はじめまして。私は、仁川経済大学の学園祭で生まれた”キャンパスの妖精”珠美といいます。縁の遠い実在しない少女より、身近にいる美人が好きだ! という複雑なコンプレックスな方のために生まれた新しい形のバーチャルネットアイドルです。どうかよろしくお願いします。

バーチャル・バーチャルネットアイドル

栗藤珠美21歳

仁川経済大学・学園祭’02冬
社会学部インターネット通信過程の部
(駒木博士の社会学講座)

◇珠美講座・珠美占いがあります◇
02/02 珠美講座・
女性のための競馬場デートガイダンス
02/02 珠美写真・絵を学園祭限定で展示してます。
駒木博士の講座やアーカイブもご覧いただけます。


◇珠美占い◇

平成14年2月2日の運勢
一白水星のひと 金銭運が好調。管理職から格下げになって、残業手当がもらえるようになります。
ラッキーゲーム:レリクス暗黒要塞
ニ黒土星のひと ギャンブル運が好調。コーチ屋さんの言う通りに馬券を買ったら、万馬券が的中!
ラッキー打ち切りマンガ:アカテン教師梨本小鉄
三碧木星のひと 恋愛運が好調。共産党員の恋人が出来ます。
ラッキープロレス会場:博多スターレーン
四緑木星のひと 健康運が不調。毒蝮三太夫に「ババァ」と言われるほど老け込みます。
ラッキー映画:がんばれベアーズ・特訓中
五黄土星のひと 家族運が好調。貴方の母親が、モーニング娘。に加入します。
ラッキー新聞:毎日中学生新聞
六白金星のひと 仕事運が好調。突然ダースベイダーのテーマが流れて、直後に1年間の仕事が保証されます。
ラッキーラジオ番組:宗教の時間
七赤金星のひと 吉。貴方の半生が、TV東京でアニメ化されます。
ラッキーうどん:ぼっかけうどん
八白土星のひと 大凶。外国のブティックで試着室に入ったら、外からカギをかけられます。
ラッキー回転寿司ネタ:コーン
九紫火星のひと 誰か何とかしてあげてください。
ラッキー駅:天神橋筋6丁目



◇珠美メモ◇

みなさん、仁経大学園祭へようこそ♪
 
多数のご来場ありがとうございます。ご好評につき、開催期間を延長しておりましたが、間もなく学園祭を終了させていただきます

●学園祭終了後は、現在と同じURL、
 http://Dr.komagi.com/
 にて、通常講義に復帰いたします。キャッシュが更新されていない場合がありますので、2月4日(月)午前1時を回っても、このページが表示される場合は、上のURL部分をクリックしてください。
(諸事情で、開催を1時間延長しました)

「ちゆ12歳」さん、2000万アクセス達成、おめでとうございます♪

●今日は、仁川経済大学・冬の学園祭です。私たち社会学部インターネット通信過程は、“ちゆデー”の出し物をすることにしました♪

●はじめましての方も、いつも講座を受講されてる方も、どうぞ楽しんでいってくださいね♪ 

くまのプーさん、ディズニー相手に訴訟

大人のアニメ視聴率調査

ニュースステーションの森永さんはアヤナミスト 

大学教授、「中東情勢は命がけ」と学生を刺す

革命さん、駅にいる壁際カップルの法則発見(1月28日)



◇珠美講座◇

女性のための競馬場デートガイダンス(前編)女性のための競馬場デートガイダンス(後編)現代マンガ時評(1月第5週分)漂流クジラの行方(2)漂流クジラの行方(1)90年代名勝負プレイバック(4)家庭教師会社・教材の実態


平成14年2月2日 
競馬学特殊講義
(講師:栗藤珠美)

女性のための
競馬場デートガイダンス
(前編)

 みなさん、改めまして、はじめまして&こんにちは♪ 栗藤珠美です。今日は私が講義を担当します。
 科目は「競馬学特殊講義」。ちょっと馴染みが薄い人も多いと思いますけど、よろしくお願いしますね♪

 さて。

 競馬のことをあまり知らない人は驚かれるでしょうけど、今、週末の競馬場へ行くとカップルだらけです。

 もちろん、「焼酎焼けの赤ら顔、その手には赤ペン、馬券では赤字計上」なんていう、愛国戦隊大日本に狩られちゃいそうなアカだらけの小父様もいらっしゃいますけど、そんな方たちは、もうすっかり少数派。
 全体の雰囲気は、お台場みたい…とは、さすがにいきませんけど、少なくとも東京・秋葉原や大阪・日本橋とは雲泥の差になりました。

 でも、いくら時代が変わったと言っても、競馬場は競馬場です。大前提としてギャンブルをする場所なのですから、自然と空気は殺伐としたものになってしまいます。

 ですから、競馬場の入場門をくぐった時は、三原じゅん子&コアラ夫妻を思わせるアツアツさだったカップルも、最終レースの頃には、楽屋裏の林家ペー&パー子夫妻を思わせる寒さが漂ってきていたりするのです。
 目をテンパらせて競馬新聞を睨む彼氏、それをまるで、最前列に座った足の不自由な女の子に「立て」と冷たく言い放つ浜崎あゆみのような視線で眺める彼女……。
 そんな情景を眺めていると、

 「ああ、彼氏の目はテンパってるけれど、このカップルはもうすぐ流局なのね」

 …なんて思ってしまいます。

 でも、よく考えてみると、それは若い2人にとって大きな不幸。それに、“競馬のせいで破局”だなんて、ちょっと悲しすぎます。

 と、いうわけで。
 今日は私、栗藤珠美が、競馬場デートで破局にならないための特別ガイダンスをお送りします。一応、女性の立場に立ったガイダンスですが、男性の方も、競馬場で彼女をミスリードしないためにも、ぜひ受講されることをお奨めします。

 では、始めますね。

 ●レッスン1 競馬場デートに誘われたら…

 貴方の彼氏が競馬好きの場合、早かれ遅かれ競馬場デートに誘われる日が来るはずです。
 もちろん、「え〜、そんなトコでデートなんて嫌。」と断ることもできます。けれど、その彼氏と末永くお付き合いしたいなら、やっぱりお互いの趣味を理解しておくことも大事ですよね。1度くらいはお誘いに乗ってあげてもいいのではないでしょうか?

 さて、競馬場デートに誘われたら、まず彼氏に訊いておかなければいけないことがあります。
 まず、当然の事ですがデートの日付。それと、デートで利用する競馬場の名前も教えてもらいましょう。

 で、日付が土曜・日曜だったらいいのですが、もしこれが、平日の昼間だったら問題です。この場合、あなたが連れて行かれようとしているのは、間違いなく地方競馬場です。

 地方競馬場にも素晴らしい点はいっぱいあるのですが、反面、とてもアクの強い場所でもあるのも事実です。少なくとも、初めての競馬場デートで行くような所ではありません。来日したての外国人が鮒寿司を食べさせられるようなものです。
 こんなセンスの無い彼氏とは付き合ってはいけません。悪いことは言いませんから、直ちに別れを告げて電話を切りましょう。

 日付が週末ならば、ひとまず安心です。でも、そこで油断してはいけません。
 彼氏との電話を切った後、競馬好きの知り合いに電話をかけて、行く予定の競馬場と、その日に行われるレースについて質問してみましょう。

 もし、「色々バリエーションがあって、初心者でも楽しめるよ」という答が返ってきたなら、まずは合格です。期待してください♪
 でも、「ん〜、この日は大して面白いレースが無いなあ」と言われた場合、貴方の彼氏はギャンブルする気満々です。貴方よりも馬券に夢中です。「自分が楽しみながら、デートにもなって一石二鳥」…なんて思ってますから、用心してデートに臨んでくださいね。
 
 あと、デートの時の服装をアドバイスしてくれる彼氏なんかはポイント高いですね。

 競馬場は、夏暑くて冬寒いという、フォークソングに出てくる安アパートのような気候です。しかも、キャパシティに対して椅子の数が圧倒的に少なくて、どうしても床や地面に直接座ることが多くなります。

 なので、「出来るだけ涼しい格好で(冬なら暖かい格好で)、椅子に座れないからズボン穿いてくる方がいいよ」なんて、さりげなく言ってくれる彼氏だと理想的ですよね。

 ●レッスン2 競馬場に入る前に…

 さぁ、貴方はデート当日を迎えました。彼氏とどこかの駅前で待ち合わせて、競馬場へ向かいます。

 ……と、ここで、彼氏の手元を注視してみましょう。

 一番オーソドックスなのは、競馬新聞を持っているケース。タブロイド版で、見慣れないデザインなので、すぐに判ります。
 この場合、「それって競馬新聞だよね? ひょっとして、たくさん馬券買うの?」とか訊いてみましょう。

 模範的な回答は、
 「いや、これは習慣だから(苦笑)。今日はデートだから、ちょっと遊ぶだけだよ。こういう時に必死に馬券買っても勝てないだろうし」

 …といったところでしょうか。
 身の程をわきまえた、気持ちのいい発言
ですね。

 これが、
 「おう、当然。今日はバッチリ儲けて、夜はゴチソウ食わせてやるからな」

 …なんていう、威勢だけ充分なセリフになると困りものです。
 この場合、今日のデートは彼氏同伴の日光浴だと割り切って下さい。
 後は、奇跡的な確率で彼氏が大儲けすることでも祈りましょう。ま、多分、気合が空回りして散々でしょうけどね。

 次に、手ぶらの場合。
 このパターンは両極端です。1つは「今日はデートだから、馬券はほとんど買わずにエスコートに徹するよ」という意思の表われ。
 そしてもう1つは、「俺は馬を見るだけで馬券が当たるんだ」という、勘違いしたお方

 注意すべきなのは、もちろん後者のケース
 「すご〜い、○○君って見る目あるんだ」
 …なんて、調子の良いことを言うのは厳禁です。こんなことを言ったが最後、吉澤ひとみにウインクされたモーヲタのようにつけ上がりますので。ここはちょっと冷たくあしらっておくのが、将来のためにも得策です。

 最後にスポーツ新聞の場合。

 この場合、「あれ? 競馬のことばっかり載ってる新聞じゃないの?」みたいな感じで訊いておきましょう。
 ただし、
 「あれ? 『競馬ブック』じゃなくて東スポ?」

 …なんて、具体名を出してはいけません
 例え知っていてもダメ
です。
 
そんなの、ラブホテルに初めて来たはずなのに、やたら場慣れしている女の子みたいなものですので。

 で、彼氏の反応が、「いや、いつもこの新聞使ってるから」というのなら、まあO.K.ですけど、
 「だって、競馬新聞高いじゃん。410円だよ」
 …って言うような彼だったら、ちょっと大変
です。
 大抵はそういう人に限って、1レースで何千円も馬券を買ったりしちゃいます。金銭感覚がボロボロなんですね。
 極端な話、別れるタイミングを計った方がいい
かもしれませんね。

 あ、言い忘れてましたけど、午前中からのデートの場合、お昼ごはんはお弁当を作っておいた方が良いですよ。
 競馬場の食べ物って、高いくせに美味しくないですから。競馬場近くのコンビニでも、食べ物類はすぐに売り切れちゃいますし、ここは貴方が腕を振るってポイントを稼いじゃいましょう♪

 

 ……きーんこーんかーんこーん………

 ──あら、チャイムの音。
 じゃあ、1時間目はここまでにしまして、続きは休憩の後の「後編」で。

 それでは、また。
 (後編はすぐ下にあります)


平成14年2月2日 
競馬学特殊講義
(講師:栗藤珠美)

女性のための
競馬場デートガイダンス
(後編)

 それでは、2時間目の講義を始めます。みなさん、引き続きどうぞよろしく♪ 

 

 ●レッスン3  さあ、競馬場です

 いよいよ競馬場の入場門をくぐる時がやって来ました。

 ここであなたは、競馬場が思ったよりも綺麗で垢抜けていることに、少しビックリするはずです。
 でもそれが、外れた馬券のお金が姿を変えたものだと考えると、ちょっと引いてしまいますよね。

 ところで、実はここがポイントの稼ぎ時

 ちょっとオーバーなくらい、競馬場が綺麗であることを褒めましょう

 すると彼氏は必ず、初孫を褒められた大工の棟梁のような反応を見せてくれるはずです。
 競馬好きの人が、競馬を知らない人に競馬場を褒めてもらうと、本当に嬉しいんですよ。

 そして、競馬場に入場した後、彼氏が貴方をどこに連れて行ってくれるか、というのも大事なポイントです。

 意外と知られていませんけど、競馬場は馬の競走と馬券の販売だけをしている場所ではありません。

 ちょっとした博物館やメモリアルホールみたいなのがあったりしますし、馬のぬいぐるみなどを売っているグッズショップだって何軒もあります。競馬観戦以外に楽しめる場所はいくらでもあるのです。
 でも、馬頭観音へ行って、今は亡きご贔屓の競走馬に線香をあげる…
というのは、さすがにちょっとどうかと思いますけど。

 でも、少なくとも、真っ先に馬券の自動販売機に並んだりする彼氏は、やっぱりサービス精神に欠けると言っていいんじゃないでしょうか? 

 一番最悪なのは、栄養ドリンク専門の売店へ直行して「リポビタンD」を買い、しかも売店の小母様と顔見知り、というパターン。

 実在するから怖いです

 

 ●レッスン4 馬券を買う時は──?

 たとえ、馬券が主目的ではない競馬場デートでも、やっぱり馬券を買わないわけにはいきません。
 それに、100円でも馬券を買った方が、買わないよりもレースが楽しめるのも事実ですしね。

 大抵の場合、彼氏が貴方に「少しでもいいから、馬券買ってみない?」という言い方でアプローチしてきます。
 この場合、「それじゃあ、せっかくだから…」みたいな感じで、承諾しておけば大丈夫です。
 「ちょっと嫌かな」と思っても、断ったところで2人の間の空気が悪くなるだけですので、妥協してください。男女関係はギブアンドテイクですよ。

 馬券を買うとなると、彼氏は熱心に馬券の種類や的中条件などを説明してくれるはずですが、あなたが買うべき馬券は決まっています。それは、

 単勝(1着になる馬を当てる馬券)
 複勝(3着以内に入る馬を当てる馬券)

 …の、2種類です。
 そして、馬券を買う馬を選ぶ時も、「なんか強そう」とか、「名前がカワイイから」などの、できるだけバカっぽい理由で選びましょう。

 …これには、初々しさを演出するということもあるのですが、一番の理由は、「彼氏の馬券が外れて、あなたの馬券が的中した場合」のための予防線です。彼氏に言い訳のチャンスを与えてあげましょうってことです。

 男性の方は、必ずと言っていいほど、お金と一緒にプライドも賭けて馬券を買っています
 ですので、馬券で自分の彼女に負けちゃうのは、本当に許せないことなんですよね。

 こんなの、女の視点からしてみると、バカバカしいことこの上ないんですけど、菩薩のような心で理解してあげましょうね♪
 
 ですから、初めての競馬場デートの時に、女の子は本気で馬券を買ってはいけません。

 それに、必ずと言っていいほど、初心者の貴方のほうが、自称“中・上級者”の彼氏よりも馬券の才能に恵まれていますからね。
 これは不思議ですけど、世の中そんなものみたいです。

 でも、貴方がそこまで気を遣ったのに、ブチブチと負け惜しみを言う彼氏、これは最低ですね。

 この前も私、目撃したんです。馬券が外れたことを2回も3回も悔しがって、
 「当たってたら、3万円だったのによ〜」
 とか彼女に愚痴ってる男。

 それだけじゃないんですよ。その男の彼女は、100円だけ買った馬券が当たったんで、嬉しそうに当たり馬券を眺めてたんですね。するとその男、
 「何、そんな小さい額当ててニヤけてんだよ。そんなの、ちっとも凄くねえよ」
 …って、彼女を毒づいたんですよ!
 私、思わず、持っていた3色ボールペンで、男の後頭部を思いっきり突き刺そうかと思っちゃいましたよ! もう、絶対許せません!

 もし、そんな男だったら、私に代わって鉄拳制裁をくれてやって下さいね。そのままお家に直帰してもO.K.です。

 ●最終レッスン 戦いすんで…

 そんなこんなで日も暮れて。

 最終レースも終わり、時刻も16時半を過ぎました。長かった競馬場デートもおしまいです。

 さて、今日のデートはいかがでしたか?

 きっと、彼氏の性格について、これまで見えなかった色々な所が分かったんじゃないかと思います。
 ギャンブルは人間の本性を丸裸にします
からね。

 もしも、「やっぱりステキだわ」って彼氏だったら、どうぞお幸せに。
 帰りは満員電車
ですから、思う存分抱きついてあげてください♪

 でも、ひょっとしたら、「こんな人とは思わなかったわ」という気持ちになって、彼氏と別れてしまう人もいるかもしれません。
 けれど、それはそれで仕方ないと思います。むしろ、ギャンブル狂の彼氏と別れることができて幸せだと思ってくださいね。

 あら? 確かこの講座は、「競馬場デートで彼氏と破局しないための講座」だったんでしたっけ?

 ……ま、別れるカップルは、どう頑張ってもいつか別れますしね。
 見切りは早い方が良い
ってことで…。

 とりあえず、バーチャル・バーチャルネットアイドル栗藤珠美は、競馬場でデートをするカップルを応援したりしなかったりしています。


平成14年1月30日
演習(ゼミ)
(講師:駒木ハヤト)

「現代マンガ時評」
(1月第5週分)


 今週は「ジャンプ」「サンデー」ともに新連載も読み切りがありませんでした。「ジャンプ」は来週あたりから読み切りラッシュが始まりそうな感じがしますが、今週は結果的に“谷間”となってしまった感がありますね。

 しかし、「週刊少年チャンピオン」では高橋陽一氏の新連載が始まり、「週刊コミックバンチ」でも、10週連続の新人作家コンペテイションがでスタートしました。今週は、この2つの動きについてレビューをしておこうと思います。 

 また、現在、当講座では「週刊少年マガジン」、「週刊少年チャンピオン」など、主要マンガ雑誌の新連載・読み切りレビューを担当して頂ける非常勤講師を募集中です。謝礼等は出せませんが、協力して頂ける方はメールでご連絡を。

《その他、今週の注目作》

 ※文中の7段階評価はこちらを。

 ◎新連載『ハングリーハート』(週刊少年チャンピオン9号掲載/作画:高橋陽一

 先週の講義で「記号化とその再現」というお話をしましたが、この高橋陽一氏も、それが異様に下手なんですよね、正直言いますと。
 「365歩のユウキ!!!」の西条真二氏は、説明的なセリフを羅列する方法で下手さを誤魔化そうとして、無残に失敗しているわけですけど、高橋氏の場合は何でもかんでもオーバーに表現すれば良いと思ってるんですね
 失笑されてるとも知らないで。

 主人公のライバルを設定するにしても、全員分の個性を編み出せないから、どうしても必殺技に頼ってしまう。主人公の設定ですら、内的心理とかを表現する技術が皆無なので、いつの間にか“友達をドライブかけて蹴り飛ばす主人公”とか、“ボクシングジム行く前に、医者に身長低すぎる事相談しろよ的な主人公”とか、そんなのになっちゃうわけですよね。
 で、今回も「んな歌、唄ってる暇あったらドブでもさらっとけ」とか、「女子サッカー部のコーチする前に、信号壊した事で、とりあえず自首しとけ」とか、「主人公の前に、作者の才能がハングリーだ」…などというツッコミが入ってしまう。で、主人公のキャラが立ったかというと、立ってない。とりあえず駒木は、“ジャイアンみたいな芸風のガキ”と判断しましたが、どうでしょうか。

 ……まぁ、ちょっと茶化し気味の評論になってしまいましたが、大きく的は外れていないと思います。
 結局のところ、高橋氏の最大の問題点は、
 「自分の才能を過信している」
 この一点
ですね。
 誰だろうが、絵描きだろうが文章書きだろうが、表現活動をする以上は、「これは面白いはずだ」と思って作品を発表するんですが、まぁ大抵の人は同時に、「でも果たして、この作品は面白いんだろうか?」と自問自答をする。その謙虚さというか疑心暗鬼的なものが作品にも反映されるんですね、普通は。
 ところが、ちょっとヒットをかっ飛ばしたマンガ家さんに多いんですが、「俺の描く作品は面白いに決まってる!」と、根拠の無い自信を抱いて突っ走る人が、まま見受けられるんですね。誰とは言いませんが、複数いらっしゃる。
 これで面白い作品だったら、それはそれで結構なんですが、そうじゃなかった時の悲惨さは目を覆うべき状態になります。さりげなく具体例を挙げますと、「キックボクサー」とか「サイレントナイト」とか「フォワード」とかですね。謙虚さが無い寒い芸人──西川のりおとか、ぜんじろう──が持つような雰囲気が漂ってしまうんです。
 で、この「ハングリーハート」も、おそらくそんな感じかな、と。もう一度3回目まで読んだ時点でレビューしますが、期待をするのは酷かと。
 いや、色んな意味で楽しめる作品なんですけどね、このレビューは真面目な作品レビューですので……。
 7段階評価は
B−。この作品、噂によるとアニメ化するらしいですが、それこそ『ホイッスル』をアニメ化したほうが、まだマシかと。ええ。

 ◎読み切り(世界漫画愛読者大賞・最終審査エントリー作品)『満腹ボクサー徳川。』(週刊コミックバンチ9号掲載/作画:日高建男
 
 「コミックバンチ」で、賞金総額1億円という前代未聞の大規模新人マンガ賞・「世界漫画愛読者大賞」の、最終審査シリーズが始まりました。
 最終候補者10人の読み切りを掲載してアンケートを採り、それでグランプリを決定すると言う方式のコンペテイションですが、この方式、「週刊少年ジャンプ」で2回やって大失敗してるんですよね…
 「ジャンプ」の時は、話作りが上手い人よりも、絵が小奇麗な新人が上位に食い込んでしまって、結局連載させた時に長続きしなかったんです。才能が図抜けていたかずはじめ氏だけは生き残りましたけど。
 今回は男性向青年誌での試みということで、「ジャンプ」の時とは少し状況が違いますが、果たしてどうなることやら。

 ……さて、今週はそのトップバッターとなる日高氏の作品ですが…。
 この日高氏、マンガ家を目指して上京してから修行すること15年という、前座12年の落語家・立川キウイ氏を髣髴とさせるような経歴の持ち主ですが、修行歴が長いだけあって、さすがに話作りや絵の基本は出来ています。問題点はありません。でも……

 「ただ、それだけ」なんですよね。

 あまりにも教科書通り過ぎて、訴えてくるものが無いのです。15年間で苦い汁ばかり吸ってきたのでしょうか、思い切りが無いんですよね。本当に小さくまとまり過ぎてる気がします。
 例えば、この作品の敵役はプロレスラー上がりのボクサーなわけですが、そのプロレスラーを、どうして超巨漢の外国人レスラーや、無敵の格闘技世界チャンピオンなどの“大物”にしなかったのか。連載を見越して、設定を控えめにしたのかもしれませんが、いくらなんでも控えすぎのような気がします。

 ここまで苦労した人ですから、一度くらいは連載を持たせてあげたいな、とは思います。が、多額の賞金を上げて鳴り物入りでデビューさせるほどじゃないかな、というのが正直なところです。評価はB

 ………

 と、いうわけで今週のレビューは終わりです。

 そういえば、今週の「365歩のユウキ!!!」。最終目標が「中学生名人」という、マンガとしてはスケールの小さいところに落ち着いてしまって、ますますトホホです。
 マンガじゃ「中学生名人は、プロへの登竜門」なんて言われてますが、違います。登竜門は小学生名人です。中学生の時には奨励会か、その下部組織の研修会に入ってないと間に合いません。プロ試験一発勝負の囲碁とは違い、将棋は奨励会で6級(特例入会の年長者は3級や1級)から三段まで登りつめて、そこからリーグ戦を勝ち抜かないといけないので、とにかく時間がかかるんです。
 ……まったく、勉強不足にも程があるぞ。

 では、また来週。


平成14年1月29日
環境社会学
(講師:駒木ハヤト)

漂流クジラの行方(2)

 ※この講義は続き物です。第1回はこちらから。

 昨日は突然の休講、申し訳ありません。
 どうやら、年末年始から、高校の仕事、講義、競馬競輪と体を痛めつけて来たツケが回ってきたようです。背中の筋肉が引き攣ったまま動かなくなり、ずっと悶絶してました。目の疲れが、体中に浸透する恐ろしさ。皆さんもご注意下さい。

 さて、それでは講義再開です。
 前回では、漂着して死んだクジラの肉を求める人が殺到、というところで終わったのでしたね。
 なにせマッコウクジラは、今では年間10頭の調査捕鯨が認められているのみ。それが13頭も水揚げされたのですから、穏やかな話ではありません。嫁候補不足にあえぐ農村にモーニング娘。が移住して来たような騒ぎになるのは必然と言えましょう。村の青年が保田圭以外の12人に群がるのが目に浮かぶようです。
 加えて、マッコウクジラの皮は、卸値で1キロ5000円以上となる超貴重品。尾の部分も1頭200〜300万円にもなるといい、1頭丸々の価値は1000万円以上にもなるという話。都合、1000万×13頭=
1億3000万円…というわけで、これは海岸に札束が埋もれているようなものです。
 ……と、いうわけで、“札束の揚がった町”大浦町は、大変な騒動になったのです。

 まず、一般住民の方々はこんな感じで↓

 今回打ち上げられた直後から「鯨は食べられないのか」という電話が役場にかかり始めた。22日夜には現場にチェーンソーを持った住民も姿を見せたという。(毎日新聞より)

 レザーフェイスか、ジェイソンか、といった様相。
 暗闇の中、チェーンソーを振りかざす男性の光景なんて、どう考えてもシャレになりません。

 そして、業者の方々も負けてはいませんでした。

 役場には住民のほか、鯨を扱っているとみられる業者から「入札はいつするのか」「腐った肉でも欲しい」「1頭何百万円でも引き取る」などの電話もかかり、25日夕までに合計100本以上には上るという。(同上)

 わはは。「腐った肉でも欲しい」直球過ぎます。
 しかし、腐った肉をどうするんでしょうか? 食わされる身にもなって頂きたいものですが…。
 ひょっとして、アレですかね。腐った鯨肉を箱詰めして、牛の肉のラベルを貼り付けて国に売りつける予定だったのかもしれませんな……と、これがブラックジョークにもならないのが一番怖いんですけど。

 とまぁ、まさに引く手あまた。これなら懸案の死骸処理もアッサリ解決か…と思われたのですが、そうではありませんでした。

 その水産庁はどう指導しているのか。同庁の捕鯨班の担当者は「地元には食用にしないように指導しています。法律的な規制はないですが、どんな病気に汚染されているか分かりませんから。現に以前、北海道で打ち上げられたクジラを食べた人が食中毒になったことがあったと思いますよ」と注意を喚起する。

 ただ、このクジラ食中毒事件はちょっと事実が違っていた。北海道庁に取材すると、担当者は「それは、打ち上げられたクジラでなくて、網に掛かったクジラです。一九八八年の話です」と説明した。

 網に掛かったクジラは、死後二日後に市場を通して販売され、刺し身などで食べた道内の消費者約二百五十人が食中毒になった。クジラを捕獲した船長や、漁協の責任者らが、刑事責任を問われている。
(中日新聞より)

 ……と、いうわけで、せっかくの“札束”も腐ってしまって使い物にならないという次第。
 それでも「腐ってても欲しい」人がいる以上、町側としても対応に追われているようです。

「戦前は食べていたようですが、今は食べません。町も(肉を持っていく)不心得者が現れないように、二十四時間態勢で寝ずの番をしています」(同)と食用に転用することには消極的。「すでににおい始めてますし…」とも言い、食用にするのであれば、“早期決断”が必要だ。 (同上)

 チェーンソーを持った男VS大浦町職員。なんだか、学生プロレスでありそうな組み合わせですが、こちらはプロレスではなくリアルファイトです。クジラの前に、職員が解体されなかった事をお祈り申し上げたい次第です。

 結局、これらのクジラがどうなったかと言いますと……

 鹿児島県大浦町に打ち上げられて死んだマッコウクジラ13頭のうち1頭は27日、骨格標本にするため加世田市小湊の砂浜まで運ばれた。だがこの搬送作業が予想以上に難航したため、大浦町は残る12頭の砂浜への搬送は断念、海洋投棄することを決めた。

 大浦町は13頭を砂浜に約2年間埋め、標本にする予定だった。27日未明、加世田市の小湊漁港から25トントラックで砂浜を目指して陸送を始めた。ところが鯨は約40トンと予想以上に重く、トラックへの積み上げや搬送作業が難航。1頭を約1・5キロ離れた砂浜に運ぶのに約10時間かかった。

 町はトラック搬送をあきらめ、砂浜まで台船で運ぶ方法を目指したが、砂浜は遠浅で台船が近づけず、海上輸送も困難と判断した。

《中略》

 砂浜まで運んだ鯨は専門家の調査終了後、埋める。残る12頭はしけが収まるのを待って町が海洋投棄する。 (毎日新聞より)

 ……と、ミもフタも無い結果になってしまいました。
 せめて腐るまでに何とかしてもらえれば、TV東京あたりが「大食いオールスターズ、クジラ1頭に挑む!」とか番組を作ってくれたでしょうに、残念としか言いようがありませんね。

 とにかく駒木は“クジラ肉のノルウェー風”が食べたいです。どこか食べさせてくれる店があれば、情報をよろしく。…というところで今日の講義を終わります。

 病み上がりでは良いオチも浮かびませんでした。(この項終わり)


平成14年1月27日
環境社会学
(講師:駒木ハヤト)

漂流クジラの行方(1)

 わが国・日本は島国だけありまして、たびたび“海からの来客”のニュースが世間を騒がせる事があります。

 中でも最近増えたのが、クジラが浅い海岸に漂着し、動けなくなってしまうというニュースです。

 一説によりますと、これは一連のクジラ保護施策の結果、クジラが増え過ぎて餌が無くなり、その結果、餌を求めて彷徨ったクジラが漂着する……といった理由によるものだそうです。
 人間が生態系を変えるのは、何も乱獲ばかりではないという事を、動物愛護団体の方々には知ってもらいたいものですね。……まぁ、こんな事、オーストラリアあたりで喋ったら人非人扱いされそうですが、生まれて間もない子羊を美味そうに食ってる連中に批判される筋合いはないと断言しておきます。

 さて、この2002年も、新年早々クジラの漂着がありました。しかも今回は14頭同時というデラックス版。同時に12人の妹に萌える事のできる今日この頃を、如実に反映した事件と申しましょうか。
 その漂着した14頭のクジラの内、無事、海に還って行ったのは1頭だけ。残りの13頭は、手の施しようが無く、そのまま衰弱死してしまいました。TV番組では、ワイドショーを中心にこの話題を連日報道していましたが、唯一助かったクジラが海に還って行くシーンでは、コメンテーターが「感動しました」と涙ぐむ一幕も。
 駒木などは、常日頃から松葉ガニを虐殺・解体して貪り食ってる人たちの言うセリフではないと思った
のですが、そのあたり、いかがでしょうか?
  
 ところで、今回クジラが漂着したのは、鹿児島県は大浦町の海岸でした。大浦町は人口約3000人で、島嶼部を除けば最も小さい町。普段はひっそりとした過疎の町なのですが、この事件以来、まるで「ちゆ12歳」「俺ニュース」で紹介されたマイナーサイトのようなお祭り状態となり、職員わずか60人の町役場が24時間態勢で対応に追われているとの事です。日頃はスポーツ新聞読みながら、滅多に来ない印鑑証明の請求をダラダラ待っている主任さんも休日返上ということで、国民や町民の血税を活かす事のできるまたとない機会になっているようです。

 で、そんな大浦町が、今一番困っているのが、死んでしまった13頭のクジラの処理に関しての問題です。今回は骨格標本にするという話が出ましたが、そうするにしても、海岸まで死骸を曳航したり、それを一度砂浜に埋めて白骨化させたりしなくてはなりません。安上がりに焼却するにしても、そのために必要な費用はバカにならないようです。

 水族館から「骨格標本にしたい」という申し出があったものの、職員は「焼却か埋めるということになりそう。海上投棄ということも考えられます。いずれにしろ一頭あたり百万円の費用はかかるようで」と財政難の折、頭を抱える。漂着したクジラなどの処理には水産庁の補助制度もあるが、全額は負担してくれない。

 町の予備費は二百万円程度なのに、クジラ十三頭の解体、処理、運搬で千五百万円はするとみられ、町の負担は少なくない。(中日新聞より)

 ──よりによって、どうしてウチみたいな小さな町に……
 …などといった町長さんの呪詛が聞こえてきそうですね。確かに、野村沙知代に襲来されたハワイの宝石店に似た悲哀が感じられる話ではあります。
 クジラは、生きている間こそ、グリーンピースがテロまがいの実力行使で命を守ってくれますが、死んでしまえばさっさと撤収してしまいます。なんだか、ブレイクしたアイドル歌手の“突然増えた親戚”のような話ですが、何はどうあれ、“かわいいクジラさん”も、あっという間に数トンの肉隗と化してしまうわけです。海のアイドルも、あっという間に粗大ゴミ。
 …このフレーズの「海」を「ジャニーズ」に変えると、田原俊彦の事になってしまうのは、恐らく気のせいではないでしょうが、ここではノーコメントにしておきましょう。

 閑話休題。
 そんな中で、にわかに色めきたったのが、食肉業者でありました。

 受講生の方も大半はご存知でしょうが、かつて日本人は、クジラの肉を“安価な動物性タンパク源”として大量に消費していました。日本の商業捕鯨が禁止された14年前までは、学校給食でも献立表にクジラ料理が名を連ね、子どもたちの健やかな成長に一役買っていたのは印象深いエピソードです。駒木も“クジラ肉のノルウェー風”が大好きで、「大盛イモだく、これ最強」などと言いながら、スプーン片手にがっついていたのを思い出します。
 今でもクジラ肉は、調査捕鯨で水揚げされたものを中心に市場に出回っていますが、現在は需要と供給のバランスが崩れて高級食材になっています。そんな中で、13頭の大型マッコウクジラが揚がったというのですから、これは穏やかな話ではありません。大浦町は、一転して1849年のカリフォルニアを思わせる異様な事態に晒される事になったのでした──

 ……と、いい所まで講義したのですが、まだまだ講義は長くなりそうなので、続きは明日に回したいと思います。それでは、今日の講義はここまで。 続く) 


平成14年1月26日
競馬学概論
(講師:駒木ハヤト/
聞き手:栗藤珠美)

「90年代名勝負プレイバック」(4)
《サイレンススズカ三番勝負・2》
1998年宝塚記念


駒木:「今週はサイレンススズカ三番勝負の2回目。唯一のG1勝ちになった宝塚記念を振り返ってみるね」
珠美:「こんな事言っては失礼なんですけど、不思議と印象に残ってないレースですよね」
駒木:「宝塚記念って、どうもそんなレースらしい(笑)。勝った馬は有名どころが多いんだけどねぇ。ここ10年でも、メジロのパーマーとマックイーン、ビワハヤヒデ、マヤノトップガン、マーベラスサンデー、グラスワンダー、テイエムオペラオー、メイショウドトウ。比較的マイナーなのはダンツシアトルくらいだもの。
 まぁ、あれだろうね。強い馬なら、他にもっと印象深いレースがあるし、このレースで大駆けした馬は、本当にこの場限りの活躍で終わっちゃって、僕たちの記憶から消えてしまうってことだろうね

珠美:「そうですよね。サイレンススズカにしても、このレースよりむしろ金鯱賞とか毎日王冠の方が印象に残ってますし……」
駒木:「そうだねぇ。まぁだからこそ、今回は毎日王冠じゃなくてこちらを採り上げたんだけどね。
 ……と、いうわけで、早速レースの紹介をしてくれるかな?」

珠美:「……ハイ。このレースは1998年の7月5日に行われました。宝塚記念は1959年に創設された重賞レースで、『冬の有馬記念のような、ファン投票で出走馬を決めるグランプリレースを、春に関西で』という、中央競馬会(現:JRA)の意向で始まったとされています。グレード制導入と共にG1に格付けされ、春競馬の最後を飾る中距離馬ナンバーワン決定戦として、年間スケジュールの中でも重要な位置を占めています。なお、この前年の1997年より国際競走となり、2001年より国際G1競走の格付けを認定されています。
 あと、距離は芝の2200m。競走名の“宝塚”にもあるように、改装時などを除いて阪神競馬場で施行されます。
 この年の有力馬ですが、サイレンススズカも有力馬の1頭として名を連ねています。これは後で博士に解説していただきましょう。他の有力馬としては、前年の秋に天皇賞・秋1着、ジャパンカップ2着、有馬記念3着という好成績を残していたエアグルーヴや、年末のステイヤーズSから春の天皇賞まで4連勝でやって来たメジロブライト。さらには前年の有馬記念覇者・シルクジャスティスに、この年の天皇賞・春2着で、いよいよシルバーコレクターの活動を開始したステイゴールド、そして前走・鳴尾記念(G2)でエアグルーヴ相手に大金星をあげたサンライズフラッグなど、錚々たるメンバーが名乗りをあげていました。
 ……私からは以上です、博士」

駒木:「はい、ありがとう。…それにしても凄いメンバーだよね。この他にもメジロドーベルとかローゼンカバリーとかいるんだよ。古馬の有力どころは、ほとんど全部揃ってる。こんなレースがあったのに、競馬雑誌の投稿欄では『毎年、宝塚記念はメンバーが揃わないので、時期を変えたらどうだ』みたいな文章が載るんだからねぇ。どれだけ宝塚記念が皆の記憶に残ってないか、よく分かる(笑)」
珠美:「最近は有馬記念まで『ファン投票が反映されてない』って言われてるみたいですけどね」
駒木:「頭数が揃わなかったのは大昔から一緒だよ。要は良いメンバーが集まって良いレースになればO.K.なわけでね。
 ……でもさ、ジャパンカップも海外遠征も無かった頃と比べて文句を言ってる方がナンセンスだよ。僕たちはあくまで外野なんだから、与えられたモノで如何に楽しむかを考えてればいいのさ。文句を言うのは、根本的な間違いがある時だけでいい。
 ……っと、なんで説教じみたことを言ってるんだ(苦笑)。あ、そうそうサイレンススズカの話だったね」

珠美:「ハイ」
駒木:「先週の講義では、サイレンススズカがまだ二流馬だった頃の話をしたんだけど、それから約半年で、この馬は全く違うレヴェルまでに成長していたんだ。
 サイレンススズカは、あの惨敗したマイルCSの後、無謀にも香港国際カップに遠征。どう考えても惨敗するパターンだったんだけど、それが果敢に逃げて0.3秒差の5着に健闘。今から考えると、騎手が武豊JKに替わったのが良かったんだろうね。後のステイゴールドの時もそうだったけど、この人、気性の悪い馬を手なずけるのがとても上手い。
 で、帰国した後が凄かった。エイプリルS、中山記念、小倉大賞典、金鯱賞と逃げ切りで4連勝。しかも最後の2つはレコード勝ちで、さらに金鯱賞は勝った着差が『大差』。1.8秒差だから、約11馬身ってところだろうか。しかもその時の2着馬が、G2勝ちを含む4連勝中のミッドナイトベット。後に香港国際カップを勝つ馬だね。…まぁ、この時にサイレンススズカの能力は完全に開花されたと言っていいんじゃないかな」
珠美:「何がどうして、こんなに変わっちゃったんでしょう?」
駒木:「ムキになって走って、スタミナを浪費する癖が影を潜めたのが大きいね。多分、武豊JKに走り方を叩き込まれたんじゃないかと思うんだけど。後は、気性の成長と能力の完成が同時に訪れたって事だろうか」
珠美:「…なるほど、分かりました。このレースもサイレンススズカは1番人気だったんですが、これは実力が評価されて、と解釈して良いんですか?」
駒木:「それはちょっと微妙かな。実績ならエアグルーヴ、メジロブライト、シルクジャスティスの方が数段上だしね。ただ、この時は実績上位の3頭が揃ってスランプか調整途上でねぇ。100%キッチリ仕上がってたのはサイレンススズカくらいなものだった。まぁ、勢いとツキも加味しての1番人気ってところだったね。
 サイレンススズカの不安点と言ったら、騎手が武豊JKから南井JKに乗り替わってた位かな。武豊JKは先約を優先してエアグルーヴに乗っていたんだ。南井JKも下手な騎手じゃないけど、サイレンススズカの全てを知っている武豊JKを敵に回したのは、正直大きな懸念材料だったよ。でも、それを考えても、この時は『サイレンススズカで仕方ないかな』って感じはあった。何せ、僕もサイレンススズカを軸に流し馬券を買ってたくらいだからね。僕がこの馬を初めて本命にした時だったよ(笑)」

珠美:「なるほど、よく分かりました(笑)。 それでは、レースの回顧に移りますね。
 まず、メジロブライトがゲート内で暴れて外枠発走になってしまいました…」
駒木:「これでメジロブライトは終わっちゃったね。これじゃあ、どうしようもない。レースの方でも不利を受けちゃったし、この時は運が無かった」
珠美:「ハイ。そしてスタートです。やはりハナを切ったのはサイレンススズカ。他に競り合う馬もいませんでしが、ハイペースでグングン差を広げて逃げます。離れた先行グループにはメジロドーベルなど。他の有力馬は、脚質の問題もあって中位より後方に位置します。
 サイレンススズカのペースは前半1000mで58秒6。折り合いはついていたみたいですが、やっぱり速いペースです。向正面では大逃げの形になりました」

駒木:「サイレンススズカにしてみれば、普通の“形”だね。……今から考えてみると、南井JKにしてみれば、負けても言い訳の出来る乗り方を選んだみたいだね。良い意味でも悪い意味でも“代打”精神というか。あ、これは責めてるわけじゃないよ。いかにもプロらしい騎乗ということだね」
珠美:「前走の金鯱賞では最後までリードを縮めさせなかったサイレンススズカですが、さすがにG1レースですね、4コーナーから後続との差が詰まり始めます。中でも目立った動きを見せたのがステイゴールドでした。中位から一気に捲り上がって行きます」
駒木:「微妙に違うけど、これってステイゴールドの引退レースの香港国際カップと似てる展開だよね。で、この時でも香港でも、4コーナーで我慢したのが武豊JKで、この時動いたのが熊沢JK。どっちがどう、という評価は避けるけど、意味深長な話ではあるよね」
珠美:「直線の攻防ですが、メジロブライトとシルクジャスティスの2頭は伸びを欠いて失速。早めにスパートしていたステイゴールドと、脚を貯めていたエアグルーヴがサイレンススズカを懸命に追う形になりました。でも、序盤から中盤で作った“貯金”が大きかったみたいですね。差は3/4馬身差まで詰まったんですが、結局サイレンススズカが逃げ切りました。2着はステイゴールが粘り込み。エアグルーヴは馬込みを捌くのに手間取ったために3着に終わりました。シルクジャスティスは6着、メジロブライトは11着でした」
駒木:「着差を考えると、ちょっと危ない勝ち方だったんだろうけど、勝てば官軍だよね。2着争いは、思わず『ぎゃあ』と叫んだのを今更ながらに思い出す(苦笑)」
珠美:「(笑)」
駒木:「いいメンバーの割には、ちょっと締まらないレースだったかな。勿体無いレースだよね、色んな意味で。
 ただ、もしもこのレースのメンバーが100%の力を出していたら、サイレンススズカは勝てなかったんじゃないかな。それを考えると、これはこれで良かった気がするけどね。まぁ、勝負事ってのは因果なモノだよね」

珠美:「タラ・レバの話は尽きませんものね。……それでは、出走馬のその後についてお話してください」
駒木:「サイレンススズカは、例によって次回にね。
 で、エアグルーヴは、どうやらこの辺りを境にピークを過ぎたらしくて、徐々に成績の方もフェードアウトしていった。それでもジャパンカップでエルコンドルパサーの2着があるんだから、大したもんだよね。
 あと、メジロブライトとシルクジャスティスの2頭は、下の世代からの突き上げに遭ってチャンピオンの座を追われることになる。まぁ、もともとG1馬にしては地力に問題のある馬だったんだけれども。
 結局、このメンバーの中で一番出世したのはステイゴールドということになるのかな。物凄く遅咲きだったけれども、その分出した結果も凄かったよね」
珠美:「……ハイ、博士、ありがとうございました」
駒木:「珠美ちゃんもお疲れ様。さて、来週は1998年の天皇賞・秋。このレースについて講義するのは、かなり心苦しい作業になるんだけど、避けるわけにはいかないからね。…まぁ、来週もどうぞよろしく、ということで」(来週に続く)


平成14年1月25日
教育原論(教職課程)
(講師:駒木ハヤト)

「塾講哀歌(2)
〜家庭教師会社・教材の実態」

 さて、今週月曜日に続いての、シリーズ2回目です。しかし、今日は番外編的に家庭教師の話題をお送りします。

 今日のニュースに、こんなものがありました。

 札幌の観光名所の一つ、サッポロビール園(札幌市東区)が昨年2月まで、営業終了後に各ビールタンクから注ぎ口につながるホースに残ったビールを保存し、翌日の客のビールジョッキに混ぜて出していたことが25日、分かった。
 同園を経営する新星苑(本社東京)=サッポロビールとニユートーキヨーなどが出資=によると、ホース内に残るビールは1日平均約20リットルに上り、このビールを容器に集めて冷蔵庫に保存。翌日「飲み放題」コースの客のジョッキに少量ずつ混ぜ、新しいビールをつぎ足すことが慣習化していたという。

(中略)

 サッポロビール園は1966年、できたての生ビールが飲めることを売り物に、サッポロビール札幌工場の敷地内に開業した。(共同通信より)

 …どんな業界でも、舞台裏に一歩足を踏み入れると、部外者なら誰でも絶句する光景に出くわすものですよね。受講生の皆さんも、様々な体験をされていることでしょう。勿論、駒木も複数のアルバイトを体験しましたが、やはりどの職場でも、その手の“舞台裏”というものが存在しました。
 そんな“舞台裏”の中でも、特にエゲツなかったのが家庭教師業界のそれでした。

 家庭教師の派遣会社にも様々なタイプがありますが、最も悪質なのは、家庭教師派遣と教材販売がワンセットになっている会社です。
 そもそも家庭教師の派遣にしてからがインチキ寸前です。素人の大学生を高い時給で釣って集めて、僅か1時間程度の事前研修でデビューさせ、“家庭教師派遣”と謳っているのです。これは喩えるならば、成人式当日の若者に5000円を握らせて、新宿歌舞伎町に放り出すようなものでして、ハッキリ言って無謀な事この上ない。駒木のように4年間塾で“揉まれた”人間ならまだしも、右も左も分からない若造に、他人様の子どもの家庭教師が、そうそう簡単に勤まるはずがないのです。
 事実、駒木は2年間で、都合3家庭4人の生徒を担当しましたが、いずれも1日でクビになった新人家庭教師からの引継ぎでした。1日でクビになった新人クンには、三者三様の解雇理由がありましたが、中でも笑えた、いや笑うに笑えなかった解雇理由は、「近くにある高校を全く知らず、進路の話が出来なかった」というものでありました。この事を聞かされた時、駒木の頭には、「土地勘の無いタクシー」、「ドンペリを知らないホスト」、「高所恐怖症の鳶職」、「体の鈍った中山きんに君」…など、様々な喩えが頭に浮かんでは消えたものでありました。
 そんなフザけた新人にでも、1日分の指導料を支払わなくてはいけないのですから、親御さんも災難というものです。これならまだ、「チェンジ」の利くホテトルの方が、まだ10倍以上良心的な商売です。 

 しかし、こんな事はまだ序の口です。

 全ての家庭教師派遣会社がそうであるとは言いませんが、それでも多くの会社が、家庭教師派遣と同時に教材販売をワンセットで行っています。
 確かに、ただでさえ指導力の心許ない家庭教師に教材作成まで委託していては、指導する側・される側双方にとって負担になる事になってしまいます。ですから、指導用や宿題用の教材を派遣会社が提供すると言う事は、考え方としては間違っていません。
 しかし、駒木が登録していた派遣会社の教材は、それはもう酷いシロモノでした。
 表紙だけは豪華な装丁なのですが、それにしたって革張りのように見えて、実はビニール製。かさばる上に重量感だけ増した、張子の虎のようなテキストが9冊もありました。ド派手な結婚披露宴の引き出物でも、ここまで酷くはありません。せいぜい新郎新婦の写真がプリントされた大皿と、砂糖で出来た鯛くらいなものです。しかしこの教材は、そんな大皿と鯛が3セットあるようなブツでした。
 中身が、これまた酷い。一応、5教科の総合テキストにはなっているものの、内容は各教科20ページソコソコで、それも内容スカスカ。これに申し訳程度の問題集がセットになっているものでありました。
 一番酷いのが値段で、こんなモノが30万円以上もするのです。同じようなボリュームで、もっと優れた内容の参考書と問題集ならば、本屋で5000円もあれば買えます。これだけでも、いかにこの教材がボッタクリか分かろうかというものです。
 駒木、このテキストを初見した時、図らずも絶句いたしました。阪神の監督に就任し、いざキャンプに望んだ時の野村克也前監督の気持ちが痛いほど良く分かった瞬間でした。
 こんなテキスト、指導の足を引っ張るだけですので、駒木は毎週半泣きになりながら、自作のテキストを用意する羽目になりました。まぁ、駒木は短いながらもキャリアがありましたので、自家製テキストを作成できたわけですが、これも経験も才能もない家庭教師が担当した家庭ならば無理な話です。坂本ちゃん&出川哲郎主演のホモ映画のようなトホホ感の漂う指導風景が目に浮かびます。
 しかも、これだけで話は終わりません。
 なんと、指導が始まってから数ヵ月後に、派遣会社の営業社員が“個人面談”と称して生徒宅に出向き、「このままではいけない」とか、「さらなる点数力アップを」などと言って、更に教材を買わせるのです。で、この新教材も、歯の抜けたバアサンが「エエことするの、シャンマンエン」と言って来る風俗店のようなシロモノでして、ますます駒木は偏頭痛に悩まされる事となったのでありました。
 …結局のところ、駒木の登録していた家庭教師派遣会社は、家庭教師派遣をスケープゴートにした、悪徳・教材訪問販売業者だったわけです。そして、この手の会社は、家庭教師派遣会社の中でもかなりの割合に及ぶものと思われます。
 ですので、お子さんを持つ社会人受講生の方にご忠告申し上げますが、家庭教師派遣会社と係わり合いになるのは避けた方が無難であります。避けた方が良いです。良心的な会社も有るでしょうが、お年玉付き年賀ハガキで「ふるさと小包」が当選するくらいの確率と自覚しておいてください。

 そもそも、家庭教師というのは、教育費用に糸目をつけない資産家とその子息のためのものです。月に何十万も費用を注ぎ込み、複数のプロ講師を雇って、初めてその威力を発揮するという、ジェット燃料並に燃費の悪いのが家庭教師なのです。月数万で、週1回2時間の家庭教師を雇うくらいなら、同じ費用で塾に通わせた方が余程マシと言えるでしょう。
 もしも、どうしても塾ではなく家庭教師を、というのであれば、知人経由で塾講師をしている大学生を紹介してもらいましょう。腕は確かですし、月謝も中間マージンがかかりませんので割安で済みます。塾講師をしている大学生は、ほぼ間違いなく家庭教師の口を探していますので、遠慮する事はありません。

 ……と、大学の講座と言うよりも、まるで生活小百科のような話になってしまいましたが、お役に立てたら幸いです。今日の講義はこれまで。(この項続く)

 


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