが、この作品は『魔法先生ネギま!』と同系統の“名作崩れの人気作”になるタイプの作品なんですね。

 …そういうわけで、暫定評価はB+。この作品がソコソコの人気を獲得できれば幸いですが、そうでなかった場合、それは「ジャンプ」作家・梅澤春人の能力的限界を意味する事になるでしょう。ナニゲに大変シビアな連載となりそうですね。


 ◎新連載第3回『DEATH NOTE』作:大場つぐみ/画:小畑健【現時点での評価:保留

 さて、今週からは後追いレビューも開始。というわけで今回は、未だに「大場つぐみって誰よ?」という声が止まない『DEATH NOTE』のレビューをお届けします。
 しかし、本当に情報が漏れて来ない所を見ると、これは「ジャンプ」内部でも緘口令が敷かれているんでしょうね。次期連載改変対象のタイトル並に厳重なシークレットって、そこまで隠さなくちゃいけない人が正体なんでしょうか? これで「マガジン」みたいに編集者がペンネーム使って原作やってたら白ける事この上無いんですが、まさかねぇ(苦笑)。

 と、無駄口はコレくらいにしておきまして、内容について。絵の流麗さは相変わらず文句の付けようが無いので、ストーリーについてだけ述べたいと思います。
 単刀直入に言って、心理描写の巧みさで度肝を抜かれた第1回に比べると、その後の2回では、ややスケールダウンした感が否めません。第1回のレビューでも言及しました、主人公敵役・Lとその周辺の描写に現実感が無さ過ぎるのもありますが、どうもシナリオ展開が淡白な気がするのです。
 この手のお話で、何が読み手を作品世界に引き込むかというと、実は巧みな駆け引きよりもアクシデントなんですよね。予測不可能だった出来事が突然発生し、登場人物が読み手と一緒に悩み、苦しみ、そして最後は読み手より一歩先を行って問題を解決する。この過程を経る事によって、読み手は作品世界とキャラクターに感情移入が出来るものなのです。
 ところがこの作品は、主人公も敵役も利口過ぎて、どんな出来事が起こってもお互いに「それは想定内の出来事だ」ってやっちゃうんですよね。すると読み手としても、「はぁ、そうなんですか」となってしまい、今一つ感情移入し切れないまま、シナリオだけが淡々と進行してしまうんです。これは非常に勿体無い事です。もうちょっと主人公・ライトが激しい動揺に追い込まれるようなシナリオでも良かったと思うんですが……。

 あと、もう1つの問題点としては、作品内で人がバンバン死にまくっている割には、一度たりとも“最期の瞬間”が描かれていないため、イマイチ恐怖が伝わって来ない…という事も挙げられます。通帳の残高だけが動いているお金の遣り取りみたいなもんで、生々しさが伝わって来ないんですよね。命のペーパー商法と言いますか。
 こう言うと、必ず「少年誌だから」云々…となるんですが、だったら『HUNTER×HUNTER』はどうなるの? …という話ですからね。そこを上手くやっていくのも、一流のプロに求められる部分だと思うのです。

 こんな事言っちゃミもフタもないですが、この作品が福本伸行原作だったら、どれくらい凄い作品になったんだろう? …なんて考えてしまいます(苦笑)。それくらい、演出の仕方によっては大傑作になるような素材ではあるんですけどね。大場さんのストーリーテリングの懐が狭いのが、つくづくも残念です。
 評価はA−寄りB+ということで。当然ですが、今後の動向次第では格上げも格下げも検討します。

 ◎読み切り『夢泡釣団〜ビートルズ編〜』作画:やすべえ

 今週は『Mr.FULLSWING』が作者都合休載のため、先週に続いて代原の出番に。先日発表になった第59回(03年下期)「赤塚賞」で佳作を受賞した『夢泡釣団〜ビートルズ編』が掲載されました。
 本来なら本誌に掲載されるようなクオリティの作品ではないはずなので、こういう場で論評するのは可哀想ではあるのですが、ルールですので仕方ありませんね。

 まずですが、一言で言うと稚拙です。ヒット作を研究した跡も窺え、決して根本的に下手クソというわけではないのですが、線の頼りなさは如何ともし難いものがあります。また、全体的なメリハリが狂っていて、実情以上に下手なように見えてしまうのが惜しいですね。
 ここはひとつ、担当さんの指導の下で画材選びから勉強して、上達目指して頑張ってもらいたいと思います。

 で、ギャグについても「未だ修行前」…といった感じですね。“ボケ”の部分に関しては、僅かながらも天性のセンスを感じさせてくれるのですが、それを間の悪過ぎて単調なツッコミが全て台無しにしてしまっています
 これは、駒木の下手な論説を聞くよりも、是非とも巻末の『ピューと吹く! ジャガー』と読み比べてもらった方が、随分と話が早くなると思いますが(苦笑)、1つ1つのボケを引き立たせてこそツッコミであって、ただ単に「なんでだよ!」とか「マジかよ?」とか言ってるのは、話の腰を折っているだけなんですよね。その辺を改善する事が、とりあえずの重要課題になって来ると思います。

 評価はC寄りB−ということで。そう言えば、ネット界隈ではよく、「『赤塚賞』の佳作でこんなの?」…なんて意見を目にするんですが、まぁ「赤塚賞」の佳作なんて、大概こんなものですよ。悲しいかな、「赤塚賞」の佳作が「十二傑新人漫画賞」の最終候補と互角以下なのが現状なのです。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『神撫手』作画:堀部健和【現時点での評価:B−/連載総括】

 秋シリーズの新連載は、遂に全作品枕を並べて討ち死にとなりました。“3作品3突き抜け”というのは、ここ最近でも記憶に無いですね。
 さて、この作品についてですが、まぁ連載開始前から危惧していた通りになったな…というところです。根本的なストーリーテリング力が足りない若手作家に、読み切りの時点で破綻している作品の連載化を強行したところで成功するはずが無いんです。これは作家の責任であると共に、編集サイドの責任でもあるでしょう。
 しかし、『旋風の橘』を思わせる脈絡の無い露骨なテコ入れには、野次馬的な視点では楽しませてもらいました(笑)。ただ、堀部さんには二度とこういう事にならないよう、猛省&精進をお願いしたいところです。
 最終評価はC寄りB−で据え置きとします。

☆「週刊少年サンデー」2004年新年2号☆

 ◎新連載『怪奇千万! 十五郎』作画:川久保栄二

 当ゼミでは既報の通り、今週から久々に「サンデー」で大型の新連載シリーズが組まれる事になりました。
 その第1弾となる今週からの新連載は、川久保栄二さんの『怪奇千万! 十五郎』です。これは、昨年まで増刊や本誌読み切りで『医術師 十五郎』として発表していた作品を、大幅モデルチェンジして連載化したものですね。

 毎度ながら「サンデー」系のデータベースが乏しい(特に増刊の)ため、『医術師 十五郎』以前の川久保さんのキャリアはほとんど判りませんでした
 ただ、駒木がどこからともなく小耳に挟んだ未確認情報によると、川久保さんは約10年前から少年誌(この時も『サンデー』?)で活動していた…という話もあるそうです。短期連載も経験済みなんだそうですが、駒木はこの時期、余り熱心にマンガを読んでいたわけではありませんでしたので、恥ずかしながら全く記憶にありません。絵柄が絵柄だけに、読んでさえいれば別ペンネームでも覚えているはずなんですが……。
 オフィシャルの情報は、間もなく『サンデーまんが家バックステージ』で公開されるとは思いますが、この未確認情報の真相をご存知の方、もしいらっしゃいましたらどうか宜しく。

 ……では、内容についてお話してゆきましょう。

 まずなんですが、やはり(悪い意味で)独特過ぎる絵柄が気になって仕方ないところですね。特に首から上のデッサンが必要以上に崩れまくっていて、更に顔のアングルのバリエーションが乏しいので、物凄く違和感を感じてしまいます。他の部分は変じゃないので余計に目立ちますね。
 あと気になるのが、リアクション(ズッコケ、電撃浴びてガイコツ丸見えetc……)がいちいち古臭いという事でしょうかね。こういう所を見ると、やっぱりこの人、隠れバテレンならぬ隠れベテランなんじゃないかと疑ってしまうわけですが。

 しかし、そんな絵のアラなんてどうでも良くなってしまうほど酷いのがストーリーと設定です。
 もう設定やストーリー展開のツッコミ所はありとあらゆる場所に、それこそt.A.T.u東京ドームコンサートで空席を探すように簡単かつ大量に見つかるわけなんですが、それより何より、ストーリーを構成する大前提が根元から腐っているんですよ、この作品は。一言で言えば、「もう抜くしかないほど悪化した虫歯」状態です。いや、「生まれながらにして差し歯」と表現した方が妥当でしょうか。

 具体的に説明しましょう。そもそもこの作品は、駒木の敬愛する仲間由紀恵様が主演あそばされている(笑)ドラマ・『TRICK』のように、“怪奇現象”とされているモノが実はトリックである事を暴く…という部分を核にしたお話のはずです。少なくとも、第1話の途中の展開までは、そう受け取れるシナリオになっていました。が、実際の展開は終盤になって逸走を始めます。なんと、
 「怪奇現象の正体は、実はこういう怪奇現象でした! これにて一件落着!」
 ……などという、思わず「オイオイ、それは全然解決してへんがな!」…などと、素に戻ってツッコミをカマしてしまうようなエンディングを迎えてしまったのです。これは『名探偵コナン』で言うなら、密室殺人事件が「犯人は、壁を通り抜ける超能力を持つコイツでした!」というオチで終わるようなモノで、文字通り「お話になってない」状態です。

 前シリーズ『医術師 十五郎』の頃から、ミもフタもない問題解決法が目立っていましたが、今回はミステリ仕立てになっている分だけ、余計にその破綻振りが目立ってしまいました。正直なところ、「こんなマンガ、よく載せたな」というのが実感です。
 (半ば信じ難い事に)これでも前シリーズは増刊号でトップクラスの人気を誇っていたそうなんですが、それにしてもやっていい事といけない事はあるだろうと、制作サイド各方面に物申したい所存です。
 評価は当然ながらCとします。しかし、こういう作品に出会うと思いますね、「よし、来年の『コミックアワード』も『ラズベリーコミック賞』は外せんな」と(笑)。


 ……というところで、今週のゼミはここまで。いよいよ明日の深夜は2周年記念式典です。準備作業が難航しているため、開始が若干遅れるかも知れませんが、どうか年に1度のお祭りを楽しみにお待ち下さい。

 


 

2003年第96回講義
12月12日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第2週分・合同)

 今頃になって、「コミックアワード」の開催予定日まで10日を切っている事実に気が付き、愕然としている駒木ハヤトです(苦笑)。武井宏之さんが最新単行本の中で、読み切り『エキゾチカ』が、締め切り3週間前まで全くの手付かずだった…という裏話を日記マンガ形式で激白してましたが、今の当講座の状況も似たようなモンだとお考え下さい(苦笑)。来週早々から、いや今から修羅場確実です。
 ……しかし、武井さんの描いた日記マンガ、どことなく“初代師匠”の桜玉吉さん『漫玉日記』シリーズを彷彿とさせた作風だったのが興味深かったです。武井さんと言えば、現在「ジャンプ」で活躍中なこともあって“和月組(=和月伸宏門下)”という括りで扱われるケースが多いですが、今回のマンガだけ見たら明らかに“桜玉吉門下”って感じでしたね。(もっとも、武井さんが在籍していたのは、まだ『しあわせのかたち』の頃でしたが)

 ──さて。それでは時間も切羽詰っておりますし、情報系の話題からお届けしましょう。今週は内容が盛りだくさんです。

 まずは新人賞の話題から。今週は「サンデー」では03年度後期「新人コミック大賞」少年部門の、「ジャンプ」では月例新人賞・「ジャンプ十二傑新人漫画賞」10月期分の審査結果発表がそれぞれありましたので、ここでも受賞者・受賞作を紹介しておきましょう。

第53回小学館新人コミック大賞・少年部門
(03年後期)

 特別大賞=該当作なし

 
大賞=1編

 ・『エッグノック』(=本誌または増刊に掲載決定)
   
ネモト摂(27歳・千葉)

 《選評要約:「画力は文句無しにプロ級。ただし、深刻なテーマなので青年向きの印象も。今後は少年誌での連載を意識したキャラクター作りを」(高橋留美子さん)「構成力、画力ともに、このまま雑誌に載っていても全く違和感のない作品。後は本人がどのような作家を目指すか」(あだち充さん)「完成度が高くて良い作品。ラストの展開が新鮮で、しかも内容に驚かされた。色々考えさせられるストーリーだった」(青山剛昌さん)「見事なドンデン返しにやられたという感じ。平凡に見えるストーリーだが、ラストシーンで作者の高い能力が窺える」(史村翔さん)

 
入選=2編
  ・『あたま』(=増刊に掲載決定)
   麻湧(23歳・北海道)
  ・『炎火のこぶし』(=増刊に掲載決定)
   ハセガワユージ(20歳・東京)
 佳作=2編
 
 ・『ロードオブメッセンジャー』
   高野裕也(20歳・東京)
  ・『たけし爆発5秒前』
   大塚真史(22歳・神奈川)
 最終候補=3編
  ・『DONBE』
   下下下下下下(=さかしたさげお)(25歳・埼玉)
  ・『影繰り』
   ゆうき美也子(23歳・東京)
  ・『快適ウソライフ』
   名久井幸恵(25歳・東京)

第7回ジャンプ十二傑新人漫画賞(03年10月期)

 入選=該当作無し
 準入選=該当作無し
 佳作&十二傑賞=1編
 ・『遊蕩☆法師』
(=本誌か増刊に掲載決定)
  里谷竜希(24歳・神奈川)
 
《久保帯人氏講評:絵もキャラも表情も良い。ただ、中盤に主人公が嫌味になるのが少々印象が悪い》
 
《編集部講評:アップの際の顔のゆがみが気になる。ただし、妙な迫力と勢いが感じられる。)
 最終候補(選外佳作)=7編

  ・『─青─』
   杉田尚(22歳・北海道)
  ・『NARIKIRI』
   肥田勝典(27歳・埼玉)
  ・『MIND DISC』
   奥山祐美(22歳・茨城)
  ・『その少年は見てた』
   西嶋賢一(23歳・埼玉)
  ・『Zの男』
   坂井ユウキ(24歳・新潟)
  ・『日本製少年』
   山下実(23歳・福岡)
  ・『トレーサー』
   由城アラタ(21歳・東京)

 受賞者の過去のキャリアについては以下の通りになります。(もしチェック漏れがありましたら、BBSでご指摘下さい)

 ※「新人コミック大賞」
 ◎入選の麻湧さん…01年度「ストーリーキング」ネーム部門で最終候補、また「天下一漫画賞(現:ジャンプ十二傑新人漫画賞)」02年11月期でも最終候補
 ◎佳作の高野裕也さん「まんがカレッジ」02年12月&03年1月期で努力賞
 ◎佳作の大塚真史さん「まんがカレッジ」03年4月期で佳作
 ◎最終候補のゆうき美也子さん「まんがカレッジ」03年6月期で努力賞。
 ◎最終候補の名久井幸恵さん過去に「まんがカレッジ」で努力賞に入賞経験アリ(期別不明)

 ※十二傑新人漫画賞
 ◎最終候補の肥田勝典さん矢吹健太朗さんのスタジオでアシスタント。
 ◎最終候補の山下実さん99年8月期、00年3月期、01年11月期に「天下一漫画賞」への投稿歴があるそうです。(受講生さんから情報を頂きました)

 「新人コミック大賞」の方は、「サンデー」の月例賞出身組や「ジャンプ」からの移籍組など、過去に何らかの実績のある“新人予備軍”さんたちの活躍が目立ちました。
 また、大賞受賞のネモト摂さん別ペンネームで既にデビュー済みではないか? という声がネット界隈から複数挙がっており、どなたかの調査結果を待ちたいところです。
 しかし、3人同時に受賞即デビュー決定とは、少なくとも当ゼミが開講されてからは初めての珍しいケース。積極的に新人をデビューさせていこうという方針の表れなのか、それともただ単に“タマ不足”なのか判らないんですが、「まるで『ジャンプ』の新人賞みたいだな」…と思ったりしました(笑)。

 なお、今週の「サンデー」では、秋に発売されたルーキー増刊の“ルーキートライアル”優勝者の発表もあり、先週の「読書メモ」枠でレビューさせてもらった『河児』作画:四位晴果)が見事“ルーキーキング”受賞作となりました。個人的には極めて順当な結果だと思ったりしているのですが、何はともあれ、四位さんおめでとうございました。

 さて、「サンデー」関連情報はまだあります。以前から噂に挙がっていた、この冬からの新連載情報が公式アナウンスされましたので、こちらでも紹介しておきます。

「サンデー」新連載ラインナップ

 ◎第1弾・新年3号(次週発売)より新連載
 …『怪奇千万! 十五朗』(作画:川久保栄二)
 ◎第2弾・7号より新連載
 …『暗号名はBF』(作画:田中保佐奈)
 ◎第3弾・11号より新連載
 …『こわしや我聞』(作画:藤木俊)
 ◎第4弾・12号より新連載
 …『思春期刑事ミノル小林(かなり仮)』(作画:水口尚樹)

 ……今回のラインナップは、全員が今回初の週刊連載となるフレッシュな顔触れとなりました。
 ──って、何だか同じような事を以前言った事があるなと思ったら、秋の「ジャンプ」新連載シリーズ紹介の時でした(苦笑)。ちなみにその時新連載された3作品は全部打ち切りor打ち切り濃厚になってますが、こちらの4作品の行く末も大変気になるところですね。
 また、4・5合併号からは『きみのカケラ』作画:高橋しん)が超久々の連載再開となります。連載中断後にアシスタントが大幅(というより全員?)入替になるなど、バックステージでは表向きの「体調不良のため休載」だけでは括れないドタバタがあったようですが、何とか1年がかりでリスタートの態勢が整ったようです。中断前はアンケートが最下位クラスだったという噂も聞いた事がありますし、他にも問題が山積されたままですが、ここらで一発、大ヒット作家の意地を見せてもらいたいものです。

 
 ──それでは、今週分のレビューへ。対象作は「ジャンプ」から新連載1本と代原読み切り1本、そして「サンデー」から読み切り1本計3本となります。
 なお、今週の「チェックポイント」は諸事情のため、必要最小限の内容に留めさせて頂きます。
 

☆「週刊少年ジャンプ」2004年新年2号☆

 ◎新連載『銀魂』作画:空知英秋

 「ジャンプ」年末新連載シリーズ第2弾は、このシリーズ中唯一のルーキーとなる空知英秋さんの登場です。
 空知さんは今年24歳になりますが、キャリアはまだ1年強の新人作家さん。ここ最近の「ジャンプ」では異例の抜擢ですね。実は、これが「ジャンプ」系の新人さんでは初めての“当講座開講後デビューの連載作家”誕生だったりします。
 そんな空知さんのデビューは、先ほども申し上げた通り1年強前の02年9月同年6月期の「天下一漫画賞」佳作受賞作『だんでらいおん』が本誌02年42号に掲載されたもので、いきなりの本誌デビューでした。その後、本誌03年17号に読み切り『しろくろ』を発表したのを経て、今回の連載獲得となりました。
 デビュー以来、強運にも恵まれて順調過ぎとも言える出世街道を歩んで来た空知さんですが、果たしてチャンスを実らせる事が出来るでしょうか──?

 まずはですが、一応基本的な作画力は認められるものの、さすがに「連載作家」というカテゴリで見た場合、若干の物足りなさが否めません
 以前の作品でも指摘したディフォルメ技術にしても(やや改善の傾向が見られるものの)拙いですし、全体的にキャラの表情が硬いのが特に気になります。微妙な感情の起伏を表現出来ていないと言いますか、顔色の“色数”が絶対的に足りていないという印象があります。
 また、アシスタントを使いこなせていないのか、背景処理も作業量が足りていない気がします。やはりこの辺りはキャリア不足が響いている感じですね。

 そして、デビュー以来定評のあったストーリー・設定についても、初の連載で勝手が狂ったのか、少なくとも第1回を見た限りでは長所より短所の方が目に付く内容に終始してしまっています。
 特にマズかったのが世界観の骨組みとなる舞台背景ですね。現実の世界における日本の開国──外国船と外国人(異人)の来訪による鎖国解消&社会変動──を、宇宙船と宇宙人(天人)による出来事にしてみた…という発想は悪くないのですが、いかんせん設定の練り込みが足りなさ過ぎた感じです。例えば、廃刀令や武士の没落などといった社会変動。何故ゆえ宇宙人の日本進出で、現実の歴史と同じような現象が起こったのか? ……という部分が極めて想像し難く、読み手が作品の世界観になかなか溶け込んでいけないんですね。
 また、主要キャラクターに関しても、現時点では設定の練り込み不足は否定出来ないところで、有り体に言って「見切り発車にも程がある」といった感じです。
 セールスポイントとしては、こちらのデビュー以来定評のあった台詞回しやギャグのノリの良さ、更には“判る人には判る”絶妙の小ネタなどが挙げられるのですが、これらも残念ながら世界観の構築をしくじったために上滑りしているのが現状です。逆に言えば、これから設定の後付けが上手くいって世界観が安定すれば、今度は長所が活きて来るようになるのですが……。

 個人的に空知英秋さんは大変好きな作家さんですし、実力もあると思ってはいますが、残念ながら今回の連載に関しては時期尚早だったんじゃないかと思います。あと1年くらいアシスタント修行を積んで、“連載作品のイロハ”を学んでから挑戦して欲しかったです。
 暫定評価は、これでも甘めと言われるかも知れませんが、長所の部分を一応加点してBとします。奇跡の大逆転を祈って、あと2回じっくりとチェックしてみたいと思います。

 
 ◎読み切り『ハガユイズム』作画:越智厚介

 今週は『ピューと吹く! ジャガー』が作者都合の休載で、ショートギャグの代原が掲載されました。前回の『ジャガー』休載の際にも“代打”を務めた、越智厚介さんの『ハガユイズム』が登場です。
 越智さんは03年上期の「赤塚賞」で最終候補に残り“新人予備軍”入り。そして先述の通り、前回『ジャガー』が休載になった03年44号で今回と同名の別作品で“仮デビュー”を果たしています。

 で、今回の作品ですが、内容的には前回レビューした際10月2日付講義。例の『戦斧王AX』(作画:イワタヒロノブ)をレビューした日ですが、ウザくなければ復習を推奨)と全くと言って良いほど変わっていませんので、多言には及ばないと思います。
 とにかくギャグの密度が薄い上に、オチがワンパターンで意外性不足なんですよね。起承転結の“起”か“承”あたりで小ギャグをカマして勢いをつけ、更にオチで大ネタをブチかます…というくらいの密度でも良いんじゃないでしょうか。裸になるのがオチではなく、序盤で全裸になった上で笑わせる…という“井手らっきょ方式”を試してみるなど、工夫の余地は幾らでもあるはずです。
 絵はギャグ作家としては悪くないだけに、あとはネタだけですね。もっとも、そこが最もセンスが問われる部分なんですが……。
 評価は前回から据え置きでB−としておきます。

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 ◎『サラブレッドと呼ばないで』作:長谷川尚代/画:藤野耕平【現時点での評価:B/連載総括】

 連載当初はネット界隈の評価も高かったこの作品ですが、残念ながらジリ貧状態のまま1クール突き抜けとなってしまいました。
 敗因大局観に欠けたシナリオ構成という事になるのでしょうか。タイトルに相応しいエピソードをたった1話で放棄してしまったり、その場のウケ狙いでメインストーリーの進展を遅らせてしまったりと、知らず知らずの内に序盤で泥沼にハマっていたんでしょう。なまじ実力があったがためにヤラれてしまったという、珍しい失敗のパターンでしたね。
 最終評価はBということで。当ゼミ的には、後半無難にまとめたという事で若干の加点です。次回作は正統派の学園コメディなんかどうでしょうか。期待しています。

☆「週刊少年サンデー」2004年新年2号☆

 ◎読み切り『カズマ来たる!!』作画:万乗大智

 新連載シリーズ前の景気付けというわけでしょうか、今週は『DAN DOH !!』シリーズでお馴染みの万乗大智さんによる読み切りが掲載されました。万乗さんは、今年の8月から9月にかけて、『ふうたろう忍法帖』を短期集中連載しており、まさに「意欲的」という言葉の似合う活動を続けています。
 万乗さんの過去の履歴については、その短期集中連載の際に紹介しました、万乗さんのお兄さんによる公式プロフィールと、「まんが家BACKSTAGE」のプロフィールに詳しいので、ここでは省略させて頂きます。まぁ、キャリアの大半が『DAN DOH !!』シリーズである…という解釈で良いんじゃないかと思いますが。

 それでは内容についてですが、については前作から3ヶ月しか経っていませんし、今日ここで特に言うべき事はありません。やや個性がキツいながらも、マンガの作画技術はちゃんと出来上がっているので安心して読めます。
 ただ、これも前回指摘させてもらったんですが、主人公がまたダンドーと似過ぎというのは、ちと芸が無さ過ぎて印象が良くないですね。微妙に髪型を変えるくらいなら、思い切って容貌をガラっと変えて欲しかったですね。

 で、やや問題アリなのがストーリーと設定です。
 まずシナリオですが、36ページの作品としては若干“容量オーバー”だった気がします。シリアスなテーマを深く描き切れるだけの余裕が感じられず、ドラマとしてはやや平板な展開に終始したのは否めないでしょう。副作用的にテンポは良くなりましたので読後感は悪くないのですが……。
 また、設定もシナリオ圧縮のアオリを受けたのか、かなり強引で消化不良に陥っている感があります。まるで質の悪い学園TVドラマに出て来るような“悪徳校長”もそうですし、第一、主人公の教師が少年である必然性が全く感じられません。その主人公の過去についてのエピソードもいかにも取って付けたようで、盛り上がるどころか逆に“白け”を生んでしまったような気もします。
 原作付きの超長期連載をやった後に完全オリジナルで短編を描く…というのは確かに難しい作業ではあると思うのですが、もうちょっとページ数に見合ったスケールのまとめ方を意識された方が良いのではないかと思いますが……。

 評価は、お話に余りにも見どころが少ないので、厳しくB寄りB−とさせてもらいます。
 個人的な印象ではこの話、TVドラマ版『ごくせん』+『魔法先生ネギま!』みたいな印象を受けました。で、それなのに主人公の口調が『風天組』の野津ケンなので、余計に違和感を感じてしまうんですよね(苦笑)。

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「通信販売で買ったもの」。
 なかなか買い物に行く時間もとれない連載作家さんということもあり、日用品が割と多かった印象がありますね。あとは食べ物やマンガ制作に使用するモノなどですか。何だか俗っぽ過ぎて面白みに欠ける気も(苦笑)。
 駒木はクレジットカードが無い(というか、現状の身分や収入では審査に通らない)事もあって、あまり通信販売は利用した事はありませんね。敢えて挙げるなら、コンサートやスポーツのチケット類などでしょうか。やっぱりこれも面白くない回答だなぁ……(苦笑)。

 あと、『美鳥の日々』関連の大ニュースとは、やはりアニメ化でしたね。最近増えている地方ローカル局系の深夜枠になりそうです。駒木が小耳に挟んだ噂話だと、とりあえず放送期間は1クール限定のようですね。
 この枠で放映されるアニメは、TVでアニメを流すというよりも、熱心な“固定客”にDVDを買ってもらう方が大事なので、その分アニメ作画も相当力が入っているみたいですね。以前紹介した『銭』(作画:鈴木みそ)第1巻のアニメ業界編が思い出される話です。

 ◎『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』作画:中井邦彦【現時点での評価:/連載総括】

 相当な不人気だったのでしょう、「サンデー」としては異例の短期打ち切りとなりました。ただ、さすがにこの作品については、「打ち切られて残念ですね」と言うよりも、「『旋風の橘』の再現が避けられて良かったですね」と言いたくなってしまいますが(苦笑)。
 作品の内容については、もうフォロー出来る要素が全くありません。ありとあらゆる設定がグダグダなので、それに引きづられるようにストーリーもグダグダになってしまったとしか。短編を長編にリライトする際の難しさを色々な意味で教えてくれた作品…という事になるのでしょうか。
 これが中井さんの師匠の江川達也さんなら、いくら中身の無い話でもハッタリとエロで誤魔化して、ウヤムヤのままにソフトランディングして終わらせてしまうんでしょうけどね(笑)。

 
 ……さて、今週分はこれでご勘弁願います。次週は出来るだけ早い内にゼミをやってしまい、週末の「コミックアワード」に備えたいと思います。では。

 


 

2003年第93回講義
12月5日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第1週分・後半)

 久々の前・後半分割実施となりました、今週の「現代マンガ時評」、後半分をお送りします。
 今日の“後半”では、予告しておりました通り、今週発売の「週刊少年サンデー」関連の情報やチェックポイントをお送りした後、来る、今年で第2回となります「仁川経済大学コミックアワード」関連の話題をお送りします。どうぞ最後まで宜しく。

 では、「サンデー」関連の情報から。
 次週発売の04年新年2号では、読み切り『カズマ来たる!!』(作画:万乗大智)が掲載されます。長期連載を終了させたすぐ後にも関わらず短期集中連載を敢行した万乗さんですが、年を越さない内にまた読み切り。本当にそのバイタリティーには脱帽ですね。

 ところでネット界隈では、やたら具体的な新連載4本のラインナップに始まり、長期休載中のアレが復活スタンバイに入ったとか、更には来週号で予定されている『美鳥の日々』の重大発表の中身まで様々な噂が飛び交っていますが、不気味な事に公式情報は現時点で何も出て来ていません。何だか嵐の前の静けさと言いますか、奄美諸島辺りまで来ている台風の情報を、本州からNHKニュースで聞いているような感覚ですね。
 そんな駒木も色々な所(例えば“関係者の知り合い”を名乗る方とか)から色々な噂を小耳に挟んだりしているのですが、最近は談話室(BBS)ですら軽口を叩けないような環境になっちゃってますので、今のところは自粛しときます(苦笑)。ただ、駒木が聞いた話も飛び交っている噂話と大差無いので、確定情報がリークされているのか、又は同じ出所から真実味のあるデマがばら撒かれているのかのどちらかでしょう。
 そういうわけで、まぁここは公式発表があった時のお楽しみという事で。

 ……では、早速チェックポイントから参りましょう。

☆「週刊少年サンデー」2004年新年1号☆

◆「サンデー」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントのテーマは、「今、有り余るほどの力があります。さて、何をしますか?」
 ……何か面白い事を言わないといけないような口調のお題ですね(笑)。しかし、その期待に(多分無意識で)答えて下さったのが、河合さん久米田さんの急造コンビ。「18ページ描きます」と河合さんが言ったところに、すかさず久米田さんがじゃあ俺17ページ描くと(笑)。1ページ減ってるところが何とも。
 しかし、藤田和日郎さん「普段から有り余ってるので、マンガ描く事で力抜いてる」ってのは凄いですね。さすがは富士鷹ジュビロっていうか。
 駒木なら、栗本薫さんのような猛スピードで新人賞用の長編小説を2週間で1〜2本仕上げたいですね。「30枚書き上げて時計見たらまだ5分しか経ってない」ってのを一度体験してみたいものです。

 ◎『美鳥の日々』作画:井上和郎【現時点での評価:B+/雑感】

 「そういや、沢村と美鳥の初恋話って出てないね」
 「あー、そう言えばそうっスね。やっちゃいますか、次あたりでチョチョイと。……あーすいません、コーヒーおかわり」

 ……みたいな、ファミレスでの編集と作家さんの何気ない遣り取りから生まれたようなエピソードでしたね、今回は(笑)。やけにアッサリ肩透かしで終わった感じでしたが、これまでのこの作品のパターンからすると、この初恋の女の子が本当に成長して戻って来るってのも有り得ますからね。
 あ、誰か物好きな方に訊かれそうなんで先に答えておきますが、駒木の初恋はやっぱり実ってません(苦笑)。というか、大学生になってから初恋の人に同窓会で会ったら、コギャルキャラクター時代の小倉優子みたいになってたので、実らなくて正解だったと思います(笑)。

 ◎『結界師』作画:田辺イエロウ【現時点での評価:A/雑感】

 前回と今回のエピソードで、いつの間に良守って時音に“バリバリ片想いモード”になったんだろう? って、かなり違和感感じてしまったんですが……。2人の関係は、いわゆる“友達以上恋人未満”の戦友で、そこから長い間かけてジワジワと恋愛モードに持ち込むもんだと思い込んでたんですけどね。う〜む……。
 これは駒木だけの感覚なのかも知れませんが、田辺さんって自分の張った伏線の威力を少し過信してるような気がするんですよね。以前にもお話したように、時々話の展開が唐突に思える時があるんです。これが作品全体のクオリティを落とす要因にならなければ良いんですが……。


 ◎『かってに改蔵』作画:久米田康治【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 “アイスバーン”の数が「まんがコース」より多いのが「テキストサイトコース」だったりするんですが(笑)。また、そのアイスバーンに突っ込んで行って転倒・再起不能になる人の多い事、多い事……。
 駒木も滑り始めの頃はジャリジャリのアイスバーンに突っ込んでコケそうになりましたが、要所要所で雪が残っている所を見つけて、今でも何とかやっております(笑)。しかし、このコース、滑り始めてから何年も経つのにゴールが来ないなあ……。

 ◎『売ったれ ダイキチ!』作:若桑一人/画:武村勇治現時点での評価:保留中/中間まとめ】

 この『ダイキチ』も「コミックアワード」の審査対象になりますので、ここで再評価をしておきます。
 さて、この作品の第1回をレビューした時に、駒木はこの手の“業界ハウツー・薀蓄モノ”を描く時に留意すべき3つのポイントを挙げました。即ち、

 1.作品で紹介される薀蓄に説得力があるか。
 2.薀蓄はストーリーを引き立てるために存在しており、主客転倒していないか。
 3.主人公側の成功(勝利)に必然性があり、ご都合主義になっていないか。

 ……以上の3点。で、連載開始当初はコレがキチンと出来ていたからこそ、当ゼミでもA−の高評価を出していたわけなのです。が、現在の「松筑プロジェクト」編に突入してからは、これらのポイント──特に“1”と“3”の達成度が極めて怪しくなっています。これでは、とてもじゃないですが良作・佳作相当の評価を下す事など出来ません。
 本当はB−くらいまでに落としても良い所なんですが、連載当初のアドバンテージを相殺させなくてはバランスが取れませんので、ここは評価としておきます。


 ◎『ふぁいとの暁』作画:あおやぎ孝夫現時点での評価:/連載総括】

 で、こっちは遂に連載終了。「鳥人間コンテスト」に出て来る人力飛行機のように、着水寸前で長期間粘っていたこの作品も、残念ながらここまででした。
 今回は登場キャラの後日談を羅列するという、典型的な最終回パターンだったわけですが、この期に及んでも一部キャラクターの区別がつきにくいんですけど駒木は(苦笑)。
 やっぱりこの辺の部分が絶えず作品全体の足を引っ張ってしまった所がありましたよね。似たような外見で似たようなタイプのキャラクターが次から次へと追加されても、シナリオに深みが出るどころか逆効果ですよ。次回作ではこの辺にもっと気を配って頂きたいものです。
 最終評価はB−寄りということで。


 ……というわけで、レギュラー企画はここまで。続きまして、これまで時間等の都合で評価をお届け出来なかった作品の簡単なレビューを2作品ほど、ここで「読書メモ」としてお送りします。

◇駒木博士の読書メモ(12月第1週)◇

 ◎『河児』作画:四位晴果/「週刊少年サンデーR(03年特別増刊号)」掲載

 「コミックアワード」最終エントリー1作目は“新人賞”枠から。「サンデー」版「赤マルジャンプ」とも言うべき、ルーキー増刊からの登場です。

 ……この増刊号、発行部数が僅少なのか、大手コンビニでですら入手困難だったりするのですが、今年はその手の増刊号を何故か大量に入荷する書店を見つけまして、何とか購入する事が出来ました。
 しかし、実際に読み始めてビックリしました。どの新人さんの作品も、申し訳無いがデキが酷い!(苦笑)
 この増刊には“ルーキートライアル”として、新人さんの描いた作品が20本掲載されているのですが、読んでて辛いと言ったらもう……。まず過半数の作品は絵がグダグダで、アマチュア級と言ったらアマチュアに失礼なレヴェルです。で、シナリオもシナリオで、普段このゼミで「こんな工夫の無いコテコテのお話が…」と言っているような作品ですら随分マシに見えてしまうという、(逆の意味で)物凄い事になっていました(汗)。全体的に言って、「赤マルジャンプ」が光り輝いて見えるくらいの水準…と申し上げれば大体の感じは判っていただけるでしょうか。
 ……なもので、駒木も読んでいる最中は「ひ〜、勘弁してくれー。こんなマンガに金払いたくねえぞー」などと心の中で悲鳴を上げておりました。いくら“仕事”とは言え、マンガを読むという事でここまで苦痛を感じなければならんのかと、そう思ってしまいました。

 ──ですが、物事諦めずに最後までやってみるもんです。全20本のラス前・19番目にとんでもない逸材が埋もれておりました。それがこの『河児(←「こうじ」と読みます)でした。プロ野球マンガで、低調なレヴェルの入団テストに参加した主人公がメジャー級の豪速球を披露して関係者の度肝を抜く…というシーンがありますが、図らずも駒木も、この作品と作者の四位さんに度肝を抜かれてしまいましたよ。

 まず。デビュー作だけあって、まだまだ線の力も弱く未完成な部分も多く残していますが、一応の水準はギリギリでクリアしています。そして何よりも、人間よりも老河童(主人公の育ての祖父が河童なんです)などの妖怪の方が達者に描けるという部分に強く惹かれます。こういう“武器”を持っているというのは、今後の活動の幅を大いに広げてくれる事でしょう。

 そして素晴らしいのがストーリーと設定でした。
 まず凄いのが「人間と妖怪が共棲している社会」という特殊な設定を僅か数ページで描写出来ている事。この世界観構築能力は明らかに新人の域を超えています。また、導入部分も極めて秀逸で、読み手をわずか数ページで作品世界に没入させる事が可能になっています。
 シナリオそのものは、家族愛をテーマにした比較的使い古されたストーリーラインなのですが、回想シーンの混ぜ方や台詞回し、更には『BLEACH』を思わせる高度な演出力がこれまた新人離れしており、全く“使い回し”感を感じさせません。
 問題点としては、世界観の描写に1つだけ大きなキズがある事(敢えて人間と妖怪が共棲する事になった理由が描かれていない)が挙げられるのですが、その部分を減点するにしても、それ以外のファクターで積み重ねた得点の方が遥かに勝っています。

 評価はA寄りA−。最近の“新人不況”の中で、とんでもない風雲児が出現しました。来年の四位さんの動向には、受講生の皆さんも是非ご注目を。


 ◎『PLUTO』作:手塚治虫/画:浦沢直樹/「ビッグコミックオリジナル」連載中

 そして最後は、受講生さんからのリクエストに応え、「仁川経済大学賞(グランプリ)」の“ワイルドカード”枠としてこの作品を。まさか当ゼミで(半ば形式上とはいえ)“手塚治虫”のクレジットが入った作品を紹介する事になるとは夢にも思いませんでしたが……。

 もう浦沢直樹さんの画力やストーリーテリング力に関しては、頭に“超”が付くくらいに有名で定評がありますので多言は避けますが、やはりこの作品でも浦沢さんの実力が遺憾なく発揮されています
 浦沢さんの凄い所というのは、ストーリーの進行と世界観の描写を同時に、しかも巧みにやってのける事。特に世界観の描写の大切さを心底理解しているのが強く伝わって来て、非常に好感が持てます。人間とロボットが完全に共棲している事だけでなく、そういう社会に潜むある種のイビツさまでが読み手に伝わる工夫が施されており、これはもう感服するのみですね。
 勿論、シナリオの出来も秀逸です。読み手が混乱しない程度に複雑という、絶妙のサジ加減なミステリーになっていますし、“原作:手塚治虫”という看板に臆する事無く100%“浦沢直樹色”を出し切っている度胸もナニゲに凄いですよね。

 惜しむらくは、ストーリーの進行が連載期間に比べてゆったり過ぎるという所でしょうか。浦沢直樹作品は単行本になった際の完成度が最優先されるらしいので仕方ないんですが、それにしても序盤の“布石”に時間を使い過ぎなような気がしないでもありません。
 時期的な問題もあって難しかったでしょうが、出来れば『20世紀少年』を一段落させてから始動させて欲しかったという思いがあります。
 それでも評価はを出さなくちゃ失礼でしょう。堂々たる今期グランプリ候補作です。

 
 ……というわけで、今期(02年12月〜03年11月)のレビューが全て出揃いました。レビューした作品の総数はなんと122本。よくもまぁ、これだけやって来たもんですね(苦笑)。
 さて、今年の「仁川経済大学コミックアワード」ですが、今回からは新たにギャグ作品を対象にした賞、

 ◆ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞
 ◆ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞

 ……以上2つの部門賞を新設します。賞の概要については追って説明しますが、今後はストーリー作品とギャグ作品は、グランプリを除いて別々に審査される事になります。
 これにより各賞の“重み”が目減りする可能性もありますが、正直言ってギャグ作品とストーリー作品のクオリティを同列で比べるのは大変に困難ですので、ご理解を賜りたいと思っております。

 では、以下に各部門賞のノミネート資格保持作品、及び「仁川経済大学賞(グランプリ)」と「ラズベリーコミック賞」のノミネート作品の一覧を掲示します。
 なお、各部門賞においては、“ノミネート資格保持”という事で、ここに挙げる作品はまだ最終ノミネート作ではありません。「コミックアワード」の直前に“優秀作品賞”という形で最終ノミネート作品を発表する予定ですので、どうぞご承知置き下さい。

※各部門ノミネート(資格保持)作一覧※

仁川経済大学賞(グランプリ)
 …“グランプリ”という名の通り、この1年の間に当ゼミでレビューした作品の中で最も優秀な作品に送られる賞。
 ノミネート資格は、“ジャンプ&サンデー”の名の付く各部門賞の受賞作と、「ジャンプ」、「サンデー」両誌以外のレビュー対象作の中でA評価(但し、連載作品については最新に発表された評価)を獲得した作品。

●(ジャンプ&サンデー・最優秀長編作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀短編作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀新人作品賞受賞作)
●(ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞受賞作)
『最強伝説黒沢』作画:福本伸行/「ビッグコミックオリジナル」連載中)
『PLUTO』作:手塚治虫/画:浦沢直樹/「ビッグコミックオリジナル」連載中)

◆ジャンプ&サンデー・最優秀長編作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」系と「週刊少年サンデー」系の雑誌で長編連載されたストーリー作品が対象。
 ノミネート資格は対象作品の内、A−以上の評価(但し、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『武装錬金』作画:和月伸宏
  《以上、「週刊少年ジャンプ」連載》
『結界師』作画:田辺イエロウ
  《以上、「週刊少年サンデー」連載》

◆ジャンプ&サンデー・最優秀短編作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」、「週刊少年サンデー」系の雑誌に掲載された読み切り、または短期集中連載のストーリー作品が対象。
 ノミネート資格は、長編作品賞と同じく評価A−以上。

『ドーミエ 〜エピソード1〜』作画:高橋一郎
『しろくろ』作画:空知英秋
『詭道の人』作画:内水融
『天上都市』作画:中島諭宇樹
『ヒカルの碁・特別番外編』作:ほったゆみ/画:小畑健
『オウタマイ』作画:梅尾光加
『プリティフェイス 番外編』作画:叶恭弘
『NOW AND ZEN』作画:加治佐修
 《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『美食王の到着』作画:藤田和日郎
『結界師(本誌掲載読切版)作画:田辺イエロウ
『絶対可憐チルドレン』作画:椎名高志
『河児』作画:四位晴果
 《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に掲載》

◆ジャンプ&サンデー・最優秀ギャグ作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」系と「週刊少年サンデー」系の雑誌に掲載された全ギャグ作品が対象。
 ノミネート資格はA−以上の評価(但し、連載作品については、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『スピンちゃん試作型』作画:大亜門
『超便利マシーン・スピンちゃん』作画:大亜門
『超便利ロボスピンちゃん』作画:大亜門) 
『テラピー戦士マダムーン』作画:藤田健司
 《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『黒松・ザ・ノーベレスト』作画:水口尚樹) 
『進学教室 !! フェニックス学園(週刊本誌読切版)作画:水口尚樹
 《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に掲載》

ジャンプ&サンデー・最優秀新人作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年サンデー」の本誌や増刊において、両誌の週刊本誌で長期連載(=短期集中でない連載)を経験していない作家の発表した読み切り・短期集中連載作品または初の長期連載作品が対象。ただし、その作者が他誌で長期連載経験があっても有資格とする“大リーグ新人王方式”を採用。
 ノミネート資格はA−以上の評価(但し、連載作品については、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『ドーミエ 〜エピソード1〜』作画:高橋一郎
『しろくろ』作画:空知英秋
『詭道の人』作画:内水融
『天上都市』作画:中島諭宇樹
『オウタマイ』作画:梅尾光加
  《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『結界師(週刊本誌読切版)作画:田辺イエロウ
『結界師』作画:田辺イエロウ
『河児』作画:四位晴果
  《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に連載または掲載》

◆ジャンプ&サンデー・最優秀新人ギャグ作品賞
(※ノミネート資格保持作品)
…「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年サンデー」の本誌や増刊において、両誌の週刊本誌で長期連載(=短期集中でない連載)を経験していない作家の発表したギャグ作品(初の長期連載作品含む)が対象。ただし、その作者が他誌で長期連載経験があっても有資格とする“大リーグ新人王方式”を採用。
 ノミネート資格はA−以上の評価(但し、連載作品については、連載中に評価が変更されている場合は最新に発表されたもの)を得た作品。

『スピンちゃん試作型』作画:大亜門
『超便利マシーン・スピンちゃん』作画:大亜門
『超便利ロボスピンちゃん』作画:大亜門) 
『テラピー戦士マダムーン』作画:藤田健司
 《以上、「週刊少年ジャンプ」系雑誌に掲載》
『黒松・ザ・ノーベレスト』作画:水口尚樹) 
『進学教室 !! フェニックス学園(週刊本誌読切版)作画:水口尚樹
 《以上、「週刊少年サンデー」系雑誌に掲載》

◎ラズベリーコミック賞(最悪作品賞)
…映画のアカデミー賞に対するゴールデンラズベリー賞をモチーフにした、最悪な作品を表彰する賞。対象作はレビュー対象にした全作品で、あらゆる意味において“最悪”(not最低)な作品を選出する。ただし、ノミネート及び審査基準は駒木ハヤトの独断。

『少年守護神』作画:東直輝/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『テニスの王子様 特別編・サムライの詩』作画:許斐剛/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『キックスメガミックス』作画:吉川雅之/「週刊少年ジャンプ」連載)
『楽ガキFighter 〜HERO OF SAINT PAINT〜』作画:中井邦彦/「週刊少年サンデー」連載中)
『AX 戦斧王伝説』作画:イワタヒロノブ/「週刊少年ジャンプ」掲載)
『ツバサ』作画:CLAMP/「週刊少年マガジン」連載中)

 ……こうしてみると、今年の「ジャンプ」と「サンデー」の傾向がおぼろげながら見て取れて興味深いですね。
 今年の「コミックアワード」は12月20日、21日に実施予定です。どうぞお楽しみに。また、勿論次週も「現代マンガ時評」は実施しますので、そちらも宜しく。では。

 


 

2003年第92回講義
12月3日(水) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(12月第1週分・前半)

 いつの間にか師走です。まだ高校で非常勤講師をやってた去年の今頃には、まさか今年の12月時点でヤフーのモデム配ってるとは夢にも思いませんでしたが、事実は小説より奇なり。でも、どうせ小説より奇妙な現実なら、もっと良い現実が見たいんですが……。
 それはさておき、師走と言えば年末進行。連載をお持ちのマンガ家さんは、ちょうど今頃から地獄モードに突入でしょうか。しかもそういう最中に各出版社で謝恩会なんかが行われるから本当に始末が悪いですよね(笑)。どうして出版業界がそんな自縄自縛的な慣例を作り上げてしまったのか、素朴な疑問を抱いてしまうのですが……(苦笑)。

 さて、そんな中でもマイペースでお送りしております、今年の当講座。ゆったりとしたタイミングで今週分のゼミを始めたいと思います(申し訳無)。
 今週は第2回の「仁川経済大学コミックアワード」関連の事もやらなくてはなりませんので、前・後半に分けてお送りする事にします。今日の“前半”では「週刊少年ジャンプ」関連の情報・レビュー等を、週末にお送りする予定の“後半”では「週刊少年サンデー」関連の情報・チェックポイントと「コミックアワード」関連の企画をやる予定です。どうぞ宜しく。

 それでは、まず「ジャンプ」に関連した情報系の話題からお送りします。今週は03年下期「手塚賞」&「赤塚賞」の審査結果発表がありました。例によって受賞者と受賞作を紹介しておきましょう。

第66回手塚賞&第59回赤塚賞(03年下期)

 ☆手塚賞☆
 入選=該当作なし
 準入選=1編
  ・『ダー!!! 〜便所の壁をブチ破れ〜』(=04年01号に掲載)
   吉田慎矢(18歳・島根)
 佳作=4編
 
 ・『ブレイブハート』
   滝沢いづみ(21歳・神奈川)
  ・『ヘンテコな』
   千坂圭太郎(18歳・京都)
  ・『MosquitoPanic』
   中西まちこ(18歳・京都)
  ・『I ディアー』
   黒木亮(21歳・北海道)
 最終候補=3編
  ・『警泥 ─ケイドロ─』
   内海謙一(21歳・兵庫)
  ・『突撃! ダダダ団』
   山瀬綾斗(26歳・東京)
  ・『electrify』
   舘原晴秋(23歳・宮城)

 ☆赤塚賞☆
 入選=該当作なし
 準入選=1編
  ・『BULLET CATCHERS』
   夏生尚(23歳・神奈川)
 佳作=2編

  ・『夢泡釣団 〜ビートルズ編〜』
   やすべえ(21歳・埼玉)
  ・『みなしごひろしのプロレシアンドリーム〜入門編〜』
   水溜三太夫(24歳・東京)
 最終候補=5編
  ・『あふれてるぜLOVE』
   吉田覚(21歳・新潟)
  ・『THE 研修 ─ザ・けんしゅう─』
   清水雄介(21歳・東京)
  ・『モモヒキ革命児風少年シモモ』
   平野正臣(29歳・東京)
  ・『田舎ののの』
   日丸屋和良(18歳・福島)
  ・『忍者J』
   りゅーじ(27歳・静岡)

 ◎手塚賞準入選の吉田慎矢さん03年6月期「十二傑新人漫画賞」で最終候補
 ◎手塚賞佳作の滝沢いづみさん「月刊少年ジャンプ」02年9月増刊号に読み切りを発表。
 ◎手塚賞佳作の中西まちこさん01年下期&03年上期「手塚賞」で最終候補、01年12月期「天下一」で編集部特別賞を受賞
 ◎赤塚賞準入選の夏生尚さん02年上期「赤塚賞」で佳作。02年31号、03年35号で本誌に代原で読み切りを発表。
 
赤塚賞最終候補の平野正臣さんうすた京介さんのアシスタント。03年3月期「天下一漫画賞」に投稿歴アリ。
 
赤塚賞最終候補の日丸屋和良さん03年度上期「赤塚賞」で最終候補。

 「十二傑新人漫画賞」と比べて見劣りがしないようにするためか、今回から賞金が大幅アップした「手塚賞」&「赤塚賞」の両賞。ただし、応募作のレヴェルは「“再挑戦組”に支えられて何とか現状維持」…といったところでしょうか。
 ただ、この両賞が出身でヒット作(長期連載作品)を出した作家さんが長年出ていない現状(『手塚賞』の場合、同賞出身で最後の“勝ち組”が94年下期武井宏之さん。『赤塚賞』は98年上期村田雄介さん──但し、その3年前に月例賞で入賞済──が最後)を鑑みると、駒木個人的にはこの2つの賞、そろそろ潮時なのではないかという気もしているのですが……。特に「手塚賞」は「ストーリーキング」という後継の新人賞が確立された事ですし、何らかの策を講じないとせっかくの「手塚治虫」という看板が倒れてしまいそうです。
 多分いないでしょうが、もし受講生さんの中に関係者の方が混じっていらっしゃったら、どうか御一考をお願いしたいところでありますね。

 ……それでは、「ジャンプ」今週号分のレビューとチェックポイントへ。レビュー対象作は新連載1本、読み切り1本の計2本です。

☆「週刊少年ジャンプ」2004年新年1号☆

 ◎新連載『DEATH NOTE』作:大場つぐみ/画:小畑健

 「ジャンプ」の年末新連載シリーズ第1弾は、読み切りからの“昇格”となりました、少年誌では異色のサスペンスホラー作品・『DEATH NOTE』です。

 作者のプロフィールですが、まず原作の大場つぐみさんに関しましては、残念ながら全く詳細不明というのが現状です。ここ数年の「ジャンプ」系新人賞の受賞者リストにその名前は無く、Google等で検索してもこの作品に関する以外の所で名前は出て来ていません。
 通常「ジャンプ」では、その作家さんの“ジャンプデビュー”の際にはプロフィールを公開するのが常であり、それを考えると大場さんが新人マンガ家さんであるという“線”はまず消えます。となると、別分野での実績を残したクリエイターさんという事になるのですが、それなら著書などを介してネット上に名前が残っているはずで、どうにも不自然です。
 となると、この大場つぐみという方は、“有名作家(マンガ家or小説家)の別ペンネーム”と考えるのが最も自然なような気がします。例えば、『いちご100%』連載中の河下水希さんは、かつて桃栗みかん名義で少女マンガを描いていた事で有名ですが、同様の例は過去にも多数ありました。あくまでも推測の域を出ませんが、大場さんの場合もそのパターンなのではないでしょうか。
 ただ、今回は作画担当者付の原作ということで、正体探しをするにしても手がかりが非常に少ないのがアレですね。恐らくはご自身か業界関係者がリークするまでは、真相は闇の中…という事になりそうです。

 一方、作画担当の小畑健さんについては多言を要しませんね。『ヒカルの碁』(原作:ほったゆみ)で念願の大ヒット作を輩出したベテラン作家さんです。
 小畑さんは1985年下期の「手塚賞」で準入選受賞者ですから、キャリアは丸18年。この時期の増刊号掲載作家リストが散逸しているので正確なデビュー時期は確定出来ませんでしたが、本誌初登場は88年46号に掲載の読み切り『CYBORGじいちゃんG』で、一般的にはこれがデビュー作として認識されているようです。ちなみに、この時は土方茂というペンネームでした。
 そして翌89年22号から、この『CYBORGじいちゃんG』で連載デビューを果たしますが、残念ながら31回で終了。その後も原作付作品を中心に何度も読み切りや連載作品を発表しますが、いずれもヒットには至りませんでした。しかし、その卓越した画力は誰もが認めるところで、早くその実力相応のヒット作が出る事を望んでいたファンも少なからず存在していました。
 そんな小畑さんにとって念願の大ヒット作となったのが、先述した『ヒカルの碁』です。99年2・3合併号から中断を挟んで約4年半のロングランとなったこの作品は、連載開始間もなくから人気を集め、名実共に小畑さんの代表作と言える名作となりました。
 そして、『ヒカルの碁』終了後にも精力的な活動を続ける小畑さん、今回は読み切り発表を挟んでわずか半年での連載復帰となりました。果たしてこれが第2の代表作となるか……といったところでしょうか。

 ……さて、それでは『DEATH NOTE』の内容について述べてゆきましょう。

 に関しては何も口を挟む事はありません。というより、とても口を挟めません(苦笑)。この小畑さんの絵に関しては、「文句言うなら、お前が週刊ペースでこの絵を描いてみろ」という反論が成り立つような気さえします(笑)。

 次に、読み切り版では問題が見受けられたストーリー&設定ですが、こちらは格段に良くなっています

 基本的な世界観や設定そのものは読み切り版と変わりないのですが、主人公をアクの強いキャラクターに変更させた事で、一気にストーリーが良い方向へ転がりだしましたね。中途半端に天才的な頭脳と自意識過剰なプライドを持った“自称・優等生”が、心の中で飼っていた“闇”を短期間で膨張させる様がヒシヒシと伝わって来て(サスペンスホラーとして)非常に良い感じです。
 またこの“闇”の描写が非常に巧みなんですよね。何と言いますか、藤子・F・不二雄先生のSF短編を髣髴とさせるような、妙にリアルで生々しい人間の暗黒面が見事に描かれていて、大変に素晴らしいと思います。
 あと、脚本面もスムーズで良いですね。特に死神・リュークが心の中で言い放った「やっぱり…人間って…面白!」というセリフが効果抜群です。このセリフのお蔭で、読者は主人公に過度な感情移入をする事なく、客観的なスタンスを維持したまま作品を読み込めるのです。この主人公って変に生々しいですから、下手に感情移入すると自己嫌悪含みの不快感を抱いてしまう恐れがあるんです。それを回避できたというのは、非常に意義があるセリフだったと思いますよ。

 ただ惜しむらくは、その直後のラスト2ページ。ICPOの会議をインターネット中継で眺めている謎の人物…というシチュエーションにリアリティが無いため、それまでのリアルさの反動で急に白けてしまった所
 これは第2話以降の展開如何ですが、ここを発端にストーリーのクオリティが急降下する可能性もあり、未だ予断を許さない情勢と言えます。

 ……そういうわけで、今回時点の評価は保留。ただ、ラスト2ページに入るまでなら十分A評価に値する、極めてレヴェルの高い作品です。不安を抱きつつも期待して次回以降を読んでみたいと思います。


 ◎読み切り『ダー!!! 〜便所の壁をブチ破れ〜』作画:吉田慎矢

 今週の読み切りは、この号で結果が発表された「手塚賞」の準入選作が早速登場。受賞即本誌掲載という、新人作家さんにとって最高のスタートとなりました。
 作者の吉田慎矢さん現在18歳で現役高校生。勿論これがデビュー作となります。

 まずについてですが、これがデビュー作、しかも年齢が18歳という事を考えると、及第点は出せるのではないかと思います。動的表現や迫力のあるシーンなどの描写はソツなく出来ており、マンガ的表現の基礎能力は備わっていると判断して良さそうです。
 ただ、全体的な画力は未だ発展途上です。構図も凝り過ぎていて逆に見辛いシーンもあります。顔のアップやバストアップを不用意に多用しているのも、手抜きしているように見えて余り歓迎出来ませんね。

 次にストーリー&設定ですが、全体的なクオリティは別にして、いかにも新人賞を受賞しそうな、背伸びしていない素朴なお話ですね。ボクシングを題材にしたダメ主人公の成長ストーリーは、これまでにも無数に描かれて来ましたが、この作品もその前例を綺麗に踏襲したオーソドックスなシナリオです。
 逆に言えば新味が無いとも取れるのですが、冒険を捨てて完成度を取るという選択は、分相応で妥当だったんではないかと思います。この作品は結果的にデビュー作になってしまいましたが、執筆当時は“新人予備軍”の単なる習作原稿だったのですからね。

 「手塚賞」に限らず、この手の新人賞はどうしても“お山の大将と井の中の蛙たちの青臭い自己主張合戦”の趣となります。各地の“村一番レヴェル”の作家志望者たちが、「俺って凄いんだぜ」という自己アピールを作品の中に必要以上に込めてしまうからです。
 ですが、そんな「俺って凄い」も、プロである審査員の皆さんにとってみれば、ほとんどが“単なる勘違い”なわけでして(笑)、審査している内に大概ウザくなって来る事もあるとか無いとか。なので、そういう中にこういうサッパリした作品──悪く言えば陳腐な作品が混じっていると、その反動で必要以上に良く見えてしまうものなのだそうです。
 そういうわけで、今回は(プロの描いた作品としてなら内容的に指摘したい部分は山ほど有りますが)これで良いと思います。ただ、このクオリティをデビュー2作目に持って来られても、今度は読者が納得しないと思います。吉田さんにはここをゴールだと思わず、もっともっと精進してもらいたいですね。せっかく賞金が100万円も貰えたのですから、そのお金を資本にして良い作品を作り上げていって欲しいと思います。

 あと蛇足ながら、細かい部分について若干の苦言を。
 まず題名。いくら作品の内容に即したタイトルとは言え、「便所」は無いんじゃないでしょうか(苦笑)。「便所」という言葉が持つパワーというのは凄くて、どんな作品でもギャグマンガっぽく感じられてしまうんですよね。今回の場合はただ単に「壁をブチ破れ」でも良かったくらいだと思います。
 また、肝心のボクシングが、映画『ロッキー』ばりの“ボクシング風ドツき合い”に終始したのも残念でした。さすがにアゴへ“ベストパンチ”まともに喰らって立ち上がるってのは、人間業じゃありませんので。あと、最後のワン・ツー、右ストレートのはずが右フックにしか見えないのは気のせいでしょうか?

 評価はBとしておきましょう。とりあえず次回作で真価を問いたいと考えています。

 

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントについて箇条書き形式で雑感。

 ・澤井啓夫さん…松屋で牛丼(牛めし)とめかぶ……。どうして「ジャンプ」作家さんって食生活がジャンクで必要以上に安上がりなんでしょうか(苦笑)。もうちょっと良いモン食いましょうよ。
 ・冨樫義博さん…で、こちらも(笑)。もうどうせなら、スタジオか自宅に専属のカレー専門料理人雇ったらどうですか。毎日「どっちの料理ショー」で出て来るような豪華カレー作ってもらって下さい。

 ◎『こちら葛飾区亀有公園前派出所』作画:秋元治【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 何て言うか、外国のB級バラエティー番組で大阪が紹介されたらこんな感じになるんだろうなーと(笑)。細かい部分は勿論のこと明らかに違うんですが、根底に流れている精神みたいなものは妙に似ているような気もする…という感じでしょうか。
 ただ、大阪人というか近畿の人間は、別にあそこまで東京人を嫌ってないので安心して旅行しに来て下さい(笑)。

 ◎『HUNTER×HUNTER』作画:冨樫義博【開講前に連載開始のため評価未了/雑感】

 捨てキャラに近い扱いかな…と思っていたナックルなんですが、また冨樫作品の脇役らしい面白いキャラになってますなー。「はずしたら俺死ぬぞこれオイ」とか「信じるぞコラァァ!!」とか、セリフも良い味出し過ぎ(笑)。
 しかもそこで終わらせずに、キッチリと話をもう一歩進めてしまうところが冨樫流なんですよね。(と、不特定多数の別の作家さんに無言のメッセージw)


 ……というわけで、前半分は以上。後半は週末の競馬学講義前に何とかする予定でいます。

 


 

2003年第90回講義
11月28日(金) 演習(ゼミ)
「現代マンガ時評・分割版」(11月第5週分・合同)

 またしても遅くなりましたが、今週のゼミを始めます。「ジャンプ」の発売日からほぼ1週間経って「今週のレビュー」なんて言ってるのもアレなんですが……。

 さて、そういうわけで時間がありません。まずは先週から溜め込んだ分もある情報系の話題から。

 まずは受講生の皆さんも注目しているであろう、「ジャンプ」年末(雑誌的には04年新年)新連載シリーズのラインナップが発表されましたので、こちらでも改めて紹介しておきます。

新連載シリーズ・今回のラインナップ

 ◎第1弾・新年1号(次週発売)より新連載
 …『DEATH NOTE』(作:大場つぐみ/画:小畑健)
 ◎第2弾・新年2号より新連載
 …『銀魂』(作画:空知英秋)
 ◎第3弾・新年3号より新連載
 …『LIVE』(作画:梅沢春人)

 ネット界隈の噂では、今年2回目の新連載4本か…という説もありましたが、とりあえずオフィシャルでは“標準モード”の新連載3本ということに。
 ただ、だからと言って打ち切りも3本で断定できるかと言うと微妙な所なんですよね。前回の改変では新連載3本で打ち切り2本でしたので、今回はその逆で打ち切りが1本多くなるかも知れませんし。掲載順などを見ても、今期の新連載の生き残り2本(『サラブレッドと呼ばないで』&『神撫手』)が“瀕死状態”なのは明白ですし、場合によると4本打ち切りもあり得ます。まぁ3本入れ替えで片方が生き残るにしても、ぶっちゃけ『闇神コウ─暗闇にドッキリ─』と同じパターンになるのは目に見えてますが……。

 で、新連載のラインナップですが、有り体に言えば、「『ジャンプ』の僅かな“残弾”を惜しげも無く投入して来たなぁ…」という感じですね。小畑健さん、梅澤春人さんといった固定ファンの多いベテラン作家さんに加えて、ネット界隈でも評判の高い若手・空知英秋さんをぶつけて来るとは思い切ったモンです。
 しかし、現在のラインナップの中に初連載の若手作家さんが飛び込んでいくのは大変ですよねぇ。ライバルが小畑&梅澤両氏に加え、『ごっちゃん』、『ミスフル』あたりになりますから……。生き残るにはハンパじゃないパワーが必要になると思いますが、新人・若手が育たないと「ジャンプ」はどうにもなりませんので、そういう意味でも空知さんには頑張ってもらいたいものです。

 なお、次週発売の「ジャンプ」新年1号には、読み切り『ダー!!! 〜便所の壁をブチ破れ〜』作画:吉田慎矢)が掲載されます。
 吉田さんは03年6月期『十二傑新人漫画賞』で最終候補まで残ったのが“最高位”の新人さんで、勿論これがデビュー作。6月時点で17歳ということですので、現在は現役高校生でしょうか。題名や次週予告のカットでは一体どんな作品か全く判らないのですが、ページ数から言ってストーリー系作品のようですね。

 ……さて、先週のゼミで扱う予定だった「ジャンプ」系の新人賞・「ストーリーキング」03年下期の審査結果が発表になってしますので、こちらの受賞者・受賞作を紹介しておきましょう。

第10回ストーリーキング(03年下期)

 ◎マンガ部門
 キング=該当作無し
 準キング=1編
 ・『みえるひと
』=「赤マル」掲載決定
  岩代俊明(25歳・東京)
 《講評:とにかく見やすいのが印象的。コマ割りもキッチリされていて絵柄にも好感が持てる。前半のストーリー展開が淡々とし過ぎているのでリズムに気をつけて欲しい。迫力ももっと欲しいところ》
 奨励賞=該当作なし
 最終候補(選外佳作)=7編
  ・『FANNY STORY』
   森田将文(23歳・東京)
  ・『蹉跌』
   雪田鉄蔵(26歳・京都)
  ・『HIGH SPEED GIRL』
   福代ゆりか(18歳・島根)
  ・『僕とお面』
   佐倉茶太郎(19歳・千葉) 
  ・『料理や』
   西誠(17歳・千葉)
  ・『one armed abyss』
   西島麗(17歳・宮城)
  ・『ぶ霊んますたあ』
   岸のりこ(19歳・栃木)   

 ◎ネーム部門
 キング=該当作無し
 準キング=1編
 ・『いのちやどりしは

  高野勇馬(25歳・兵庫)
 《講評:文楽という馴染みの薄いジャンルに挑戦し、その面白さを演出出来ていた点を大きく評価した。あとは主人公が文楽に興味を持つ理由の弱さ等、キャラクターをじっくり描く意識を高めて欲しい》
 ・『桐野佐亜子と仲間たち

  二戸原太輔(21歳・福岡)
 《講評:「能力バトル」という設定自体はそれほど新鮮ではなかったが、戦闘場面におけるレベルの高いアイディア力と、キャラの“強さ”を確実に演出する力を感じさせた。ただし「能力とは何か」という部分の説明が不足していたのが残念》
 奨励賞=該当作なし
 最終候補(選外佳作)=6編
  ・『羽ばたく音楽』
   大館貴子(33歳・埼玉)
  ・『ROGUE』
   陽祐(20歳・兵庫)
  ・『一つ結び』
   山本春助(18歳・長崎)
  ・『霊飼いの宿』
   赤羽潔(27歳・東京)
  ・『鬼丸王』
   黒犬のしっぽ(36歳・東京)
  ・『長靴を履いた猫』
   宮田英俊(23歳・兵庫)

 受賞者の皆さんのキャリアは以下の通りです。

 ◎マンガ部門最終候補の森田将文さん01年11月期、02年1月期、02年7月期、03年1月期の「天下一漫画賞(現:十二傑新人漫画賞)」で計4回最終候補。
 ◎ネーム部門最終候補の黒犬のしっぽさん02年度、及び03年上期「ストーリーキング」でも最終候補。

 なお、マンガ部門準キングの岩代俊明さんは、活発に同人活動もしていたようで、Googleで名前を検索すると所属サークルのウェブサイトに飛べたりします。
 そこでは18禁マンガも描いた事があったような記述が載っていましたが、まぁ「ジャンプ」では成人誌出身の真倉翔さんが活躍していたりしてますので、これは問題にならないでしょう。大事なのは、これから商業媒体で優れた少年マンガが残せるかどうかです。講評を見る限りでは、まだまだ課題が残っているような感じですが、恐らく来春の「赤マル」に掲載されるデビュー作の出来映えに注目してみたいところですね。

☆「週刊少年ジャンプ」2003年52号☆

 ◎読み切り『ぷーやん』作画:霧木凡ケン

 今週の読み切りは、知る人ぞ知るベテラン下積み作家・霧木凡ケンさんが登場です。
 間もなくデビュー12周年となる霧木さんのデビューは1991年、霧木さんが弱冠15歳の時。これまでのキャリアは『シェルター』さんの『霧木凡ケン作品リスト』に詳しいので、そちらを参照して頂ければ…と思いますが、これまでに「ホップ☆ステップ賞(現:「十二傑新人漫画賞」)」入選「赤塚賞」準入選増刊号に作品掲載6回週刊本誌に作品掲載2回…というキャリア相応の実績を残しています。
 そして今回は3年ぶり3度目の本誌掲載。悲願の連載獲得へ向けて、文字通り三度目の正直なるか…といったところでしょうか。

 まずについてですが、どうも全体的にシックリ来ません。致命的なミスは無いのですが、所々でデッサンが崩れている所があったり、表現が上手くいっていない所があったりします。「赤マル」春号で初めて霧木作品をレビューした際には、「これも霧木さんの“味”なのかな……」とも思いましたが、今作の絵柄を見てみると、それだけで片付けてはいけないような気がしてきました。
 デビュー12年にして、まだ絵の技術的な面で課題が残っているというのは、やはり頂けませんね。正直な所、「同期・後輩がどんどん追い抜いて行ってる中で、一体これまで何やってきたんだ」という話になるわけですから。

 スト−リーにも問題がありますね
 話の展開は最初から最後まで不条理そのものなんですが、作中の登場人物全員が(そして恐らくは霧木さんも)、全くこの筋書きを不条理だと実感していないんですね。本来ならツッコミ役を配置してギャグマンガにならなきゃおかしいくらいの不条理な筋書きなんですが、スタイルそのものは純然たるストーリー作品なんですよ。だから読み手にとっては得も言われぬ違和感を感じてしまうわけです。作品世界に没入していけないんですね。
 ストーリーテリング力が云々…ということよりも、むしろ作者視点が読者視点と大きく乖離している事の方が問題ですね。これは作者の霧木さんが気付かない限りは、そして気付いたとしても12年分のノウハウを放棄してゼロからリスタートしない限りは修正出来ないものだけに、非常に辛いところでしょう。
 あ、あと作風が「週刊ビックコミックスピリッツ」の『π』に似てしまってるのもヤバいですね。「スピリッツ」も読んでいるような高年齢層読者──おそらくこの作品で最も支持を集める可能性の高い読者層──は、「あ、似てる」と感じた時点で、この作品を二番煎じ扱いしてしまうでしょうから。

 評価はギリギリでB−というところでしょうか。正直言って、連載に耐えられるクオリティとは思えません。

 

◆「ジャンプ」今週のチェックポイント◆

 巻末コメントについて箇条書き形式で雑感。

 ・稲垣理一郎さんジャンプフェスタとクリスマスボウルが日程と時間帯まで一致した事に大ショック。そり